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7章
また地下道…
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「おかえり♪」
おかえり… じゃねーよ。
何でだよ……
何でまた、ここに戻って来ちまったんだよ。
「いやぁ~…勝手に後を付けさせて貰って悪かったのう。」
爺さんの横で、申し訳なさそうな顔をする黒い服の兄ちゃん。
「でも後を付けさせて正解じゃった。」
兄ちゃん、そんなにペコペコ頭を下げなくてもいいよ。
「そろそろ機嫌を直してくれても良いんじゃ…」
バンッ!
怒りで机を叩く俺。
「一体何なんだよ!あんたらは!!!」
思わず大声になっちまう。
「勝手に俺を付けて来やがって…!」
「でも結果、助かったんじゃないのかな…?」
「確かに助けてもらったけど…」
何だよ!
その自慢げな顔は…!
「大体、何で俺が追われなくちゃいけないんだよ!母ちゃんにも襲われちまうし……」
母ちゃん。
思い出したくもない…
「まあまあ、落ち着いて座って……」
兄ちゃんに肩を押さえられて座らされる。
「さ・て・と……たっぷり今の現実を見てきたみたいじゃから、そろそろ説明をしようかのう。」
見てきたどころか、見過ぎちまったよ。
「今度こそ、聞く準備はいいかな?」
「ちょ!ちょっと待ってくれ!」
大きく深呼吸……
さあ!何でも話しやがれ!
「そうそう、まだ名前を聞いてなかったな。わしは、ダイリック本郷……」
ダイリック…???
どっかで聞いた覚えが……
「一応、格好を見てわかると思うが、科学者のはしくれをやっておる。」
科学者?
だから白衣なのか…?
……ん?
科学者……
なるほどね!
だからこんな部屋なんだ!
納得。
「で、こっちが助手のトミーじゃ。」
じょ、助手???
「ちょっと待ってくれ!何で兄ちゃん…いや、トミーか…トミーはそんな格好……」
「順を追って説明するから、まずはわしの話しを黙って聞くんじゃ。」
チッ!
聞けばいいんだろ!聞けば……!
「で、あんたの名前は?」
「相沢だよ。相沢奈々子……」
「な、奈々子…?名前は可愛いんじゃな。」
「な、なんだと!このやろー!!!」
「まあまあ落ち着いて…」
落ち着いてられっか!
まあ、そうやって言われてもしょうがないけどよ……
「じゃあ、奈々子さん、いいかな…?今からわしの話す事は全て真実じゃ。嘘みたいな話しじゃが、落ち着いて聞いてくれ。」
ああ、もうこうなった以上、何でも受け入れるよ。
もう一度、大きく深呼吸……
「まずここの事じゃが、さっきも話したとおり、あんたが住んでいる3次元空間では無く、7次元空間なんじゃ。」
うっ、いきなりかよ……
う~……信じられない。
でも必死で信じようと頑張る。
「わしは3次元空間の世界の研究所で、アインシュタインの相対性理論について研究してたんじゃ。」
「そうたいせいりろん…?」
「まあ正確に言えば、特殊相対性理論なんじゃがな……」
とくしゅそうたいせいりろん?
頭がゴチャゴチャしてきたぞ。
「この世には3つの『次元』が存在する。縦、横、高さ…ほら、この3つがあれば物体が立体的に表せるじゃろ?」
机に指で線を書いてみる。
縦、横、高さ…
あっ!確かに立体だ!
「よく絵とかマンガを2次元って言うじゃろ?あれは、縦、横しかない平面の世界だからなんじゃよ。」
ふむふむ。
「我々の存在している世界は3次元空間…まあ、これに時間軸の1次元を足して4次元空間って言ったりもするんじゃがな…」
時間が1次元で、実際は3次元で……
3次元なのに4次元……
頭がついていかない……
「まあ、とにかく我々は通常3次元空間に存在していると覚えてくれ。」
3次元……3次元だな!
よし、それだけは覚えた。
「でも、この世には、我々が見えない他の次元が存在していて……」
「見えないって何だよ?」
「ちょっとこれを見てくれ。」
爺さんは黒板に向いて、右端と左端にそれぞれ1コずつ点を書いた。
「この左端に書いた点を『A』として、右端の点を『B』とするじゃろ?」
それぞれの点の横にAとBと書き、2つの点を線で結んだ。
「このA点からB点に行くまで、10分かかるとする……」
なんだか数学の授業みたいだな…
「で、A点とB点のちょうど真ん中にC点があるとするじゃろ?」
真ん中に点を書き、その横にCと書く。
「さて、ここで簡単な問題じゃ。A点からB点に向かうとして、C点に着くのは何分じゃ?」
馬鹿にすんなよ。
こんな問題、小学生でもわかる。
「ちょうど真ん中だから、10分の半分で5分だよ。」
「当たりじゃ。よくわかったのう!」
「そんなの誰だってわかるよ。」
「じゃあ、またA点とC点のちょうど真ん中にD点があるとする。A点からD点までは?」
「また半分で、5分の半分だから2分30秒だよ。」
「またまた当たりじゃ!」
う~……
何か微妙に馬鹿にされているようで、腹が立ってきた……
「あのさ…何が言いたいんだよ?」
「まあまあ、話しは最後まで……」
早く説明しろよ!
それでなくても、さっきから学校みたいで嫌なんだから!
「じゃあもう1回だけ……A点とD点のちょうど真ん中にE点……」
「はいはい……2分30秒の半分だから1分15秒だよ……だから何なんだ?」
「ようするにな、A点とB点の間に点が入ると、必ず出発点のA点から、そこに行くまでに時間がかかる訳じゃ。」
「そうなるよな…」
「でも、今やっていったように、A点とB点の間には無数の点が書ける訳で……」
確かに書こうと思えば、いくつでも点が書けるよな。
「その考えでいくと、A点を出発してB点に行くときに、どんどん無数の点が間に発生する訳になるじゃろ?」
うんうん。
「A点から次の点に行くまでに必ず時間がかかる訳で……つまり、A点を出発しても、どんどん無数の点が発生するから、いつまでたってもB点に到着出来なくなる……」
「ちょっと待てよ!そんな事ないだろ!最初に10分かかるって言ってんだから……」
「違う、違う!わしの話しているのは数学的な話しじゃ!この無数の点が発生する考えでいくと、おかしな説明になってしまうんじゃ。」
数学的…?
「数学の世界ではよくこんな事があるんじゃ。この話しの中で『点』と言うものは、カタチがないようなものじゃろ?」
確かに『点』って言ってんだけど、それが何かって言われると……
A点とB点の間に、いくつの点があるかって言われてもわからないもんな。
「さて話しは『次元』に戻るぞ。さっき見えない次元があると言ったんじゃが、この点と同じようなものなんじゃよ。」
なんかわかってきたぞ……
見えない点……
見えない次元……
「つまりじゃな、その見えない次元があるとすれば、3次元空間以外の違う空間……つまり異次元空間が存在する訳じゃ!」
「ドラえもんの4次元ポケットみたいなもんかよ?」
「くっくっく……あれはマンガじゃがな。まあ、同じようなもんじゃよ。」
すげ~な!
ホントに4次元ポケットって存在するのかよ!
「わしは、その異次元について研究をしてたんじゃ……」
へぇ~…この爺さん、頭良いんだな。
結構、偉い人なのかも…?
