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第二章 マリーナフカの棺とハルの妖精
16:眠れない夜
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暗闇の中、怪しく光る橙褐色の衣。真紅の瞳に涙をため、小さく『助けて』と呟く少年がこちらを見ている。
感情が抜け落ちたように見えるその瞳の奥に、微かな光を感じたアイシャはどうにか助けたい一心で必死に彼に手を伸ばした。
だがしかし、その手は少年に届くことはなく、気がつくと少年はガラスが割れるように粉々に砕け散った。
彼の破片を集めるアイシャをイアンは冷たく見下ろす。
アイシャは『どうして』『なぜ』とイアンを責める言葉が溢れて止まらない。けれど彼はそんな彼女に何も言わず、ただ冷めた目でじっと見つめているだけ。
そんな中、ふと振り返ると、激しい怒りを露わにしたリズベットが立っていた。彼女の腕にはぐったりとしたレオの姿があった。
魔族に殺されたのだと怒り泣く、リズベットの涙が彼女の頬を伝い、水面に落ちる。
それが何かの合図だったのか、アイシャの周りは唐突に底なし沼のように緩やかに沈み始めた。
地獄へと引き摺り込むように、下から足をつかまれる。
これは魔族に殺された人間の手なのか、それとも人間に殺された魔族の手なのか。わからない。
アイシャは必死に助けを求めるように空へと手を伸ばすも、誰もその手を掴んではくれず、体はみるみるうちに沼へと沈んで行った。
*
「……っは!?」
突然起き上がり、辺りを見渡すアイシャ。
次第に冴えてくる頭でしばらく考え、ようやくその悪夢のような光景が本当に悪夢だったことに気がついた。
寝汗でぐっしょりと濡れた寝巻きが体に張り付いていて、とても不快だ。
「……夢だから。大丈夫、夢よ」
大丈夫だと言い聞かせるように何度も繰り返し、少し落ち着きを取り戻したアイシャは水を飲もうと立ち上がった。
ベッド横のテーブルに用意されているグラスに水を注ぎ、一気に飲み干す。喉の渇きが一瞬にして潤った。
「ふう……」
ひと息ついて不意に窓の外を見ると太陽はまだ顔を出しておらず、曇っているため月も見えない。
全く明かりがない暗闇はアイシャに先ほどの悪夢を思い出させた。
もう一度眠りにつくには不安が大きすぎる。アイシャは椅子にかけてあった上着を手に取ると部屋にある一番大きな窓を開け、テラスへと出た。
もうすぐ雨が降るのだろうか。少し湿った空気の匂いがする。いっそ大雨でも降って、このモヤモヤした気持ちも一緒に洗い流してくれたらいいのに。なんて、そんなことを思ってしまった。
「……どうしたらいいの」
アッシュフォードにいたい。イアンのそばにいたい。そう思うのに、今はイアンの顔を見たくない。そばにいて彼から血の匂いを感じてしまったら、失言をしてしまいそうで怖いのだ。
気がつくと、アイシャの目からは涙が溢れていた。泣く権利なんてないのに、感情がうまくコントロールできない。
静かな夜の闇の中、啜り泣く自分の声だけが響く。人の気配が感じられない闇の中で、アイシャは実家にいた時にも感じたことのない、世界中にただ一人置いてけぼりにされたような、そんな孤独感に襲われた。
「お兄さん……」
アイシャは無意識にいつの日かの、救いの言葉をくれた彼を呼んだ。まだイアン・ダドリーという名であることすら知らなかった頃の、今よりも幼い彼。
今、あの頃の彼に会ったとしたら何と言われるだろう。忌憚のない率直な意見をくれた彼ならどんな言葉で背中を押してくれるだろうか。そんな考えが頭をよぎる。
悩みの種と同一人物であるはずなのに、まるで別人のように考えている自分がおかしくて馬鹿馬鹿しくて、アイシャはフッと乾いた笑みをこぼした。
「少し散歩でもしようかしら」
主人を心配するあまり、同じ部屋で寝てくれているランに気づかれないよう、アイシャは静かに扉を開けた。
シンと静まり返る廊下はいつもよりも長く感じる。
いつもは賑やかに仕事をしているメイドたちが次々に声をかけてくれているからか、あっという間に端の階段まで辿り着くのに、今夜はいつまでもたどり着かない気がしてくる。
