脚だけでイく変態に愛され契約中~週一回、俺の脚は売られる~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
4 / 22

四話 その代わりに

しおりを挟む

 本当に驚いて、恐怖心を抱いた時、人間は動けないし声が出ないのだと知った。

 雨下は冷たいコンクリートの床に正座で座らされている。すっかりズボンを履き替えた俺の足を、いまだに未練がましい表情で見る雨下に引きながら、俺はひきつった笑みを浮かべた。笑いたい訳じゃない。笑うしかないからだ。

「この馬鹿が悪かったな……。神足くん。根は悪いヤツじゃないんだが……何しろ、この通りの変態でね。怖かっただろ?」

「あ、はあ、その……驚き、ました……」

「すみません。出来心で」

 そう言って雨下は、土下座して謝る。斎藤さんはため息を吐いて、自分も頭を下げた。

「従業員を守れなくて、済まない……。神足くんが嫌なら、出禁にするから。あと、訴訟するなら協力するから」

「出来れば示談で」

「お前は反省しろ!!」

 ゴツン! と、かなり重めのげんこつを雨下の頭上に降らせる。それを見ていたら、何だか少し、どうでも良くなってしまった。

 雨下は変態ではあるものの、まあ、不快というか、驚いただけだし、足を舐められただけだ。一応。

(それに、オーナーの斎藤さんとは、親友らしいしな……)

 斎藤さんは出禁にしても良いと言っているが、それで俺が働き続けるのは、なんとなく気まずい。この職場は気に入っているし、俺も辞めたいと思っていない。

(まあ、かといって、何もなく良いですよ、とは行かないよな)

 斎藤さんがしっかり怒ってくれている分、適当にも出来ない気がする。それは、斎藤さんが俺を尊重してのことだろうから。

「じゃあ――」

 俺の言葉に、雨下がこちらを見た。顔は良いのに。残念なヤツ。

「示談で。お金じゃなくて、靴、買って貰えます?」

「靴?」

「神足くん。それは――」

 斎藤さんが、眉をひそめる。言いかけたのを、雨下が制した。自分と俺の話だと言いたいのかも知れない。

 俺のスニーカーは、もう何年も履いていて、擦りきれている。その上、今回、ワインを被ってしまい、落ちようのないシミが付いてしまっている。買い換えたい気持ちはあるが、スニーカーは高い。安物でセール品だったとしても、俺には痛い出費なのだ。

「これ、スニーカー、ダメになっちゃったんで。代わりのが欲しいんです。それで、この件はチャラで」

「分かったよ! どんなスニーカーが好み? 足のサイズ測っても?」

「だから、足フェチにそれはダメだって……」

 生き生きとし出した雨下と、斎藤さんの頭を抱える姿に、俺は自分の選択ミスに気がついたのだった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

陥落 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな
BL
 眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。  国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。  そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...