「そしてある日、ついに完成したんじゃ!わしの念願、研究の集大成!『ディメンジョンマシン』が!!!」
「ちょ、そのディメンなんてらってのは……?」
「次元を超えるマシン……つまり異次元の世界に行けるマシンじゃ!」
「次元を超える…!?」
マジかよ!!!
「わしがディメンジョンマシンを使って、初めて来た世界が、この7次元空間じゃったんじゃ。わしは最初、実験は失敗かと思ったんじゃ。なぜかと言うと、あんたもビックリしたように、ここは3次元空間とまったく同じじゃろ?」
ああ、確かにまったく同じだよ。
未だに、ここが違う世界だなんて信じられないけどな。
「色々調べて、ここが7次元空間だと気付いた時には驚いたってもんじゃない……」
そりゃ驚くわな……
「しかし、この7次元空間にはまだ驚く事があったんじゃ……」
「これ以上、驚く事があるのかよ?」
「わしらの世界の日本は天皇制で、実際には首相が国を統括してるじゃろ?」
「確かに総理大臣がいるよな……」
「でもこの世界の国は、国王制で王様が国を統括してるんじゃ!」
「王様…!?」
何だよ、その、おとぎの世界みたいな話……
「わしらの世界の日本の国王制度は、遠い昔に終わってる……わしは、この国の王様に興味を持ったんじゃ。」
さっきから王様と聞いて、はだかの王様しか思いつかない俺の頭って……
自分でも笑っちまう。
「ここ7次元空間での日本は『ラムカナ王国』と言う名前でな……」
だから日本じゃないって言ったのか……
「王様の名前は『ラムカナ王』と言ってな、調べてみると、この王国の人々は、ほぼ全員、大変王様を大切にしていて、神様と同じように崇拝してるんじゃ!」
凄いね!
王様が神様かよ……
「じゃあ、どっかの新興宗教みたいに、『私は神様じゃ~、皆のもの~話を聞け~い!』みたいにやってんのかよ?」
よくある話しじゃん。
こうやって、国民全員をひれ伏せさせてさ……
「と、思うじゃろ?それが違うんじゃ。ラムカナ王はみんなから大変愛されていて、誰1人として王様の悪口を言う人はいない。」
「圧倒的な権力で、口封じをしてたり……」
「それもどうやら違うみたいなんじゃ。ラムカナ王の話をすると、みんなニコニコして、本当に楽しそうに話すんじゃ。」
……ホントかよ?
どうも嘘くさい話だぜ。
「わしはラムカナ王にとっても会いたくなって、ある日、王様の城に行ったんじゃ。」
「お、お、お城???」
なんだ?そのディズニーは…???
「凄いじゃろ? ラムカナ王は本当に城に住んでるんじゃ。わしもあの城を見た時は大変驚いたよ。だって今まで城と言ったら純和風の城しか見た事がなかったんじゃからな。」
和風じゃないって事は……
「大きな白い洋風の城でな、入り口の所には鎧を着て槍を持った門番が立っていてな……」
もろ映画の世界じゃん!
塔のてっぺんにお姫様が住んでいるみたいな……
「まあまあ、城の説明はいいとして……」
あれ?
もうちょっと聞きたいんだけど……
「恐る恐るラムカナ王に会えないかと申し出ると、最初は怪しまれたんじゃが、快く城の中に入れて貰えてな……」
うん、うん……それで?
「しばらく大きな広間で待たされていると、奥の方からラムカナ王が登場したんじゃ…」
ついに王様登場…!
それで、それで…?
「凄かったぞ!家来を数人横に従えて、本当に映画のような王様じゃった…」
「どんな格好をしてたんだよ?やっぱマントとか着てたのか…?」
「そうそう……トランプのキングのような格好をしてて……って、なんでお前が知ってんじゃ?」
「いやいや、お城に住んでる王様って、そんなイメージがあるじゃん……」
にしても、ホントにそんな格好してたのかよ!
すげーな……
「わしが、どうやら異次元から来たって話しをすると、大変驚かれて興味を示されてな……」
そりゃ誰だって興味が湧くだろ?
…ってか、怪しむのが先だけど……
「話していくと、『ぜひ、その話しをもっと詳しく聞かせてくれ!』って事になって、その日から城で過ごすことになったんじゃ。」
良かったじゃん。
泊まるところが見つかって……
「ラムカナ王は、みんなが話していたように、大変優しくて素晴らしい王様でな……」
うん、うん。
「ラムカナ王と話せば話すほど、人の良さって言うかな、心の深さって言うか……王様になる人は、こう言う人なんじゃなって……」
なんか俺も、その、ラムカナ王に会いたくなってきた。
「特にわしの研究の話しを何回も聞かれてな……そう、あの時に気付かなければいけなかったんじゃ!」
……ん? なんだ???
「わしは、あの時に間違いを犯してしまったんじゃ……あんな話し……あんな話しさえしなければ……」
「ちょ!どうしたんだよ?」
突然どうしたんだよ?
うつむいちまって……
「ラムカナ王は、わしの話しのせいで変わってしまったんじゃ……」
「変わった……?!」
「お城で過ごし始めて数日たった朝、突然部屋に数人の兵隊が現れて、わしは牢獄に入れられてしまったんじゃ。」
「な、なんで牢獄……意味がわかんねーじゃん!」
「わしもさっぱり、何がなんだか……しばらくすると、高らかな笑い声と共に、多くの兵士と共に牢獄にラムカナ王が現れて……」
……兵士???
「次元を超えるマシンを見せろと迫ったんじゃ!」
「え…?ラムカナ王は、その不思議なマシンが見たかっただけなんじゃ……」
「違う!その時のラムカナ王の顔は、わしと話しをしていた優しい顔とは、明らかに変わってたんじゃ!」
「博士!それは何回も説明したように違うんです!!!」
ビックリしたぁ~!
ずっと黙ってたんで、すっかりトミーの存在を忘れてたよ。
「あれは、バシコ大臣の奴が……」
「わかっとるよ、トミー……あれは、しょうがなかったんじゃな……」
おいおい!
俺を置いて話しを進めるんじゃねーよ。
「でもなトミー、理由が何であれ、ラムカナ王が変わってしまったのは現実じゃ……」
「でも…… でも……」
「あの~……そのバシコ大臣ってのは……?」
「あ!すまんすまん。話しを進めようか……どこまで話したかのう?」
「ラムカナ王がマシンを見せろと……」
「ラムカナ王は、マシンが見たいんじゃなく、マシンその物が欲しかったんじゃよ。」
欲しがった…?
「つまりな……そのマシンを手に入れて、3次元空間を自分の物にしようとしたんじゃ!」
「何だって!!!話しがおかしいだろ?何で急に、そんな事言い出したんだよ?ラムカナ王は話しを聞いてる限り、そんな王様じゃ……」
「だから、バシコの奴が!!!」
「トミー!落ち着くんじゃ!お前の気持ちは痛いほどわかってる……」
「バシコの奴さえ、王様をそそのかさなければ…… 王様は… 王様は……」
トミーはその場に、うずくまってしまった。
「ラムカナ王の側近にバシコ大臣っていう奴がいてな、まあ、トミーの話しによると、昔から城の中で、隠れて悪いことばかりしてるクズみたいな奴じゃったらしいが……」
バシコ大臣……
変な名前からして悪そうだな。
「ラムカナ王からわしの話しを聞くと、王様を使って3次元空間を手に入れて支配しようとしたんじゃ!まあ、この話しは後からトミーから聞いて知ったんじゃがな。」
「支配するったって、そう簡単に……」
「それが出来るんじゃよ。この7次元空間の世界では……」
「何でここの世界だったら出来るんだよ?」
「いいか、さっきも話したが、ここの世界では、みんな王様を崇拝しておる……」
……!!!!!
