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その日は少し気まずい雰囲気ながらも食堂でみんなと夕食を食べた。俺の隣に座るのはもちろんオルト。ナタリーは無表情だったけど普通に食べていたと思う。
6歳以下の子供たちはシスターと一緒に寝室に向かい、7歳から年長の14歳までは男女別れた寝室で休む。孤児院もスペースが限られているから1つのベッドに2人で寝る。大人用のベッドだからそこまで窮屈ではない。
「神父様のところに行ってくるけど、部屋から出ないで待っていてくれ。絶対出たらダメだよ」
「わかった。もう寝るだけだから大丈夫」
オルトは俺より2歳上で年長の14歳だからもうすぐここを卒業する。
昨日今日と夜になると神父様のところに行っているけど、卒業前に色々話すことがあるのかもしれない。しばらくすると戻ってきて毛布に潜り込んできた。
なんだか機嫌が良いような気がする。
「何かいい事でもあったの?」
「そうだな。うん、いい事があったんだ。もうすぐ卒業だからな」
オルトが卒業してしまう。今の俺はそれがものすごく寂しい。
この国は15歳で成人と認められ、冒険者ギルドにも登録できるようになる。
だから15歳で孤児院を出て、働いて生活していかなければならない。
オルトは剣の才能が開花してスキルも持っているから冒険者になると言っていた。
俺も、学園には行かないんだから卒業後のことを考えなくては...
つらつらと考えているうちに眠ってしまった。
◇◇◇
あの事件から半月を過ぎた頃、朝食を食べた後に神父様がみんなに報告があると言ってナタリーを呼んだ。
「この度、ナタリーが男爵家に行儀見習いとして奉公することが決まった。とても名誉なことだ。今日の夜にはここを発つことになっている。急な事で驚いたと思うが気持ちよく送り出して欲しい」
食堂内が急に騒がしくなった。突然の事にみんな驚いていた。女の子達からは羨む声も聞こえてくる。
孤児が貴族家に雇ってもらえる事はそうそうないが、この教会の神父様は元貴族なので伝手があるのか時折召し抱えられる子がいる。そういう場合は15歳にならなくても孤児院を出ていくことになる。子供のいない夫婦や、跡取りのいない職人の家の養子になる場合なんかも成人前に出ていく。
その日の夕食はお別れ会みたいになった。
ナタリーはここから2日以上かかる男爵家に向かう馬車に乗り孤児院を出て行った。
「もう、ナタリーには会えないね」
「なんで?卒業してもたまに差し入れに来てくれる人もいるじゃん」
「馬車で2日もかかるんだよ?無理だよ」
「そっかぁ、馬車代払えないもんね」
見送ったみんなが交わす言葉をぼんやりと聞きながら、俺は喜んでいいのかわからなくなっていた。馬車に乗るナタリーの横顔は青白く、俯いていたように見えた。
彼女は何故急に奉公が決まったのかその疑問が頭から離れなかった。
◇◇◇
あと1ヶ月でオルトが15歳になる。そうしたら孤児院を卒業だ。
今までに卒業していった子達は誕生日の朝に皆に挨拶をして孤児院を出て行った。
そのままギルドに行って冒険者になる者や就職先に向かう者など様々だった。
孤児院は卒業までにある程度の教育をしてくれるし、能力に合わせた就職先を斡旋してくれるときもある。オルトのように戦闘に向いたスキルを開花した者は冒険者になることが多い。
数日前、俺にも水魔法のスキルが開花した。だから俺も卒業したら冒険者になるつもりだ。そしてオルトとパーティーを組めたらいいなと思っている。
戦闘に向かないスキルしか持っていないと足手まといにしかならないけど、攻撃も出来る水魔法を覚えられるようになったから、これで一緒に冒険者をやれる。彼が卒業する前に気持ちを伝えようと思っている。
いつも俺に優しいオルト。あの時も、俺を助けてくれて、守ってくれた。
ナタリーの奉公も彼がなにか働きかけて俺から遠ざけてくれたんだろう。
「キリ、卒業前に話したいことってなんだ?」
俺は昼食後の休憩に、人目のない場所にオルトを誘った。
やっと2人になることが出来たのに、いざ言おうとすると緊張して言葉が出ない。
「俺卒業したら冒険者になるつもり。それでオルトとパーティーを組みたいんだ。
だから、その、今から予約、したいなって思って...」
「なんだ、それなら俺から誘うつもりだったよ。もちろん大歓迎だ!」
ち、がーう‼ 言いたいことはそれじゃないだろ俺⁉。ああああ、もうっ!
