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霊視②
しおりを挟む食堂に入った神谷崎は目に付いた一つのテーブルに着くと対面にある椅子の方へ手の平を向けた。
「さぁどちら様でもいいのでどうぞ」
屈託のない笑顔で促してくる神谷崎を見て、全員が目を合わせながら誰が座るか探り合っていた。
この人の狙いは何なのかな?ただ単に仲間に入りたいだけ?それとも?――。
叶が思慮を巡らせていると志穂が口を開く。
「どうせだったら倉井君と一緒に鬼龍ちゃんどう?」
志穂の言葉に叶は抵抗する事もなく、やや呆れた様に小さなため息をついて志穂を見つめた。
「私達からでいいんですか?」
そう言いながら神谷崎の対面に腰を下ろすと、横にあった椅子を軽く〝ぽんぽん〟と叩いて幸太に微笑みかける。
「ほら、君も早く座ったら?」
叶に促され、幸太も少し戸惑いながら叶と並んで腰を下ろす。
二人並んで座る叶と幸太を見て、神谷崎は笑みを浮かべながらタロットカードを取り出し、幸太の前へと差し出した。
「そんなに緊張しなくていいからね。まぁ余興みたいなもんだと思って気楽にいきましょう。まずはそちら幸太さんでしたっけ?カードを切ってくれますか?」
「あ、はい」
言われるがままカードを切る幸太を見つめて神谷崎が間髪を入れずに問い掛ける。
「お二人のこれからを占うならお二人の事を考えながらカードを切って下さいね。それはそうとお二人はお付き合いされて長いんですか?」
神谷崎の質問に幸太が一瞬戸惑いの色を見せると、叶が笑みを浮かべて代わって答える。
「いえ、今年の夏からですから実際一ヶ月ぐらいですよ」
「おや、そうでしたか。お二人の掛け合いや仲の良さを拝見してると、もっと長いお付き合いをされているのかと思っていました」
「ふふふ、えぇまぁ仲良くはしてますけどまだこれからですよ」
叶が口元に手を添えながら神谷崎を見つめて笑みを浮かべていた。そんな叶を横目で見つめながら幸太はカードを切る手を止めて、カードをテーブルの上に置く。
「神谷崎さん、これぐらいでいいですか?」
「ああ、いいんじゃないかな。では始めましょうか。幸太さん、そのカードから一枚選んで引いて下さい」
そう言って神谷崎はテーブルの上にあるカードを再び幸太に差し出した。幸太は戸惑いながらその中からカードを一枚選ぶ。それはローブを身にまとった老人の様だった。
「なるほど隠者のカードだね。これは思慮深い人を表している。お二人のこれからについて真剣に考えていると言い換えてもいいかもしれない。幸太さん、貴方はわりと真面目で人から慕われる事も多いんじゃないですか?困ってる人はほっとけないタイプだと思います。いかがですか?」
神谷崎が穏やかな笑みを浮かべて問い掛けると、幸太は少し戸惑い気味に小さく頷いていた。
「慕われてるかは分からないですが、確かに困ってる人がいたら助けようとは思います」
幸太の言葉を聞き、神谷崎は力強く頷きながら少し身を乗り出す。
「そうですよね?それに貴方は自分の短所や弱点等もしっかりと把握していてそれを克服出来るように努力もしている筈です。だけど自分の言動や行動が正しかったのか、不安になる事も多いみたいですね。ですがそれが貴方の良さです。これからも悩み、試行錯誤するとは思いますが、確実に一歩一歩進んで行けば未来は開けますよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
少し嬉しそうに頷く幸太を見つめて、叶は穏やかな笑みを浮かべていた。
「さぁ、次は鬼龍さん同じ様にカードを切ってもらえますか?」
神谷崎から促され叶は言われた通りカードを切ると一枚のカードを選んでテーブルに置いた。そこには剣と天秤を手にした人物が描かれていた。
「なるほど、正義ですね。このカードは誠実さと協調性。鬼龍さんの誠実さを表しているんじゃないでしょうか?」
「なるほどね」
神谷崎の問い掛けに叶は至って冷静に答えていた。
「鬼龍さん、貴女はいつも冷静に物事を捉えてる傾向がありますよね?だけど一度熱が入ると思わずのめり込む事もある。どうですか?」
「まぁ、当たらずも遠からず、といった所ですかね」
「はは、まぁ今回は簡単な占いですからね。もっと詳しくするならそれなりの準備も必要ですしね」
神谷崎が愛想の良い笑みを浮かべると、叶も僅かに口角を上げて微笑を浮かべる。
「まぁそうですね。しかし占いもたまにはいい物ですね。色々と知らない事も分かりますしね」
そう言って叶は含みのある笑みを浮かべて立ち上がり横で座る幸太を見つめる。
「ほら、そろそろ代わろうよ。次は志穂さん達も待ってるんだから」
幸太が慌てて席を立つと、代わって志穂が腰掛けた。
そんな様子を叶は何も言わずに笑みを浮かべて見つめていた。
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