「王様を使えば、全王国民を動かす事が出来るんじゃ。」
何てこった!
そうやって考えると、良い王様と悪い王様ってのは紙一重なんだな……
「わしは絶対マシンのありかを教えなかった。教えてしまったら3次元空間は大変な事になってしまうからな。」
マシンのありか…???
「マシンは次元を超える最中に、爆発して消えてしまったと説明したんじゃ。」
ちょ、マシンって……
「それからが地獄じゃった。思い出したくもない…ラムカナ王はわしに新しくマシンを作れと迫り、拷問を始めたんじゃ。」
「ご、拷問……!」
いつの時代の話しだよ!
牢獄で拷問って……
「食事を与えられず、寝ることも許されず、ずっと拷問は続いて…」
すんげー痛そう。
ひでー目に合ったんだな。
「とうとうわしは我慢出来なくなって、新たにマシンを作る約束をしてしまったんじゃ。」
「ちょ、約束って!」
「奈々子さん、しょうがないんです。そうでもしないと、博士はあの時、気がふれておかしくなってたかも……」
「トミー、確かに、この子の言ってる事は正しい。わしがあの時我慢してれば…」
「博士、あの状況じゃ無理ですよ!じわじわと殺さないように拷問を続けられたんだから…僕だって絶対、博士と同じようにされれば……とにかく、ああ答えるしかなかったんです。」
「爺さん、そんなに自分を責めるなよ。俺だってたぶん同じようにしたと思うぜ。」
「2人ともありがとな。本当にありがとな。」
爺さん、あんた凄いな……
ホントに死ななくて良かったな。
「その日から、ラムカナ王はわしに研究施設を与えて、マシンの開発をするように、部下を数人付けたんじゃ。その中の1人が、このトミーで……」
「今、思えば酷い毎日でしたよ。最初は何を作っているか聞かされてなかったんです。突然王様に集められて、王国民の暮らしが豊かになるように、ダイリック博士と一緒に研究をしてくれと言われて…」
「何を作るかわからなかったって?!おかしいとは思わなかったのかよ?」
「ラムカナ王から直に頼まれたって事で、僕を含め、集められた人たちは有頂天になってたんですよ。」
そうか…
そうだよな。
「それにしたって、一緒にやってんなら、いくらでも爺さんが教える事が出来ただろ?」
「王様の言う事が絶対の人間に、わしが言って信じてくれると思うか?」
……そうだけどよ。
「それに研究所内では、ずっと兵士の監視が付いているし。」
そりゃ、ダメだよな。
「トミーは集められた中でも抜群に頭の良い奴じゃったんじゃ。いつもわしの話しを真剣に聞いて、大変研究熱心じゃったからな。」
「博士の研究内容がとっても魅力的だったんですよ。博士の人柄にも惹かれたし…」
「まあまあ、そんなに誉めなくても……でな、わしは考えに考え抜いて作戦を開始したんじゃ!」
「作戦って…?」
「覚悟を決めて、兵士の目を盗んで、こっそりトミーに手紙を渡したんじゃ。」
「ビックリしましたよ。突然手紙を渡されて、必ず1人で読んでくれって言われて…」
うんうん。
「最初は信じられなかった。王様がそんな事をするなんて……」
確かに。
すんげー優しい王様だもんな。
「でも、読めば読むほど、博士の書いてる事が本当に思えて来たんですよ。」
おうおう。
そこで信じないとな。
「それで、こっそり空いた時間に王様について調べるようになったんです。」
爺さん、良かったな!
こいつが信じてくれなかったら、今頃どうなってる事か…
「そして、ついにバシコ大臣が裏で王様を操っている事がわかったんです!」
「なるほど。そう言う事か…にしても、そのバシコって奴は最低だな。」
「最低どころかクズ野郎です!その事を知った時、僕はすぐバシコを訴えようとしました…でも……」
でも…?
「トミー、訴えなくて正解じゃったんじゃよ。その時すでにバシコの奴は、裏に手を回して自分の悪巧みがわからないようにしてたんじゃからな。」
ホント、最低な奴だな!
「そう、そうなんです…バシコの野郎……」
「わしもトミーから、バシコが裏にいると言う事を聞いた時は驚いたよ。驚いたと同時に、ラムカナ王1人の考えじゃないとわかって、ちょっと安心もしたんじゃがな。」
「その日から、博士と僕は手を組んで、脱獄の方法をさぐり始めたんです。」
「大変じゃったんじゃよ。ずっと兵士に気付かれぬように、手紙でやり取りを続けて…」
「幸い僕は城から外に出られる身でしたからね。城の内外の情報を博士に伝える事が出来た。」
「そして、ついに脱獄に成功して、この地下道に逃げ込んだんじゃ…そして今ここにいる訳で…」
なるほどね…
やっと、この部屋の意味とかがわかったよ。
「大変だったんだな。爺さんもトミーも…」
初めて会った時は、何だこいつ…?なんて思ったけど、大変だったんだ…
「脱獄で城内は大変な事になってな、その日から、全力でわしを探し始めたんじゃよ。」
そりゃいなくなったら大変だよな。
「わしとこっちの世界の人間を判別出来るように、全国民に『レッドカード』と言う身分証明証を持たせてな…」
「レ、レッドカードだって?!」
やっと意味がわかった…
レッドカードって、そういうもんだったんだ……
「そう、レッドカードじゃよ。だからわしは、あんたに聞いたじゃろ?」
「そう言う事なら、そうと…」
ちゃんと説明しろよ!
「ふっふっふ…あの時説明して、信じていたかな?」
確かに信じてなかったかも…
でも説明してみるぐらいは……
「まあ、まあ、その話しは置いておいて…それと、わしを捜索する為に『ブラックスーツ』と言う特殊部隊を編成したんじゃ。」
「ブラックスーツだって!!!」
思わず声が大きくなる。
そうか、ブラックスーツって、その事だったんだ。
「それも確か説明したような…ふっふっふ…まあいいじゃろう。わしは完全に包囲されてしまった。」
「よく捕まらなかったな?」
「それは、トミーのお陰じゃよ。運良く、わしの脱獄を手伝った事がバレてなくてな、ずっと外の状況をわしに教えてくれて、守ってくれてたんじゃ。」
照れ笑いをするトミー。
トミー、お前ってすげーんだな。
「わしは、一刻も早く元の世界に戻ろうと思ったんじゃ。」
……ん?
そうそう、さっき気になったんだけど、マシンってのは……
「じゃがな、異次元空間への出入り口が、とんでもないところにあいてしまってな。」
「とんでもないところ…?」
「……公園のブランコじゃ。」
「ブランコ!!!」
思わず大声になる…
ブランコって言えば……
「でな、面倒な事に、スタートまでにカウントダウンが必要なんじゃ。」
「カウントダウンって……」
頭の中で、複数のピースが1つに組み上がり始める。
「公園のブランコに乗ってカウントダウンをしてる最中に、ブラックスーツたちに見つかってしまってはもともこうもない…で、爆弾を作ることを考えたんじゃ。」
ブランコでカウントダウン……
パチパチと、だんだんピースが組み上がっていく……
「爆弾をセットしておけば、もし、わしが見つかってしまってもマシンを破壊できるからな。」
「あの…ちょっと聞くけどな…カウントダウンって、まさか20カウントじゃねーだろうな…?」
「その通り、20カウントじゃよ。」
バチーン!
