脚だけでイく変態に愛され契約中~週一回、俺の脚は売られる~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
3 / 22

三話 悪癖

しおりを挟む
 ロッカールームに入り、明かりをつける。表側の店は綺麗だが、裏側は古い雑居ビルなのでなんとなく薄暗い雰囲気がある。雨下は物珍しそうに室内を眺めながら、俺がロッカーからズボンを取り出すのを待っていた。

 斎藤さんのロッカーは鍵が刺さったままだ。貴重品は置いていないらしく、予備の制服やタオルなどが詰め込まれている。その中から黒いスラックスを取り出し、タオルと一緒に雨下に手渡す。

「これで大丈夫ですかね」

「ありがとう。助かるよ」

「ジャケットは大丈夫でした?」

「多分ね」

 雨下がベルトに手を掛けたのを見届け、俺も着替えることにする。スニーカーを脱ぐと、ぐしょっと濡れた感触があった。

「うわ。靴下も濡れてる……」

 最悪だ。と思いながら、靴下を脱ぐ。濡れているせいで脱ぎにくく、引っ張るようにして脱ぎ捨てる。

「……」

 ふと、雨下の視線を感じて、振り返る。

「? どうかしましたか?」

「……いや」

「?」

 何だろう。何か、妙な気配を感じた気がして、肩を揺らす。

 黒いズボンはシミこそ目立っていないが、随分ワインを吸ってしまったらしく、酒臭かった。それに、なんとなくベタベタする。

 ズボンをすっかり脱ぎ去り、パンツ一枚になったところで、俺は雨下の方を振り返った。

「すみません、結構ベタベタしますよね。おしぼり持って――」

 ビク。身体を震わせた。

「え?」

 雨下が、すぐ背中に立っていた。いつの間にこんな近くに来ていたのか気がつかなかった。濡れたスーツのまま、じっと俺を見下ろしている。

「う、雨下さん?」

 雨下はハッとしたように目を見開いた。だが、俺をじっと見下ろす視線は外さない。

「?」

 挙動不審な様子に、内心ビビる。雨下は近くによると、俺よりも頭一つ分大きかった。なんとなく、威圧感がある。

「ど、どうかしましたか?」

「あ、ごめん。何だっけ?」

 上の空だったのか、雨下がそう言う。雨下の視線は相変わらず俺――の、顔ではない。もっと、下を見ている。なんとなく、落ち着かなくなってシャツの裾を掴む。

「っと、おしぼりです。脚、拭いた方が……」

「ああ――そうだね。拭きたいな、、、、、

「すぐそこにあるんで、待ってて貰えます?」

 そそくさと、雨下のそばを離れる。何だか、変に緊張する。

(取り合えず、さっさと拭いて戻ろう……)

 雨下の分と、自分の分のおしぼりを二つずつ取り出し、ロッカーに戻る。おしぼりは業者さんに頼んでいて、バックヤードのコンテナに積まれているのだ。

「雨下さん、おしぼり――」

 戻ってくると、雨下はまだ着替えていなかった。相変わらず濡れたスーツのまま、中途半端にベルトを外したままだ。

(何やってんだ、この人)

 不審に思いながら、おしぼりを手渡す。と、何故か雨下は俺の手からおしぼりを全て取り上げると、おもむろにそれを拡げた。

「あの? それ、俺も――」

 俺も使いたいんですけど。そう言いかけた。

 が。

「!??!!??!?」

 次の雨下の行動で、俺は完全に思考停止した。

 雨下が、俺の脚をおしぼりで拭き始めたからだ。

「ちょっ、雨下さんっ!?」

 逃げ腰になる俺に、雨下はガシッと脚を掴んだまま、丁寧に太腿を拭き上げる。その触り方が、なんとなく淫靡に感じて、ゾクリと背筋が粟立った。

「ん、ちょ、ちょっと、アンタ」

「神足くん、だっけ。そこ座って」

「え? ちょっと」

 有無を言わさない強引さで長机の上に俺を座らせ、なおも脚を拭き続ける。太腿からふくらはぎ。膝。踝。

「う、雨下さんっ……、自分で……」

「神足くん、スポーツとかやってるの?」

「へ? いや、なんも……」

「無駄な脂肪も筋肉もない。良い脚だ」

「は?」

 足の裏を拭き上げられ、ぞくんと肩が揺れた。雨下が、チラリと俺を見る。

 視線が合って、ビクッと肩が揺れた。熱っぽい瞳に、一瞬、自分が何をされているのか、理解できなくなる。

「君――名前も、良いよね」

「は――」

 何を言って。

「神足、か。すごく……」

 絵本の中の王子様みたいに、雨下が踵を掴んで手に取る。

「素敵だ」

 そのまま、雨下の唇が、俺のつま先に触れた。

「――――――――――」

 思考停止。

(え?)

 俺。


 今。



 何、されてる?


 俺の反応がないのを良いことに、雨下の舌が足の甲を這い上がる。ぞぞ、と皮膚が震える。声が出ない。

 逃げなきゃ。

 逃げなきゃいけないのに。

「――――っ」

 ようやく声を絞り出したのと、スパン! と小気味いい音を立てて雨下の後頭部がひっぱたかれたのは、殆ど同時だった。

「なに、やってんだこの脚フェチ変態があああっ!!!」

 雨下の背後に立っていたのは、怒りで顔を真っ赤にした、この店のオーナーであり、俺の上司。ついでに言えば、雨下の親友――斎藤さんだった。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

陥落 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな
BL
 眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。  国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。  そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...