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「これは魔力紋だよ。カイ、君は何者なんだい?」
そう言ったクライド様の青い瞳が俺を射るように見ている。クライド様の言動に向かいに座っていた2人も身を乗り出して驚愕の表情でこちらを見ていた。そんな3人の視線を受けて俺はパニックに陥った。
「俺、俺は、知りません! こんなの今までなかった! こんな…」
礼儀作法も忘れてソファーから逃れたけど震える膝が床に着いてしまいそのまま自分の手を抱え込んでうずくまる。
勇者が授かる魔力紋がどうして俺に?
勇者は召喚で、転移で…俺は転生で…どうしてこんな。
縮こまり震えている体を大きな手が起こして抱え込まれた。…ダグラス様だ。
「カイ、大丈夫だ君を守ると言っただろう? 決して酷い事にはならない。そうですよね? クライド様」
「ダグラス…そんなに睨まないでくれ。私が悪者みたいじゃないか。そこまで怯えるような事を言った覚えはないんだけど、君は何が怖いのかな?」
「平民のカイには十分恐ろしく感じる言動でしたよ」
「……。カイくん、その魔力紋は君が勇者だという証だ。私はなぜそれが君に発現したのか純粋に知りたいだけだ」
クライド様の言葉で少し落ち着きを取り戻した頭で考えてみた。
勇者の証は俺の転生にも関係がありそうな事だ。俺は前世の記憶があることをずっと隠してきた。それが暴かれるのが怖い事なんだと思う。
隠していたのは村人から疎まれていたからだ。
常にトップの成績なうえに前世の知識をうまく隠すことが出来なかった俺は「出来過ぎててなんだか恐ろしい」「知らない言葉を使うのを度々聞いた。薄気味悪い」と言われてるのを知って、隠すようになった。でも、ダグラス様になら…
「失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。まだ混乱しているのでダグラス様にご相談してからお話をしたいのですが、その、良いでしょうか?」
最後の言葉は俺を抱えているダグラス様を見上げて言ったら驚いた顔をされてしまった。やっぱりここで話さないと駄目なのだろうか。慌てているとダグラス様が笑ってくれて
「わかった。別の場所で2人で話そう。私のテントでいいかな?」
「はははは。良かったな、ダグラス!」
「グレゴール、煩い。クライド様、少しお時間をいただきます。報告は後程」
何故か大笑いしているグレゴール様と少し驚いた顔のクライド様にお詫びをしてダグラス様とテントを出た。
一緒に村の中をダグラス様のテントまで歩く。村は勇者がいたころの張りつめた雰囲気が無くなり以前の日常が戻っていた。井戸のまわりには女性たちが集い、畑を耕している人々は笑顔で言葉を交わしている。
そんな光景をぼんやりと眺めていたらテントにはすぐに着いてしまった。
先に中に入って魔道具の灯をつけて、それから…お茶も用意した方がいいだろうか?
そんな事を考えながら入口をくぐったら「カイ、仕事はいいから座りなさい」と言ってダグラス様が先にベッドに座り隣をぽんぽんと叩いている。少し離れた端に行こうとしたら腕を引かれてすぐ隣に座らされてしまった。
こちらを見つめるダグラス様は俺が話すのを待ってくれている。
ダグラス様の顔は近すぎて見れないけれど、俺は覚悟を決めて話し始めた。
最初に前世の記憶があると言ったら驚いた声を上げたけど、その後は俺が話すのを黙って聞いてくれた。元勇者の2人と同じ国の生まれだという事も、村人から遠巻きにされていることも話した。
ほぼ全て話し終えて見上げたら少し眉を寄せているダグラス様の顔があった。
やっぱり薄気味悪いと思われただろうか…。
気持ちが沈みかけた時俺の頭を大きな手が優しく引き寄せてくれた。額が胸にあたってダグラス様の声が少し違う響きに聞こえる。
「今まで1人でそんな秘密を抱えていたんだな。よく話してくれた…」
「誰かに打ち明けるのがずっと怖かったんです。でも今はダグラス様に聞いていただいて気持ちがとても軽くなりました」
良かった…この人に嫌われていなくて。安堵したら体の力が抜けてダグラス様の胸に寄り掛かってしまった。やっぱり俺はダグラス様の事が好きだ。今だけはこの人の腕の中にいていいだろうか?
ダグラス様がそっと俺の手を持ち上げて右手の甲を見ている。俺も自分の手に浮かび上がっている魔力紋だという赤みがかった模様をちゃんと見てみた。
「召喚もされていないのに魂だけが違う世界から界渡りしてきても魔力紋が浮かぶのでしょうか…でも今まで何もありませんでした」
「クライド様の意見も聞いた方が良いと思うのだが、カイはどうしたい?」
命令すれば済む立場なのにダグラス様は俺の意見を聞いてくれる。そんな人が言うのであれば俺に否やはない。それにクライド様は信用できる人なんだと思うし、グレゴール様にも良くしてもらっている。今の俺はあの2人には話してもいいと思えるようになっていた。
ダグラス様が話す内容を書き出してから報告した方が良いと言ったので書き物の準備をするために立ち上がった。
そう言ったクライド様の青い瞳が俺を射るように見ている。クライド様の言動に向かいに座っていた2人も身を乗り出して驚愕の表情でこちらを見ていた。そんな3人の視線を受けて俺はパニックに陥った。
「俺、俺は、知りません! こんなの今までなかった! こんな…」
礼儀作法も忘れてソファーから逃れたけど震える膝が床に着いてしまいそのまま自分の手を抱え込んでうずくまる。
勇者が授かる魔力紋がどうして俺に?