(伯爵家では誰とも話さないなんて日なんて普通にあったのに……)
廊下に誰もいないというだけでこんなにも心細くなる日が来るなんて、思わなかった。
イボンヌ、ベル、メアリー、ニーナ、バルド夫人、ジャック、テオ、ニック、ミリアン、ヴィンス、リズベット……。
目を閉じると一人一人の顔と名前が思い浮かぶ。
(マリーナフカはどこまで侵入できるのかな)
もし、誰にも気づかれることなくどこまででも侵入できるのなら、この屋敷とて安全とは言えない。
騎士団が守ってくれると言っても、誰かが怪我をするかもしれない。死ぬ事だってあるかもしれない。先ほど見た悪夢が、至る所で起きるかもしれない。
そう考えるだけで、心が凍りつきそうだ。アイシャは自身の震える肩を抱き締めた。
魔族といえども子どもが死ぬのは見たくない。けれど、自分に近しい人たちが死ぬのはもっと見たくない。
「アイシャ」
「きゃっ!?」
急に声をかけられ、アイシャは思わず悲鳴を上げた。
声のした方を振り返ると、そこには今日は帰らないはずのイアンが立っていた。
「男爵様!?どうしてここに?」
「砦の様子を確認したんだが、第一陣の攻撃は大したことなくてな。撤退を確認したから、指示だけ置いて一旦帰ってきたんだ。君のことが気がかりで……」
「す、すみません。ご心配をおかけして」
「いや、勝手に心配してるだけだから謝らないで。それよりもどうした?こんな時間に」
「あ、あの……、眠れなくて……」
「そうか……」
昼間のことがよほどショックだったのだろう。アイシャの目はよくみると赤く腫れていた。
イアンは何となく、その涙の跡が残る目元に触れようと手を伸ばした。
「やっ……!」
アイシャは無意識にギュッと目を瞑り、体を強張らせる。
すぐにまたやってしまったと後悔するが、もう遅い。
イアンは彼女のその様子に、サッと手を引っ込めた。
「あ……、ご、ごめんなさい……」
「いや、こちらこそごめん」
「いえ……、あの……」
「……」
もう何を言っても、聞くに耐えない言い訳になる。うまく言葉が出てこないアイシャは俯き、口をつぐんだ。
気まずい沈黙が二人を包む。ほんの数秒のその時間が、アイシャにはとてつもなく長い時間に思えた。
すると、不意にイアンが自分の着ていた上着を彼女の肩にかけた。そしてぎこちなく微笑んだ。
「今夜は冷えるから、部屋に帰った方がいい」
「は、はい……」
「送るよ」
「ありがとう、ございます……」
イアンはそう言うとアイシャの前を歩き出した。
薄暗い廊下、少しだけ顔を出した月の明かりを頼りに前をゆくイアン。
手を差し伸べるでもなく、横を歩くでもなく、無言で先をゆく彼のその大きな背中を眺め、淋しく感じるなど、なんて自分勝手なのだろう。アイシャはそう思う自分を恥じた。
「俺はまたすぐ、砦に戻る。何かあればテオを呼ぶといい」
「はい……」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
一言だけ、そう言葉を交わしてアイシャの部屋の扉はパタンと閉まる。
いつもならその大きな手で頭を撫でてくれるのに、今夜は寂しげに微笑んで手を振っただけだった。
「何を、やっているんだろう」
アイシャは扉の前に崩れ落ち、膝を抱えて大きなため息をこぼした。
自分の無意識な拒絶がイアンの心を傷つけている。自分の態度が彼の行動を責めている。人殺しだと、責めている。
自分から視察に行くと言ったくせに、戦争とはそういうものだと理解を示してみせたくせに。
こんな事で怖気付くくらいなら、こんな事で逃げ出すくらいなら、初めからイアンの言う通りに屋敷で大人しくしていればよかったのだ。
「……アッシュフォード男爵夫人になるのだと、覚悟を決めてきたのだと、そう言ったのは誰よ」
そんな事をほざいだ自分が彼を傷つけるなど、あってはならない。
こんなふうに塞ぎ込んでいるだけの自分など、役立たずどころか、ただ足を引っ張っているだけだ。
アイシャは何度も深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。
肩にかけられたイアンの上着から香る彼の匂いが、アイシャを優しく包み込む。
