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六話 君ガ為
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――な、にかの遠吠えを聞いた、気がした。ひどく焦っているみたいで、今にも泣き出しそうで。
「……くん。フィルム君っ」
頬への衝撃にて目を覚ますと、布で額を抑える初老の顔が浮かんでいた。
「村、長?」
最初は自分の心臓の音以外、中央にて雪が降り積もるシンシンと音以外、何も聞こえなかった。
えっ、と。僕は? ――たしか、突進してくる雪牙熊に取り憑いたであろう魔霊を祓おうとして、そして。
「(村長、血が)け、が。大丈夫、ですか?」
と、とにかく。最後の、中級傷薬が携行袋に。
「わ、ワシよりもお主じゃろうが! 待っておれ」
倒れ伏した体勢を、楽な状態へしてもらう。――に、しても、今まで会った老人の中で、村長は飛びぬけて凄い方だと、今更ながら心底感心した。
氷で引っ付く唇を無理やり動かす。
「雪牙熊、は?」
「心配いらぬ。お前さんの振りまいた粉が顔の近くで光り輝いた後、雪牙熊は苦しみ呻き続けおった。その後、まるで憑物が落ちたみたく突っ立っておったが、出入り口から逃げ腐りおったわい!」
笑い皺をいくつも走らせ、そう言った。……そうか。うまくいったのか。
「(本当によかった)村長、さん。僕の荷物入れから、覚起薬を取り出して、メナリへ嗅がせてください。あと発熱辛液を雪で薄め冷やして飲ませて、凍傷のヒドい部位には中級傷薬を――」
ご老体に鞭を打って申し訳ないが、他の魔物や魔獣が来る前に村へ戻らないと。頭を押さえる僕の隣で、村長に処置をお願いした。
「わかった。――ほれ、起きるんじゃ。メナリ」
隣でそっと指示を行いつつ、二人してメナリを介抱する。
「メナリ……」
「――ぅ。から、ぃ」
「「メナリ!」」
小刻みに震えつつも、長いまつ毛を微かに上下させた。その青白い小さな顔に、微かな生気が蘇る。
「よかった。よかったのぉ。――ところで」
メナリを抱きかかえ起こす村長の視線が、その隣の骸骨へ向く。僕は――涙が凍らないように、目を閉じつつ。
「……はい。ロイス=イシュタです」
「――やはりロイス君か」
その言葉に、思わず目を見開く。痛む身体もだけど、驚きが勝ってしまったから。
「やはり?」
――いや、それにしても、どうしてこんな白落谷に? 最初は穴から落ちたのかと思ったけど、入口からのヒカリゴケはきっと父さんが移植したものに違いない。
今ならと具に確認するに、右手の骨が服の上より懐を押さえていた。
「なん、だろう?」
痛みで震える手を伸ばし、その衣服の内側を改める。長方形のガラス瓶の中には美しい空色の花弁を付けた花が封入されており、粘性のある透明な液体で満たされていた。
「まさか、これは。ルメリオンの蒼花?」
植物書で見たことがある。氷雪地帯や高山地帯の洞窟にて極稀に咲くとか。花弁から抽出される液は、多くの病や怪我に効くと言われており、副作用が少ない。
やがて、ためらったみたいな素振りの村長が、小さく口を動かした。
「おそらくじゃが、フィルム君のためじゃったのだろう」
「え?」
さっきまでの活気に満ちていた表情と異なり、急に老いた風に口をすぼめた。
「一年と少し前、ロイス君が村を出た時、お前さんは高熱に苦しんでいたのを覚えておるか?」
「え? え、えぇ」
原因不明の高熱だった。父さんは三日三晩、文献を調べて素材をかき集め、調合を繰り返し、投薬してくれた。結局そのどれかのおかげで、時間がかかりつつも快復したのであった。
「けどそれが、一体? ――! そんな、まさか」
最後の手段として、万病に効く花を、僕の治療の、ために? 白落谷場所まで探索して、採取を?
「あの日も、ワシが付いて行こうと押し問答をしていたが、結局は一人で行かせてしまってな。――それ以来ずっと後悔して、迎えた今日じゃった。今度こそは、息子まで死なせるかと息巻いて来たが、逆に救われてしまったわい」
「いえ、村長がいなければ――」
村長は枯れた風に笑いながら手をそっと振った。
――僕は、僕は本当に、村長や父さんを始めとした大勢の人に助けられっぱなしなのだったと、その幸運を噛み締めた。
……ゴゴ、ゴゴゴ
「な、なんじゃ?」
洞窟の中が揺れ始める。きっと、さっきの戦闘時に雪牙熊が何度も何度も内部を揺らしたり体当たりをしたからだ。
天井周辺から椅子くらいの岩石が剥がれ落ち始める。急がないと通路が塞がれる!
