怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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廃村 心霊スポット巡り⑬

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 若干の気味悪さを感じながらも、私と透が苦笑いを浮かべて互いに笑いあっていた時だった。

「あれ何だろな?」

 おもむろに祐司君が呟き建物の奥へと入って行った。
 私と透は驚きのあまり声も掛けれず、奥へと歩いて行く祐司君を見つめていた。

 なんで入って行けるの?普通どう考えてもおかしいってば……大丈夫だよね?――。

「……ゆ、祐司君危ないって」

 ようやく私が声を掛ける頃には祐司君は姿見鏡の前で転がる手毬に手を伸ばしていた。
 危ないと声を掛けたが、私はその場からは動けなかった。それは古くなったこの小さな建物が崩れる危険性もあったが、何よりも様々な心霊現象が頭をよぎり、これ以上足を踏み出す事を躊躇させていた。

「……ああ、大丈夫。ただの手毬みたいだ」

 祐司君は徐に手毬を掴みこちらを見つめ笑顔を見せると、そのまま手に取った手毬を二度、三度と床につき始めた。

 その光景を目の当たりにし、私と透は絶句した。

 普通ならこんな今にも崩れる可能性がある建物内で手毬をつけば、その小さな振動でもこの建物に与える影響は少なくないとわかる筈だ。
 なのに祐司君は今、何の躊躇いもなく手毬をつき、あまつさえ笑顔まで浮かべている。

 祐司君の奇行ともいえる行動を何も言えずにただ見つめるしか出来なかった私だったが、傍らにいた透は建物の中へと足を踏み入れると、足早に祐司君の元へと駆け寄って行く。

「祐司、行くぞ!出るんだ!」

 祐司君の腕を掴み語気を強めると、透は祐司君をなかば強引に引っ張り、私達はそのまま建物の外まで出た。

 既に辺りは暗くなり始めており、私と透は互いの顔を見合わせた後、祐司君へ視線をやる。
 祐司君はやや笑みを浮かべたまま特に微動だにしていなかった。

「……そろそろ戻ろう」

 透が静かにそう言うと、祐司君も笑みを浮かべながら頷いていた。

 私達は薄暮の山中を慎重に歩きながら進んで行く。先程から透は眉根を寄せて難しい表情をしたまま口を開かず、私は何も言えないまま静かに後をついて行った。

 重苦しい雰囲気の中、私達は一列になって歩いて行く。落ちている枯葉や小枝を踏む度に、静かな山中に乾いた音が響いていた。

 この不穏な空気の原因は最後尾で無言のまま笑みを浮かべている祐司君である事は明白だった。

 何かがおかしい――。

 きっと透も感じている筈だったが、それを口にする事は出来なかった。

 重い足取りでようやく車まで戻って来れた私達は素早く車に乗り込もうと私は後部座席のドアノブに手を掛けた。
 そして祐司君も当然のように運転席に回り込む。

「おい、俺が運転しようか?」

 思わず透が声を掛ける。
 それはそうだ。何処か違和感を感じる祐司君にハンドルを握らすのは流石に気が気でない。
 だが祐司君は笑みを浮かべて首を横に振る。

「いやいや、何言ってるんだ?俺の車なんだからお前は助手席に座ってろって」

 そう言って祐司君は意に介さず、透の答えも聞かぬままさっさと運転席に乗り込んでしまった。
 仕方なく透は唇を噛みながら助手席に座り、私も渋々後部座席へ乗り込む。

「さぁ行くか」

 祐司君はゆっくりと車を発進させた。
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