「よし……!」
自分の頬を叩き、アイシャは顔を上げた。
まだ気持ちの整理なんてつかないし、足も震えているけれど、それでもただ立ち止まっているだけでは何も変えられないから。
感情が抜け落ちたように見えるその瞳の奥に、微かな光を感じたアイシャはどうにか助けたい一心で必死に彼に手を伸ばした。
だがしかし、その手は少年に届くことはなく、気がつくと少年はガラスが割れるように粉々に砕け散った。
彼の破片を集めるアイシャをイアンは冷たく見下ろす。
アイシャは『どうして』『なぜ』とイアンを責める言葉が溢れて止まらない。けれど彼はそんな彼女に何も言わず、ただ冷めた目でじっと見つめているだけ。
そんな中、ふと振り返ると、激しい怒りを露わにしたリズベットが立っていた。彼女の腕にはぐったりとしたレオの姿があった。
魔族に殺されたのだと怒り泣く、リズベットの涙が彼女の頬を伝い、水面に落ちる。
それが何かの合図だったのか、アイシャの周りは唐突に底なし沼のように緩やかに沈み始めた。
地獄へと引き摺り込むように、下から足をつかまれる。
これは魔族に殺された人間の手なのか、それとも人間に殺された魔族の手なのか。わからない。
アイシャは必死に助けを求めるように空へと手を伸ばすも、誰もその手を掴んではくれず、体はみるみるうちに沼へと沈んで行った。
*
「……っは!?」
突然起き上がり、辺りを見渡すアイシャ。
次第に冴えてくる頭でしばらく考え、ようやくその悪夢のような光景が本当に悪夢だったことに気がついた。
寝汗でぐっしょりと濡れた寝巻きが体に張り付いていて、とても不快だ。
「……夢だから。大丈夫、夢よ」
大丈夫だと言い聞かせるように何度も繰り返し、少し落ち着きを取り戻したアイシャは水を飲もうと立ち上がった。
ベッド横のテーブルに用意されているグラスに水を注ぎ、一気に飲み干す。喉の渇きが一瞬にして潤った。
「ふう……」
ひと息ついて不意に窓の外を見ると太陽はまだ顔を出しておらず、曇っているため月も見えない。
全く明かりがない暗闇はアイシャに先ほどの悪夢を思い出させた。
もう一度眠りにつくには不安が大きすぎる。アイシャは椅子にかけてあった上着を手に取ると部屋にある一番大きな窓を開け、テラスへと出た。
もうすぐ雨が降るのだろうか。少し湿った空気の匂いがする。いっそ大雨でも降って、このモヤモヤした気持ちも一緒に洗い流してくれたらいいのに。なんて、そんなことを思ってしまった。
「……どうしたらいいの」
アッシュフォードにいたい。イアンのそばにいたい。そう思うのに、今はイアンの顔を見たくない。そばにいて彼から血の匂いを感じてしまったら、失言をしてしまいそうで怖いのだ。
気がつくと、アイシャの目からは涙が溢れていた。泣く権利なんてないのに、感情がうまくコントロールできない。
静かな夜の闇の中、啜り泣く自分の声だけが響く。人の気配が感じられない闇の中で、アイシャは実家にいた時にも感じたことのない、世界中にただ一人置いてけぼりにされたような、そんな孤独感に襲われた。
「お兄さん……」
アイシャは無意識にいつの日かの、救いの言葉をくれた彼を呼んだ。まだイアン・ダドリーという名であることすら知らなかった頃の、今よりも幼い彼。
今、あの頃の彼に会ったとしたら何と言われるだろう。忌憚のない率直な意見をくれた彼ならどんな言葉で背中を押してくれるだろうか。そんな考えが頭をよぎる。
悩みの種と同一人物であるはずなのに、まるで別人のように考えている自分がおかしくて馬鹿馬鹿しくて、アイシャはフッと乾いた笑みをこぼした。
「少し散歩でもしようかしら」
主人を心配するあまり、同じ部屋で寝てくれているランに気づかれないよう、アイシャは静かに扉を開けた。
シンと静まり返る廊下はいつもよりも長く感じる。
いつもは賑やかに仕事をしているメイドたちが次々に声をかけてくれているからか、あっという間に端の階段まで辿り着くのに、今夜はいつまでもたどり着かない気がしてくる。
(伯爵家では誰とも話さないなんて日なんて普通にあったのに……)
廊下に誰もいないというだけでこんなにも心細くなる日が来るなんて、思わなかった。