見事にパズルが組み上がった!
そう言う事だったのかよ……
「爆弾を作る為に、わしはトミーを使って材料を集めたんじゃ。なかなか材料が揃わなくて苦労してな…」
「僕は爆弾を作る事は反対だったんです!失敗したら博士も爆弾で吹っ飛んでしまう可能性が……」
「トミー、いいんじゃよ。そもそも、あんなマシンを作ったわしが悪いんじゃから…」
「でも…でも……」
「で、やっと爆弾が完成し、3次元空間に戻ろうとした時に……」
……ゴクリ。
なんか嫌な予感が……
「3次元空間から素敵なお姫様が訪れた……」
ガーーーン!!!
「な、なんて言ったら良いのか…で、でも、あれは偶然で……」
そうだよ!
まさかこんな事になるとは……
「偶然じゃと…?」
「そ、そ、そう…偶然なんだよ。だって、まさかこんなトコに来るなんて思う訳ないし……」
「確かにな…まさかこんな女の子がマシンの事に気付く訳ないしな……」
「そ、そ、その通り!ホントに偶然だったんだよ!」
知る訳ないだろーよ。
信じてくれよ!
「まあ、とにかく、トミーに後を付けさせたお陰で、あんたが無事でここにいる事だし……」
俺を助けてくれた……
トミー、ありがとな。
「さあ、一緒に元の世界に戻ろうか!」
出口へ向かう博士とトミー。
よし!
戻ろう……って……
……ん?
何か忘れているような……
「……ん? どうしたんじゃ?何か忘れ物でもあるのか?」
忘れ物…?
ん~と……
あっ!
「あのぉ~……すげー言いにくい事なんですが……」
「どうした? 何かあるのか?」
どうしよう…
すげー言いにくい……
「……あのですね… つまり……その~……」
「どうしたんじゃ? 早く言わんか!」
えい!
もう、どうにでもなれ!
「実は、ここに来たのは、俺1人じゃないんだよ……」
「1人じゃないだって?!」
「もう1人、大野って男がいてな……」
「なんてこった……もう1人いるのか……」
ガックリする博士とトミー。
「で、その大野って言う奴は、今、どこにいるんじゃ?」
どこにいるかって言われても……
「それがな…… ブラックスーツに…… な…なんて言うか……」
ヤバい………
すぐ、ここから逃げ出したい気分……
「あーーー!!!」
突然、大声を出すトミー。
「確かさっき、ブラックスーツたちが集まっている場所で、誰かの名前を叫んでた……」
知~らないったら知~らない……
俺は何にも覚えてない~♪
「トミー、その男を知っとるのか?」
「は、はい。確かに奈々子さんが、名前を叫んでいたと……」
「で、その男は……?」
「……………」
「どうしたんじゃ、トミー?」
「それがですね……」
そりゃ、トミーだって言いにくいよな。
「僕の目が悪くなければ、確かブラックスーツたちに連れて行かれたような……」
「なにぃーーー!連れて行かれたじゃとーーー!!!」
トミー、そんなに落ち込まなくったっていいよ。
お前は、何も悪くねーんだから。
あ~あ……
博士、頭を抱えてうずくまっちゃったよ。
どうしようったらどうしましょ。
このまま、逃げちまおうか……
「あのぉー…何だったら、あいつはほっといて…」
あまりの空気に耐えられなくなって、思わず発言。
あいつが、そもそもの原因なんだし……
「ほっとく…?!そんな訳にはいかんじゃろ!」
確かに無理だよな……
このまま置いて帰ったら、3次元の大野はいなくなっちゃう訳だし……
「そもそも、なんでその男は捕まって…それより、あんたとはどういう関係なんじゃ?」
関係…?
「友達…いやいや、ただいつも一緒に帰ってる奴で…いつも俺の横に引っ付いてて…」
そう言えば、あいつは俺の何なんだ…?
いつも俺の横にいてさ、いつも楽しそうに話しかけてきてさ…
俺が元気のない時には、思いっきり励ましてくれてさ…
いつもヘラヘラ笑ってる変な奴。
なんかいつも横にいるから、いつの間にかそれが当たり前になってた。
そう言えば、あいつ、いつから俺の横にいたんだ…?
いつだっけ……
前の学校じゃないよな…絶対……
じゃあ、今の学校に来てから…?
最初は、転校して来たばっかりで、しばらく誰とも話しが出来なかったし……
って言うか、俺、あいつの事、まったく知らない。
家は知ってるけど、家族の事とか、学校でのあいつの事とか……
学校の帰りに、あいつが話して来た事しか知らない。
何で知らないんだ…?
あれだけ一緒に帰ってる……
あれだけ…?
あれ?ホントにわかんねー…
いつからあいつと一緒にいるんだ……?
「いつも一緒にいるなら友達じゃろうが?それとも彼氏だったりしてな…」
「……!!!」
ば、馬鹿言ってんじゃねーよ!
何であいつが彼氏なんだよ!
「ち、ち、違うに決まってんだろーが!てめー馬鹿言ってんじゃねーぞ!」
「そんな事言いながら、何で赤くなってんじゃ…?」
う~…何だ、この反応!
体中が、カッカしてるし……
「あ、赤くなんかなってる訳ねーだろーが!あ、あいつはただの友達で…」
自分に腹が立ってきた!
何で俺は、こんなにドキドキしてんだよ!
「ふ~ん…さっきは友達じゃないって言ってたのに、今度は友達か…ふ~ん……」
な、なんだよ? その顔は…?
に、ニタニタするんじゃねー!!!
「でも確か奈々子さん、その人がブラックスーツたちに連れて行かれそうになってる時に、もの凄い顔で飛び出して行こうとしてた。」
「ト、トミー!何でお前まで…あれは、ただ友達を助けようとして……」
この、馬鹿トミー!
余計な事言ってんじゃねーよ!
「ふ~ん…もの凄い顔でねぇ~……」
「ふ、普通、友達が捕まりそうになってたら助けに行こうとするだろーが!」
「あれ?さっきはほっといて帰ろうとしてたくせに……」
「あ、あれは……」
ダメだ…
言えば言うほど、変な事になっちまう……
「とにかくじゃ、その『大切な』友達を助けに行かなくちゃいけない訳じゃのう……」
なんだよ…!
『大切な』ってトコを強調するんじゃねーよ!
「トミー、確かお前は、城の内部の事は、ほとんど理解したって言ってたのう?」
「はい。バシコの事を調べる時に、城中を調べまくりましたから… あ!それと、今回の爆弾の材料を集める為に、武器庫のスペアキーも持ってます!」
「ぶ、武器庫!お前、何でそんなトコのカギを持ってるんじゃ?」
「だって博士、火薬なんて普通ある訳ないし……」
「そ、そうじゃのう…にしても、武器庫から盗んで来るなんて……」
「やっぱりいけなかったですかね…?」
「どうせ武器庫から盗むんなら、火薬だけじゃなく、武器も盗んで来れば良かったのに…」
「あ!それもそうですね!博士って頭いい~!」
トミー……
お前、何してんだよ……
「本当にお前ってやつは…研究に関しては優等生なんじゃが……」
「博士、あまり誉めないで下さいよ…てへへ…」
こらこら!
