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72 法律よりも
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マーカスの実家の領地への転移が成功して遠方への転移が正式に認められた。
俺が戻ってきた時、転移陣の部屋にいた貴族のほとんどが要職に就いている人物だったらしい。陛下もその場にいたことも含めて、全てはニスカーナンの仕業だ。
それならさっそく荒れた領地に向かおうと思っていたのに、暫く休むようにと陛下とニスカーナンから連絡が来た。今までものんびりしていたんだから働きたいと言ったら、エドとリックからも止められてしまった。
「何かあってからでは遅いですから」
「心配なのです。私たちを安心させるためにも休養してください」
俺が消えかけたトラウマを持つ二人からそう言われると聞くしかなくて、数日はまったりのんびりと過ごした。
休養明けにはニスカーナンに時間を取ってもらい、司祭も交えて傷もちへの差別についての話合いをすることになった。司祭は高齢だからと話合いの場を神殿にしてもらったら、その申し出に感激した司祭が俺の姿を見てまた泣きだした。
今回出迎えはしないように伝えていたので、膝をつかれても毛足の長い絨毯の上だったのがせめてもの救いだ。本当に神殿関係者の俺に対する情緒を何とかして欲しい。
「アキラ様、法律を作るよりも「御触れ」として出してみてはどうでしょう?」
司祭もなんとか落ち着いて、最初に話を切り出したのはニスカーナンだった。
「御触れ?」
「はい。アキラ様のお言葉として国民に御触れを出すのです」
法律の場合、差別する気持ちを持ったまま渋々従う者や、守らない者も出る。それでは差別が無くなったとは言えない。
でも、御触れとして俺の名前で出せば、法律より効果があるという。
「アキラ様の人気は高まっております。一部では絶大と言っても良いでしょう。そのアキラ様からの御触れですから何よりも効果があります」
「王宮だけでなく、神殿からも同時にアキラ様のお言葉として発表しましょう。私どもがいくら説いても駄目でしたが、アキラ様のお言葉なら国民に届きます!」
司祭までがそう言ってくれるけど、俺の言葉でそんなに効果があるんだろうか?
でも司祭はもの凄くやる気だ。
「護衛のお二人の傷跡を消した経緯も是非とも盛り込みましょう。今まで魔獣の傷跡を消せた話など聞いたことがありません。まさに奇跡の御業ですから!」
「あぁ、そういえば、エドとリック以外の傷跡も消せたよ。その話も今日しようと思ってて…」
俺の報告にニスカーナンと司祭が揃って目を瞠り絶句している。それほどありえない事なのだろう。やっぱりあの家族には口止めしておいて正解だったかな。
「…もしやそれはベスティンという元貴族の男性ですか? 傷の治療だけでは無かったのですか?」
先に立ち直ったニスカーナンが聞いてきた。本当になんで知っているんだろうねぇ。
「顔にも傷を負っていたんだ。消したのは顔の傷跡だけだよ」
ベスティンの傷跡については元々この話合いで報告するつもりだった。だって他にも消せる可能性のある人がいるかもしれないじゃん。そんな人を見かけたらきっとまた俺は止められても傷跡を消すと思う。だから先に知らせておくことにしたんだ。
「顔の傷…。確かに隠せない場所の傷跡だけでも消せればかなり救われますね」
「ですが、アキラ様。護衛のお二人以外の傷跡がなぜ消せたのですか? 」
司祭に聞かれて、ニスカーナンもこちらを見ているから、ベスティンの傷跡を消した経緯を説明することにした。
最初は傷の治療と浄化だけしたら、やっぱり傷跡が消えずに残ったことも話した。
でもそこに魔獣から庇った娘のレジーナが来て、事態が変わった。
「傷跡に触れている母子の指が光って見えて、それで消せるって思ったんだ」
消したいと強く思う二人に、足りない魔力だけ補助して傷跡を消したことを説明したけど、これで理解してもらえるんだろうか? でもニスカーナンは何度か頷いていて…
「やはり条件は同じなのですね」
「今の説明でわかったの?」
「ええ、護衛の二人の時と同じではないですか」
エドとリックの時?
首を傾げていたら俺の後ろに立っている二人が誇らしげに言った。
「そうです。アキラ様の愛で私の傷跡は消えました」
「傷跡が消えたのはアキラ様からの愛情の証なのです」
ああああ、そうだった! あの時自分でも妙に納得したじゃん。
でも改めて言われると恥ずかしいんだけどぉ!!
