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後日談 完
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【 side とある隊員 】
南東の森での魔物討伐作戦が開始された。
俺が所属する第四部隊が中心になって森に出現した魔物たちを狩っていく。その中でもアルフリック副隊長の魔法は群を抜いて強力で、群れで出てきたファイヤウルフを一人で全て倒してしまうほどだ。あれほどの魔法を連発していたらすぐに魔力が尽きてしまうはずなのに森の深部に近付くにつれ強くなっていく魔物をほぼ一人でバタバタと倒して進んでいく。
いくら何でもあの魔力はおかしい、流石にもう底をついているはずだと周りも思い始めた頃、酷い焼け跡が残るひらけた場所に辿り着いた。そこには焦げた匂いが漂いあちこちまだ燃えていてそう遠くない場所に魔物が潜んでいる可能性があった。
案の定すぐ近くから獣の咆哮が聞こえて木々の奥からバキバキと物をへし折る音とともに熱気が押し寄せ巨体が姿を現した。
それは炎を纏った巨大なフレイムグリズリーだった。熊型の魔物の最上位種であるその魔物は小さな町くらいは滅ぼしてしまえるほど凶悪な存在だ。
しかもそんな魔物が二体出現した。最悪の状況に隊員内に緊張が走り死さえ覚悟した者もいる中、魔力切れなはずのアルフリック副隊長が前に出た。
「レイナード!」
「はい! アルフリック様!」
いきなり副隊長が自分の部下を呼び側に来たその男を抱き寄せた。あの男はつい最近副隊長の直属に任命されたしかもその副隊長の婚約者だったはずだ。元補給部隊の下っ端を呼び寄せていったいどうするつもりなんだ?
その無謀すぎる行動に周りが引き留めようとしたとき、副隊長が突進してくるフレイムグリズリーに向かって水属性魔法を撃った。
放たれた魔法は巨大な水の竜巻となり二体のフレイムグリズリーをまとめてのみ込んでしまった。竜巻には鋭い氷の塊も含まれていて纏っていた炎を消されたフレイムグリズリーを切り裂いていく。こんな強大な水属性魔法など見たことが無い。その光景を呆然と見上げているとしばらくは聞こえていた魔物の断末魔も途絶え、竜巻が消えたそこには無残に切り刻まれたフレイムグリズリーの死体が転がっていた。
結果その二体のフレイムグリズリーが今回の魔物大量発生のボスだったようで、討伐任務はあっけなく終了となった。
……俺たち要らなかったんじゃないか?
「アルフリック!! なぜレイナードを最前線に呼んだ!」
後始末を始めているとシグフリード部隊長がやって来て開口一番に副隊長を怒鳴りつけている。そういえばアルフリック副隊長の婚約者は部隊長と養子縁組もして侯爵家の三男に収まったんだった。部隊長は息子を溺愛しているという噂もあるし、元補給部隊で戦闘経験もほとんど無いんだから最前線に出したらそりゃあ怒るよな……。
「はい、レイナードのおかげで大型の魔物もまとめて討伐できました。成果を上げることが出来ましたので今後もレイナードには側にいてもらいます。……レイナード、君の魔力は私に良く馴染んでくれて使いやすかったよ」
「アルフリック様のお役に立てて私も嬉しいです。えっ? ちょっ、んぅーっ」
……アルフリック副隊長が抱き寄せたままだった婚約者にキスをしている。
魔力について凄く気になることを言っていたけど全部吹き飛んでしまった。唖然としている隊員たちと違いシグフリード部隊長の怒りが爆発した。
「何をやっとるか貴様―!! レイナードを離せ!」
「婚約者と共闘出来た喜びを分かち合っているだけです」
「あの、出来れば人前では控えて欲しいというか…」
「周知して牽制しておかないと心配だろう?」
……俺たちは一体何を見せられているんだろうか。
今回の魔物討伐作戦で今まで無口でクールだと思っていたアルフリック副隊長が婚約者を側に置いてデロ甘に溺愛しているということが知れ渡ったのだった。
end
南東の森での魔物討伐作戦が開始された。