誰が誉めたんだよ!
こいつ、どっか大野の同じ臭いがするような……
「まあまあ…でな、トミー、城全体の見取り図が書けるか?」
「はい。まだ知らない所もありますが、大体の所はわかります!」
「よし!では、この紙に描いて……」
こうして、いつの間にか勝手に『大野救出大作戦』は開始される事に……
いいか、俺は助けに行こうなんて、1回も言ってないんだからな!
おかえり… じゃねーよ。
何でだよ……
何でまた、ここに戻って来ちまったんだよ。
「いやぁ~…勝手に後を付けさせて貰って悪かったのう。」
爺さんの横で、申し訳なさそうな顔をする黒い服の兄ちゃん。
「でも後を付けさせて正解じゃった。」
兄ちゃん、そんなにペコペコ頭を下げなくてもいいよ。
「そろそろ機嫌を直してくれても良いんじゃ…」
バンッ!
怒りで机を叩く俺。
「一体何なんだよ!あんたらは!!!」
思わず大声になっちまう。
「勝手に俺を付けて来やがって…!」
「でも結果、助かったんじゃないのかな…?」
「確かに助けてもらったけど…」
何だよ!
その自慢げな顔は…!
「大体、何で俺が追われなくちゃいけないんだよ!母ちゃんにも襲われちまうし……」
母ちゃん。
思い出したくもない…
「まあまあ、落ち着いて座って……」
兄ちゃんに肩を押さえられて座らされる。
「さ・て・と……たっぷり今の現実を見てきたみたいじゃから、そろそろ説明をしようかのう。」
見てきたどころか、見過ぎちまったよ。
「今度こそ、聞く準備はいいかな?」
「ちょ!ちょっと待ってくれ!」
大きく深呼吸……
さあ!何でも話しやがれ!
「そうそう、まだ名前を聞いてなかったな。わしは、ダイリック本郷……」
ダイリック…???
どっかで聞いた覚えが……
「一応、格好を見てわかると思うが、科学者のはしくれをやっておる。」
科学者?
だから白衣なのか…?
……ん?
科学者……
なるほどね!
だからこんな部屋なんだ!
納得。
「で、こっちが助手のトミーじゃ。」
じょ、助手???
「ちょっと待ってくれ!何で兄ちゃん…いや、トミーか…トミーはそんな格好……」
「順を追って説明するから、まずはわしの話しを黙って聞くんじゃ。」
チッ!
聞けばいいんだろ!聞けば……!
「で、あんたの名前は?」
「相沢だよ。相沢奈々子……」
「な、奈々子…?名前は可愛いんじゃな。」
「な、なんだと!このやろー!!!」
「まあまあ落ち着いて…」
落ち着いてられっか!
まあ、そうやって言われてもしょうがないけどよ……
「じゃあ、奈々子さん、いいかな…?今からわしの話す事は全て真実じゃ。嘘みたいな話しじゃが、落ち着いて聞いてくれ。」
ああ、もうこうなった以上、何でも受け入れるよ。
もう一度、大きく深呼吸……
「まずここの事じゃが、さっきも話したとおり、あんたが住んでいる3次元空間では無く、7次元空間なんじゃ。」
うっ、いきなりかよ……
う~……信じられない。
でも必死で信じようと頑張る。
「わしは3次元空間の世界の研究所で、アインシュタインの相対性理論について研究してたんじゃ。」
「そうたいせいりろん…?」
「まあ正確に言えば、特殊相対性理論なんじゃがな……」
とくしゅそうたいせいりろん?
頭がゴチャゴチャしてきたぞ。
「この世には3つの『次元』が存在する。縦、横、高さ…ほら、この3つがあれば物体が立体的に表せるじゃろ?」
机に指で線を書いてみる。
縦、横、高さ…
あっ!確かに立体だ!
「よく絵とかマンガを2次元って言うじゃろ?あれは、縦、横しかない平面の世界だからなんじゃよ。」
ふむふむ。
「我々の存在している世界は3次元空間…まあ、これに時間軸の1次元を足して4次元空間って言ったりもするんじゃがな…」
時間が1次元で、実際は3次元で……
3次元なのに4次元……
頭がついていかない……
「まあ、とにかく我々は通常3次元空間に存在していると覚えてくれ。」
3次元……3次元だな!
よし、それだけは覚えた。
「でも、この世には、我々が見えない他の次元が存在していて……」
「見えないって何だよ?」
「ちょっとこれを見てくれ。」
爺さんは黒板に向いて、右端と左端にそれぞれ1コずつ点を書いた。
「この左端に書いた点を『A』として、右端の点を『B』とするじゃろ?」
それぞれの点の横にAとBと書き、2つの点を線で結んだ。
「このA点からB点に行くまで、10分かかるとする……」
なんだか数学の授業みたいだな…
「で、A点とB点のちょうど真ん中にC点があるとするじゃろ?」
真ん中に点を書き、その横にCと書く。
「さて、ここで簡単な問題じゃ。A点からB点に向かうとして、C点に着くのは何分じゃ?」
馬鹿にすんなよ。
こんな問題、小学生でもわかる。
「ちょうど真ん中だから、10分の半分で5分だよ。」
「当たりじゃ。よくわかったのう!」
「そんなの誰だってわかるよ。」
「じゃあ、またA点とC点のちょうど真ん中にD点があるとする。A点からD点までは?」
「また半分で、5分の半分だから2分30秒だよ。」
「またまた当たりじゃ!」
う~……
何か微妙に馬鹿にされているようで、腹が立ってきた……
「あのさ…何が言いたいんだよ?」
「まあまあ、話しは最後まで……」
早く説明しろよ!
それでなくても、さっきから学校みたいで嫌なんだから!
「じゃあもう1回だけ……A点とD点のちょうど真ん中にE点……」
「はいはい……2分30秒の半分だから1分15秒だよ……だから何なんだ?」
「ようするにな、A点とB点の間に点が入ると、必ず出発点のA点から、そこに行くまでに時間がかかる訳じゃ。」
「そうなるよな…」
「でも、今やっていったように、A点とB点の間には無数の点が書ける訳で……」
確かに書こうと思えば、いくつでも点が書けるよな。
「その考えでいくと、A点を出発してB点に行くときに、どんどん無数の点が間に発生する訳になるじゃろ?」
うんうん。
「A点から次の点に行くまでに必ず時間がかかる訳で……つまり、A点を出発しても、どんどん無数の点が発生するから、いつまでたってもB点に到着出来なくなる……」
「ちょっと待てよ!そんな事ないだろ!最初に10分かかるって言ってんだから……」
「違う、違う!わしの話しているのは数学的な話しじゃ!この無数の点が発生する考えでいくと、おかしな説明になってしまうんじゃ。」
数学的…?
「数学の世界ではよくこんな事があるんじゃ。この話しの中で『点』と言うものは、カタチがないようなものじゃろ?」
確かに『点』って言ってんだけど、それが何かって言われると……
A点とB点の間に、いくつの点があるかって言われてもわからないもんな。
「さて話しは『次元』に戻るぞ。さっき見えない次元があると言ったんじゃが、この点と同じようなものなんじゃよ。」
なんかわかってきたぞ……
見えない点……
見えない次元……
「つまりじゃな、その見えない次元があるとすれば、3次元空間以外の違う空間……つまり異次元空間が存在する訳じゃ!」
「ドラえもんの4次元ポケットみたいなもんかよ?」
「くっくっく……あれはマンガじゃがな。まあ、同じようなもんじゃよ。」
すげ~な!