「違うんだ、いやっ違わないけど、その、俺もオルトが好きだってことを
……伝えたくて……」
恥ずかしいけどちゃんと言えた。心臓がドキドキしている。
言った途端にオルトは固まってしまった。
そして凄くゆっくり深呼吸をしてから、口を開いた。
「それは、友達とか仲間としてじゃなくって恋愛感情でってことでいい?」
「うん」
直ぐに強い力で抱きすくめられた。
息が苦しいけど、俺の告白が伝わったんだってわかる。
オルトは前の時と同じように俺の髪に頬をすりっとして腕を緩めて見つめてきた。
幸せそうに微笑んだ顔が近づいて、チュッ という音をたてて離れていく。
ふぁっ⁉ キス⁉ 待って?まだ心の準備が出来ていないんだけど?
オルトはそのまま何度も角度を変えて唇を重ねてくる。
「んんっ、まって、ふ、あ...」
「キリ、キリ! ふ、嬉しい。はぁ、かわいい...」
キスの雨から何とか逃れた時にはすっかり息が上がっていた。
オルトってこんなに、こんななの?
どうやら、ずっっと我慢してたから反動だってことらしい。でも、直ぐに押し倒したり教室に引っ張り込むような奴ら、ゲームの攻略対象者とはまったく違う。オルトの方が俺のことを大事にしてくれるし、守ってくれた。
俺たちは昼休憩の間中ひっついて過ごした。
6歳以下の子供たちはシスターと一緒に寝室に向かい、7歳から年長の14歳までは男女別れた寝室で休む。孤児院もスペースが限られているから1つのベッドに2人で寝る。大人用のベッドだからそこまで窮屈ではない。
「神父様のところに行ってくるけど、部屋から出ないで待っていてくれ。絶対出たらダメだよ」
「わかった。もう寝るだけだから大丈夫」
オルトは俺より2歳上で年長の14歳だからもうすぐここを卒業する。
昨日今日と夜になると神父様のところに行っているけど、卒業前に色々話すことがあるのかもしれない。しばらくすると戻ってきて毛布に潜り込んできた。
なんだか機嫌が良いような気がする。
「何かいい事でもあったの?」
「そうだな。うん、いい事があったんだ。もうすぐ卒業だからな」
オルトが卒業してしまう。今の俺はそれがものすごく寂しい。
この国は15歳で成人と認められ、冒険者ギルドにも登録できるようになる。
だから15歳で孤児院を出て、働いて生活していかなければならない。
オルトは剣の才能が開花してスキルも持っているから冒険者になると言っていた。
俺も、学園には行かないんだから卒業後のことを考えなくては...