ズキンッ。
「(体中が)――村長さん。無理ばかり言ってすみませんが、メナリを連れて先に行ってください」
「なっ! ここまで来て馬鹿を言うなっ。お前さんも一緒じゃ!」
「いくら村長さんでも、大人の男を抱えては無理です。――大丈夫ですよ。とっておきの薬があるので」
メキベキメリ。
――もちろん、そんなものあるわけなかった。そもそも副作用を打ち消す薬なんて存在しない。黒い亀裂が無数に壁や足下を走り出す。細かい礫が頭に当たり始める。
「村長さん!」
「――っ。メナリを連れ出したら、すぐに戻ってくるからの!」
父さんの毛皮の服ももらって、メナリをぐるぐる巻きにした後、背負い走って行った。
その背中を見つつ――いい人過ぎるなぁ、と心から頷いた。
「ああいう、おじいさんに、なれたら、嬉しいなぁ」
気が抜けたからか、座っているのも苦しくなってきて、這いつくばるみたく、冷たい岩にキスをする。
薄れる視界が最期に捉えたのは、父さんの白骨だった。そのくぼんだ暗い目の穴を、落ち着いて眺める。
「今まで本当にありがとう、父さん。そして、ごめんね――」
フッ。
突如、中央に差し込む光が塞がれたみたく、視界が黒く塗りつぶされる。戦壮薬の副作用だろうか? いや、身体の機能の低下などであっても、もう。
「すまな、い。ギン」
大好きな君に、大切な君へ、初めて嘘を、ついてしまった、ね。
――
――――
――――――?
なんだろう。温かくて、柔らかい。
あぁ、そうか。体温が下がりすぎて、とうとう幻覚に囚われてしまったのか。
だからだろうなぁ、すごく心が安らぐ。まるで子供のころ、父さんに背負ってもらったり、母さんの膝上に座った日々を、思い出した。
――そうか、もうすぐ会えるんだね。父さん、母さん。
やがて、父さん達のとは少し違うけど、上の方から呼ばれた気がして、意識を向ける。すると身体が宙に浮くみたいな不思議な感覚が、全身へつたっていく。小川で身体が流れていくみたく、それが垂直にて行われるのは、変わった感覚で――。
「ャ!」
? ……けど、甲高い、妙に心惹かれる、けど人間ではない鳴き声によって、その感覚が押し返されていく。
グイッ、ググイィ。
浮き上がりそうな身体を、何かが引っ張り下ろそうとする。
う、んっ?
「(一体)な、に――?」
「ヒンニャァ!」
……天井の木目が、ボンヤリと見え始めた。自宅、なのかな?
やがて、僕を覗き込むみたく、なぜか村の人達の顔が輪を描いた。皆、心底心配しているみたいな表情だった。
そして――ニョキ――っと中心に顔が伸び出てきたかと思うと迫ってきて、フワフワで温い、柔らかな感覚に顔面が包まれる。
「ふわっ。え、っと?」
「ウニャ! ニュゥ!」
グリグリと柔らかい毛と顔を押し付けられて、少し痛みを覚える。
「フィルム君! 意識が戻ったか!」
村長? 柔らかさに視界を覆われて、身体が動かないまま、あっちこっちで嘆声が漏れこぼ出す。――な、なになに?
「先生っ。おかげさまでウチの娘も無事です! ロームも泣いて喜んでいましたっ」
女性の声が言う、めなり? メナリってだれ――。
「! メナリがっ?」
顔を覆っていたフカフカが少しどいてくれたので、大きく尋ねる。少し首の付近が痛んだ。
「はい! もう夜なので、別室で寝ていますが、おかげさまで命に別状は無さそうです!」
男性が――メナリのお父さんがそう告げる。
そうか、やっと思い出してきた。戦壮薬の副作用で朦朧としていた僕は、メナリを村長に託した後、意識を失ったんだった。
「けど、誰が僕を自宅へ?」
村長? いや、いくらあの村長でも、それは物理的に不可能だ。
問いに答える代わりに、みんなが僕の上半身を起こしてくれる。ベットの上にて――目を潤ませるギンが、僕の両腿を跨ぎ、腰を僅かに浮かべていた。
「ギ、ン?」
眼差しを絡め合うその隣にて、包帯を額に巻く村長が笑いつつ、髭を撫でた。
「ワシが洞窟を出るのとほぼ同時に、入口が岩で塞がれよった。メナリを背負いつつも、悔恨に苛まれ立ち尽くした。途方に暮れて村へと引き上げる途中、銀色の影が崖を走るみたく雪の風を蹴散らしていきおった」
ってことは、洞窟天井を埋めて光を遮った正体は。
