恋する魔法のエトセトラ さくらドロップス

ノリック

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タイムスリップ

大学生へ

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 時間の海を越えて、私は気付くと振り袖姿で、二十歳の成人式会場に居た。側には牡丹も振り袖姿で立っていた。

「いよいよ私達も成人式ね。大人として自覚していかなきゃね」

 牡丹が成人しての想いを告げる。「そうね」と私は返事をして(今回こそ、春楓に振り向いてもらうんだから)と意気込んでいた。そこへ、春楓も成人式会場に現れた。

「さくら、久しぶり」

「――春楓」

 大人になった、大学生の春楓がそこに居た。すっかり顔立ちが大人になっている。私は大人の春楓を見て、胸がキュッと鳴るのを感じて、その場に立っていた。



 成人式が行われた。晴れの二十歳の舞台に、再び立った私はなんだかまた大人になっていく自分を意識しながら、不思議な感覚の成人式に臨む。

 成人式後、二次会会場。牡丹が私に話しかけてきた。

「ところで、さくら。春楓とは、どうなってるの?」

 私が春楓を好きな事を感づいている牡丹は、私と春楓の仲を探ってきた。私は、牡丹にタイムスリップの事は伏せて、春楓と五年置きに街の公園で会い、高校生の時も会っていた事、春楓に三度告白した事、春楓の答えがちぐはぐな事などを答えた。

「う~ん、それは脈がありそうで、なさそうで……不思議な感じね……さくら、こうなったら……」

 牡丹はそこまで言って、再び息を吐いてこう言った。

「春楓と、成人式の今日とか一夜を共にしたらいいんじゃない?」

「えっ!?牡丹!それって春楓と!?」

 驚いて聞く私に、牡丹はこう告げる。

「そう、春楓に、抱いてもらうって事」

 牡丹のその発言にちょっと驚いた私は、「それで付き合う既成事実を作るのよ」と更に告げる牡丹に驚きながらも、(そうね、その位しなきゃ駄目かもね……)と思い、牡丹の提案に乗ろうかと思う。



 二次会後、春楓が私に話しかけてきた。

 俺の名前、大切に付けられたんだな。という春楓に、私の名前も、大切に付けられた名前なんだ、と話した。一度自分の人生でした記憶の話を、もう一度している事に不思議でいても、今進行している現実だと捉えている時間は過ぎていく。確実に。

「ところで、さくら、五年置きに街の公園で四月五日に会うって約束、覚えてる?」

 春楓が約束の言葉を口にする。私は「うん」とだけ答える。

「今年も、街の公園で四月五日に会いたいんだ。……それまで暫く会えないかもだけど、いいかな?」

 私はまた「うん」と答えた。そして、私は牡丹と話した事を思い出していた。

「春楓と、成人式の今日とか一夜を共にしたらいいんじゃない?」

 牡丹の発言を考えて、どうしようかと思いながらも、私はそれを実行する。二度目の人生、構ってなどいられない。

「春楓、ところで……今夜、私と一緒に居ない?」

 その私の発言に、春楓は顔を真っ赤にして「それって!?」と驚いてみせる。春楓はビックリして、こう答えた。

「す、凄く嬉しいんだけど、さくらとは、時が来たら……」

 そして春楓は答えをハッキリ言わない。私はもうこれでもか、と思いの丈をぶつける。

「春楓、お願い!私、春楓の事が好き!」

「さくら、それは……」

そう言うと、春楓は「じゃあ、さくら、四月五日、街の公園で」と告げて行ってしまった。私はポカーンとしてその場に立っていて、我に返ると牡丹にLINEした。



さくら 牡丹~。春楓に今夜、私と一緒に居ない?って聞いたら、なんだかはぐらかされた感じで……どうしよう……



牡丹 ああ、やっちゃたかな……



さくら どうしよう~。四月五日に街の公園で会う約束はしたんだけれど……



牡丹 そう。元気出して、それなら、まだイケるかもしれないじゃない。春楓が好きなんでしょ?



さくら うん、また好きっても言ったわ



牡丹 そうなんだ。元気出して!



牡丹とそのやり取りをしていて、ちょっと勇気付けられた。二十歳の牡丹だが私より、大人なのかもしれない。



 そして私は二次会会場近くの桜の前を歩いていた。すると、光が瞬いてその場には桜の妖精さん、キュリオネールが姿を現す。

「さくらちゃん、さくらちゃん」

「桜の妖精さん、何で今」

 桜の妖精さんはあたふたとこう私に告げる。

「さくらちゃんの時間軸の調整で、時が巡るよ。春楓君と二十歳に会う、四月五日の街の公園に」

 私は「でも何故?今?」と桜の妖精さんに聞く。桜の妖精さんはこう私に告げた。

「さくらちゃんの時間の都合、さくらちゃんの時だからだよ」

 私は「そうなのね」と取り敢えず受け入れて、桜の妖精さんに答える。桜の妖精さん、キュリオネールが「行くよ~」と告げると、ビュ~ンと身体が宙に浮いて、私は時間の海を飛んでいく。



気付くと私は街の公園に居た。街の公園の桜は満開で、春の陽気と桜のピンク色の空気が暖かく、清々しく感じられる。スマホを見ると四月五日、午後二時前だった。LINEを確認すると春楓から二十歳の四月五日に会おうと連絡が入っていた。

(春楓は、まだ来ていないわね……)

 私は春楓を待つ。

 午後二時頃、春楓がやってきた。あの子を連れて。

(――楓……)

 やはり楓を連れている。春楓は、楓を公園の隅に置いて、街の公園の一番大きな桜の前のベンチに来て、私に話しかけてきた。

「やぁ、さくら。久しぶり」

「――春楓」

 私は春楓にずっと抱えている疑問をぶつける。何故?何故?って。

「春楓、高校生の時もだけど、どうして楓を連れてくるの?何故?」

 春楓は私にこう告げる。

「それは、楓には世話になってるから」

「世話になってるっていうのは、どういう事?教えて、春楓」

 春楓は「それは……」と言うと、口ごもってしまう。私はまた、再び春楓に想いを告げる。

「私、春楓の事が好き!大好き!私じゃ、駄目?」

 春楓は私の想いを聞くと、しゃにむになって私にこう告げた。

「五年後、さくらに必ず俺の想いを言うよ!だから、今は、まだ……」

「――春楓」

 春楓はそう言ってその場を離れ、行ってしまった。私は何度目かの告白の後、その場に佇み、思いの丈を何処にぶつければいいのかと途方に暮れかける。



「さくらちゃん、さくらちゃん」

 桜の妖精さん、キュリオネールが街の公園の一番大きな桜の前で空を舞い、飛んでいた。

「さくらちゃん、時間旅行の旅を終えて、現在いまに戻るよ」

 桜の妖精さんのその言葉に、私は哀願する様に聞き返す。

「桜の妖精さん、私、上手く出来たかな?時間旅行して良かったかな?」

 桜の妖精さんはニコニコ笑顔でいつもいる。そして私にこう答えた。

「さくらちゃんなら、大丈夫、きっと春楓君と上手くいくよ」

 桜の妖精さんにそう言われ、私は「そうなのね」と心にちょっとだけ暖かみを覚える。

「じゃあ、さくらちゃん、現在いまに、戻るよ!」

「うん」

 そうして、私はへその辺りがギュンと鳴ると、私の元居た時間軸、現在いまに向かって、時間の海を越えていく。
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