ホントに4次元ポケットって存在するのかよ!
「わしは、その異次元について研究をしてたんじゃ……」
へぇ~…この爺さん、頭良いんだな。
結構、偉い人なのかも…?
「そしてある日、ついに完成したんじゃ!わしの念願、研究の集大成!『ディメンジョンマシン』が!!!」
「ちょ、そのディメンなんてらってのは……?」
「次元を超えるマシン……つまり異次元の世界に行けるマシンじゃ!」
「次元を超える…!?」
マジかよ!!!
「わしがディメンジョンマシンを使って、初めて来た世界が、この7次元空間じゃったんじゃ。わしは最初、実験は失敗かと思ったんじゃ。なぜかと言うと、あんたもビックリしたように、ここは3次元空間とまったく同じじゃろ?」
ああ、確かにまったく同じだよ。
未だに、ここが違う世界だなんて信じられないけどな。
「色々調べて、ここが7次元空間だと気付いた時には驚いたってもんじゃない……」
そりゃ驚くわな……
「しかし、この7次元空間にはまだ驚く事があったんじゃ……」
「これ以上、驚く事があるのかよ?」
「わしらの世界の日本は天皇制で、実際には首相が国を統括してるじゃろ?」
「確かに総理大臣がいるよな……」
「でもこの世界の国は、国王制で王様が国を統括してるんじゃ!」
「王様…!?」
何だよ、その、おとぎの世界みたいな話……
「わしらの世界の日本の国王制度は、遠い昔に終わってる……わしは、この国の王様に興味を持ったんじゃ。」
さっきから王様と聞いて、はだかの王様しか思いつかない俺の頭って……
自分でも笑っちまう。
「ここ7次元空間での日本は『ラムカナ王国』と言う名前でな……」
だから日本じゃないって言ったのか……
「王様の名前は『ラムカナ王』と言ってな、調べてみると、この王国の人々は、ほぼ全員、大変王様を大切にしていて、神様と同じように崇拝してるんじゃ!」
凄いね!
王様が神様かよ……
「じゃあ、どっかの新興宗教みたいに、『私は神様じゃ~、皆のもの~話を聞け~い!』みたいにやってんのかよ?」
よくある話しじゃん。
こうやって、国民全員をひれ伏せさせてさ……
「と、思うじゃろ?それが違うんじゃ。ラムカナ王はみんなから大変愛されていて、誰1人として王様の悪口を言う人はいない。」
「圧倒的な権力で、口封じをしてたり……」
「それもどうやら違うみたいなんじゃ。ラムカナ王の話をすると、みんなニコニコして、本当に楽しそうに話すんじゃ。」
……ホントかよ?
どうも嘘くさい話だぜ。
「わしはラムカナ王にとっても会いたくなって、ある日、王様の城に行ったんじゃ。」
「お、お、お城???」
なんだ?そのディズニーは…???
「凄いじゃろ? ラムカナ王は本当に城に住んでるんじゃ。わしもあの城を見た時は大変驚いたよ。だって今まで城と言ったら純和風の城しか見た事がなかったんじゃからな。」
和風じゃないって事は……
「大きな白い洋風の城でな、入り口の所には鎧を着て槍を持った門番が立っていてな……」
もろ映画の世界じゃん!
塔のてっぺんにお姫様が住んでいるみたいな……
「まあまあ、城の説明はいいとして……」
あれ?
もうちょっと聞きたいんだけど……
「恐る恐るラムカナ王に会えないかと申し出ると、最初は怪しまれたんじゃが、快く城の中に入れて貰えてな……」
うん、うん……それで?
「しばらく大きな広間で待たされていると、奥の方からラムカナ王が登場したんじゃ…」
ついに王様登場…!
それで、それで…?
「凄かったぞ!家来を数人横に従えて、本当に映画のような王様じゃった…」
「どんな格好をしてたんだよ?やっぱマントとか着てたのか…?」
「そうそう……トランプのキングのような格好をしてて……って、なんでお前が知ってんじゃ?」
「いやいや、お城に住んでる王様って、そんなイメージがあるじゃん……」
にしても、ホントにそんな格好してたのかよ!
すげーな……
「わしが、どうやら異次元から来たって話しをすると、大変驚かれて興味を示されてな……」
そりゃ誰だって興味が湧くだろ?
…ってか、怪しむのが先だけど……
「話していくと、『ぜひ、その話しをもっと詳しく聞かせてくれ!』って事になって、その日から城で過ごすことになったんじゃ。」
良かったじゃん。
泊まるところが見つかって……
「ラムカナ王は、みんなが話していたように、大変優しくて素晴らしい王様でな……」
うん、うん。
「ラムカナ王と話せば話すほど、人の良さって言うかな、心の深さって言うか……王様になる人は、こう言う人なんじゃなって……」
なんか俺も、その、ラムカナ王に会いたくなってきた。
「特にわしの研究の話しを何回も聞かれてな……そう、あの時に気付かなければいけなかったんじゃ!」
……ん? なんだ???
「わしは、あの時に間違いを犯してしまったんじゃ……あんな話し……あんな話しさえしなければ……」
「ちょ!どうしたんだよ?」
突然どうしたんだよ?
うつむいちまって……
「ラムカナ王は、わしの話しのせいで変わってしまったんじゃ……」
「変わった……?!」
「お城で過ごし始めて数日たった朝、突然部屋に数人の兵隊が現れて、わしは牢獄に入れられてしまったんじゃ。」
「な、なんで牢獄……意味がわかんねーじゃん!」
「わしもさっぱり、何がなんだか……しばらくすると、高らかな笑い声と共に、多くの兵士と共に牢獄にラムカナ王が現れて……」
……兵士???
「次元を超えるマシンを見せろと迫ったんじゃ!」
「え…?ラムカナ王は、その不思議なマシンが見たかっただけなんじゃ……」
「違う!その時のラムカナ王の顔は、わしと話しをしていた優しい顔とは、明らかに変わってたんじゃ!」
「博士!それは何回も説明したように違うんです!!!」
ビックリしたぁ~!
ずっと黙ってたんで、すっかりトミーの存在を忘れてたよ。
「あれは、バシコ大臣の奴が……」
「わかっとるよ、トミー……あれは、しょうがなかったんじゃな……」
おいおい!
俺を置いて話しを進めるんじゃねーよ。
「でもなトミー、理由が何であれ、ラムカナ王が変わってしまったのは現実じゃ……」
「でも…… でも……」
「あの~……そのバシコ大臣ってのは……?」
「あ!すまんすまん。話しを進めようか……どこまで話したかのう?」
「ラムカナ王がマシンを見せろと……」
「ラムカナ王は、マシンが見たいんじゃなく、マシンその物が欲しかったんじゃよ。」
欲しがった…?
