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海女④
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翌日。
その日も海の家は大盛況となっていた。
「幸太君まだあと焼きそば三人前と焼き鳥も五本追加して」
「了解。あっ丁度これ焼けたから持って行って」
「OK」
幸太が焼きながら出来上がった商品を手渡すと、叶も笑顔で受け取り客席へと運んで行く。
そんな二人のやり取りを見ていた咲良がそっと叶に近付く。
「叶さん、ちょっとあっちのテーブル片すの手伝ってもらっていいですか?」
「ああOK、いいよ」
そう言って二人で空いた席に行き片付けを始める。テーブルを拭く叶に咲良は椅子を拭きながら近付くと、叶の耳元で囁く様に話し掛けた。
「ねぇねぇ叶さん、幸太君とやったの?」
「ぶふっ……」
咲良の直球過ぎる質問に思わず叶がむせた後、少し眉毛をひくつかせながら眉を八の字にさせていた。
「咲良ちゃん、質問がストレート過ぎるって。もう少しオブラートに包んでくれない?そしてまだしてないからね」
「はは、いやぁまぁ私と叶さんにしか聞こえないだろうからいいかなって。そうなんだ、なんか幸太君との距離が縮まってるような気がしたからしたのかなぁって思って。昨日泊まりで隣町に行ってたんですよね?」
「まぁ行ってたけど何もなかったよ。色々あったけどね」
「色々?」
「それは二人だけの秘密だって」
「えっ気になるって」
叶と咲良が二人で楽しそうに笑ってあるのを、幸太は少し離れた焼き場から見つめていた。
楽しそうだな。ただあの感じろくな事話してなさそうだけど――。
二人の表情や雰囲気から、幸太はそんな事を考えていた。
その後ピークをやや過ぎた十四時頃、叶が楓に話し掛ける。
「楓さん、私そろそろ上がっていいですか?」
「ああそっか、今日は用事があるんだったね。いいよ、お疲れ様」
楓との会話を交わすと叶は頭を下げてバックヤードへと下がる。暫くして帰り支度を済ませた叶は全員に声を掛けると、最後に幸太の元へと歩み寄った。
「ごめん、今日は先に上がるね」
「ああうん、お疲れ様。今から約束の人の所に行くんだよね?」
幸太が眉根を寄せて少し心配そうな素振りを見せると、叶も眉尻を下げて優しく微笑む。
「そんな心配しなくても大丈夫だって。ちょっと話聞いたら帰ってくるからさ。また連絡するから君も私がいないからって黙って遊びに行ったりしないでね。特に知らない二人組の女の子達とかとさ」
「いやそんな事しないって」
「本当かな?」
そう言って悪戯っぽく笑い叶は海の家を後にした。
残された幸太達はその後もいつも通り営業を続け、夕方十七時を回った頃にその日の営業を終了した。
昼過ぎには晴れていた青い夏空は、何時しか灰色のぶ厚い雲に覆われていた。
そんな空を見上げて咲良が気だるそうに呟く。
「ああ、予報通り天気悪くなりそう」
「テレビじゃ相当荒れるって言ってたからね。咲良、弘人君と幸太君も、悪いけど外にあるテーブルと椅子も中に入れてくれない?ちゃんと対策しとかなきゃ飛ばされそうだし」
楓が指示を出すと、三人は頷き言わた通り外にあるテーブルや椅子、それに備品等を店内に運び込んで行く。
既に外では風が少し吹き始め、嵐の到来を予感させていた。
「これは明日は休みにしとこうか。まぁまた連絡するけど、予報が外れて明日晴れたら営業するかもしれないけど基本休みだと思っといて」
楓からそう言われ三人は頷き、その後海の家を後にする。
「ねぇ幸太君、叶さんは?」
「叶さんは今日用事があるから。また終わったら連絡くれるとは思うけど」
「そうなんだ。明日休みだし良かったら四人で何処かでご飯でもって思ったんだけど」
少し残念そうにしている咲良を見て幸太も少し考える。
確かに四人でゆっくり食事とかしてないか。でも叶さんも疲れてるだろうし、何よりこれから天気も荒れそうだしな――。
「まぁ今日は仕方ないんじゃないかな。それにどんどん風なんかも強くなってきてるし」
「まぁ確かに幸太の言う通り今日はやめといた方が良さそうだな」