俺が戻ってきた時、転移陣の部屋にいた貴族のほとんどが要職に就いている人物だったらしい。陛下もその場にいたことも含めて、全てはニスカーナンの仕業だ。
それならさっそく荒れた領地に向かおうと思っていたのに、暫く休むようにと陛下とニスカーナンから連絡が来た。今までものんびりしていたんだから働きたいと言ったら、エドとリックからも止められてしまった。
「何かあってからでは遅いですから」
「心配なのです。私たちを安心させるためにも休養してください」
俺が消えかけたトラウマを持つ二人からそう言われると聞くしかなくて、数日はまったりのんびりと過ごした。
休養明けにはニスカーナンに時間を取ってもらい、司祭も交えて傷もちへの差別についての話合いをすることになった。司祭は高齢だからと話合いの場を神殿にしてもらったら、その申し出に感激した司祭が俺の姿を見てまた泣きだした。
今回出迎えはしないように伝えていたので、膝をつかれても毛足の長い絨毯の上だったのがせめてもの救いだ。本当に神殿関係者の俺に対する情緒を何とかして欲しい。
「アキラ様、法律を作るよりも「御触れ」として出してみてはどうでしょう?」
司祭もなんとか落ち着いて、最初に話を切り出したのはニスカーナンだった。
「御触れ?」
「はい。アキラ様のお言葉として国民に御触れを出すのです」
法律の場合、差別する気持ちを持ったまま渋々従う者や、守らない者も出る。それでは差別が無くなったとは言えない。
でも、御触れとして俺の名前で出せば、法律より効果があるという。
「アキラ様の人気は高まっております。一部では絶大と言っても良いでしょう。そのアキラ様からの御触れですから何よりも効果があります」
「王宮だけでなく、神殿からも同時にアキラ様のお言葉として発表しましょう。私どもがいくら説いても駄目でしたが、アキラ様のお言葉なら国民に届きます!」
司祭までがそう言ってくれるけど、俺の言葉でそんなに効果があるんだろうか?
でも司祭はもの凄くやる気だ。
「護衛のお二人の傷跡を消した経緯も是非とも盛り込みましょう。今まで魔獣の傷跡を消せた話など聞いたことがありません。まさに奇跡の御業ですから!」
「あぁ、そういえば、エドとリック以外の傷跡も消せたよ。その話も今日しようと思ってて…」
俺の報告にニスカーナンと司祭が揃って目を瞠り絶句している。それほどありえない事なのだろう。やっぱりあの家族には口止めしておいて正解だったかな。
「…もしやそれはベスティンという元貴族の男性ですか? 傷の治療だけでは無かったのですか?」
先に立ち直ったニスカーナンが聞いてきた。本当になんで知っているんだろうねぇ。
「顔にも傷を負っていたんだ。消したのは顔の傷跡だけだよ」
ベスティンの傷跡については元々この話合いで報告するつもりだった。だって他にも消せる可能性のある人がいるかもしれないじゃん。そんな人を見かけたらきっとまた俺は止められても傷跡を消すと思う。だから先に知らせておくことにしたんだ。
「顔の傷…。確かに隠せない場所の傷跡だけでも消せればかなり救われますね」
「ですが、アキラ様。護衛のお二人以外の傷跡がなぜ消せたのですか? 」
司祭に聞かれて、ニスカーナンもこちらを見ているから、ベスティンの傷跡を消した経緯を説明することにした。
最初は傷の治療と浄化だけしたら、やっぱり傷跡が消えずに残ったことも話した。
でもそこに魔獣から庇った娘のレジーナが来て、事態が変わった。
「傷跡に触れている母子の指が光って見えて、それで消せるって思ったんだ」
消したいと強く思う二人に、足りない魔力だけ補助して傷跡を消したことを説明したけど、これで理解してもらえるんだろうか? でもニスカーナンは何度か頷いていて…
「やはり条件は同じなのですね」
「今の説明でわかったの?」
「ええ、護衛の二人の時と同じではないですか」
エドとリックの時?
首を傾げていたら俺の後ろに立っている二人が誇らしげに言った。
「そうです。アキラ様の愛で私の傷跡は消えました」
「傷跡が消えたのはアキラ様からの愛情の証なのです」
ああああ、そうだった! あの時自分でも妙に納得したじゃん。
でも改めて言われると恥ずかしいんだけどぉ!!
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