ある日の出来事-THE NANAKO'S STORY-

まっく

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8章

トミー・ザ・マッチョ

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「だから、そこは違うじゃろーが……」

「博士、合ってますって……」


あのさ…
もういいかな……


「お前は、本当に城の中を見て来たのか?確かここは……」

「いやいや、違うんですって…」


もう、うんざりしてた。
さっきから、ずっとこの調子…
まったく先に進みやしねぇ。


最初、トミーに描かせていたら、紙の大きさを考えず、途中で紙を何回も継ぎ足しまくり…
まだ半分も描いてないのに、見取り図は見事な巨大オブジェに……

こりゃダメだわ…って事で、博士が変わったんだけど、あまり城の中を知らないもんだから、結局トミーの指示で描く事に……

漫才みたいで、最初は楽しんでたんだけど、基本こいつら両方ボケな訳で…
ただ呆れるばかり。


「あの~…」

「だから、そこは違うんですって…」

「お前はさっきから、違う違うって…わしをバカにしとるのか…?」

「だから……あの~…」

「僕が描いてたら、博士が強引にペンを取ったんじゃないですか…全然知らないくせに…」

「し、知らないじゃとぉ~?お前に任せてたら部屋中紙だらけになるから、しょうがなしに代わったんじゃろ~が…」

「しょうがなしに…?!博士!いくら博士でも言い方ってもんが…」

「ちょ、俺の話しを聞けって…」

「もういいです!ペンを返して下さい!」

「何で無理やり取るんじゃ!このペンはわしのもの…」

「わしのもの?!そもそもこのペンは僕が持って来たんじゃないですか!」

「……………」

「この部屋にあるもんは、わしのもんじゃろーが!」

「わ、わしって…2人のもんでしょーが!」



バンッ!!!



「お前らいい加減にしろ!小学生のケンカかっ!!!」

呆れるのを通り越して、さすがに腹が立ってきた。

突然の大声にビックリする2人。

「さっきから黙って見てりゃ、グズグズしやがって…」

「な、何で怒ってるんじゃ…?」

「ぼ、僕がいけないんですかね…?」

「いけないって言うか…」

はぁ~…
俺、何熱くなってんだろ……

考えてみりゃ、俺と大野の為に一生懸命やってくれてんだよな……

「悪い悪い…大きな声出してごめんな…」

俺の方がガキみたいだったよ。


う~……
気まずい雰囲気……

何とか空気を変えないと……


「あ、そうそう…トミー、お前そろそろ、その暑そうな黒い服を脱いでもいいんじゃねーか?」

さっきから気になってたんだよな。
なんか、ブラックスーツがずっと横にいるような気がして……

「そうじゃのう。トミー、ちょっと着替えてこんか?」

「それもそうですね。じゃあちょっと待ってて下さいね。あ、博士!勝手に描いちゃダメですよ!」

「大丈夫…ちゃんと待っててやるから。」

「絶対、絶対ですよ!」

そう言うと、トミーは奥の部屋に着替えに行った。



「あいつ、ホントに優等生なのかよ?」

「まあ、ちょっと抜けてる所はあるが、真面目さにかけては天下一品じゃ。」

抜けてるって…
爺さんも、似たようなもんだけどな。

「ちょっと聞きたいんだけど、トミーの奴、なんであんなに力が強いんだ?」

「強いって?」

「初めて会った時、トミーに羽交い締めにされたんだけど、あんな馬鹿力は初めてだよ。」

「ふっふっふ…じゃあ、トミーの体を見たらもっと驚くぞ。」

「からだ…?」

「あいつは顔は童顔じゃが、体はムキムキのボディービルダーじゃからな。」

「ムキムキ…???」

「あいつには哀しい過去があってな……」

何だよ…?
哀しい過去って……

「昔、好きな人がおってな、告白しようかずっと悩んでたんじゃ…ほら、あいつ気が弱いじゃろ?ずっと1人でモジモジやってたみたいなんじゃ。」

確かに気が弱いって言うか、自分じゃ何も決められないタイプだよな。

「で、勇気を振り絞って告白したみたいなんじゃが、見事に振られてしまったんじゃ。」

まあ、よくある青春のほろ苦い思い出だな。

「振られた原因が最悪でな…」

うんうん…

「『私、ヒョロヒョロした人は嫌い!』って言われたそうなんじゃ。」

ヒョロヒョロ…?

「当時のトミーは、勉強ばっかりしてたせいで、虚弱体質のガリ勉君タイプじゃったらしいんじゃ。」

あのトミーが…?
今のがっちりした体つきからは、想像できないな。

「失恋のショックでしばらく立ち直れなかったらしいんじゃが、ある日突然、あいつは気付いたんじゃ。」

何をだよ?

「僕は完全に振られた訳じゃない!僕の体が悪いんだ!…ってね。」

うわぁ~!よくある女々しい男の言い訳じゃん。
兄貴たちもそうなんだけど、何で男って女の優しさを真に受けちゃうんだろうな。
最後の『嫌い』って言うのだけが本音で、あとは優しさで付けた言葉なのに……

「それからトミーは、体を猛烈に鍛え始めたんじゃ。彼女が振り向いてくれると信じて…」

真面目なトミーらしいな。
純朴って言うか、単純って言うか……

「じゃがな、あいつ真面目なもんじゃから、どこまで鍛えたらいいのかわからなくなってしまってな…」

……!

「そんな時に、偶然、振られた彼女に再会したんじゃよ。」

なんか嫌な予感………

「あいつ、チャンスと思ったんじゃろうな…突然、彼女の前で服を脱いで、『僕、こんなに強くなったんですよ!』って…」

最悪………

「彼女は泣き出すわ、警察に通報されるやらで、大変な事になってな……」

あぁ、トミー……
お前って奴は……

「それ以来、あいつは陰で『筋肉バカ』と呼ばれるようになって…」

初めて見た。
これが、ホントの『筋肉バカ』だ。

「あ!この話しは絶対トミーの前でしちゃダメだぞ。特に『筋肉バカ』なんてあいつに言った時には、昔の事を思い出して、暴れて何をし出すかわからんし…」

悲劇って言うか、喜劇って言うか…
トミーらしいけどな……

「でもな、わしがこうして捕まらないでおれたのも、あいつのお陰なんじゃよ… その力のお陰で何回ピンチを救われた事か…」

確かに、俺も助けられたしな。

「気は優しくて力持ち…あいつは、そんな奴なんじゃよ……」



「ふぅ~……やっぱり白衣の方が良いですねぇ~…」

着替え終わったトミーが出てきた。

話しを聞いたせいか、ちょっとトミーが可愛く見えてきたぜ。
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