怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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廃村 心霊スポット巡り④

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 人気のない真っ暗な山中で、懐中電灯の明かりを頼りに私達三人はゆっくりと歩みを進めて行く。
 途中ひび割れたアスファルトからいくつも雑草が伸びており、人の手が長年入っていないのを感じさせた。

 そうして暫く歩いて行き、少し開けた場所に出た所で懐中電灯を持っていた祐司君が足を止めた。

「ここが入口みたいだな」

 そう言って祐司君が懐中電灯で照らす先には『ようこそワンダーランドへ』と書かれた錆びた支柱のような物が立っていた。そしてそこに一緒に描かれていた猫をモチーフにしたようなキャラクターが薄くなって消えかかっているのを見て、寂しさを一層感じてしまう。

 私達は入口の支柱を超えてゆっくりと遊園地跡地へと足を踏み入れて行く。
 遊園地跡地内も雑草が生い茂り荒れ果てていた。私達はそんな雑草をかき分けながらゆっくりと進み目的のメリーゴーランドと観覧車を探して歩みを進めて行く。

 そうして暫く歩いた所で私達は足を止めた。
 いきなり目的の一つ、メリーゴーランドが目の前に現れたのだ。

 それはあまりにも呆気なく私達の目の前に現れ、朽ち果てた木馬達は怖さよりも寂しさを感じさせた。

 私達はひとまずメリーゴーランドの周りをゆっくりと一周回ってみる事にした。
 ここを訪れた人達が雑草等を踏みならしていたせいもあって、メリーゴーランド周辺だけは草木等をかき分ける事もなく簡単に一周回る事が出来た。

「なんか特に何もなかったよな」

「そうだね」

 祐司君がやや残念そうに呟き、私達も苦笑いしながら頷いていた。

 私達は仕方なくもう一つの目的である観覧車を探して歩き出した。
 ここは遊園地跡地とはいうものの、山奥にある小さな遊園地であり、遊園地というにはあまりに小さく、寧ろ広場にちょっとした遊具があるという感じだった。
 だから私達は観覧車もすぐに見つかるだろうと軽く考えていた。

 だが十分、十五分と探しても観覧車は見つからず私達は途方に暮れた。

「えっ?本当にあるよな?」

「そのはずなんだけどな」

 不安になったのか、透が尋ねたが祐司君も自信なさげに不明瞭な答えを口にして苦笑いを浮かべるだけだった。

 私達は少し休憩した後、再び観覧車を探して歩き回った。だがやはり観覧車は見つからず、私達はメリーゴーランドがあった場所へと戻って来てしまった。

「もうメリーゴーランドしかないのか?」

「ひょっとしたら観覧車は撤去されたとか?」

 そんな事を口にしながら私達がメリーゴーランドの周りをなんとなく歩いていると、透が何かに気付き歩みを止めた。

「あれ?ひょっとしてこっちに行けるんじゃないか?」

 そう言って透が懐中電灯で生い茂る雑草を照らすと、メリーゴーランドの真裏辺りだけ微かに雑草が折れ曲がり道のようになっているのがわかった。

 懐中電灯でその先を照らしてみるが暗闇が広がるばかりで何も見当たらない。
 それでも私達はその微かに出来た雑草の道を進んで行く事にした。
 この先に何かがある。
 そんな予感が確かにしていたのだ。
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