忘却の艦隊

第40話 ロッテンウル大将の後継者

　ダレンの言葉に皆は拍手や歓声を送った。ダレンはそれに応えて、笑顔を見せた。
　そして自分の隣に座るロッテンウルに目を向けた。ロッテンウルはダレンに微笑んだ。

「よく言った。ダレン。儂は君を誇りに思っておる。そして、儂は君にもう一つ重要なことを伝えなければならぬ。儂は軍工廠部門のトップであり、その権限を全て君に譲ることにした。これは儂の最後の決断であり最後の願いじゃ。どうか引き受けてくれぬか」

　ロッテンウルはそう言って、ダレンに紙を渡した。それは工廠部門の権限委譲の書類だった。ダレンはそれを見て驚いた。

「大将、これは・・・」

　ダレンは言葉に詰まった。ロッテンウルはダレンに優しく言った。

「君はこの艦隊の指揮官であり、工廠部門のトップでもある。君はこの艦隊の全てを統括することになる。この艦隊の全ての艦を改造することができるし、この艦隊の全てを強化することができる。君はこの艦隊の全てを救うことができる」

　ダレンはロッテンウルに涙を浮かべた。ダレンはロッテンウルに感謝の言葉を伝えようとしたが、その時ホログラムの中の人々が騒然となった。彼らはロッテンウルの姿を見て驚きや疑問の声を上げた。ダレンはそれを見て、慌てて言った。

「皆落ち着け。俺は皆にもう１つ重要なことを伝えなければならない。先程から私の隣に座っているこの人が何者？とか、何故この人がここにいるんだ？と疑問を感じていることだろう。彼は工廠部トップのロッテンウル・ハイド大将だ。彼は私の直接の上官である前に１人の友人であり、師匠でもあるし、父親代わりと言っても良い存在だ。彼は航宙軍工廠部門のトップであり、その権限を全て私に譲ってくれた。彼は年齢制限の為勇退するまで長年に渡り第１艦隊を率いていた最高の戦士であり我々の仲間だ。そして皆の父だ」

　ダレンはそう言って、ロッテンウルに目を向けた。ロッテンウルはダレンに微笑んで言った。

「ありがとう、ダレン。儂も君を誇りに思っておる。そして、儂も皆に自己紹介をさせていただきたい。儂はロッテンウル・ハイド、一応大将じゃ。航宙軍工廠部門のトップであり、その権限を全てダレン少将に譲った。儂はこの艦隊の最高の戦士であり、最高の指揮官でもあるダレンを誰よりも信頼しておる。儂はこの艦隊の運命をダレンが握っている事に安堵さえしている。言っておくが、儂があの時指揮をしておったら重力ジャンプをするなどと思いつかず、衝撃波でやられておったはずじゃ」

　ロッテンウルはそう言って、ホロ会議参加者に敬礼した。
　彼の言葉に皆驚きや感動の表情を浮かべた。彼らはロッテンウルに拍手や歓声を送ると、ロッテンウルはそれに応えて笑顔を見せた。

　彼は続けて話す。

「儂は皆にもう一つの重要なことを伝えなければならぬ。儂がこの艦にいるのはガン治療のためじゃて。本来帰路にある星系で補給物資を届けるついでに儂を降ろしてもらうように輸送艦の艦長にお願いしておったのじゃ。そこにはガンの特殊な治療法を行うことができる医師がおるとのことじゃった。艦隊の輸送任務の経由地にいるスペシャリストに診てもらうためにコールドスリープに入っておった。輸送艦の艦長だけが私の存在を知っておったが、しかし、先日の反乱時にあの少将が私のカプセルを開けてしまい、コールドスリープを解除しおった。恐らくあの女は儂を人質にしようとしたのじゃろうが、ダレン少将が倒してくれたお陰で又もや命拾いをした次第なんじゃ。それとこの３３年の間に開発した医療ポッドに半年から１年入らねばならぬが、どうやら末期のガンにも効くらしいのう。皆に儂の最後の願いを聞いてほしい。儂はダレン少将に全てを託した。儂はダレン少将を信じているし、皆にも少将を信じてほしい。コロン、聞けぇい！少なくとも航宙軍大将が正式に認めた艦隊指揮官であると認識せよ！」

　ロッテンウルはそう言って、涙を流しながらダレンに抱きついた。ダレンはロッテンウルに感謝の言葉を伝えようとしたが、その時ホロ会議参加者が感動の声を上げた。彼らはロッテンウルに拍手や歓声を送り、ダレンはそれに応えて、涙を流しながらロッテンウルに抱き返した。彼はロッテンウルに約束の言葉を伝える。

「大将、私は・・・私はあなたの願いを叶え、全てを受け継ぎます。一生きて再び故郷の地に一緒に降り立ちましょう！」