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二人きりの旅行⑥
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叶が隣の部屋に移り暫く経ったが、幸太は一人眠れずにいた。
駄目だ寝れそうにないな……叶さんは寝たのか?話し掛けてみるか?――。
幸太がそんな事を考えていると隣から子供が走る様な足音と笑い声が聞こえてきた。
「昼間の子供かな?元気だな。いいな無邪気で、俺なんか上手く行ってるかどうかも分からずリゾートホテルまで来て悩んでんのに」
足音や笑い声を遮る様に幸太は頭から布団を被る。
だが再び子供の足音と笑い声が響いてきた。
「……元気だな、もう十一時も回ってるのに。少しぐらい親も注意してくれたらいいのに、俺は今人生の岐路に立たされて悩んでるんだぞ」
幸太が一人呟き笑っていたが足音や笑い声は止む気配は全くなかった。
そんな時幸太がふと気付いた。足音や笑い声が大き過ぎる。それにこの部屋は角部屋であり、音がする方向には他の客室や廊下はなかった。あるとすればこの部屋の中に入った所にある小さく短い廊下だ。
そう考えればこの騒音の大きさも理解出来る。だがそれは同時に、この部屋に自分と叶以外に子供が入って来ている事を意味している。
それに気付いた瞬間、幸太の背筋がゾクリとして、全身に鳥肌が立つ。自分を落ち着ける様にゆっくりと呼吸をすると、震える声をひそめて叶に呼び掛けた。
「か、叶さん、起きてますか?……叶さん……」
幸太の呼び掛けに少し遅れてゆっくりと襖が開いた。
「起きてるよ、君が夜這いしてきたらどうしようかと思ったら眠れなくて」
「えっ?いや、そんな……」
叶がえも言われぬ笑みを浮かべると、幸太は更に戸惑いを見せる。
「ふふ、冗談だよ、ごめんごめん。怖かった?そりゃ怖いか。そこで待ってて、私は私にしか出来ない事しなきゃいけないからさ」
叶は笑みを浮かべて立ち上がると、廊下に通じる襖を開けた。そのまま部屋の廊下に出ると出入口とは反対の方へと歩んで行く。
「やっぱり君か。何してるの?お姉ちゃんはね慣れてるからまぁ平気なんだけど、あっちのお兄ちゃんは慣れてなくてさ――」
叶の優しい声が響く。幸太は呆気に取られていたが、気になり廊下を覗くと、叶がしゃがみ込んで笑顔を作りながら一人で話し込んでいた。この時、幸太には見えない何かがそこにはいて、叶はそれに話し掛けているのだろうという事は何となく理解した。
「これが心霊現象ってやつか……」
幸太は呟き何かに話し掛けている叶を見つめる。そこには子供を撫でる様な仕草をしながら笑顔を浮かべる叶の姿があった。
何故かこの時、幸太の中では恐怖よりも安堵の気持ちの方が大きかった。
「別に怖くなかったですよ。驚いただけです……」
そう小さく呟くと、急に眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。
どれ程眠ってしまったのか分からなかったが気が付くと叶に優しく起こされていた。
「幸太君、そんな所で座ったまま寝てたら体おかしくなるよ。お布団行かなきゃ」
寝ぼけながら周りを見渡すと、まだ暗く部屋は静まり返っていた。
「ああ、何時?」
「今は夜中の三時過ぎ。さぁ布団で寝ないと」
「ああ、うん。叶さんは?」
「私ももう寝るよ勿論。君が寝てくれないと私は安心して寝れないからさ」
「……どういう意味ですか?」
「ふふふ、さぁいいから早く寝よ」
笑顔で促され布団に移ると幸太はすぐに眠りについた。
駄目だ寝れそうにないな……叶さんは寝たのか?話し掛けてみるか?――。
幸太がそんな事を考えていると隣から子供が走る様な足音と笑い声が聞こえてきた。
「昼間の子供かな?元気だな。いいな無邪気で、俺なんか上手く行ってるかどうかも分からずリゾートホテルまで来て悩んでんのに」
足音や笑い声を遮る様に幸太は頭から布団を被る。
だが再び子供の足音と笑い声が響いてきた。
「……元気だな、もう十一時も回ってるのに。少しぐらい親も注意してくれたらいいのに、俺は今人生の岐路に立たされて悩んでるんだぞ」
幸太が一人呟き笑っていたが足音や笑い声は止む気配は全くなかった。
そんな時幸太がふと気付いた。足音や笑い声が大き過ぎる。それにこの部屋は角部屋であり、音がする方向には他の客室や廊下はなかった。あるとすればこの部屋の中に入った所にある小さく短い廊下だ。
そう考えればこの騒音の大きさも理解出来る。だがそれは同時に、この部屋に自分と叶以外に子供が入って来ている事を意味している。
それに気付いた瞬間、幸太の背筋がゾクリとして、全身に鳥肌が立つ。自分を落ち着ける様にゆっくりと呼吸をすると、震える声をひそめて叶に呼び掛けた。
「か、叶さん、起きてますか?……叶さん……」
幸太の呼び掛けに少し遅れてゆっくりと襖が開いた。
「起きてるよ、君が夜這いしてきたらどうしようかと思ったら眠れなくて」
「えっ?いや、そんな……」
叶がえも言われぬ笑みを浮かべると、幸太は更に戸惑いを見せる。
「ふふ、冗談だよ、ごめんごめん。怖かった?そりゃ怖いか。そこで待ってて、私は私にしか出来ない事しなきゃいけないからさ」
叶は笑みを浮かべて立ち上がると、廊下に通じる襖を開けた。そのまま部屋の廊下に出ると出入口とは反対の方へと歩んで行く。
「やっぱり君か。何してるの?お姉ちゃんはね慣れてるからまぁ平気なんだけど、あっちのお兄ちゃんは慣れてなくてさ――」
叶の優しい声が響く。幸太は呆気に取られていたが、気になり廊下を覗くと、叶がしゃがみ込んで笑顔を作りながら一人で話し込んでいた。この時、幸太には見えない何かがそこにはいて、叶はそれに話し掛けているのだろうという事は何となく理解した。
「これが心霊現象ってやつか……」
幸太は呟き何かに話し掛けている叶を見つめる。そこには子供を撫でる様な仕草をしながら笑顔を浮かべる叶の姿があった。
何故かこの時、幸太の中では恐怖よりも安堵の気持ちの方が大きかった。
「別に怖くなかったですよ。驚いただけです……」
そう小さく呟くと、急に眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。
どれ程眠ってしまったのか分からなかったが気が付くと叶に優しく起こされていた。
「幸太君、そんな所で座ったまま寝てたら体おかしくなるよ。お布団行かなきゃ」
寝ぼけながら周りを見渡すと、まだ暗く部屋は静まり返っていた。
「ああ、何時?」
「今は夜中の三時過ぎ。さぁ布団で寝ないと」
「ああ、うん。叶さんは?」
「私ももう寝るよ勿論。君が寝てくれないと私は安心して寝れないからさ」
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「ふふふ、さぁいいから早く寝よ」
笑顔で促され布団に移ると幸太はすぐに眠りについた。
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