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第一部
16:ノアの決意
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この国に来てしばらくした頃。
その日のノアは愛する人への花束を買いに、花屋を訪れていた。
今日夜は、晴れて再び婚約者となったモニカと食事をすることにもなっている。
尤も、夕食会と言っても、おそらくは彼女の手料理を彼女の部屋で食べるだけになるだろうが、致し方ない。
この国の第四皇女の立場はとても難しいから、食事すらも自分で作らねば生き延びることが出来ないのだ。
本当にひどい国だと思う。
王侯貴族は皆、何の罪もないモニカにはキツく当たるが、彼女の母親には特に何もしない。
それは彼女の母親である第二妃が国で権力を持つ複数の男の庇護下にあるからだ。
これを理不尽と言わずに何と言うのだろうか。
こんな環境で、よくモニカはここまで大きくなれたものだと、ノアは思う。
初めて会った時から彼女の味方は騎士のジャスパーだけだった。
今でこそ、社交会にある程度の伝手はできたようだが、一度だけ『寂しい』と彼女が涙を見せたあの時から、彼はどうにか守ってやらねばという使命感に駆られている。
だから約束したのだ。必ずここから連れ出してやると。
一度は約束を果たせるかも危なかったけれど、今回こそは必ず連れ出してみせる。
ノアはそう心に誓い、顔をグッと上げた。
「なんか立派なこと言ってますけど、花束一つ買えないほどの人見知りが偉そうなこと言うんじゃないって感じですね」
「うう…面目ない」
花屋の前で立ちすくむ主人に、従者は辛辣に言い放つ。
どうやら人見知りのノアは花屋に入れず、この従者に買ってきてもらったらしい。
呆れ顔の従者は『本当にだらしのない男だ』と深いため息をこぼし、大きな薔薇の花束と小さな霞草の花束を彼に差し出した。
それを受けとったノアは花の香りを嗅ぎ、口元を緩ませる。
「あんな可愛いお姫様貰うんだから、旦那様も立派な王子様にならねばなりませんよ?もう少しシャキッとしてください」
「わかってるよ…」
「そうだ。何なら本物の王子様を、見本にして真似てみるのはどうです?」
「見本って?皇太子殿下か?」
「あんな性格悪い人はダメですよ」
「君ね、そういう発言は外交問題になるから謹んでくれ…。ああ、胃が痛い」
「自分が言ってる王子様は、そう、例えばジャスパーさんみたいな人です」
「いやぁ、あれは王子様とは程遠いでしょ…」
見た目は王子だが中身は遊び人だ。
「いやいやいや、わかっていませんね。ああいう男は意外と一途で紳士だったりするんですよ。ジャスパーさんは絶対に、いざという時には頼れるカッコいい王子様だと思いますね」
「そういうものか?」
「そついうものです。娘がそう言ってました」
「何だ。娘の趣味か」
「ギャップってやつらしいですね」
「はいはい。まあ、頑張るよ」
従者の言葉を話半分で聞き流しつつ、ノアは真っ赤な薔薇の花束へと視線を落とす。
「喜んでくれると良いな」
愛しい人がこれを受け取ったときの反応を想像して、彼は穏やかに微笑んだ。
その日のノアは愛する人への花束を買いに、花屋を訪れていた。
今日夜は、晴れて再び婚約者となったモニカと食事をすることにもなっている。
尤も、夕食会と言っても、おそらくは彼女の手料理を彼女の部屋で食べるだけになるだろうが、致し方ない。
この国の第四皇女の立場はとても難しいから、食事すらも自分で作らねば生き延びることが出来ないのだ。
本当にひどい国だと思う。
王侯貴族は皆、何の罪もないモニカにはキツく当たるが、彼女の母親には特に何もしない。
それは彼女の母親である第二妃が国で権力を持つ複数の男の庇護下にあるからだ。
これを理不尽と言わずに何と言うのだろうか。
こんな環境で、よくモニカはここまで大きくなれたものだと、ノアは思う。
初めて会った時から彼女の味方は騎士のジャスパーだけだった。
今でこそ、社交会にある程度の伝手はできたようだが、一度だけ『寂しい』と彼女が涙を見せたあの時から、彼はどうにか守ってやらねばという使命感に駆られている。
だから約束したのだ。必ずここから連れ出してやると。
一度は約束を果たせるかも危なかったけれど、今回こそは必ず連れ出してみせる。
ノアはそう心に誓い、顔をグッと上げた。
「なんか立派なこと言ってますけど、花束一つ買えないほどの人見知りが偉そうなこと言うんじゃないって感じですね」
「うう…面目ない」
花屋の前で立ちすくむ主人に、従者は辛辣に言い放つ。
どうやら人見知りのノアは花屋に入れず、この従者に買ってきてもらったらしい。
呆れ顔の従者は『本当にだらしのない男だ』と深いため息をこぼし、大きな薔薇の花束と小さな霞草の花束を彼に差し出した。
それを受けとったノアは花の香りを嗅ぎ、口元を緩ませる。
「あんな可愛いお姫様貰うんだから、旦那様も立派な王子様にならねばなりませんよ?もう少しシャキッとしてください」
「わかってるよ…」
「そうだ。何なら本物の王子様を、見本にして真似てみるのはどうです?」
「見本って?皇太子殿下か?」
「あんな性格悪い人はダメですよ」
「君ね、そういう発言は外交問題になるから謹んでくれ…。ああ、胃が痛い」
「自分が言ってる王子様は、そう、例えばジャスパーさんみたいな人です」
「いやぁ、あれは王子様とは程遠いでしょ…」
見た目は王子だが中身は遊び人だ。
「いやいやいや、わかっていませんね。ああいう男は意外と一途で紳士だったりするんですよ。ジャスパーさんは絶対に、いざという時には頼れるカッコいい王子様だと思いますね」
「そういうものか?」
「そついうものです。娘がそう言ってました」
「何だ。娘の趣味か」
「ギャップってやつらしいですね」
「はいはい。まあ、頑張るよ」
従者の言葉を話半分で聞き流しつつ、ノアは真っ赤な薔薇の花束へと視線を落とす。
「喜んでくれると良いな」
愛しい人がこれを受け取ったときの反応を想像して、彼は穏やかに微笑んだ。
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