「まぁそうね仕方ない。幸太君、また四人で飲みに行きたいって叶さんに言っといてね」
「了解」
最後は咲良が屈託のない笑顔を見せてそれぞれが帰路に就いた。
その日も海の家は大盛況となっていた。
「幸太君まだあと焼きそば三人前と焼き鳥も五本追加して」
「了解。あっ丁度これ焼けたから持って行って」
「OK」
幸太が焼きながら出来上がった商品を手渡すと、叶も笑顔で受け取り客席へと運んで行く。
そんな二人のやり取りを見ていた咲良がそっと叶に近付く。
「叶さん、ちょっとあっちのテーブル片すの手伝ってもらっていいですか?」
「ああOK、いいよ」
そう言って二人で空いた席に行き片付けを始める。テーブルを拭く叶に咲良は椅子を拭きながら近付くと、叶の耳元で囁く様に話し掛けた。
「ねぇねぇ叶さん、幸太君とやったの?」
「ぶふっ……」
咲良の直球過ぎる質問に思わず叶がむせた後、少し眉毛をひくつかせながら眉を八の字にさせていた。
「咲良ちゃん、質問がストレート過ぎるって。もう少しオブラートに包んでくれない?そしてまだしてないからね」
「はは、いやぁまぁ私と叶さんにしか聞こえないだろうからいいかなって。そうなんだ、なんか幸太君との距離が縮まってるような気がしたからしたのかなぁって思って。昨日泊まりで隣町に行ってたんですよね?」
「まぁ行ってたけど何もなかったよ。色々あったけどね」
「色々?」
「それは二人だけの秘密だって」
「えっ気になるって」
叶と咲良が二人で楽しそうに笑ってあるのを、幸太は少し離れた焼き場から見つめていた。
楽しそうだな。ただあの感じろくな事話してなさそうだけど――。
二人の表情や雰囲気から、幸太はそんな事を考えていた。
その後ピークをやや過ぎた十四時頃、叶が楓に話し掛ける。
「楓さん、私そろそろ上がっていいですか?」
「ああそっか、今日は用事があるんだったね。いいよ、お疲れ様」
楓との会話を交わすと叶は頭を下げてバックヤードへと下がる。暫くして帰り支度を済ませた叶は全員に声を掛けると、最後に幸太の元へと歩み寄った。
「ごめん、今日は先に上がるね」
「ああうん、お疲れ様。今から約束の人の所に行くんだよね?」
幸太が眉根を寄せて少し心配そうな素振りを見せると、叶も眉尻を下げて優しく微笑む。
「そんな心配しなくても大丈夫だって。ちょっと話聞いたら帰ってくるからさ。また連絡するから君も私がいないからって黙って遊びに行ったりしないでね。特に知らない二人組の女の子達とかとさ」
「いやそんな事しないって」
「本当かな?」
そう言って悪戯っぽく笑い叶は海の家を後にした。
残された幸太達はその後もいつも通り営業を続け、夕方十七時を回った頃にその日の営業を終了した。
昼過ぎには晴れていた青い夏空は、何時しか灰色のぶ厚い雲に覆われていた。
そんな空を見上げて咲良が気だるそうに呟く。
「ああ、予報通り天気悪くなりそう」
「テレビじゃ相当荒れるって言ってたからね。咲良、弘人君と幸太君も、悪いけど外にあるテーブルと椅子も中に入れてくれない?ちゃんと対策しとかなきゃ飛ばされそうだし」
楓が指示を出すと、三人は頷き言わた通り外にあるテーブルや椅子、それに備品等を店内に運び込んで行く。
既に外では風が少し吹き始め、嵐の到来を予感させていた。
「これは明日は休みにしとこうか。まぁまた連絡するけど、予報が外れて明日晴れたら営業するかもしれないけど基本休みだと思っといて」
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「叶さんは今日用事があるから。また終わったら連絡くれるとは思うけど」
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「まぁ確かに幸太の言う通り今日はやめといた方が良さそうだな」
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「了解」
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