夏の日の出会いと別れ~霊よりも怖いもの、それは人~

赤羽こうじ

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出会い⑦

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 幸太達が海で遊んだ翌日、海水浴場では海の家もオープンし、同時に幸太達のバイトも初日を迎えていた。
 海開き当日、しかも天気も良く穏やかな波。絶好の海水浴日和を迎えた海辺は沢山の人達で賑わっていた。

 勿論幸太達がバイトする海の家にもひっきりなしに海水浴客が訪れ、オープン初日から多忙を極める。

「幸太君、焼きそば三人前追加!あとフランクフルトも十本ぐらい一気に焼いて!弘人君はイカ焼き五人前にカレーも三人前よろしく!」

「はい!」

 時刻は十二時を迎え、戦場と化した店内を楓が回しながら焼き場にいる二人に指示を出すと、二人は威勢よく返事を返していた。夏場の厳しい気温に加え、熱された鉄板の熱等もあり、調理場にいる幸太と弘人からは滝のような汗が止めどなく流れていた。

「や、やばい、死ぬ」

 鉄板の上でイカを焼きながら弘人がふらふらになって呟くと、横にいた幸太も流れる汗を拭いながら同調していた。

「間違いない。まだ体が慣れてないのにこの忙しさはあんまりだ」

 そう言いながらも幸太は笑みを浮かべていた。確かに想像以上の忙しさに忙殺されそうだったが、その忙しさがここ数日の嫌な思い出を全て忘れさせてくれた。

「幸太君、フランクフルトあと五本焼いて。焼けたやつから持って行くから。弘人とうもろこしもあと三本焼いといてくれる?」

 咲良も追加注文を告げながら出来上がった料理から順に持ち出し、店内を慌ただしく走り回っていた。そんな中、楓が更に指示を出す。

「咲良、あっちのテーブル片付けて。その後、外で待ってるお客さん入れて」

「はい、わかりました」

 指示通り咲良が客が去ったテーブルを綺麗に片付け、外で待っていたグループに声を掛ける。

「あ、すいません、お待たせしました。どう……ぞ」

 待っていたグループを案内しようと声を掛けた咲良だったが顔を曇らせ、戸惑いを見せた。

「……?入っていいんだよね?」

「あ、はい、どうぞ」

 不思議に思ったグループの男性が問い掛けると、咲良は慌てて笑顔を作りグループを案内する。男性三人が入店すると続いて女性三人も入って行く。男女合わせて六人のグループ。そのグループの最後にいた唯が咲良と目を合わせると、僅かに微笑み会釈する。
 咲良はあえて何も触れず、通常通り接客し、注文を聞くと厨房にいる二人に注文を通した。

「追加で焼きそば四、フランクフルト三、カレーが二、あとドリンク持って行きます。弘人、ちょっと来て!」

 少し乱暴に注文を通すと咲良は弘人を無理やり引っ張る。

「いや、ちょっと待てって。まだ焼いてるだろ!」
「いいからドリンク運ぶの手伝って!」

 弘人が抵抗するが、咲良はそれでも無理やり弘人を引っ張って行く。咲良が人目につかないバックヤードに弘人を連れて行った所で、弘人は引っ張る咲良の腕を振り払い、声を強める。

「いや、待てって。何怒ってんだよ一体!?」

 不快感をあらわにする弘人に対して咲良は弘人を壁に押しやり、一気に詰め寄る。

「別に弘人に怒ってるんじゃないの。ただね、私やっぱりあの女許せない。唯ちゃん、別の男達と一緒に今入って来たんだけど」

「は?嘘だろ?マジで?」

「マジで!信じられないんだけど、何考えてんのあの人?とりあえず幸太君には気付かれないで」

 そう言うと咲良は怒りを静めるように大きく息を吐くと、笑顔を作り店内へと戻って行った。少し遅れて弘人が店内に戻り、再び自分の持ち場へと帰って行く。

「大丈夫なのか?」

 戻ると幸太からそう尋ねられ、弘人は思わず戸惑いぎこちない笑顔を作る。

「えっ、な、何がだ?」

「……?何がって、咲良ちゃんだよ。凄い形相で来てたけど、もう手伝わなくても大丈夫なのか?」

「えっ、ああ、もう大丈夫みたいだ。ちょうどドリンクの注文が被ってたみたいで」

 なんとか誤魔化しながら笑顔を作る弘人を見て、幸太は首を傾げていた。
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