「つまりな……そのマシンを手に入れて、3次元空間を自分の物にしようとしたんじゃ!」
「何だって!!!話しがおかしいだろ?何で急に、そんな事言い出したんだよ?ラムカナ王は話しを聞いてる限り、そんな王様じゃ……」
「だから、バシコの奴が!!!」
「トミー!落ち着くんじゃ!お前の気持ちは痛いほどわかってる……」
「バシコの奴さえ、王様をそそのかさなければ…… 王様は… 王様は……」
トミーはその場に、うずくまってしまった。
「ラムカナ王の側近にバシコ大臣っていう奴がいてな、まあ、トミーの話しによると、昔から城の中で、隠れて悪いことばかりしてるクズみたいな奴じゃったらしいが……」
バシコ大臣……
変な名前からして悪そうだな。
「ラムカナ王からわしの話しを聞くと、王様を使って3次元空間を手に入れて支配しようとしたんじゃ!まあ、この話しは後からトミーから聞いて知ったんじゃがな。」
「支配するったって、そう簡単に……」
「それが出来るんじゃよ。この7次元空間の世界では……」
「何でここの世界だったら出来るんだよ?」
「いいか、さっきも話したが、ここの世界では、みんな王様を崇拝しておる……」
……!!!!!
「王様を使えば、全王国民を動かす事が出来るんじゃ。」
何てこった!
そうやって考えると、良い王様と悪い王様ってのは紙一重なんだな……
「わしは絶対マシンのありかを教えなかった。教えてしまったら3次元空間は大変な事になってしまうからな。」
マシンのありか…???
「マシンは次元を超える最中に、爆発して消えてしまったと説明したんじゃ。」
ちょ、マシンって……
「それからが地獄じゃった。思い出したくもない…ラムカナ王はわしに新しくマシンを作れと迫り、拷問を始めたんじゃ。」
「ご、拷問……!」
いつの時代の話しだよ!
牢獄で拷問って……
「食事を与えられず、寝ることも許されず、ずっと拷問は続いて…」
すんげー痛そう。
ひでー目に合ったんだな。
「とうとうわしは我慢出来なくなって、新たにマシンを作る約束をしてしまったんじゃ。」
「ちょ、約束って!」
「奈々子さん、しょうがないんです。そうでもしないと、博士はあの時、気がふれておかしくなってたかも……」
「トミー、確かに、この子の言ってる事は正しい。わしがあの時我慢してれば…」
「博士、あの状況じゃ無理ですよ!じわじわと殺さないように拷問を続けられたんだから…僕だって絶対、博士と同じようにされれば……とにかく、ああ答えるしかなかったんです。」
「爺さん、そんなに自分を責めるなよ。俺だってたぶん同じようにしたと思うぜ。」
「2人ともありがとな。本当にありがとな。」
爺さん、あんた凄いな……
ホントに死ななくて良かったな。
「その日から、ラムカナ王はわしに研究施設を与えて、マシンの開発をするように、部下を数人付けたんじゃ。その中の1人が、このトミーで……」
「今、思えば酷い毎日でしたよ。最初は何を作っているか聞かされてなかったんです。突然王様に集められて、王国民の暮らしが豊かになるように、ダイリック博士と一緒に研究をしてくれと言われて…」
「何を作るかわからなかったって?!おかしいとは思わなかったのかよ?」
「ラムカナ王から直に頼まれたって事で、僕を含め、集められた人たちは有頂天になってたんですよ。」
そうか…
そうだよな。
「それにしたって、一緒にやってんなら、いくらでも爺さんが教える事が出来ただろ?」
「王様の言う事が絶対の人間に、わしが言って信じてくれると思うか?」
……そうだけどよ。
「それに研究所内では、ずっと兵士の監視が付いているし。」
そりゃ、ダメだよな。
「トミーは集められた中でも抜群に頭の良い奴じゃったんじゃ。いつもわしの話しを真剣に聞いて、大変研究熱心じゃったからな。」
「博士の研究内容がとっても魅力的だったんですよ。博士の人柄にも惹かれたし…」
「まあまあ、そんなに誉めなくても……でな、わしは考えに考え抜いて作戦を開始したんじゃ!」
「作戦って…?」
「覚悟を決めて、兵士の目を盗んで、こっそりトミーに手紙を渡したんじゃ。」
「ビックリしましたよ。突然手紙を渡されて、必ず1人で読んでくれって言われて…」
うんうん。
「最初は信じられなかった。王様がそんな事をするなんて……」
確かに。
すんげー優しい王様だもんな。
「でも、読めば読むほど、博士の書いてる事が本当に思えて来たんですよ。」
おうおう。
そこで信じないとな。
「それで、こっそり空いた時間に王様について調べるようになったんです。」
爺さん、良かったな!
こいつが信じてくれなかったら、今頃どうなってる事か…
「そして、ついにバシコ大臣が裏で王様を操っている事がわかったんです!」
「なるほど。そう言う事か…にしても、そのバシコって奴は最低だな。」
「最低どころかクズ野郎です!その事を知った時、僕はすぐバシコを訴えようとしました…でも……」
でも…?
「トミー、訴えなくて正解じゃったんじゃよ。その時すでにバシコの奴は、裏に手を回して自分の悪巧みがわからないようにしてたんじゃからな。」
ホント、最低な奴だな!
「そう、そうなんです…バシコの野郎……」
「わしもトミーから、バシコが裏にいると言う事を聞いた時は驚いたよ。驚いたと同時に、ラムカナ王1人の考えじゃないとわかって、ちょっと安心もしたんじゃがな。」
「その日から、博士と僕は手を組んで、脱獄の方法をさぐり始めたんです。」
「大変じゃったんじゃよ。ずっと兵士に気付かれぬように、手紙でやり取りを続けて…」
「幸い僕は城から外に出られる身でしたからね。城の内外の情報を博士に伝える事が出来た。」
「そして、ついに脱獄に成功して、この地下道に逃げ込んだんじゃ…そして今ここにいる訳で…」
なるほどね…
やっと、この部屋の意味とかがわかったよ。
「大変だったんだな。爺さんもトミーも…」
初めて会った時は、何だこいつ…?なんて思ったけど、大変だったんだ…
「脱獄で城内は大変な事になってな、その日から、全力でわしを探し始めたんじゃよ。」
そりゃいなくなったら大変だよな。
「わしとこっちの世界の人間を判別出来るように、全国民に『レッドカード』と言う身分証明証を持たせてな…」
「レ、レッドカードだって?!」
やっと意味がわかった…
レッドカードって、そういうもんだったんだ……
「そう、レッドカードじゃよ。だからわしは、あんたに聞いたじゃろ?」
「そう言う事なら、そうと…」
ちゃんと説明しろよ!
「ふっふっふ…あの時説明して、信じていたかな?」
確かに信じてなかったかも…
でも説明してみるぐらいは……
「まあ、まあ、その話しは置いておいて…それと、わしを捜索する為に『ブラックスーツ』と言う特殊部隊を編成したんじゃ。」
「ブラックスーツだって!!!」
思わず声が大きくなる。
そうか、ブラックスーツって、その事だったんだ。
「それも確か説明したような…ふっふっふ…まあいいじゃろう。わしは完全に包囲されてしまった。」
「よく捕まらなかったな?」
「それは、トミーのお陰じゃよ。運良く、わしの脱獄を手伝った事がバレてなくてな、ずっと外の状況をわしに教えてくれて、守ってくれてたんじゃ。」
照れ笑いをするトミー。
トミー、お前ってすげーんだな。
「わしは、一刻も早く元の世界に戻ろうと思ったんじゃ。」
……ん?