「(ギンが薬と僕の匂いを追って、上から降りて僕を背負ってくれたのか)――わっ」
ギュウゥ。
柔らかさと温かさと心地よさと痛み、それらを同時に感じるという現象は初体験だった。ギンなりに手加減をしているのだろうけど、く、首がぁ。
「ミァ! ナァ!」
――極上の銀色の髪の毛が、僕の鼻をくすぐる。抱きしめ震えるその腕が、身体が、声の全てが、僕の生死を心の底から案じてくれていたのだと、実感させてくれた。
感じる、彼女の愛を、その全てから。
「ギンには、助けられてばかりだね。本当にありがと――うっ!」
抱きしめ返そうと腕を動かそうとするも、ちぎれたのかと思うほどの激痛が筋肉を疾走する。
「くかかっ。秀才調合士のフィルム君も、尻に敷かれる男みたいじゃな」
村長の笑い声に、みんながつられた。
「うぅ……あの、村長。本当に色々とありが」
「言うな。何よりお互い様じゃろうて。……それより、目も覚めて腹も減ったろう? 食事はギンに食べさせてもらうがよい。さぁさぁ皆の衆、邪魔者らは帰るとしようぞ」
みんなは、僕や村長、中にはギンにも頭を下げ、食べ物や衣服なんかを置いた後、玄関から出て行こうとする。
! メナリのお母さんへは、容態の変化に合わせて使う薬の詳細を伝える。相変わらず僕を抱きしめて動かない、ギンの肩越しに。
「メナリは手足の凍傷にも気を付けてください。薬は惜しみなく使ってくださいね」
「先生、何から何までありがとうございます」
ご両親に頭を下げるその傍にて、リトムさん達が手を振る。
「じゃあな先生」
「また明日の朝、様子を見に来るから」
「夜にギンと張り切り過ぎて、傷が開かないようにな!」
バタン。
打って変わって静寂が僕らを包む。耳をすませば、降り注ぐ外の雪の音が聞こえそうなくらいだった。
「……ギン」
彼女の耳元で何度も名前を呼んだ。そのつど、彼女は幾度も柔らかな身体と、フワフワな体毛を擦りつけた。
「愛してるよ」
心の底からの、異性への求愛だった。
「――ニゥ、ニア」
「ごめんね。本当は今すぐにでも抱きしめた――ヌプ!」
彼女の柔らかな口が僕の唇を食べる。
「チュプロレ、ジュルル」
は、激しい口づけは、まるで少し怒っているみたいにすら思えた。でも二人きりになれた世界にて、時が経つのも忘れて、お互いの唾液を交換し愛飲する。
ジュル、ゴク、チュバ、ンゴク。
「ぷは。ギン、ギン」
こんな死に体なのに、むしろだからだろうか? 股間がいつも以上に熱くなる。
「フニニ、ウニュゥ」
知ってか知らずか、優しく僕の身体を寝台へと抱き戻してくれる。すると、慌てるみたく胸巻きを外し投げると、体勢を少し変えてきて――!
「んぉっ――チュゥ、チュパウ」
薄桃色の、尖った乳首を口の中へと押し込んでくる。
い、異常事態の後だからか、冬なのにギンも発情している? もしくは、季節なんて関係なく?
僕の顔や頭や首はホワホワな体毛で覆われつつ、口の中では赤子みたく、乳首を吸い舐めつつ甘噛みし続ける。な、情けないけど、すごく気持ちイイ。
――ジュル、チュバ、ロレチュ。
「ンニャァ、ヒニャゥ~」
頭の少し上あたりで、甘く切ない声が揺蕩う。まるでギン自身も聞きたいみたく、何度も大きく鳴き響かせた。
――時間も忘れて愛らしい乳首をベトベトにし終える。すると、ギンは妖しげな光を瞳に灯したまま、腰の恥部隠しを脱ぎ置き、綺麗でホワホワな背を向けてくる。そして、僕の胸板あたりにて腰を浮かし、いやらしく誘う尻尾の付け根こと、魅惑的なお尻を振り向けてきた。
窓から入る双つの月の光は、その臀部を彩る艶やかな美しい銀毛を照らした。さらにさらに、情熱的で淫靡な肉体は、生命そのものに思えた。
ギンは小首を傾げつつ、いたずらっぽく笑った。そして、そのしなやかで柔らかな尻尾がふうわりと僕の後頭部へと巻き付いたかと思うと、ゆっくりと抱き起こしてくれる。
「ハァ、ハァ」
情欲が体内にてくすぶるけど、身体が動かない。生殺しみたいなこの状況にて、挑発的に揺れるお尻――の少し上の尻尾の付け根に、おもむろに顔面が近づいていく。付け根は肉色で微かに濡れており、まるで口の中や、女性器みたいな粘膜で、ひどく性的に映った。
