神獣使いは魔法の使えない魔法使い!〜異世界召喚された魔法使いはヌンチャクの使い手だった!奴隷少女と格闘派魔法使いの異世界成り上がり物語!〜

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第二章 逃亡編

第29話 国境

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 ソフィアはルースの背中に抱きつき泣いていた。

「ルースの嘘つき!死ぬかと思ったのよ。バカ」

 と呟いていたのをルースは聞き逃さなかった。まさかソフィアは聞かれたとは思ってもいなかった筈だが、ルースは突っ込みを入れる前に自分とリーナの怪我を治していった。相変わらず攻撃魔法が使えない。魔力弾の撃ち方も知らないので出来なかったのだ。魔法使いなのに近接戦闘と、神官か健の有者の役目のヒーラーになっていた。本来魔法使いには回復魔法が使えないのだ。
 ルースはある特殊条件を偶々クリアしていたのだ。それを知るのは今ではないのだが、本来魔法使いの勇者はヒールを使えない。これは剣の勇者がヒーラーを兼ねるのだが、特別条件があった。魔法使いの特典で最初に受けたというか食らった魔法を学習なく無条件でスキルとして得られる事だ。そう、勇者の特典だ。魔法使いとはいえ学習なしに使えるのは魔力弾だけだ。それも一度手解きを受ける必要があるのだが、誰もその事を知らない。知っていた者は召喚に関わった者になり、今はその者がいない。なので本来しなくても良い苦労をしていたのだ。但し、生活魔法は元々持っており、開放条件は誰かに生活魔法を掛けられるだったのだ。

 また、ミライについてルースは少し警戒をしていた。敵対行為はできないし、トニーの事を好きなのは演技ではなく本気だと分かる。ただ、アルテミスとソフィアとは違うのだ。奴隷奴隷していないのと雰囲気が違うからだ。年齢的にどうなのか分からないが、ソフィア達よりお姉さんだが、違和感があるのはそれだけではないからだ。最初に見た時から少し違和感が有ったが、先程の機転の良さやソフィアに指示をしていた時に呼び捨てにしていた事が引っ掛かる。トニーに指示を受けたのかも分からないが、自分が矢傷を負っている事、血が垂れているから追われると言っていたのもだ。何か理由が有るのだろうが、後でそれとなく聞こうと思った。

 しかし、それとは別にソフィアをイジることにした。

「ソフィア、ようやく僕の事を呼び捨てで呼んでくれたね。ごめんな。無理をしないって言っていたけど無理をしてしまった。指示が悪かったよ。本当は少し離れて隠れ、トニーの矢で僕の掩護を頼むべきであって、逃げろと言うべきじゃなかった。誰の機転だったの?やっぱりミライ?」

「ご、ごめんなさい。独り言のつもりでしたが聞こえていたのですね?」

「うん。嘘つきって。それでいいんだよ。駄目かな?」

「それよりもう怪我は大丈夫なの?深手だったわよ?心配したんだからね!ル、ルースのバカ!」

 背中をポカポカと叩いていていたが、やがてお腹に手を回し、しがみついて泣いていた。

 ルースはそっとその手に己の手を置いた。

 ソフィアは自分が今何を言ってしまったのかに気が付き、落ちないようしがみつくのは仕方がないが、自分の手にルースの手が置かれていて真っ赤になっていた。

 そんなソフィアを見てアルテミスは複雑な思いがあった。アルテミスはルースについて奴隷としてではなく、リーナと同じ理由である意味忠誠を誓おうと思っていた。掛け替えのない存在になるルーナとの契約を認めてくれたからと、その度量の広さに感服した。今の戦闘も自分の無力さを感じ、必死に皆を逃すために傷つきつつ戦う姿にキュンとなってしまったのだ。尤も聖獣の事は温度差がある。よく分かっていなかったから、犬を飼うのと同じレベルでしか見ていなかったからアルテミスがどれ程感謝しているのかは分かっていなかった。

 そんな二人の様子にミライはいち早く気が付いた。

「ねえトニー、あの子達やっぱりルース様に惚れたようよ」

「よく分かるね。ソフィアはそうだろうなと見ていて分かるけど、アルテミスもそうだとよく分かったね」

「ふふふ。私も女なのよ。でも安心して。私は貴方の事しか見ていないから。好きよ。早くハレムに帰りたいわ」

「君はハレムの出身なんだね」

「あら?私、言っていませんでした?そうですわ。でも今は皆には黙っていて欲しいの。いずれ分かるでしょうけれど」

「うん、ミライがそう望むならね。もしも聞かれたらどうするの?」

「ええ、その時はちゃんと答えるわ」

「それよりさっきは助かったよ。僕には咄嗟に指示を出すのは無理だ」

「ええ。スキルを発動しているのですから無理もありませんわ。それよりもスキルを発動しているのにも関わらず、あの弓の精度は凄いですわ。それと、矢は次にインビジブルを解除した時に忘れずに補充をされた方が良いと思いますわ」

 トニーは弓使いだが、その特典として魔力を糧として矢を作れるのだ。

 そうして進んでいると草原を抜け、森に入っていくのであった。
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