俺が所属する第四部隊が中心になって森に出現した魔物たちを狩っていく。その中でもアルフリック副隊長の魔法は群を抜いて強力で、群れで出てきたファイヤウルフを一人で全て倒してしまうほどだ。あれほどの魔法を連発していたらすぐに魔力が尽きてしまうはずなのに森の深部に近付くにつれ強くなっていく魔物をほぼ一人でバタバタと倒して進んでいく。
いくら何でもあの魔力はおかしい、流石にもう底をついているはずだと周りも思い始めた頃、酷い焼け跡が残るひらけた場所に辿り着いた。そこには焦げた匂いが漂いあちこちまだ燃えていてそう遠くない場所に魔物が潜んでいる可能性があった。
案の定すぐ近くから獣の咆哮が聞こえて木々の奥からバキバキと物をへし折る音とともに熱気が押し寄せ巨体が姿を現した。
それは炎を纏った巨大なフレイムグリズリーだった。熊型の魔物の最上位種であるその魔物は小さな町くらいは滅ぼしてしまえるほど凶悪な存在だ。
しかもそんな魔物が二体出現した。最悪の状況に隊員内に緊張が走り死さえ覚悟した者もいる中、魔力切れなはずのアルフリック副隊長が前に出た。
「レイナード!」
「はい! アルフリック様!」
いきなり副隊長が自分の部下を呼び側に来たその男を抱き寄せた。あの男はつい最近副隊長の直属に任命されたしかもその副隊長の婚約者だったはずだ。元補給部隊の下っ端を呼び寄せていったいどうするつもりなんだ?
その無謀すぎる行動に周りが引き留めようとしたとき、副隊長が突進してくるフレイムグリズリーに向かって水属性魔法を撃った。
放たれた魔法は巨大な水の竜巻となり二体のフレイムグリズリーをまとめてのみ込んでしまった。竜巻には鋭い氷の塊も含まれていて纏っていた炎を消されたフレイムグリズリーを切り裂いていく。こんな強大な水属性魔法など見たことが無い。その光景を呆然と見上げているとしばらくは聞こえていた魔物の断末魔も途絶え、竜巻が消えたそこには無残に切り刻まれたフレイムグリズリーの死体が転がっていた。
結果その二体のフレイムグリズリーが今回の魔物大量発生のボスだったようで、討伐任務はあっけなく終了となった。
……俺たち要らなかったんじゃないか?
「アルフリック!! なぜレイナードを最前線に呼んだ!」
後始末を始めているとシグフリード部隊長がやって来て開口一番に副隊長を怒鳴りつけている。そういえばアルフリック副隊長の婚約者は部隊長と養子縁組もして侯爵家の三男に収まったんだった。部隊長は息子を溺愛しているという噂もあるし、元補給部隊で戦闘経験もほとんど無いんだから最前線に出したらそりゃあ怒るよな……。
「はい、レイナードのおかげで大型の魔物もまとめて討伐できました。成果を上げることが出来ましたので今後もレイナードには側にいてもらいます。……レイナード、君の魔力は私に良く馴染んでくれて使いやすかったよ」
「アルフリック様のお役に立てて私も嬉しいです。えっ? ちょっ、んぅーっ」
……アルフリック副隊長が抱き寄せたままだった婚約者にキスをしている。
魔力について凄く気になることを言っていたけど全部吹き飛んでしまった。唖然としている隊員たちと違いシグフリード部隊長の怒りが爆発した。
「何をやっとるか貴様―!! レイナードを離せ!」
「婚約者と共闘出来た喜びを分かち合っているだけです」
「あの、出来れば人前では控えて欲しいというか…」
「周知して牽制しておかないと心配だろう?」
……俺たちは一体何を見せられているんだろうか。
今回の魔物討伐作戦で今まで無口でクールだと思っていたアルフリック副隊長が婚約者を側に置いてデロ甘に溺愛しているということが知れ渡ったのだった。
end
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あ~面白かったです。これから レイナードの活躍を色んな人に見てもらって 認めてもらって、レイナードに好意を寄せる人達にアルフリックが焼きもち焼いたり とか読んでみたいです( ゚Д゚)ゞ
アルフリックも レイナードも 部隊長も 皆 可愛いな~✨