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告白⑨
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「……ありがとう。そう言ってくれて本当に嬉しいんだけど、返事は少し待ってくれない?今はまだ色々多過ぎて考えもまとまらないから」
「あ……はい、待ってます」
「じゃあそろそろ行こうか。私明日もバイトだしさ」
そう言って叶が立ち上がり、幸太も続けて立ち上がる。
「送ってくれる?」
「もちろん」
短いやり取りの後、二人並んで歩いて行く。
出来ればもう少し二人でいたい――。
そんな幸太の想いとは裏腹に気が付けば先日叶と別れた場所まで来てしまっていた。
「あ、あの叶さん、えっと……」
なんとか二人の時間を引き伸ばしたい幸太だったが上手く言葉が繋げられずしどろもどろになっていると、叶が笑みを浮かべて振り返る。
「幸太君、今日はマンションの前まで送ってもらってもいい?」
叶からの願ってもない要望に力強く頷く幸太だったが、なんとか叶との時間を長くしたいと願うあまり空回りしてしまい、先程までの様に自然な楽しい会話が重ねられなくなっていた。
そして幸太が空回りしたまま、あるマンションの前まで来た所で叶が足を止め幸太の方へ向き直る。
「さて、ここが私のマンション。今日はありがとうね幸太君」
「あ、ここなんだ……えっと……」
幸太が少し残念そうな表情を浮かべ次の言葉を探すが、それを察したかの様に叶が笑顔で首を傾げる。
「幸太君、なんとなく分かるんだけどもっと自然体でいてほしいな。今日で私達って今生の別れだったっけ?」
「いや、まさか、明日俺も海の家に顔出す予定だし」
「そうだよね。自然体の幸太君の方が私は好きだな。じゃあ今日はありがとう。ごめんね、おやすみ」
そう言って膝に手をつき、少し前屈みになりながら手を振る叶に幸太もはにかみながら手を振った。
「うん、おやすみ。また明日」
マンションに入って行く叶を見送ると幸太も振り返り自転車に跨った。
『好きって言ってくれたよな?返事は保留されたけど、可能性は十分だよな。ただ最後のごめんねは何に対してだ?』
少しぼんやりと考えながら幸太も帰路に着いた。
一方部屋に戻った叶はシャワーを浴びると冷蔵庫にあった缶ビールを片手にソファへと腰を下ろす。
「部屋に帰ってきて、おつまみつまみながら缶ビール飲んでる姿見られたら少しは幸太君幻滅するかな?」
笑みを浮かべてそんな事を呟きながら更にビールをもう一口喉に流し込む。
「ふふふ、『好きです、付き合ってくれませんか』か……幸太君らしいね。肩でも抱かれてキスぐらいされるのかってちょっと思ったんだけどね……ははは、何期待してるんだろう私」
一人呟きながらふと、昔を思い出す。
在りし日の叶が部屋に戻ると鍵はかかっていなかった。
「なんだ先に帰ってたんなら連絡くれたら良かったのに――」
そう言って叶が部屋に入ると部屋には誰もおらず真っ暗で、リビングにある机には一通の手紙と部屋の鍵が残されていた。
手紙には『ごめん、もう無理だ』『限界だ』『君は異常だ』と同居人の悲痛な叫びが並んでいた。それを読んだ叶は全てを悟り、誰もいなくなった暗い部屋で一人佇み、感情を押し殺す様に口角を上げる。
「……所詮そんな物よね……」
頬を伝う一筋の涙を拭う事なく、叶は冷笑を浮かべながら呟いていた。
「あの時、そういうのにはもう懲りたのにね、私は何を期待してるんだか……思わせぶりな態度取って彼の優しさにつけ込んで、本当最低だな私は。ひと夏の恋か……もし君がそういうの求めてるんなら私はそれでもいいんだけどな。その方が後腐れなくて気楽だし……でも君が求めてるのは違うのかな?」
