視える私と視えない君と

赤羽こうじ

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霊視⑤

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 華月と共に部屋へと戻って来た叶は椅子を引き、華月に座る様に促した。
 華月が軽く頭を下げて椅子に座ると、その対面に叶も腰を下ろす。

「さて華月さん、いきなりですが話とは何ですか?」

 余計な問答をあえて省き、単刀直入に問い掛ける叶を見つめ、華月は一瞬視線を落としたがすぐに見つめ直す。

「あ、あの、鬼龍さんを信じてお話します。だからちゃんと聞いてくれますか?」

 そう言って叶をまっすぐ見つめる華月からは普段の弱々しさは感じられず、決意の様な真剣さが感じられた。叶も真剣な眼差しのまま静かに頷く。

「勿論です」

「……あのスズメバチに襲われるのは、やっぱり私だった様な気がするんです」

 突然そんな事を聞かされ、華月の被害妄想のようにも感じた叶だったが、華月の真剣な表情を見て静かに問い掛ける。

「何故そう思ったんですか?」

「……誰にも言わないって約束してくれますよね?」

「はい」

 叶が静かに頷くと、華月は一息つき意を決したかの様に話し出した。

「私、義人さんに言い寄られてたんです。勿論義人さんは朱里ちゃんの彼氏だし断ってたんですけど、義人さんは全然聞いてくれなくて……そして断りきれずについ、一線を超えたというか……」

 思いもしなかった華月の告白に叶は言葉を失い呆気に取られていた。

「……いや、あの……それは体の関係を持ったって事?」

「はい……ずっと断り続けてたのにしつこくて……それで最終的に二人っきりにさせられて断れなかったというか……それで一度そういう関係になると、私も慣れちゃって義人さんに言われるがままずっとそういう関係を続けちゃってて……」

 俯きながらたどたどしく言葉を紡ぐ華月だったが、俯きながら時折笑みを浮かべている様にも見え、叶は疑問を抱く。

「……華月さん。こんな事を言うのもなんですけど、拒んでいたとはいえ、あまり褒めらた行動だとは思えませんよ、さすがに」

「はい、分かってます……どんな言い訳しても許されないと思ってます。だから……だから朱里ちゃんに知られたら何されるか分からなくて……ずっと怖かったんです。だけど最近、何か朱里ちゃんおかしくて……ひょっとしたら私と義人さんの関係に気付いてるんじゃないかって思えて。もし気付かれてたのなら朱里ちゃんだったら私の部屋にスズメバチを潜ませる事だってするんじゃないかって」

「ちょっと待って下さい。いくらなんでもそれは飛躍し過ぎてませんか?朱里さんも貴女がスズメバチに刺されたら死に至る可能性があるって事ぐらい分かる筈ですし」

 そう言って異を唱えたが、華月は不安気な瞳で叶を見つめたまま頭を振る。

「分かってても朱里ちゃんならやりかねません。だって昔から朱里ちゃんそういう一面があったし、自分でも言ってたけど朱里ちゃんサイコパスなんです。きっと自分の物に手を出した私の事が気に入らなくて……」

 華月は訴えかけるかのように叶の手を握ったまま俯き肩を震わせていた。そんな華月を見つめ、叶も掛ける言葉が見つからずそっと片手で震える華月の肩を軽く撫でる。

「分かりました。よく勇気を出して話してくれましたね。ですが私は探偵でもありませんから朱里さんが華月さんを狙ったと暴く事は出来ません。だから華月さんに何かあったら出来る限り貴女の味方をするぐらいしか出来ません。それで大丈夫ですか?」

「……はい。少しでも私の事分かってくれてるなら、私は大丈夫です。こんなつまらない話聞いてくれてありがとうございました」

 瞳を潤ませながらもようやく笑みを見せる華月を見て叶も微笑みかける。

「ただ一つだけ約束して下さい。義人さんとは今後一切関係を持たないで下さい。基本的に私はそういうの許せないタイプなんで。それにそれが華月さんの為だと思います」

「分かりました。約束します」

 手を握られたままの叶が華月の肩を軽くぽんぽんと叩くと華月はすっと立ち上がった。
 そのまま退室を促すと、華月は笑みを浮かべて会釈し叶と共に部屋を後にする。

「話聞いてもらえたので少しだけすっきりしました」

 華月は一礼すると儚い笑みを浮かべて自分の部屋へと歩き出す。叶はそれを無言のまま見送っていた。
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