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第四章 精霊契約編

第79話 リセの親は

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「出来れば墓まで持っていって欲しいのですが、あの子の親は私が殺していまったのです」

「えっ?」

「三郎殿でも驚く事があるのですね。正確には私のミスであの子の親のいた村を全滅させてしまいました。ある盗賊団の討伐依頼を受け、討伐の完了報告をギルドに入れる為に町に帰る時にその村に寄りました。しかし、実際は私が討伐したのは半分程で、私は尾行されているのを気が付きませんでした。規模が聞いていたのより小さいのにも関わらず、アジトを潰したので全滅させたつもりでした。しかし、実際は二手に別れていて、別働隊が留守の時だったのです。その村に泊まったのですが、私がその村の者だと思ったようで、報復で村を襲い、焼き払ったのです。そう、私が引き込んでしまったのです。村を出発してから暫くして、村の方角から火の手が上がっており、急ぎ戻って盗賊団は壊滅させましたが、村は既に全滅していました。あの娘は井戸の桶に入れられて、井戸の中に隠されていて、あの子を育てる事にしたのです。140年程前の事です」

「ちょっと待って下さい!リセは140歳なのですか?」

「ええそうですよ。ただ、ヒューマンに換算すると14歳ですよ」

「分かりました。僕が死ぬ直前に打ち明けますが、構わないですよね?それを求めて僕に伝えたのでしょ?」

「はい。真実を知れば私の事を恨むでしょう。卑怯な真似をして申し訳有りません。後50年程で事実を受け入れるだけの精神が出来ているでしょうが、今はまだ押さなく無理でしょう」

「分かりました。引き受けましょう」

「それとこれを。この書は精霊術についての教本になるでしょう。私は疲れました。申し訳ありませんが、弟子達を読んでくだされ。日記はリセから受け取ってくだされ。最後に良くお顔を見せてくだされ。よいよい。ではお別れです。三郎殿が幸せになり、平安な日々を送れますように」

「はい。マーリンさんの最後が穏やかな時でありますように」  

 三郎は深々とお辞儀をして退出し、リセ達に部屋に入るように伝えたのであった。
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