「(尻尾の付け根を、口でイジメてほしいのかな?)――ジュルル、チュプ」
「! ヒンニャィ!」
今までで一番甲高い声が、家屋の中にて反響する。僕は体内の燃え盛る性欲を少しでも発散させるため、舌に全神経を集中させる。猥らにヒクつく粘膜を、舐め、突き、なぞり吸った。そのつど、普段の交尾でも滅多に聞けないような、下品な鳴き声が鼓膜を揺らし続けた。
「ギン、気持ち、いい? ――チュパ、ロレロ」
尻尾すら唾液で塗れ光ってきた頃、首に血管を張って顔面をさらに押しつける。僕の白い前歯にて――カリッ――と桃色の肉を噛む。
「オニャ! ロゴゴ、ゴロロロォ」
プゥ。
! お、オナラ? けほっけほ。――ま、まぁ放屁するくらいに気持ちよく脱力しているのなら、こっちも嬉しいよ。
ギンは股間から愛液を滴らせつつ、もっともっとと、付け根を顔面へグリグリと押し込んでくる。僕も舌で、唇で、歯で、引っ掻き舐め当て続ける。
ギンのエッチで熱い鳴き声は、まるで宮廷へ通う吟遊詩人の歌声のごとく、僕の耳を幸せにした。
「フーッ、フーッ。ロゴゴォ、ニュホォ」
やがて付け根がプックリと赤く小さく腫れ――いや、充血していった。さすがにこれ以上は血が出そうだ。
「ギ、ギン。そろそろ、僕の方も」
も、もう本当に股間が限界だ。今だって服はおろか毛布すら持ち上げて、天井を向いている。
「フア、ニィ」
? い、今、僕の名前を呼ぼうとしたのかと、勘違いしたけど、それより早くぅ。
ギンがこちらへ振り返ると――! ま、まるで見せつけるみたく滴り濡れる女性器を接近させて、僕の唇に、キ、キスをしてくる。
クチュゥ、チュパ。
あ、温かくもちょっと濁った愛液、少し生臭くも甘い味が舌の上で踊る。愛液は僕の体内の、燃える歯車をさらにと回転させていくだけだった。ギンの陰核の皮がめくり覗いているのすら間近で見えた。
「ギン。いじわる、しないでよ」
これじゃあ、どっちが雌か雄かわからない、くらいだ。
「ロゴゴォ」
爪で引っかかないようにようやく毛布をめくり、下半身を丸出しにしてくれる。我慢汁を先端から垂れ流す亀頭は、槍の穂先みたくビクビクと小刻みに震えていた。
「ヘニャ。ハッ、ヘッ」
自由自在な尻尾にて頭の位置を調整されると、妖艶に目尻を下げるギンと視線を絡ませられる。さらにジラすみたく蜜壺を前後させつつも、そそり勃つ男性器の方へと降りてくる。ようやく、ようやく待ちに待った接合が――クチュリヌチュリ――っと。
まるで見せつけるみたいなその演出、男性器が女性器に食べられていくみたいだった。
クチュォ、ヌチョチョォ、ズヌチュ!
「ふあっ。くふ、あああ」
肉棒がギンの膣に入っていくつど、情けない声があふれ、同時に股間から全身へ桃色の波が広がり弾ける。だらしなく開いた僕の口に、ギンのホワホワの丸い尻尾の先っちょが、入ってくる。
「チュバ。ロレレ」
妖しく笑うギンとの間にて織り成す、二人の粘着音と吐息、重なる淫臭、口内に広がる尻尾の味は、恍惚の
三重奏であった。そして何より、亀頭から陰茎、睾丸にまでかかる圧倒的な快感は、頭が犯しくなりそうだった。
――きもち、良すぎて。自我が、崩れそうな、くらいで。
「ロゴゴゴ。ニュゥヤア」
柔らかな脚をM字に開いたまま、そのホワホワでしなやかなな両腕を寝台に突いたため、桃色に震える乳房が近寄ってきた。
おそらく、腕で支えないと、ギンも腰が砕けそうなんだ。
パニュン、パチュン!
僕に騎上するギンが、叩きつけるみたく股間を打ち付けてくる。快楽の強度は振り切り、さらに銀髪はカーテンの様に幻想的に揺れた。女夢魔との性交を超えるであろう快感に溺れる中、ギンの惚けた顔が近づいてくる。
ンチュゥ。
粘膜という粘膜が重なり合う。溶け合う生命と生命は、まさに夫婦の――いや、それ以上の交わりの中で互いを一つにしていく。
本当の意味での交尾を、冬の夜の上に浮かべるのだ。
「ギンっ」
「フィ、ニュ」
寒空に反発するみたく、互いに湯気を噴射する。ギンが僕の頭を優しく抱きしめると、ビクビクン、っと陰茎に巻き付いた血管が脈動し、睾丸の中がかき回る。
僕の精子が、ギンの子宮で泳ぎたくて仕方がないと、暴れ出す!
