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海女③
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その後喫茶店を出た二人は普段生活するいつもの街へと帰って来た。
日は傾き夕焼けに照らされた街は、全体がオレンジ色に照らしだされており、そんな自然が作り出す幻想的な一時を二人並んで歩いて行く。駅からまっすぐ伸びる道を二人会話を重ねながら歩いていると、とあるバス停で叶が足を止めた。
「ねぇ幸太君、ここ覚えてる?」
叶が笑顔で問い掛けると、幸太は頭を描きながら苦笑いを浮かべた。
「叶さんと初めて会ったバス停ですね」
「そう、あの時はまさか地縛霊と見間違うような人と付き合う事になるとは流石に思わなかったわ」
そう言って叶は少し意地悪そうに笑った。
「はは、俺もあの時話し掛けてくれた綺麗な人が彼女になってくれるなんて思わなかったかな。何よりあの時はまた人を好きになるなんて思わなかったし……叶さんと出会えて本当に良かった」
「ふふふ……まぁ私もかな」
そう言って赤い夕焼けをバックに満面の笑みを見せる叶を見て幸太は思わず見惚れてしまう。
「ねぇ、本当はもう少し君と一緒にいたいような気もするんだけど、今日はそろそろ送ってくれる?」
「えっ?もう帰る感じ?」
「うん、ごめんね。実はこれでも結構疲れてるんだ。昨日も寝不足だし帰ってゆっくりしたくてさ。一人になって考えもまとめたいし。君の部屋か私の部屋で二人でゆっくりするのもありかもしれないけど……君に余計に疲れる事させられそうだし」
最後は再び意地悪そうに笑う叶を見て、幸太も苦笑いを浮かべていた。
結局二人はそのまま叶をマンションまで送って行きそこで別れる事となった。
「ありがとうね。我儘ばかり言ってごめんね」
「いや大丈夫だよ。また帰ったら連絡するからゆっくり休んで」
「そうさせてもらう。じゃあね」
笑顔で手を振りマンションに入って行く叶を見送り幸太も帰路に就いた。そのまままっすぐアパートに戻った幸太がソファに腰を下ろすと、一気に疲れが押し寄せて来る。ひとまず部屋に戻った事を叶に知らせる為にスマホを取り出しメッセージを送る。だが余程疲れていたのか、叶からの返信を待たずして幸太は何時しかそのままソファで眠りについてしまった。
そして幸太は夢を見る。
夜の浜辺で佇んでいると突然女性から頭を殴りつけられた。訳が分からないまま殴られた頭を押さえると、手にはべっとりと血がついていた。赤く染まった手を見て震えていると、もう一度女性は殴りつけ、倒れた所を馬乗りになり首を絞めてくる。振りほどこうと女性の腕を握るが力が入らず女性は渾身の力で首を締め続けてきた。
「やめろ!」
思わず叫び、ソファの上で飛び起きる。全身は汗でびっしょりとなり呼吸も荒れていた。ため息をつきながら頭を抱える様に髪をかきあげる。
「はぁ、なんなんだよまったく」
誰に対してでもなく呟いた幸太の声が暗い部屋に響いた。夢に出てきた女性を思い出そうとするが、女性の顔ははっきりとは思い出せなかった。
暫く部屋で一人、呆けていた幸太だったがふと思い出し、慌ててスマホを手に取り時間を確認する。時刻は既に日付を跨いでおり、午前一時になろうとしていた。
メッセージを確認するとスマホには叶から既に返信が来ていた。
(お帰りなさい。幸太君が無事帰宅出来たなら私も安心してゆっくり休めます。昨日今日と色々ありがとう、明日からまたバイト一緒に頑張ろうね)
叶からのメッセージを見て思わず笑みがこぼれる。
だが幸太は慌ててメッセージを返した。
(ごめん、いつの間にか寝てた。俺も叶さんと一緒にいれて嬉しかった。また明日からバイトだけど一緒にいれるから頑張ります)
その後幸太は叶からの返信を暫く待ったが返事は来ず、諦めてシャワーを浴びると再びベッドで眠りについた。
日は傾き夕焼けに照らされた街は、全体がオレンジ色に照らしだされており、そんな自然が作り出す幻想的な一時を二人並んで歩いて行く。駅からまっすぐ伸びる道を二人会話を重ねながら歩いていると、とあるバス停で叶が足を止めた。
「ねぇ幸太君、ここ覚えてる?」
叶が笑顔で問い掛けると、幸太は頭を描きながら苦笑いを浮かべた。
「叶さんと初めて会ったバス停ですね」
「そう、あの時はまさか地縛霊と見間違うような人と付き合う事になるとは流石に思わなかったわ」
そう言って叶は少し意地悪そうに笑った。
「はは、俺もあの時話し掛けてくれた綺麗な人が彼女になってくれるなんて思わなかったかな。何よりあの時はまた人を好きになるなんて思わなかったし……叶さんと出会えて本当に良かった」
「ふふふ……まぁ私もかな」
そう言って赤い夕焼けをバックに満面の笑みを見せる叶を見て幸太は思わず見惚れてしまう。
「ねぇ、本当はもう少し君と一緒にいたいような気もするんだけど、今日はそろそろ送ってくれる?」
「えっ?もう帰る感じ?」
「うん、ごめんね。実はこれでも結構疲れてるんだ。昨日も寝不足だし帰ってゆっくりしたくてさ。一人になって考えもまとめたいし。君の部屋か私の部屋で二人でゆっくりするのもありかもしれないけど……君に余計に疲れる事させられそうだし」
最後は再び意地悪そうに笑う叶を見て、幸太も苦笑いを浮かべていた。
結局二人はそのまま叶をマンションまで送って行きそこで別れる事となった。
「ありがとうね。我儘ばかり言ってごめんね」
「いや大丈夫だよ。また帰ったら連絡するからゆっくり休んで」
「そうさせてもらう。じゃあね」
笑顔で手を振りマンションに入って行く叶を見送り幸太も帰路に就いた。そのまままっすぐアパートに戻った幸太がソファに腰を下ろすと、一気に疲れが押し寄せて来る。ひとまず部屋に戻った事を叶に知らせる為にスマホを取り出しメッセージを送る。だが余程疲れていたのか、叶からの返信を待たずして幸太は何時しかそのままソファで眠りについてしまった。
そして幸太は夢を見る。
夜の浜辺で佇んでいると突然女性から頭を殴りつけられた。訳が分からないまま殴られた頭を押さえると、手にはべっとりと血がついていた。赤く染まった手を見て震えていると、もう一度女性は殴りつけ、倒れた所を馬乗りになり首を絞めてくる。振りほどこうと女性の腕を握るが力が入らず女性は渾身の力で首を締め続けてきた。
「やめろ!」
思わず叫び、ソファの上で飛び起きる。全身は汗でびっしょりとなり呼吸も荒れていた。ため息をつきながら頭を抱える様に髪をかきあげる。
「はぁ、なんなんだよまったく」
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だが幸太は慌ててメッセージを返した。
(ごめん、いつの間にか寝てた。俺も叶さんと一緒にいれて嬉しかった。また明日からバイトだけど一緒にいれるから頑張ります)
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