叶が今日の事を思い出しながら一人呟いて、自虐的な笑みを浮かべる。
「あ……はい、待ってます」
「じゃあそろそろ行こうか。私明日もバイトだしさ」
そう言って叶が立ち上がり、幸太も続けて立ち上がる。
「送ってくれる?」
「もちろん」
短いやり取りの後、二人並んで歩いて行く。
出来ればもう少し二人でいたい――。
そんな幸太の想いとは裏腹に気が付けば先日叶と別れた場所まで来てしまっていた。
「あ、あの叶さん、えっと……」
なんとか二人の時間を引き伸ばしたい幸太だったが上手く言葉が繋げられずしどろもどろになっていると、叶が笑みを浮かべて振り返る。
「幸太君、今日はマンションの前まで送ってもらってもいい?」
叶からの願ってもない要望に力強く頷く幸太だったが、なんとか叶との時間を長くしたいと願うあまり空回りしてしまい、先程までの様に自然な楽しい会話が重ねられなくなっていた。
そして幸太が空回りしたまま、あるマンションの前まで来た所で叶が足を止め幸太の方へ向き直る。
「さて、ここが私のマンション。今日はありがとうね幸太君」
「あ、ここなんだ……えっと……」
幸太が少し残念そうな表情を浮かべ次の言葉を探すが、それを察したかの様に叶が笑顔で首を傾げる。
「幸太君、なんとなく分かるんだけどもっと自然体でいてほしいな。今日で私達って今生の別れだったっけ?」
「いや、まさか、明日俺も海の家に顔出す予定だし」
「そうだよね。自然体の幸太君の方が私は好きだな。じゃあ今日はありがとう。ごめんね、おやすみ」
そう言って膝に手をつき、少し前屈みになりながら手を振る叶に幸太もはにかみながら手を振った。
「うん、おやすみ。また明日」
マンションに入って行く叶を見送ると幸太も振り返り自転車に跨った。
『好きって言ってくれたよな?返事は保留されたけど、可能性は十分だよな。ただ最後のごめんねは何に対してだ?』
少しぼんやりと考えながら幸太も帰路に着いた。
一方部屋に戻った叶はシャワーを浴びると冷蔵庫にあった缶ビールを片手にソファへと腰を下ろす。
「部屋に帰ってきて、おつまみつまみながら缶ビール飲んでる姿見られたら少しは幸太君幻滅するかな?」
笑みを浮かべてそんな事を呟きながら更にビールをもう一口喉に流し込む。
「ふふふ、『好きです、付き合ってくれませんか』か……幸太君らしいね。肩でも抱かれてキスぐらいされるのかってちょっと思ったんだけどね……ははは、何期待してるんだろう私」
一人呟きながらふと、昔を思い出す。
在りし日の叶が部屋に戻ると鍵はかかっていなかった。
「なんだ先に帰ってたんなら連絡くれたら良かったのに――」
そう言って叶が部屋に入ると部屋には誰もおらず真っ暗で、リビングにある机には一通の手紙と部屋の鍵が残されていた。
手紙には『ごめん、もう無理だ』『限界だ』『君は異常だ』と同居人の悲痛な叫びが並んでいた。それを読んだ叶は全てを悟り、誰もいなくなった暗い部屋で一人佇み、感情を押し殺す様に口角を上げる。
「……所詮そんな物よね……」
頬を伝う一筋の涙を拭う事なく、叶は冷笑を浮かべながら呟いていた。
「あの時、そういうのにはもう懲りたのにね、私は何を期待してるんだか……思わせぶりな態度取って彼の優しさにつけ込んで、本当最低だな私は。ひと夏の恋か……もし君がそういうの求めてるんなら私はそれでもいいんだけどな。その方が後腐れなくて気楽だし……でも君が求めてるのは違うのかな?」
叶が今日の事を思い出しながら一人呟いて、自虐的な笑みを浮かべる。
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