「ギ、ン!」
「ニュォアァ!」
全身の疼痛が、性欲という本能に打ち負けた瞬間だった。
――ドポッ、ピュルル。ビュ、ビュー。
目の前の愛しき銀獣を、白色に染め上げる。注がれる彼女も、最後の一滴を搾り出そうと、グリグリとお尻を押し付けてくる。
膣内射精してなお、搾りきってなお、ハメ込んだ姿勢のまま、熱を交換し合い、舌を絡め合った。それが性欲以外の欲を互いが抱いていることを、夜の闇の中で、そっとほのめかしていた。
「「ハァハァ」」
やがてギンは僕に寄り添い、二人して横になって暖を取りつつ目蓋を閉じる。極上の毛にくるまれた僕は愛と安心に包まれるみたいだった。
意識が途切れるその瞬間までギンを感じ、夢の中の銀色の宮殿へ二人で訪れるため、手を離さなかった――。
「……くん。フィルム君っ」
頬への衝撃にて目を覚ますと、布で額を抑える初老の顔が浮かんでいた。
「村、長?」
最初は自分の心臓の音以外、中央にて雪が降り積もるシンシンと音以外、何も聞こえなかった。
えっ、と。僕は? ――たしか、突進してくる雪牙熊に取り憑いたであろう魔霊を祓おうとして、そして。
「(村長、血が)け、が。大丈夫、ですか?」
と、とにかく。最後の、中級傷薬が携行袋に。
「わ、ワシよりもお主じゃろうが! 待っておれ」
倒れ伏した体勢を、楽な状態へしてもらう。――に、しても、今まで会った老人の中で、村長は飛びぬけて凄い方だと、今更ながら心底感心した。
氷で引っ付く唇を無理やり動かす。
「雪牙熊、は?」
「心配いらぬ。お前さんの振りまいた粉が顔の近くで光り輝いた後、雪牙熊は苦しみ呻き続けおった。その後、まるで憑物が落ちたみたく突っ立っておったが、出入り口から逃げ腐りおったわい!」
笑い皺をいくつも走らせ、そう言った。……そうか。うまくいったのか。
「(本当によかった)村長、さん。僕の荷物入れから、覚起薬を取り出して、メナリへ嗅がせてください。あと発熱辛液を雪で薄め冷やして飲ませて、凍傷のヒドい部位には中級傷薬を――」
ご老体に鞭を打って申し訳ないが、他の魔物や魔獣が来る前に村へ戻らないと。頭を押さえる僕の隣で、村長に処置をお願いした。
「わかった。――ほれ、起きるんじゃ。メナリ」
隣でそっと指示を行いつつ、二人してメナリを介抱する。
「メナリ……」
「――ぅ。から、ぃ」
「「メナリ!」」
小刻みに震えつつも、長いまつ毛を微かに上下させた。その青白い小さな顔に、微かな生気が蘇る。
「よかった。よかったのぉ。――ところで」
メナリを抱きかかえ起こす村長の視線が、その隣の骸骨へ向く。僕は――涙が凍らないように、目を閉じつつ。
「……はい。ロイス=イシュタです」
「――やはりロイス君か」
その言葉に、思わず目を見開く。痛む身体もだけど、驚きが勝ってしまったから。
「やはり?」
――いや、それにしても、どうしてこんな白落谷に? 最初は穴から落ちたのかと思ったけど、入口からのヒカリゴケはきっと父さんが移植したものに違いない。
今ならと具に確認するに、右手の骨が服の上より懐を押さえていた。
「なん、だろう?」
痛みで震える手を伸ばし、その衣服の内側を改める。長方形のガラス瓶の中には美しい空色の花弁を付けた花が封入されており、粘性のある透明な液体で満たされていた。
「まさか、これは。ルメリオンの蒼花?」
植物書で見たことがある。氷雪地帯や高山地帯の洞窟にて極稀に咲くとか。花弁から抽出される液は、多くの病や怪我に効くと言われており、副作用が少ない。
やがて、ためらったみたいな素振りの村長が、小さく口を動かした。
「おそらくじゃが、フィルム君のためじゃったのだろう」
「え?」
さっきまでの活気に満ちていた表情と異なり、急に老いた風に口をすぼめた。
「一年と少し前、ロイス君が村を出た時、お前さんは高熱に苦しんでいたのを覚えておるか?」
「え? え、えぇ」
原因不明の高熱だった。父さんは三日三晩、文献を調べて素材をかき集め、調合を繰り返し、投薬してくれた。結局そのどれかのおかげで、時間がかかりつつも快復したのであった。
「けどそれが、一体? ――! そんな、まさか」
最後の手段として、万病に効く花を、僕の治療の、ために? 白落谷場所まで探索して、採取を?
「あの日も、ワシが付いて行こうと押し問答をしていたが、結局は一人で行かせてしまってな。――それ以来ずっと後悔して、迎えた今日じゃった。今度こそは、息子まで死なせるかと息巻いて来たが、逆に救われてしまったわい」
「いえ、村長がいなければ――」
村長は枯れた風に笑いながら手をそっと振った。
――僕は、僕は本当に、村長や父さんを始めとした大勢の人に助けられっぱなしなのだったと、その幸運を噛み締めた。
……ゴゴ、ゴゴゴ
「な、なんじゃ?」
洞窟の中が揺れ始める。きっと、さっきの戦闘時に雪牙熊が何度も何度も内部を揺らしたり体当たりをしたからだ。
天井周辺から椅子くらいの岩石が剥がれ落ち始める。急がないと通路が塞がれる!
