視える私と視えない君と

赤羽こうじ

文字の大きさ
71 / 88

真相④

しおりを挟む

「まぁなんとなく見えてきたわね。誰かが書いたくだらないシナリオもね」

「そうですか、ならそろそろ行きますか?幕を下ろしに」

「ええそうね。しかし色々考えるわね。三条さんを諦めて次はウチの先生をか。ほんと滑稽だわ。節操がないというか、行き当たりばったりというか」

 冷ややかな笑みを浮かべて志穂が部屋を出て行くと叶達もその後に続いた。
 階段を降りた所で丁度食堂から出てきた池江と目が合うと、志穂がにこやかに話し掛ける。

「池江さん丁度良かった。皆さんに声を掛けて食堂に集まってもらえますか?」

「陸奥方様かしこまりました。何かありましたか?」

 少し不思議そうに問い掛ける池江に対して志穂は満面の笑みで応える。

「ええ、三条さんの事とかも含めて色々とね」

「三条様の?わかりました、すぐに皆様にお声掛けして参ります」

 少し驚いた表情を見せた後、池江は慌てて踵を返すと足早に食堂を後にした。
 やがて一人また一人と食堂にやって来ては一言二言、小言を言って席に着いて行く。
 そうして十分程すると食堂に一同が会した。
 志穂が集まった人達を見渡し一礼すると、すかさず義人が口を開いた。

「陸奥方さんだったよな?いきなり集めてなんだい?」

 眉根を寄せて明らかに不機嫌そうに尋ねる義人を見つめ、志穂は一歩踏み出しもう一度深々と頭を下げる。

「ゆっくりされていた所申し訳ございません。どうしても皆様にお話しておかなければならない事がございまして少しだけお時間を頂きます」

 志穂が丁寧にお辞儀をし頭を上げると、全員の視線が自身に集まっている事を確認して笑みを浮かべた。

「まず最初に神谷崎さん。貴方、占いをメインにしている霊能者だってお話でしたけど、本当は夜の繁華街で女性をもてなしているただのホストですよね?」

「はっ?いや、何言ってるんだ?俺は占いで――」

 突然尋ねられて、神谷崎が狼狽えながら反論しようとするが、笑みを浮かべながら志穂が更に続ける。

「あぁ、もし否定されるのであればせめて店のホームページの写真なんかも削除しておくべきだったと思いますよ、レオンさん。それに貴方が複数の女性と楽しそうにお酒を飲んでいる写真もSNSにアップされていますよ?」

 そう言って志穂がホストとしてスーツ姿で酒を飲んでいる神谷崎の写真を提示すると、神谷崎はその写真を見つめ唇を噛む。

「……た、確かにホストはしている。だがそれは占いだけではやって行けないから仕方なくやっているだけで、本来は占いを生業としているんだ」

「なるほど、そういう事でしたか。いやいや、大変ですものね、霊能力だけで食べて行くのって。我々も大変ですものわかりますよ。それに加えてしのぎの仕事である筈のホストでも一千万円近くの負債を抱えてしまったんでは尚の事大変だったでしょう?」

「な、何の話だ?」

 狼狽える神谷崎だったが、志穂はにこやかな笑みを向ける。

「何の話?貴方を指名して売り掛けで飲んでいた女性が立て続けに二人も飛んだってお話ですよ」

 得意げな笑みを浮かべて志穂が言うと神谷崎は口をへの字に曲げて険しい表情を見せる。

「あちこち駆けずり回って回収を試みたようですが残念ながら女性は見つからなかった様ですね。貴方が店のナンバーワンやナンバーツーならなんとか工面出来たかもしれませんが、如何せん十位ぐらいでは厳しいですよね。焦った貴方は次に斗弥陀とパイプがあり自分を指名してくれている朱里さんに目を付けた。相談を受けた朱里さんは自分が推しているホストの為なんとかしようとしたんでしょう?」

 志穂が朱里の方を向き問い掛けると、朱里が答える前に義人が立ち上がり声を荒らげる。

「おい、朱里!お前、知り合いのホストが困ってるって言ってコイツ紹介したよな?お前が指名してるホストとか聞いてないぞ!」

「な、何よ、別にちょっとホストに行くぐらいいいでしょ!それにあんただって――」

 朱里も立ち上がり負けじと言葉を返そうとした所で笑みを浮かべて志穂が二人に近付いて行く。

「まぁまぁ、お二人の痴話喧嘩は後にしてくれませんか?後がつかえてますので」

 嫌味のような志穂の物言いに二人は口を噤み鋭い視線を向けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】

緑川
ホラー
ショートショートの寄せ集め。 幻想的から現実味溢れるものなど様々、存在。 出来の良し悪しについては格差あるので悪しからず。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

処理中です...