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「始まり、そして旅立ち」1
襲撃1
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「ミシェル、走るぞ!」
「――!!うん!」
二人は堪らず、男達の尾行から逃れる為に走り出した。後ろからは、「追え!」とか「逃げたぞ!」とか叫ぶ声が聞こえる。
「――逃げたぞって……あの人達、やっぱり私達を尾行してたのね」
「うん――みたいだ。でも、何の為に?俺達まだ高等学校生なのに……」
二人は会話しながら懸命に走った。しかし、後ろの男達もなかなか足が速く離れてゆかない。二人はさらに速く走ろうとスピードを上げるが、後ろの男達も速くなったのが分かると、苦しそうだが懸命に足を動かし追ってくる。
「――!!ニッシュ、このままじゃ追いつかれちゃう」
「――っ、くそっ!――!!ミシェル、こっち!」
大通りを走っていた二人はウィングエッジの商店街に近づいてきた。街並みが変わり、二人は脇の小路に沿って逃げ出した。後ろからは「路地に逃げたぞ!」「そっちだ、追え!」という声が聞こえてくる。二人は息もつかぬままに走る。
「まだ振り切れないわ!」
「――くそっ!じゃあこっち」
ニッシュは焦りながら急いで路地を曲がった。しかし、そこは、
「――!!行き止まり!?」
「――くそっ!すぐに戻って、走るぞ!」
二人は反転して駆け出した。しかし、路地を曲がったその時、
「――きゃっ!」
ミシェルは先頭を走っていた男達の一人にぶつかり転びそうになった。幸いなことに男は不意を突かれミシェルに肩からぶつかった瞬間に右足を地面の石畳の間に挟み、大げさに転んで顔を地面に打ち付けた。
「ミシェル!」
「私は大丈夫よ!すぐに走る!」
言うが早いかミシェルはすぐに走り出した。倒れた男は「いてててて」と呻いている。仲間の男の一人が追いついてきて「大丈夫か?」と訊ねるが、
「いたぞ!あの娘だ!――そんな奴の事はいい!すぐに追うんだ!」
男達のリーダーらしき男が、少女を追えと叫ぶ。
「――!!あの人達、私を追って!?」
「――くそっ、ますます捕まる訳にはいかないな!――!!ミシェル、こっち!こうなったら!」
ニッシュが今日何度目かの悪態を吐いた。そして何かに気づいた様にして道を選びミシェルを促した。
「ニッシュ!大丈夫!?」
「ああ!この辺は見覚えがあるんだ!――あいつらしつこい!ミシェルを追ってるようだし、このままじゃレストランに入っても中まで追ってくるだろう!――ミシェル、こうなったら――戦おう!」
「えっ!?戦うって?」
「俺に考えがあるんだ!――よし、そこだ!ミシェル、そろそろ走らなくていいよ!」
ニッシュは路地を曲がると走るのをやめた。ミシェルはここの風景に見覚えがある事に気付き、
「――ここは!リルクントン材木店!――えっ!!じゃあ戦うって!?」
「そうだ!ここにアウバでできたウッドレイピアがあったろう!あれで戦うんだよ!」
「でも、そんな!警察に行くとか、誰かの家に逃げ込むとか……それに、実戦でレイピア術を使うなんて……」
「警察署はここから遠いし、誰かの家に逃げ込むのも心配だ!あいつら仲間が怪我しても構わずに追ってくる!ただの物取りや強盗じゃない!誰かの家に逃げ込んでも、きっと構わず追ってくる!……それにミシェルを狙ってるようだし……、――たしか店の中だけじゃなくて外にも……、――あった!ウッドレイピア!ミシェルの分もある!非常事態だ!借りよう!」
ニッシュは物置にあったレイピアを二つ取り出すと、ミシェルにも「ほら!」と一つ手渡した。
「そんな、ニッシュ……でも……」
「大丈夫!俺はともかくミシェルの腕ならあんなやつらやっつけられるよ!複数戦もやった事あるだろう!」
「まぁ……そうだけれど、」
ニッシュの「戦おう!」という発言に、ミシェルは迷った。しかし、
「いたぞ!ここだ!」
男達が追いついてきた。一人、また一人とやってくる。
「迷ってる暇は、――ない!」
「――もう!、やるしか、ないわね!」
ミシェルは腹を決め、ニッシュと共にレイピアを男達に向かって構えた。
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