ズキンッ。
「(体中が)――村長さん。無理ばかり言ってすみませんが、メナリを連れて先に行ってください」
「なっ! ここまで来て馬鹿を言うなっ。お前さんも一緒じゃ!」
「いくら村長さんでも、大人の男を抱えては無理です。――大丈夫ですよ。とっておきの薬があるので」
メキベキメリ。
――もちろん、そんなものあるわけなかった。そもそも副作用を打ち消す薬なんて存在しない。黒い亀裂が無数に壁や足下を走り出す。細かい礫が頭に当たり始める。
「村長さん!」
「――っ。メナリを連れ出したら、すぐに戻ってくるからの!」
父さんの毛皮の服ももらって、メナリをぐるぐる巻きにした後、背負い走って行った。
その背中を見つつ――いい人過ぎるなぁ、と心から頷いた。
「ああいう、おじいさんに、なれたら、嬉しいなぁ」
気が抜けたからか、座っているのも苦しくなってきて、這いつくばるみたく、冷たい岩にキスをする。
薄れる視界が最期に捉えたのは、父さんの白骨だった。そのくぼんだ暗い目の穴を、落ち着いて眺める。
「今まで本当にありがとう、父さん。そして、ごめんね――」
フッ。
突如、中央に差し込む光が塞がれたみたく、視界が黒く塗りつぶされる。戦壮薬の副作用だろうか? いや、身体の機能の低下などであっても、もう。
「すまな、い。ギン」
大好きな君に、大切な君へ、初めて嘘を、ついてしまった、ね。
――
――――
――――――?
なんだろう。温かくて、柔らかい。
あぁ、そうか。体温が下がりすぎて、とうとう幻覚に囚われてしまったのか。
だからだろうなぁ、すごく心が安らぐ。まるで子供のころ、父さんに背負ってもらったり、母さんの膝上に座った日々を、思い出した。
――そうか、もうすぐ会えるんだね。父さん、母さん。
やがて、父さん達のとは少し違うけど、上の方から呼ばれた気がして、意識を向ける。すると身体が宙に浮くみたいな不思議な感覚が、全身へつたっていく。小川で身体が流れていくみたく、それが垂直にて行われるのは、変わった感覚で――。
「ャ!」
? ……けど、甲高い、妙に心惹かれる、けど人間ではない鳴き声によって、その感覚が押し返されていく。
グイッ、ググイィ。
浮き上がりそうな身体を、何かが引っ張り下ろそうとする。
う、んっ?
「(一体)な、に――?」
「ヒンニャァ!」
……天井の木目が、ボンヤリと見え始めた。自宅、なのかな?
やがて、僕を覗き込むみたく、なぜか村の人達の顔が輪を描いた。皆、心底心配しているみたいな表情だった。
そして――ニョキ――っと中心に顔が伸び出てきたかと思うと迫ってきて、フワフワで温い、柔らかな感覚に顔面が包まれる。
「ふわっ。え、っと?」
「ウニャ! ニュゥ!」
グリグリと柔らかい毛と顔を押し付けられて、少し痛みを覚える。
「フィルム君! 意識が戻ったか!」
村長? 柔らかさに視界を覆われて、身体が動かないまま、あっちこっちで嘆声が漏れこぼ出す。――な、なになに?