つらつらと考えているうちに眠ってしまった。
◇◇◇
あの事件から半月を過ぎた頃、朝食を食べた後に神父様がみんなに報告があると言ってナタリーを呼んだ。
「この度、ナタリーが男爵家に行儀見習いとして奉公することが決まった。とても名誉なことだ。今日の夜にはここを発つことになっている。急な事で驚いたと思うが気持ちよく送り出して欲しい」
食堂内が急に騒がしくなった。突然の事にみんな驚いていた。女の子達からは羨む声も聞こえてくる。
孤児が貴族家に雇ってもらえる事はそうそうないが、この教会の神父様は元貴族なので伝手があるのか時折召し抱えられる子がいる。そういう場合は15歳にならなくても孤児院を出ていくことになる。子供のいない夫婦や、跡取りのいない職人の家の養子になる場合なんかも成人前に出ていく。
その日の夕食はお別れ会みたいになった。
ナタリーはここから2日以上かかる男爵家に向かう馬車に乗り孤児院を出て行った。
「もう、ナタリーには会えないね」
「なんで?卒業してもたまに差し入れに来てくれる人もいるじゃん」
「馬車で2日もかかるんだよ?無理だよ」
「そっかぁ、馬車代払えないもんね」
見送ったみんなが交わす言葉をぼんやりと聞きながら、俺は喜んでいいのかわからなくなっていた。馬車に乗るナタリーの横顔は青白く、俯いていたように見えた。
彼女は何故急に奉公が決まったのかその疑問が頭から離れなかった。
◇◇◇
あと1ヶ月でオルトが15歳になる。そうしたら孤児院を卒業だ。
今までに卒業していった子達は誕生日の朝に皆に挨拶をして孤児院を出て行った。
そのままギルドに行って冒険者になる者や就職先に向かう者など様々だった。
孤児院は卒業までにある程度の教育をしてくれるし、能力に合わせた就職先を斡旋してくれるときもある。オルトのように戦闘に向いたスキルを開花した者は冒険者になることが多い。
数日前、俺にも水魔法のスキルが開花した。だから俺も卒業したら冒険者になるつもりだ。そしてオルトとパーティーを組めたらいいなと思っている。
戦闘に向かないスキルしか持っていないと足手まといにしかならないけど、攻撃も出来る水魔法を覚えられるようになったから、これで一緒に冒険者をやれる。彼が卒業する前に気持ちを伝えようと思っている。
いつも俺に優しいオルト。あの時も、俺を助けてくれて、守ってくれた。
ナタリーの奉公も彼がなにか働きかけて俺から遠ざけてくれたんだろう。
「キリ、卒業前に話したいことってなんだ?」
俺は昼食後の休憩に、人目のない場所にオルトを誘った。
やっと2人になることが出来たのに、いざ言おうとすると緊張して言葉が出ない。
「俺卒業したら冒険者になるつもり。それでオルトとパーティーを組みたいんだ。
だから、その、今から予約、したいなって思って...」
「なんだ、それなら俺から誘うつもりだったよ。もちろん大歓迎だ!」
ち、がーう‼ 言いたいことはそれじゃないだろ俺⁉。ああああ、もうっ!
「違うんだ、いやっ違わないけど、その、俺もオルトが好きだってことを
……伝えたくて……」
恥ずかしいけどちゃんと言えた。心臓がドキドキしている。
言った途端にオルトは固まってしまった。
そして凄くゆっくり深呼吸をしてから、口を開いた。
「それは、友達とか仲間としてじゃなくって恋愛感情でってことでいい?」
「うん」
直ぐに強い力で抱きすくめられた。
息が苦しいけど、俺の告白が伝わったんだってわかる。
オルトは前の時と同じように俺の髪に頬をすりっとして腕を緩めて見つめてきた。
幸せそうに微笑んだ顔が近づいて、チュッ という音をたてて離れていく。
ふぁっ⁉ キス⁉ 待って?まだ心の準備が出来ていないんだけど?
オルトはそのまま何度も角度を変えて唇を重ねてくる。
「んんっ、まって、ふ、あ...」
「キリ、キリ! ふ、嬉しい。はぁ、かわいい...」
キスの雨から何とか逃れた時にはすっかり息が上がっていた。
オルトってこんなに、こんななの?
どうやら、ずっっと我慢してたから反動だってことらしい。でも、直ぐに押し倒したり教室に引っ張り込むような奴ら、ゲームの攻略対象者とはまったく違う。オルトの方が俺のことを大事にしてくれるし、守ってくれた。
俺たちは昼休憩の間中ひっついて過ごした。
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