イボンヌ、ベル、メアリー、ニーナ、バルド夫人、ジャック、テオ、ニック、ミリアン、ヴィンス、リズベット……。
目を閉じると一人一人の顔と名前が思い浮かぶ。
(マリーナフカはどこまで侵入できるのかな)
もし、誰にも気づかれることなくどこまででも侵入できるのなら、この屋敷とて安全とは言えない。
騎士団が守ってくれると言っても、誰かが怪我をするかもしれない。死ぬ事だってあるかもしれない。先ほど見た悪夢が、至る所で起きるかもしれない。
そう考えるだけで、心が凍りつきそうだ。アイシャは自身の震える肩を抱き締めた。
魔族といえども子どもが死ぬのは見たくない。けれど、自分に近しい人たちが死ぬのはもっと見たくない。
「アイシャ」
「きゃっ!?」
急に声をかけられ、アイシャは思わず悲鳴を上げた。
声のした方を振り返ると、そこには今日は帰らないはずのイアンが立っていた。
「男爵様!?どうしてここに?」
「砦の様子を確認したんだが、第一陣の攻撃は大したことなくてな。撤退を確認したから、指示だけ置いて一旦帰ってきたんだ。君のことが気がかりで……」
「す、すみません。ご心配をおかけして」
「いや、勝手に心配してるだけだから謝らないで。それよりもどうした?こんな時間に」
「あ、あの……、眠れなくて……」
「そうか……」
昼間のことがよほどショックだったのだろう。アイシャの目はよくみると赤く腫れていた。
イアンは何となく、その涙の跡が残る目元に触れようと手を伸ばした。
「やっ……!」
アイシャは無意識にギュッと目を瞑り、体を強張らせる。
すぐにまたやってしまったと後悔するが、もう遅い。
イアンは彼女のその様子に、サッと手を引っ込めた。
「あ……、ご、ごめんなさい……」
「いや、こちらこそごめん」
「いえ……、あの……」
「……」
もう何を言っても、聞くに耐えない言い訳になる。うまく言葉が出てこないアイシャは俯き、口をつぐんだ。
気まずい沈黙が二人を包む。ほんの数秒のその時間が、アイシャにはとてつもなく長い時間に思えた。
すると、不意にイアンが自分の着ていた上着を彼女の肩にかけた。そしてぎこちなく微笑んだ。
「今夜は冷えるから、部屋に帰った方がいい」
「は、はい……」
「送るよ」
「ありがとう、ございます……」
イアンはそう言うとアイシャの前を歩き出した。
薄暗い廊下、少しだけ顔を出した月の明かりを頼りに前をゆくイアン。
手を差し伸べるでもなく、横を歩くでもなく、無言で先をゆく彼のその大きな背中を眺め、淋しく感じるなど、なんて自分勝手なのだろう。アイシャはそう思う自分を恥じた。
「俺はまたすぐ、砦に戻る。何かあればテオを呼ぶといい」
「はい……」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
一言だけ、そう言葉を交わしてアイシャの部屋の扉はパタンと閉まる。
いつもならその大きな手で頭を撫でてくれるのに、今夜は寂しげに微笑んで手を振っただけだった。
「何を、やっているんだろう」
アイシャは扉の前に崩れ落ち、膝を抱えて大きなため息をこぼした。
自分の無意識な拒絶がイアンの心を傷つけている。自分の態度が彼の行動を責めている。人殺しだと、責めている。
自分から視察に行くと言ったくせに、戦争とはそういうものだと理解を示してみせたくせに。
こんな事で怖気付くくらいなら、こんな事で逃げ出すくらいなら、初めからイアンの言う通りに屋敷で大人しくしていればよかったのだ。
「……アッシュフォード男爵夫人になるのだと、覚悟を決めてきたのだと、そう言ったのは誰よ」
そんな事をほざいだ自分が彼を傷つけるなど、あってはならない。
こんなふうに塞ぎ込んでいるだけの自分など、役立たずどころか、ただ足を引っ張っているだけだ。
アイシャは何度も深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。
肩にかけられたイアンの上着から香る彼の匂いが、アイシャを優しく包み込む。
「よし……!」
自分の頬を叩き、アイシャは顔を上げた。
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