勇者は召喚で、転移で…俺は転生で…どうしてこんな。
縮こまり震えている体を大きな手が起こして抱え込まれた。…ダグラス様だ。
「カイ、大丈夫だ君を守ると言っただろう? 決して酷い事にはならない。そうですよね? クライド様」
「ダグラス…そんなに睨まないでくれ。私が悪者みたいじゃないか。そこまで怯えるような事を言った覚えはないんだけど、君は何が怖いのかな?」
「平民のカイには十分恐ろしく感じる言動でしたよ」
「……。カイくん、その魔力紋は君が勇者だという証だ。私はなぜそれが君に発現したのか純粋に知りたいだけだ」
クライド様の言葉で少し落ち着きを取り戻した頭で考えてみた。
勇者の証は俺の転生にも関係がありそうな事だ。俺は前世の記憶があることをずっと隠してきた。それが暴かれるのが怖い事なんだと思う。
隠していたのは村人から疎まれていたからだ。
常にトップの成績なうえに前世の知識をうまく隠すことが出来なかった俺は「出来過ぎててなんだか恐ろしい」「知らない言葉を使うのを度々聞いた。薄気味悪い」と言われてるのを知って、隠すようになった。でも、ダグラス様になら…
「失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。まだ混乱しているのでダグラス様にご相談してからお話をしたいのですが、その、良いでしょうか?」
最後の言葉は俺を抱えているダグラス様を見上げて言ったら驚いた顔をされてしまった。やっぱりここで話さないと駄目なのだろうか。慌てているとダグラス様が笑ってくれて
「わかった。別の場所で2人で話そう。私のテントでいいかな?」
「はははは。良かったな、ダグラス!」
「グレゴール、煩い。クライド様、少しお時間をいただきます。報告は後程」
何故か大笑いしているグレゴール様と少し驚いた顔のクライド様にお詫びをしてダグラス様とテントを出た。
一緒に村の中をダグラス様のテントまで歩く。村は勇者がいたころの張りつめた雰囲気が無くなり以前の日常が戻っていた。井戸のまわりには女性たちが集い、畑を耕している人々は笑顔で言葉を交わしている。
そんな光景をぼんやりと眺めていたらテントにはすぐに着いてしまった。
先に中に入って魔道具の灯をつけて、それから…お茶も用意した方がいいだろうか?
そんな事を考えながら入口をくぐったら「カイ、仕事はいいから座りなさい」と言ってダグラス様が先にベッドに座り隣をぽんぽんと叩いている。少し離れた端に行こうとしたら腕を引かれてすぐ隣に座らされてしまった。
こちらを見つめるダグラス様は俺が話すのを待ってくれている。
ダグラス様の顔は近すぎて見れないけれど、俺は覚悟を決めて話し始めた。
最初に前世の記憶があると言ったら驚いた声を上げたけど、その後は俺が話すのを黙って聞いてくれた。元勇者の2人と同じ国の生まれだという事も、村人から遠巻きにされていることも話した。
ほぼ全て話し終えて見上げたら少し眉を寄せているダグラス様の顔があった。
やっぱり薄気味悪いと思われただろうか…。
気持ちが沈みかけた時俺の頭を大きな手が優しく引き寄せてくれた。額が胸にあたってダグラス様の声が少し違う響きに聞こえる。
「今まで1人でそんな秘密を抱えていたんだな。よく話してくれた…」
「誰かに打ち明けるのがずっと怖かったんです。でも今はダグラス様に聞いていただいて気持ちがとても軽くなりました」
良かった…この人に嫌われていなくて。安堵したら体の力が抜けてダグラス様の胸に寄り掛かってしまった。やっぱり俺はダグラス様の事が好きだ。今だけはこの人の腕の中にいていいだろうか?
ダグラス様がそっと俺の手を持ち上げて右手の甲を見ている。俺も自分の手に浮かび上がっている魔力紋だという赤みがかった模様をちゃんと見てみた。
「召喚もされていないのに魂だけが違う世界から界渡りしてきても魔力紋が浮かぶのでしょうか…でも今まで何もありませんでした」
「クライド様の意見も聞いた方が良いと思うのだが、カイはどうしたい?」
命令すれば済む立場なのにダグラス様は俺の意見を聞いてくれる。そんな人が言うのであれば俺に否やはない。それにクライド様は信用できる人なんだと思うし、グレゴール様にも良くしてもらっている。今の俺はあの2人には話してもいいと思えるようになっていた。
ダグラス様が話す内容を書き出してから報告した方が良いと言ったので書き物の準備をするために立ち上がった。
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