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第二部
23:取り乱す
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屋敷に帰ってきたジャスパーは急いで応接室へと向かった。
その最中、お茶を運ぶエリザと遭遇する。
「お、おかえりなさいませ。お兄様…」
先日、主人の暴挙を止められなかったことで叱責を受けたばかりのエリザは無意識に体をこわばらせた。
「…お前、なぜここにいる!?姫様は!?」
「なぜって、姫様とお客様にお茶を…。姫様は応接室ですが…」
まだ何か失敗したのだろうか。兄の声色は低く、少し冷たい。
あの商店街で暴漢と対峙した時のような殺気を纏う兄にエリザは肩を震わせる。
「チッ!」
「えぇ!?」
焦ったような顔つきで舌打ちしたジャスパーはエリザの横を通り過ぎ、再び廊下を駆けた。
やはり主人の側を離れてはいけなかったらしい。エリザはまた怒られると、青い顔をして兄の後を追う。
すると、応接室の前の警備が気まずそうに向かってくるジャスパーの方を見た。
「…な、何だ。その顔は」
「ジャスパー殿…。我々には判断致しかねます…」
「何が…」
警備の1人が首を横に振りながら応接室の扉を指差した。
何となく嫌な予感がするが、ジャスパーは応接室の音を拾おうと扉に耳を近づける。
明らかに盗み聞きのスタイルだ。
『だ、だめです…そんな…』
『良いではないですか、奥様…』
『でも、あっ…』
『ふふっ、かわいい』
『や、だ、だめっ…』
室内から聞こえる甘く艶のある声。
それから連想されるのは言わずもがな…である。
扉の向こうに広がるかもしれない秘密の花園に、踏み込む勇気が彼らにはないらしい。警備の二人は苦笑いを浮かべていた。
ジャスパーはゆっくりと扉から耳を離し、何かに血の気のひいた顔で妹の方を振り返る。
「いやいやいや。ないないない。ははっ…ははは」
「お、お兄様?」
首を傾げるエリザ。ジャスパーは不自然に笑みを浮かべながらも、もう一度扉に耳を近づけた。
しかし聞こえてくる会話はどことなくアダルトでインモラルな香りがする。
「あれだよ。どうせ、実はマッサージしてましたとかいうオチだよ。大丈夫だ」
「え?お兄様?どういうことですの?」
「大丈大丈夫。何もないって」
自分に言い聞かせるように、大丈夫だと連呼する。
そして彼は開けてはならぬ扉を開けた。
すると、そこに広がるのは妖艶な女がこの屋敷の女主人を組み敷いている光景だった。
*
一瞬、時が止まったかのように場が静まり返って約3秒。
時の流れを再開させたのはエリザだった。
運んできたティーセットを床に落とした彼女は叫ぶ。
「きゃああ!ひ、姫様?!」
エリザは顔面蒼白のままモニカに駆け寄ると、彼女を組み敷いていたオリビアを突き飛ばした。
「な、ななななななななぁ!?何をしてするのですか!?」
ぎゅっとモニカを抱きしめて、エリザは懐にしまってあった短剣をオリビアに突きつけた。
モニカはエリザの顔を見て安心したのか、はたまた流されかけていた自分に気づき我に帰ったのか、乱れていた衣服を急いで直す。
「あなた!公爵夫人にこんなことをして良いと思っているのですか!!」
ものすごい剣幕で怒り狂うエリザに、オリビアは素直に両手をあげて降参のポーズをとった。
「申し訳ございません。つい耐えきれず…」
テヘッっと舌を出して笑うオリビア。
申し訳ないなんてカケラも思っていない。
「か…か、かかか確保だ!確保!!!」
一方、エリザより遅れてようやく現実に戻ってきたジャスパーはすかさず、警備兵にオリビアの確保を命じる。
動揺しつつも、彼らは命じられるがままに、その妖艶で怪しい女の手首を縛った。
オリビアはムゥ、と不服そうに頬を膨らませているがそんなものは無視だ。
「ご、ご無事ですか!姫様!!」
モニカの前にひざまづいたジャスパーは、彼女のスカートを捲り色々と無事かを確認する。
「きゃあ!!何すんのよ!!」
「お兄様!?なな何をっ!?」
「何って、色々と無事かの確認です!」
「もうちょっとやり方ってものがあるでしょうが!!ばか!!」
突然スカートを捲り上げられたモニカは、無礼な騎士の頭を思い切り叩いた。
エリザはすかさず主人のスカートを正して、持っていた短剣を今度は兄の方へと向ける。
「お、お兄様!動揺しすぎですわ!」
「お前も動揺しすぎだろ。というか、この状況で落ち着けと言われても無理だ!」
「大丈夫よ、まだ何もしていないわ。少し首筋にキスマークをつけてあげただけよ」
「何ぃ!?」
オリビアの余計な深刻に、さらに取り乱したジャスパーはモニカの髪をかきあげてその首筋を確認する。
すると、彼女のいう通り、赤い鬱血痕がそこにあった。
「ぬぉぉおお!だから嫌だったんだよ!!」
「あああああ!姫様の純血が奪われましたわ!!」
「だから、何もしてないってば」
「ええい!やかましい!!全員鎮まれぃ!!」
取り乱すオーウェン兄妹に、それを見てケラケラ笑う娼婦。そして色々と状況についていけずに叫ぶ公爵夫人。
