11 / 45
「始まり、そして旅立ち」1
ミシェル10
しおりを挟む
ニッシュに告白された後、夏休み中のある日の学校でレイピア術部の練習をしている時のことだった。
レイピア術はレイピア術発祥後、過去の対戦が終わるまでは、当時、屋外でも行なわれてきたようだけれど、現代では主にレイピア術専用の武術館、もしくは武術やスポーツなどをする体育館などで行なわれる。私の家の武術館は何度か修繕が行なわれているけれど、百八十年以上の歴史のある武術館で、実用性も高く、代々私の家に伝い受け継がれてきた。
私のいた中等学校と高等学校のレイピア術部でも、先輩たちから伝わる歴史や伝統もあり、今でもなかなかに強い生徒が多いので、普通の学校では稀有なことに立派な武術館が建てられている。
レイピア術の武術館は、快適性や通気性のために、主に木造で建てられることが多い。私の家の武術館もほとんどが木で出来ていて、修繕で補強された合成素材や金属なども使われている。
中等学校と高等学校の武術館は、私の住んでいるシティーからの助成金でほぼ同時期に建てられていて、どちらもなかなかに新しい。でも、新しいから木材の他に合成素材や金属がふんだんに使われている。建築工法も最新で、木材で培われる快適性はもちろん、耐久性や耐震性も抜群で、建てられて以来まだ一度も修繕をしていない。
私の家の武術館は柱にとても太く大きな立派な木が使われていて、武術館を温かく、華やかに彩っている。私は、木がたくさん使われた武術館が好きだな。
「ニッシュ……」
その学校での武術館で、私はニッシュにちょっと聞きたいことがあって、レイピア術部の練習が終わった後にニッシュを呼び止めた。
「え?なんだい、ミシェル?」
ニッシュは急な問いかけに少し戸惑っていたけれど、真っ直ぐ私を見ていた。
「ニッシュは、どうして私に告白してくれたの?私のどこが好きになったの?」
「……ミシェル………」
ニッシュは私の名を呼ぶと、練習で使い終わった、壁にかけてあるレイピアをそっと手に取り私に話しかけてきた。
「―――レイピア、もともとは金属製が主流だったらしいけど、現代では木製が一般的な試合で使われるよな……俺は、アウバで出来たレイピアが好きだ」
―――現代において、厳密には槍であるレイピアは、レイピア術が興った当初は槍か刀剣かあいまいだったようで、だからこそ槍術と剣術が融合したレイピア術が生まれた。レイピアは当時、戦いに使うことを目的とするため、主に鉄や銀などの金属で作られていたようだけれど、練習用や決闘での試合用に使うため。それに斬ったり、刺したりするほかに、剣術の流れから槍術としての流れを汲むレイピア術ならではの打撃や、相手を突き飛ばすほどの威力の突きを放つため、木材でのレイピアが考案された。
木製のレイピアに使われる木は主に、アウバという、しなやかで伸縮性が高く、それでいて強靭で耐久性にも優れている木が使われている。長く木製のレイピアを研究された結果、アウバに白羽の矢が立った……という話を、私は幼い頃父から聞いた。
アウバは、建築用の木材としても優れている。私の家の武術館の柱にも、アウバが使われている。しかし、アウバの森は近年、乱暴とも言える伐採によって減少していて、アウバで作られるレイピアや建築物は高騰を続けている。それでもアウバはその質感と実用性から、今でも愛好者が数えきれないほどいるのだ。
「―――私も、アウバの木で出来た、しなやかで力強いレイピアが好きだな」
「そうだな―――ミシェル、中等学校のときのこと、三年の、二校対抗試合があった日のことを覚えてる?俺が初めて中将を務めたときのことなんだけれど……」
「ニッシュが初めて中将に………ああ!あのときの!!ニッシュは苦戦したけれど、相手の突きをすごく上手にかわして……」
「そう、その時の!俺、あのとき初めて自分が〈よく出来た!〉って思えたんだ」
「そう、そうよね……ニッシュあの時、その試合のことすごく喜んでた」
「その時の打ち上げのことを、ちょっと思い出してほしいんだけれど」
