忘却の艦隊

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第41話 休暇中は拳で語らおう!

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 ダレンは医療ポッドから出たばかりで本調子には程遠いが、それでもランチに乗り旗艦に戻った。

 結局ノリコは参謀向きだと分かり、ロッテンウルの勧めもあり参謀長としてダレンの片腕を担うことになった。
 ダレンは常識を破るが、氷の魔女は正反対の常識人だ。
 正論を突き通すタイプで、ダレンにない判断や思考を持つ。
 そこはダレンが考えない発想を持つからと、選択肢を増やしたり、他の艦長達がどう思うかをアドバイスする役目を担う。それに伴いミズリアは参謀役を終え、純粋な副官の任を担う。

 航宙軍の副官は秘書のようなものだ。だが、有能な秘書は事前に手を回したり、提督がやりやすいように各種の手配をそつなくこなす。
 しかし、有能なミズリア中尉はダレンが考えそうなことを推測し、欲しがる情報をそれとなく提供していく。
 例えばある艦の艦長と副長の軋轢とか、どんなトラブルが増えているかとかだ。
 ただ手は打ってあり、人事変更案を作成しており、実質的にダレンは承認するだけにまでしてくれている。

 艦のシフトとは違い、司令部は決まった時間だけ機能している。
 もちろん戦闘中は別だ。
 ノリコ艦長は、いや、今は中佐から大佐に昇進し提督直属の参謀長としてブリッジにいる。

 現在は重力ジャンプ中で亜空間?におり、他の艦と連絡が取れない。
 今回5光年、予定では5日掛かる。この間、整備や訓練も行われるがシフトを組んで2日間の休暇を出した。

 しかし、司令部には重力ジャンプ中はほとんどやることがないので、この時間を使い、ダレンは旗艦のクルーと交流を深めることにしていた。
 と言っても普段からしているが、今回は士官との交流だ。
 これまでは兵士達と拳で語っていたが、ブリッジクルーや各部門の責任者、少佐や大尉などとの交流だ。

 司令部は旗艦の指揮系統とは別なので、気張るなとは言ってあり、腕に覚えのあるものは拳で語ったりもする。

 そしてダレンはミカ中尉とほぼ日課の格納庫での模擬戦をしており、そんな中、シールド生成器担当のザリガン大尉がジャージ姿で現れた。
 各部門の責任者と語らうスケジュールがあり、彼に拳と飯どちらが良いかとミズリアが確認し、拳ならこの時間にどこ、飯ならこの時間に食堂と、好きな方に告知無しで来るように伝えていた。

 これはダレンがどっちかな?と楽しみにする為だ。

 ミズリアもダレンの嗜好は性的なこと以外把握しており、知っていてもおクビにも出さない。

「ザリガン大尉であります!」

 ダレンはミカと組み合いながら告げた。

「準備が整ったら教えてくれ!ストレッチはしっかりやれよ!それとお互い休暇中だから階級抜きで遠慮するな」

「了解です!」

 ミカとの組み手を終わり、いつもの宙兵隊に訓練を付ける。

「ほら、右を出すと左足がブレるクセがまだ出ているぞ!次の初動がバレバレになるから意識しろ!」

「ウィーッス!じゃあこれはどうですか?」

 ノーモーションで回転しながら裏拳を繰り出し、そのまま猫騙しをするもバク宙で避ける。

「中々奇抜だな。しかし、予備動作が大きい。予備動作を減らせば初見殺しになるかもだ」

「あざーっす」
 
 若い兵士は親分とか師匠とか様々な呼び名をし、腕に自身のある者ほどダレンに心酔している。

 ミカも威勢のよい女子に訓練を付ける。

 そして大尉の準備が整い、大尉からボクシングのグローブを投げられた。

「キックか?ボクシングか?」

「ボクシングですね。ボクシングだったら一発くらい当てられるかもです。胸をお借りします」

「ミカ、悪いがグローブを着けてくれ」

「あいよ!お前らちょっと待っていろ」

「取込み中悪いな」
 
「どうせアンタの模擬戦が始まれば皆手を休めるんだから同じさ。今晩は顔が腫れることになりそうね。アイツさ、ボクシングじゃ士官学校でチャンプだったようよ。気をつけるんだよ」

「持たせたな。誰かタイムキーパーを頼む。4Rでよいか?」  

 そうしてゴングの代わりにレンチで壁を叩く音が格納庫に鳴り響いた。
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