【完結】妹など、断じて好きじゃない

七瀬菜々

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4:義理系妹

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 しかしながら、現実リアルの妹は本当に兄に対する敬意などカケラも持ち合わせていない。
 何が悲しくて『妹が複数人の血の繋がらない兄を攻略する乙女ゲーム』などやらねばならんのだ。せめて逆にしてほしい。
 いや、それはそれで妹がいる身としてはやりづらい気もするが。
 大体、こんな逆ハーレムが現実にあれば、家庭の中でド修羅場じゃないか。
 家庭内に不和を持ち込む義妹など、俺は断じて認めない。


 血の繋がらない妹で思い出したが、アレは最悪だ。良くある義理系の妹。 
 例えば、両親の再婚とかで、ある日突然兄妹になるやつ。
 定番の展開では、義理だからと安易に恋愛関係に発展するが、そんなもの現実にはほぼあり得ない。

 例えば子供が小さい時に再婚してってパターンの場合、小さい頃から本当の兄妹として育てられたのならば、大体は互いに恋愛感情など持たないだろう。知らんけど。

 漫画とかでは、たまに我が家のような妙齢の子どもを持つ親が、自分の子どもとは異なる性別の子がいる相手と再婚するなんてケースがある。だが、その場合、現実ではどちらかが成人するまで再婚を待つことが多いのではないだろうか。

 もちろん息子としても親の恋は応援したいと思っている。親だって恋愛するのは自由だ。
 だからこそ、当時卒業を控えた大学生だった俺は親の再婚を機に家を出た。
 流石に今更よく知りもしない女性と同居はできないからな。


 しかし、そうしたら何故か義妹が「一緒に住みたい」と泣きついてきた。

 なぜだ。

 16才の花の女子高生にとって22の大学生とかオッサンだろ?義妹が嫌がるだろうと思って家を出ると言ったのに、何故そんなオッサンを引き止める?
 理由はわからんが、俺は月に一度は実家に帰る事を約束して、なんとか俺は同居を回避した。

 世の中の少女漫画の義兄諸君はその辺がなっていない。
 息子としては親の恋愛を守るためにも、義妹と一線を越えるなどあってはならないのだ。いくら義妹が可愛かろうと、徹底的に線を引くべきだ。
 よく聞きたまえ、二次元の義兄諸君。
 いくら妹が攻めてこようとも断固として拒否しろ。拒絶しろ。決して絆されるな。
 これは兄としてと言うより、人としての義務だ。


 見ろ、俺を。 
 義妹だろうと毅然とした態度で接することができる。 

「着いたぞ。駅」
「お兄ちゃん。今日の晩御飯何?」
「母さんに聞けよ」
「え、お義母さんが今日はお父さんとデートだって言ってたけど」
「まじかよ、聞いてねーよ」
「ついでだから朝帰りを勧めておいた」
「生々しいんだよ。余計なことすんな」
「ねえ、お兄ちゃん。今日の夜は二人きりだよ?」
「…だから何だよ」


 義妹がシートベルトを外し、顔を近づけてくる。
 そして、耳元で囁く。

「手、出しても良いよ?」



 義妹は、若さゆえに周りが見えていない。
 だから義兄に恋などするのだ。

 こいつは一目惚れだと言うが、一目惚れされるほどの容姿ではないことなど俺が一番よく知っている。
 もしかしたら、今はちょっと大人な男が格好よく見える年頃なのかもしれない。
 今の義妹の目は少し曇っているのだ。
 年齢を重ねれば、色んなものが見えてくるようになる。
 例えば大学に進学したり、就職したりして、関わる人間が変わると、世界の見え方も変わる。そのうち、義兄の存在など気にも留めなくなる。
 いつしか、義兄に恋をしていたことなど、ただの黒歴史となる。


 俺は義妹が可愛い。幸せになって欲しいと思ってる。だから決して絆されない。

 義妹がこんな血迷ったことを言うのは今だけだ。

 だから俺は言う。

義妹お前など断じて好きじゃない」

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