「あの時の打ち上げ……」
レイピア術はレイピア術発祥後、過去の対戦が終わるまでは、当時、屋外でも行なわれてきたようだけれど、現代では主にレイピア術専用の武術館、もしくは武術やスポーツなどをする体育館などで行なわれる。私の家の武術館は何度か修繕が行なわれているけれど、百八十年以上の歴史のある武術館で、実用性も高く、代々私の家に伝い受け継がれてきた。
私のいた中等学校と高等学校のレイピア術部でも、先輩たちから伝わる歴史や伝統もあり、今でもなかなかに強い生徒が多いので、普通の学校では稀有なことに立派な武術館が建てられている。
レイピア術の武術館は、快適性や通気性のために、主に木造で建てられることが多い。私の家の武術館もほとんどが木で出来ていて、修繕で補強された合成素材や金属なども使われている。
中等学校と高等学校の武術館は、私の住んでいるシティーからの助成金でほぼ同時期に建てられていて、どちらもなかなかに新しい。でも、新しいから木材の他に合成素材や金属がふんだんに使われている。建築工法も最新で、木材で培われる快適性はもちろん、耐久性や耐震性も抜群で、建てられて以来まだ一度も修繕をしていない。
私の家の武術館は柱にとても太く大きな立派な木が使われていて、武術館を温かく、華やかに彩っている。私は、木がたくさん使われた武術館が好きだな。
「ニッシュ……」
その学校での武術館で、私はニッシュにちょっと聞きたいことがあって、レイピア術部の練習が終わった後にニッシュを呼び止めた。
「え?なんだい、ミシェル?」
ニッシュは急な問いかけに少し戸惑っていたけれど、真っ直ぐ私を見ていた。
「ニッシュは、どうして私に告白してくれたの?私のどこが好きになったの?」
「……ミシェル………」
ニッシュは私の名を呼ぶと、練習で使い終わった、壁にかけてあるレイピアをそっと手に取り私に話しかけてきた。
「―――レイピア、もともとは金属製が主流だったらしいけど、現代では木製が一般的な試合で使われるよな……俺は、アウバで出来たレイピアが好きだ」
―――現代において、厳密には槍であるレイピアは、レイピア術が興った当初は槍か刀剣かあいまいだったようで、だからこそ槍術と剣術が融合したレイピア術が生まれた。レイピアは当時、戦いに使うことを目的とするため、主に鉄や銀などの金属で作られていたようだけれど、練習用や決闘での試合用に使うため。それに斬ったり、刺したりするほかに、剣術の流れから槍術としての流れを汲むレイピア術ならではの打撃や、相手を突き飛ばすほどの威力の突きを放つため、木材でのレイピアが考案された。
木製のレイピアに使われる木は主に、アウバという、しなやかで伸縮性が高く、それでいて強靭で耐久性にも優れている木が使われている。長く木製のレイピアを研究された結果、アウバに白羽の矢が立った……という話を、私は幼い頃父から聞いた。
アウバは、建築用の木材としても優れている。私の家の武術館の柱にも、アウバが使われている。しかし、アウバの森は近年、乱暴とも言える伐採によって減少していて、アウバで作られるレイピアや建築物は高騰を続けている。それでもアウバはその質感と実用性から、今でも愛好者が数えきれないほどいるのだ。
「―――私も、アウバの木で出来た、しなやかで力強いレイピアが好きだな」
「そうだな―――ミシェル、中等学校のときのこと、三年の、二校対抗試合があった日のことを覚えてる?俺が初めて中将を務めたときのことなんだけれど……」
「ニッシュが初めて中将に………ああ!あのときの!!ニッシュは苦戦したけれど、相手の突きをすごく上手にかわして……」
「そう、その時の!俺、あのとき初めて自分が〈よく出来た!〉って思えたんだ」
「そう、そうよね……ニッシュあの時、その試合のことすごく喜んでた」
「その時の打ち上げのことを、ちょっと思い出してほしいんだけれど」
「あの時の打ち上げ……」
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる