ある日の出来事-THE NANAKO'S STORY-

まっく

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5章

馬鹿にすんなよ!

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く、臭い。

そりゃマンホールの中だもんな……


暗い地下道を、爺さんの背中を頼りに付いて行く。
幸い爺さんの服が白なんで、わかりやすい。


2人の足音しかしない、真っ暗な空間……

なんか気持ち悪い。



「あ、あの~……」

恐る恐る声をかけてみる。

「もうすぐ着くから……」


何とか臭いには慣れたんだけど、余りにも気味が悪過ぎる。

大体、お前は誰なんだよ…?

俺を助けてくれたのはわかるけど、何で白衣の爺さんが銃を持ってんだ?

しかも、マンホールの中って……?



「さあ着いたぞ!」

着いたって言われても、相変わらずの真っ暗な地下道……


よく見ると、壁にちっちゃな扉が1つ……


爺さんがロッカーみたいな扉を開ける。


なんだぁ~!
ここは……???



明るい…
明る過ぎる……

照明の明かりが目をさす。

さっきまで暗闇にいたせいで、余計にも思っちまう。


それよりも、なんだこの部屋……?

理科の実験室……
いや、まるでちっちゃな研究室みたいだ。



「いつまでも、そこに立ってないで、こっちに座ったらどうじゃ?」

キョロキョロしながら、部屋の真ん中にある、大きな机のそばの椅子に座る。


「さっきは大変じゃったのう。」

「は…?……あ、はい…」

落ち着け、落ち着け……
…って、落ち着いてる状況じゃね~だろ!


「でもなんでお嬢さんは、ブラックスーツたちに追われてたんじゃ?」

また出たよ……
ブラックスーツ……

「それって、ひょっとしてさっきの黒い2人組の事…?」

「2人組…?ああ、そのブラックスーツたちの事じゃよ。」

あの2人、ブラックスーツって名前なのか……
それって、コンビ名なのか、それともユニット……

最近テレビとか見てないんで、わかんないぞ……

「レッドカードを持って無かったのかい?」

レッドカード……

確かあのコンビも言ってたな。

なんだよそれ?

「あの~…さっきのコンビにも言われたんですけど、そのレッドカードって何なんですか?」

「な、なにぃーーー!!!」

突然大声を出す爺さん。

あれ? 俺、何か変な事言ったか……?

「あんた、ひょとして……いやいや、そんな事はあり得ない……」

どうしたんだ?
顔色が悪いぜ……


何やら小さな声で、下を向いたまま、ブツブツ繰り返す。

おいおい!すごい汗だぞ!
ホントに大丈夫か……?


「あんまり聞きたくないんじゃが…」

しばらく床と会話していた爺さんが、やっとこっちを向いて話し始めた。

「あんたは、どこの国から来たんじゃ?」

どこの国……?
何言ってんだ、このじじい!

「どこの国って……?」

不思議の国から来ました~♪…とでも、言ってやろうか。


「国、国じゃよ。日本とかアメリカとか……馬鹿な質問だと思うが真剣に答えてくれ。」

…ったく!
この顔が、外国人にでも見えるのかい?
初めてこんな事言われたよ……

ふぅ~…

「バリバリの日本人ですけど……!」

ちょっとキレ気味に答える。


「なぁ~にぃぃぃ~!日本だってぇ~!?」


ビックリしたぁ~!!!
さっきよりさらにデカイ声。

おい!じじい!
いい加減にしないと、本気で怒るぞ!

俺のどこが外国人に見えんだよ!!!


何故か相当ショックを受けたらしく、ブツブツ言いながら、部屋中をさまよい始めやがった。

おい!
何か変な物でも食ったんじゃねーか?
動きが変だぞ!



「あ、あの~………」

ダメだ…
まったく聞こえちゃいない。



俺ってそんなに日本人に見えないか…?

確かに、外国人みたいって言われると、ちょっとだけ嬉しいけどな。

でも髪は黒いし、背もそんなに高くないし……




お~い!

お~い!ったら……


いい加減、俺を1人にするのは止めてくれないか?


「落ち着いて下さい!」

しょうがないんで、爺さんの両腕を握り締め、動きを止めた。

いつまで部屋をグルグル回ってんだよ!
お前は、ハム太郎か……?


「はぁはぁ……」

爺さん、いい加減にしないと心臓が止まっちまうぞ。

「わ、悪かった…取り乱して……」

「とにかく落ち着いて下さい!意味がさっぱりわからないんですけど……?」

「……はぁはぁ……あまりにもショックじゃったもんで……」

はぁ~?
何で俺が日本人なのがショックなんだよ?

「そんなに日本人に見えませんか?」

「ち、違う違う……その事じゃないんじゃ……」

?????

「わしの言ってるのは、あんたがどこから来たかって言うのが問題なんじゃ……」

……???

さらに意味不明……

アメリカ帰りの帰国子女にでも見えるのか…?

「さっきも言ったけど、私、バリバリの日本人なんですけど…英語なんてまったく喋れないし……」

「だから違うんじゃ。わしの言ってるのは、あんたが日本から来たって言うのが問題なんであって……」

このじじい、ボケてんのか!
いい加減腹が立ってきた!

「何度も言いますけど、私は日本人で日本に住んでいて……」

「ちょ!落ち着いてくれ!何で怒ってるんじゃ?」

あったり前だろ~が!
訳のわからない事を、何回もグチグチ言いやがって……

「そりゃ、誰だって怒るだろ……いや、怒るでしょう?何回も何回も同じ事を言いやがって……」

ヤバい!
キレそうだ……

「ちょっと待ってくれ!今からちゃんと説明するから……」

「説明…?何の説明なんですか!」

「落ち着いて聞いてもらいたいんじゃが…」

落ち着けだと?
てめ~が怒らせてんだろ~が!

「もう一回確認するが、あんたは確かに日本から来たんじゃな?」

「だから、俺…いや、私が日本人だったら何か問題……」

「だから落ち着いて聞くんじゃ!日本なんじゃな?」

目を見開いて、大きな声で聞いてくる爺さんに、ちょっと圧倒されちまう。

な、何でそんな顔で聞いてくるんだ…?

「……ああ、間違いないよ」

「あのな、驚かないで欲しいんじゃが……」

早く言えよ!

さっきからの滅茶苦茶な展開……
もう何を聞いても、少々の事じゃ驚かないぜ……

「今、わしたちがいるところ…つまりここじゃが、ここは日本ではないんじゃ。」

はぁ~…?


ブチブチブチ……


さすがにキレた!!!


「おいこら、じじい!何言ってんだよ!ここは俺の住んでる町じゃね~かよ!」

「そう見えるが違うんじゃよ。」

「何が違うんだよ!さっきまで町にいただろうが!どう見たって俺の住んでる町……」

「町とかじゃなく、世界が違うんじゃよ。」

「なんだよ?その世界って?」

「あんたのいた世界は、何次元じゃ?」

なんだ、その質問…?

次元……???

「なんだよ?その次元って……」

「正確には次元空間の事なんじゃが……」

……ん?
何か聞いた事があるぞ……

なんだったっけ……

「アインシュタインの特殊相対性理論でいくと……」

アインシュタイン…?

あ!思い出した!
ドラえもんで出てきた奴だ!

「確か3次元だったような…」

「やっぱり3次元空間じゃったか……」

何だよその反応。

「3次元だったらいけないのかよ!」

「違う違う……ここが3次元空間じゃったら良かったんじゃが……」

何だよ!
その良かったってのは…?

「まるでここが3次元じゃないような言い方するじゃね~かよ!」

「そうなんじゃ……残念じゃがその通りなんじゃ。」

「じゃあここはどこなんだよ!!!」



「ここは7次元空間なんじゃよ。」



……………!!!



「じじい、馬鹿にすんなよ!!!」

俺は部屋を飛び出した。

「ちょ、ちょっと待つんじゃ!!!」

待てね~よ!

いつまでも、こんなじじいの馬鹿話を聞いてられっか!

「待て!待てったら……」



走って追ってくるじじい。

もうホントに訳がわからない……

捕まりそうになるわ、変なじじいに出会っちまうわ……



……ん? で、どっちだ???

地下道が分岐している。

さっきは、じじいの背中ばっかり見てたから、わかんね~ぞ……



どっちだ……?



「……はぁはぁ……やっと追いついた……」

追い付かれちまった。

もうお前の顔なんか見たくねーんだよ!

「あんたが信じられないのも無理は無い……わしだって、いきなりこんな話しをされたら、絶対信じないしな……」

はぁ~???
お前が言い出したんだろ~が!

「信じる信じないの問題じゃなくて、言ってる事がメチャクチャだろ~が!」

「でも真実なんじゃ!」

「もういいから、早く出口を教えてくれ!」

腹が立つのを通り越して、ちょっとこの爺さんが怖くなってきた……

「どうしても行くって言うんじゃな?」

「ああ…」

「まあ自分の目で確かめるのも良いじゃろう。じゃがな、さっきのせいで外はブラック…いや、黒い服の男たちでいっぱいなはずじゃ。くれぐれも気を付けるんじゃぞ!」

頼む!早く出口を教えてくれ!

「それから、困った時はいつでもここに戻って来なさい。」

もう戻って来る訳ないだろ!
お前の顔なんか二度と見たくねーよ!

「さあ出口はこっちじゃ…」

俺は足早に出口へと急いだ。
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