「先生っ。おかげさまでウチの娘も無事です! ロームも泣いて喜んでいましたっ」
女性の声が言う、めなり? メナリってだれ――。
「! メナリがっ?」
顔を覆っていたフカフカが少しどいてくれたので、大きく尋ねる。少し首の付近が痛んだ。
「はい! もう夜なので、別室で寝ていますが、おかげさまで命に別状は無さそうです!」
男性が――メナリのお父さんがそう告げる。
そうか、やっと思い出してきた。戦壮薬の副作用で朦朧としていた僕は、メナリを村長に託した後、意識を失ったんだった。
「けど、誰が僕を自宅へ?」
村長? いや、いくらあの村長でも、それは物理的に不可能だ。
問いに答える代わりに、みんなが僕の上半身を起こしてくれる。ベットの上にて――目を潤ませるギンが、僕の両腿を跨ぎ、腰を僅かに浮かべていた。
「ギ、ン?」
眼差しを絡め合うその隣にて、包帯を額に巻く村長が笑いつつ、髭を撫でた。
「ワシが洞窟を出るのとほぼ同時に、入口が岩で塞がれよった。メナリを背負いつつも、悔恨に苛まれ立ち尽くした。途方に暮れて村へと引き上げる途中、銀色の影が崖を走るみたく雪の風を蹴散らしていきおった」
ってことは、洞窟天井を埋めて光を遮った正体は。
「(ギンが薬と僕の匂いを追って、上から降りて僕を背負ってくれたのか)――わっ」
ギュウゥ。
柔らかさと温かさと心地よさと痛み、それらを同時に感じるという現象は初体験だった。ギンなりに手加減をしているのだろうけど、く、首がぁ。
「ミァ! ナァ!」
――極上の銀色の髪の毛が、僕の鼻をくすぐる。抱きしめ震えるその腕が、身体が、声の全てが、僕の生死を心の底から案じてくれていたのだと、実感させてくれた。
感じる、彼女の愛を、その全てから。
「ギンには、助けられてばかりだね。本当にありがと――うっ!」
抱きしめ返そうと腕を動かそうとするも、ちぎれたのかと思うほどの激痛が筋肉を疾走する。
「くかかっ。秀才調合士のフィルム君も、尻に敷かれる男みたいじゃな」
村長の笑い声に、みんながつられた。
「うぅ……あの、村長。本当に色々とありが」
「言うな。何よりお互い様じゃろうて。……それより、目も覚めて腹も減ったろう? 食事はギンに食べさせてもらうがよい。さぁさぁ皆の衆、邪魔者らは帰るとしようぞ」
みんなは、僕や村長、中にはギンにも頭を下げ、食べ物や衣服なんかを置いた後、玄関から出て行こうとする。
! メナリのお母さんへは、容態の変化に合わせて使う薬の詳細を伝える。相変わらず僕を抱きしめて動かない、ギンの肩越しに。
「メナリは手足の凍傷にも気を付けてください。薬は惜しみなく使ってくださいね」
「先生、何から何までありがとうございます」
ご両親に頭を下げるその傍にて、リトムさん達が手を振る。
「じゃあな先生」
「また明日の朝、様子を見に来るから」
「夜にギンと張り切り過ぎて、傷が開かないようにな!」
バタン。
打って変わって静寂が僕らを包む。耳をすませば、降り注ぐ外の雪の音が聞こえそうなくらいだった。
「……ギン」
彼女の耳元で何度も名前を呼んだ。そのつど、彼女は幾度も柔らかな身体と、フワフワな体毛を擦りつけた。
「愛してるよ」
心の底からの、異性への求愛だった。
「――ニゥ、ニア」
「ごめんね。本当は今すぐにでも抱きしめた――ヌプ!」
彼女の柔らかな口が僕の唇を食べる。
「チュプロレ、ジュルル」
は、激しい口づけは、まるで少し怒っているみたいにすら思えた。でも二人きりになれた世界にて、時が経つのも忘れて、お互いの唾液を交換し愛飲する。
ジュル、ゴク、チュバ、ンゴク。
「ぷは。ギン、ギン」
こんな死に体なのに、むしろだからだろうか? 股間がいつも以上に熱くなる。
「フニニ、ウニュゥ」
知ってか知らずか、優しく僕の身体を寝台へと抱き戻してくれる。すると、慌てるみたく胸巻きを外し投げると、体勢を少し変えてきて――!
「んぉっ――チュゥ、チュパウ」
薄桃色の、尖った乳首を口の中へと押し込んでくる。
い、異常事態の後だからか、冬なのにギンも発情している? もしくは、季節なんて関係なく?
僕の顔や頭や首はホワホワな体毛で覆われつつ、口の中では赤子みたく、乳首を吸い舐めつつ甘噛みし続ける。な、情けないけど、すごく気持ちイイ。
――ジュル、チュバ、ロレチュ。
「ンニャァ、ヒニャゥ~」
頭の少し上あたりで、甘く切ない声が揺蕩う。まるでギン自身も聞きたいみたく、何度も大きく鳴き響かせた。
――時間も忘れて愛らしい乳首をベトベトにし終える。すると、ギンは妖しげな光を瞳に灯したまま、腰の恥部隠しを脱ぎ置き、綺麗でホワホワな背を向けてくる。そして、僕の胸板あたりにて腰を浮かし、いやらしく誘う尻尾の付け根こと、魅惑的なお尻を振り向けてきた。