ジャスパーより遅れて駆けつけたノアは、応接室の惨状に首を傾げた。
「何があったんだ…?」
その最中、お茶を運ぶエリザと遭遇する。
「お、おかえりなさいませ。お兄様…」
先日、主人の暴挙を止められなかったことで叱責を受けたばかりのエリザは無意識に体をこわばらせた。
「…お前、なぜここにいる!?姫様は!?」
「なぜって、姫様とお客様にお茶を…。姫様は応接室ですが…」
まだ何か失敗したのだろうか。兄の声色は低く、少し冷たい。
あの商店街で暴漢と対峙した時のような殺気を纏う兄にエリザは肩を震わせる。
「チッ!」
「えぇ!?」
焦ったような顔つきで舌打ちしたジャスパーはエリザの横を通り過ぎ、再び廊下を駆けた。
やはり主人の側を離れてはいけなかったらしい。エリザはまた怒られると、青い顔をして兄の後を追う。
すると、応接室の前の警備が気まずそうに向かってくるジャスパーの方を見た。
「…な、何だ。その顔は」
「ジャスパー殿…。我々には判断致しかねます…」
「何が…」
警備の1人が首を横に振りながら応接室の扉を指差した。
何となく嫌な予感がするが、ジャスパーは応接室の音を拾おうと扉に耳を近づける。
明らかに盗み聞きのスタイルだ。
『だ、だめです…そんな…』
『良いではないですか、奥様…』
『でも、あっ…』
『ふふっ、かわいい』
『や、だ、だめっ…』
室内から聞こえる甘く艶のある声。
それから連想されるのは言わずもがな…である。
扉の向こうに広がるかもしれない秘密の花園に、踏み込む勇気が彼らにはないらしい。警備の二人は苦笑いを浮かべていた。
ジャスパーはゆっくりと扉から耳を離し、何かに血の気のひいた顔で妹の方を振り返る。
「いやいやいや。ないないない。ははっ…ははは」
「お、お兄様?」
首を傾げるエリザ。ジャスパーは不自然に笑みを浮かべながらも、もう一度扉に耳を近づけた。
しかし聞こえてくる会話はどことなくアダルトでインモラルな香りがする。
「あれだよ。どうせ、実はマッサージしてましたとかいうオチだよ。大丈夫だ」
「え?お兄様?どういうことですの?」
「大丈大丈夫。何もないって」
自分に言い聞かせるように、大丈夫だと連呼する。
そして彼は開けてはならぬ扉を開けた。
すると、そこに広がるのは妖艶な女がこの屋敷の女主人を組み敷いている光景だった。
*
一瞬、時が止まったかのように場が静まり返って約3秒。
時の流れを再開させたのはエリザだった。
運んできたティーセットを床に落とした彼女は叫ぶ。
「きゃああ!ひ、姫様?!」
エリザは顔面蒼白のままモニカに駆け寄ると、彼女を組み敷いていたオリビアを突き飛ばした。
「な、ななななななななぁ!?何をしてするのですか!?」
ぎゅっとモニカを抱きしめて、エリザは懐にしまってあった短剣をオリビアに突きつけた。
モニカはエリザの顔を見て安心したのか、はたまた流されかけていた自分に気づき我に帰ったのか、乱れていた衣服を急いで直す。
「あなた!公爵夫人にこんなことをして良いと思っているのですか!!」
ものすごい剣幕で怒り狂うエリザに、オリビアは素直に両手をあげて降参のポーズをとった。
「申し訳ございません。つい耐えきれず…」
テヘッっと舌を出して笑うオリビア。
申し訳ないなんてカケラも思っていない。
「か…か、かかか確保だ!確保!!!」
一方、エリザより遅れてようやく現実に戻ってきたジャスパーはすかさず、警備兵にオリビアの確保を命じる。
動揺しつつも、彼らは命じられるがままに、その妖艶で怪しい女の手首を縛った。
オリビアはムゥ、と不服そうに頬を膨らませているがそんなものは無視だ。
「ご、ご無事ですか!姫様!!」
モニカの前にひざまづいたジャスパーは、彼女のスカートを捲り色々と無事かを確認する。
「きゃあ!!何すんのよ!!」
「お兄様!?なな何をっ!?」
「何って、色々と無事かの確認です!」
「もうちょっとやり方ってものがあるでしょうが!!ばか!!」
突然スカートを捲り上げられたモニカは、無礼な騎士の頭を思い切り叩いた。
エリザはすかさず主人のスカートを正して、持っていた短剣を今度は兄の方へと向ける。
「お、お兄様!動揺しすぎですわ!」
「お前も動揺しすぎだろ。というか、この状況で落ち着けと言われても無理だ!」
「大丈夫よ、まだ何もしていないわ。少し首筋にキスマークをつけてあげただけよ」
「何ぃ!?」
オリビアの余計な深刻に、さらに取り乱したジャスパーはモニカの髪をかきあげてその首筋を確認する。
すると、彼女のいう通り、赤い鬱血痕がそこにあった。
「ぬぉぉおお!だから嫌だったんだよ!!」
「あああああ!姫様の純血が奪われましたわ!!」
「だから、何もしてないってば」
「ええい!やかましい!!全員鎮まれぃ!!」
取り乱すオーウェン兄妹に、それを見てケラケラ笑う娼婦。そして色々と状況についていけずに叫ぶ公爵夫人。
ジャスパーより遅れて駆けつけたノアは、応接室の惨状に首を傾げた。
「何があったんだ…?」
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