そうそう、さっき気になったんだけど、マシンってのは……
「じゃがな、異次元空間への出入り口が、とんでもないところにあいてしまってな。」
「とんでもないところ…?」
「……公園のブランコじゃ。」
「ブランコ!!!」
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ブランコって言えば……
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「カウントダウンって……」
頭の中で、複数のピースが1つに組み上がり始める。
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パチパチと、だんだんピースが組み上がっていく……
「爆弾をセットしておけば、もし、わしが見つかってしまってもマシンを破壊できるからな。」
「あの…ちょっと聞くけどな…カウントダウンって、まさか20カウントじゃねーだろうな…?」
「その通り、20カウントじゃよ。」
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見事にパズルが組み上がった!
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なんか嫌な予感が……
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「そ、そ、そう…偶然なんだよ。だって、まさかこんなトコに来るなんて思う訳ないし……」
「確かにな…まさかこんな女の子がマシンの事に気付く訳ないしな……」
「そ、そ、その通り!ホントに偶然だったんだよ!」
知る訳ないだろーよ。
信じてくれよ!
「まあ、とにかく、トミーに後を付けさせたお陰で、あんたが無事でここにいる事だし……」
俺を助けてくれた……
トミー、ありがとな。
「さあ、一緒に元の世界に戻ろうか!」
出口へ向かう博士とトミー。
よし!
戻ろう……って……
……ん?
何か忘れているような……
「……ん? どうしたんじゃ?何か忘れ物でもあるのか?」
忘れ物…?
ん~と……
あっ!
「あのぉ~……すげー言いにくい事なんですが……」
「どうした? 何かあるのか?」
どうしよう…
すげー言いにくい……
「……あのですね… つまり……その~……」
「どうしたんじゃ? 早く言わんか!」
えい!
もう、どうにでもなれ!
「実は、ここに来たのは、俺1人じゃないんだよ……」
「1人じゃないだって?!」
「もう1人、大野って男がいてな……」
「なんてこった……もう1人いるのか……」
ガックリする博士とトミー。
「で、その大野って言う奴は、今、どこにいるんじゃ?」
どこにいるかって言われても……
「それがな…… ブラックスーツに…… な…なんて言うか……」
ヤバい………
すぐ、ここから逃げ出したい気分……
「あーーー!!!」
突然、大声を出すトミー。
「確かさっき、ブラックスーツたちが集まっている場所で、誰かの名前を叫んでた……」
知~らないったら知~らない……
俺は何にも覚えてない~♪
「トミー、その男を知っとるのか?」
「は、はい。確かに奈々子さんが、名前を叫んでいたと……」
「で、その男は……?」
「……………」
「どうしたんじゃ、トミー?」
「それがですね……」
そりゃ、トミーだって言いにくいよな。
「僕の目が悪くなければ、確かブラックスーツたちに連れて行かれたような……」
「なにぃーーー!連れて行かれたじゃとーーー!!!」
トミー、そんなに落ち込まなくったっていいよ。
お前は、何も悪くねーんだから。
あ~あ……
博士、頭を抱えてうずくまっちゃったよ。
どうしようったらどうしましょ。
このまま、逃げちまおうか……
「あのぉー…何だったら、あいつはほっといて…」
あまりの空気に耐えられなくなって、思わず発言。
あいつが、そもそもの原因なんだし……
「ほっとく…?!そんな訳にはいかんじゃろ!」
確かに無理だよな……
このまま置いて帰ったら、3次元の大野はいなくなっちゃう訳だし……
「そもそも、なんでその男は捕まって…それより、あんたとはどういう関係なんじゃ?」
関係…?
「友達…いやいや、ただいつも一緒に帰ってる奴で…いつも俺の横に引っ付いてて…」
そう言えば、あいつは俺の何なんだ…?
いつも俺の横にいてさ、いつも楽しそうに話しかけてきてさ…
俺が元気のない時には、思いっきり励ましてくれてさ…
いつもヘラヘラ笑ってる変な奴。
なんかいつも横にいるから、いつの間にかそれが当たり前になってた。
そう言えば、あいつ、いつから俺の横にいたんだ…?
いつだっけ……
前の学校じゃないよな…絶対……
じゃあ、今の学校に来てから…?
最初は、転校して来たばっかりで、しばらく誰とも話しが出来なかったし……
って言うか、俺、あいつの事、まったく知らない。
家は知ってるけど、家族の事とか、学校でのあいつの事とか……
学校の帰りに、あいつが話して来た事しか知らない。
何で知らないんだ…?
あれだけ一緒に帰ってる……
あれだけ…?
あれ?ホントにわかんねー…
いつからあいつと一緒にいるんだ……?
「いつも一緒にいるなら友達じゃろうが?それとも彼氏だったりしてな…」
「……!!!」
ば、馬鹿言ってんじゃねーよ!
何であいつが彼氏なんだよ!
「ち、ち、違うに決まってんだろーが!てめー馬鹿言ってんじゃねーぞ!」
「そんな事言いながら、何で赤くなってんじゃ…?」
う~…何だ、この反応!
体中が、カッカしてるし……
「あ、赤くなんかなってる訳ねーだろーが!あ、あいつはただの友達で…」
自分に腹が立ってきた!
何で俺は、こんなにドキドキしてんだよ!
「ふ~ん…さっきは友達じゃないって言ってたのに、今度は友達か…ふ~ん……」
な、なんだよ? その顔は…?
に、ニタニタするんじゃねー!!!
「でも確か奈々子さん、その人がブラックスーツたちに連れて行かれそうになってる時に、もの凄い顔で飛び出して行こうとしてた。」
「ト、トミー!何でお前まで…あれは、ただ友達を助けようとして……」
この、馬鹿トミー!
余計な事言ってんじゃねーよ!
「ふ~ん…もの凄い顔でねぇ~……」
「ふ、普通、友達が捕まりそうになってたら助けに行こうとするだろーが!」
「あれ?さっきはほっといて帰ろうとしてたくせに……」
「あ、あれは……」
ダメだ…
言えば言うほど、変な事になっちまう……
「とにかくじゃ、その『大切な』友達を助けに行かなくちゃいけない訳じゃのう……」
なんだよ…!
『大切な』ってトコを強調するんじゃねーよ!
「トミー、確かお前は、城の内部の事は、ほとんど理解したって言ってたのう?」
「はい。バシコの事を調べる時に、城中を調べまくりましたから… あ!それと、今回の爆弾の材料を集める為に、武器庫のスペアキーも持ってます!」
「ぶ、武器庫!お前、何でそんなトコのカギを持ってるんじゃ?」
「だって博士、火薬なんて普通ある訳ないし……」
「そ、そうじゃのう…にしても、武器庫から盗んで来るなんて……」
「やっぱりいけなかったですかね…?」
「どうせ武器庫から盗むんなら、火薬だけじゃなく、武器も盗んで来れば良かったのに…」
「あ!それもそうですね!博士って頭いい~!」
トミー……
お前、何してんだよ……
「本当にお前ってやつは…研究に関しては優等生なんじゃが……」
「博士、あまり誉めないで下さいよ…てへへ…」
こらこら!
誰が誉めたんだよ!
こいつ、どっか大野の同じ臭いがするような……
「まあまあ…でな、トミー、城全体の見取り図が書けるか?」
「はい。まだ知らない所もありますが、大体の所はわかります!」
「よし!では、この紙に描いて……」
こうして、いつの間にか勝手に『大野救出大作戦』は開始される事に……
いいか、俺は助けに行こうなんて、1回も言ってないんだからな!
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しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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