窓から入る双つの月の光は、その臀部を彩る艶やかな美しい銀毛を照らした。さらにさらに、情熱的で淫靡な肉体は、生命そのものに思えた。
ギンは小首を傾げつつ、いたずらっぽく笑った。そして、そのしなやかで柔らかな尻尾がふうわりと僕の後頭部へと巻き付いたかと思うと、ゆっくりと抱き起こしてくれる。
「ハァ、ハァ」
情欲が体内にてくすぶるけど、身体が動かない。生殺しみたいなこの状況にて、挑発的に揺れるお尻――の少し上の尻尾の付け根に、おもむろに顔面が近づいていく。付け根は肉色で微かに濡れており、まるで口の中や、女性器みたいな粘膜で、ひどく性的に映った。
「(尻尾の付け根を、口でイジメてほしいのかな?)――ジュルル、チュプ」
「! ヒンニャィ!」
今までで一番甲高い声が、家屋の中にて反響する。僕は体内の燃え盛る性欲を少しでも発散させるため、舌に全神経を集中させる。猥らにヒクつく粘膜を、舐め、突き、なぞり吸った。そのつど、普段の交尾でも滅多に聞けないような、下品な鳴き声が鼓膜を揺らし続けた。
「ギン、気持ち、いい? ――チュパ、ロレロ」
尻尾すら唾液で塗れ光ってきた頃、首に血管を張って顔面をさらに押しつける。僕の白い前歯にて――カリッ――と桃色の肉を噛む。
「オニャ! ロゴゴ、ゴロロロォ」
プゥ。
! お、オナラ? けほっけほ。――ま、まぁ放屁するくらいに気持ちよく脱力しているのなら、こっちも嬉しいよ。
ギンは股間から愛液を滴らせつつ、もっともっとと、付け根を顔面へグリグリと押し込んでくる。僕も舌で、唇で、歯で、引っ掻き舐め当て続ける。
ギンのエッチで熱い鳴き声は、まるで宮廷へ通う吟遊詩人の歌声のごとく、僕の耳を幸せにした。
「フーッ、フーッ。ロゴゴォ、ニュホォ」
やがて付け根がプックリと赤く小さく腫れ――いや、充血していった。さすがにこれ以上は血が出そうだ。
「ギ、ギン。そろそろ、僕の方も」
も、もう本当に股間が限界だ。今だって服はおろか毛布すら持ち上げて、天井を向いている。
「フア、ニィ」
? い、今、僕の名前を呼ぼうとしたのかと、勘違いしたけど、それより早くぅ。
ギンがこちらへ振り返ると――! ま、まるで見せつけるみたく滴り濡れる女性器を接近させて、僕の唇に、キ、キスをしてくる。
クチュゥ、チュパ。
あ、温かくもちょっと濁った愛液、少し生臭くも甘い味が舌の上で踊る。愛液は僕の体内の、燃える歯車をさらにと回転させていくだけだった。ギンの陰核の皮がめくり覗いているのすら間近で見えた。
「ギン。いじわる、しないでよ」
これじゃあ、どっちが雌か雄かわからない、くらいだ。
「ロゴゴォ」
爪で引っかかないようにようやく毛布をめくり、下半身を丸出しにしてくれる。我慢汁を先端から垂れ流す亀頭は、槍の穂先みたくビクビクと小刻みに震えていた。
「ヘニャ。ハッ、ヘッ」
自由自在な尻尾にて頭の位置を調整されると、妖艶に目尻を下げるギンと視線を絡ませられる。さらにジラすみたく蜜壺を前後させつつも、そそり勃つ男性器の方へと降りてくる。ようやく、ようやく待ちに待った接合が――クチュリヌチュリ――っと。
まるで見せつけるみたいなその演出、男性器が女性器に食べられていくみたいだった。
クチュォ、ヌチョチョォ、ズヌチュ!
「ふあっ。くふ、あああ」
肉棒がギンの膣に入っていくつど、情けない声があふれ、同時に股間から全身へ桃色の波が広がり弾ける。だらしなく開いた僕の口に、ギンのホワホワの丸い尻尾の先っちょが、入ってくる。
「チュバ。ロレレ」
妖しく笑うギンとの間にて織り成す、二人の粘着音と吐息、重なる淫臭、口内に広がる尻尾の味は、恍惚の
三重奏であった。そして何より、亀頭から陰茎、睾丸にまでかかる圧倒的な快感は、頭が犯しくなりそうだった。
――きもち、良すぎて。自我が、崩れそうな、くらいで。
「ロゴゴゴ。ニュゥヤア」
柔らかな脚をM字に開いたまま、そのホワホワでしなやかなな両腕を寝台に突いたため、桃色に震える乳房が近寄ってきた。
おそらく、腕で支えないと、ギンも腰が砕けそうなんだ。
パニュン、パチュン!
僕に騎上するギンが、叩きつけるみたく股間を打ち付けてくる。快楽の強度は振り切り、さらに銀髪はカーテンの様に幻想的に揺れた。女夢魔との性交を超えるであろう快感に溺れる中、ギンの惚けた顔が近づいてくる。
ンチュゥ。
粘膜という粘膜が重なり合う。溶け合う生命と生命は、まさに夫婦の――いや、それ以上の交わりの中で互いを一つにしていく。
本当の意味での交尾を、冬の夜の上に浮かべるのだ。
「ギンっ」
「フィ、ニュ」
寒空に反発するみたく、互いに湯気を噴射する。ギンが僕の頭を優しく抱きしめると、ビクビクン、っと陰茎に巻き付いた血管が脈動し、睾丸の中がかき回る。
僕の精子が、ギンの子宮で泳ぎたくて仕方がないと、暴れ出す!
「ギ、ン!」
「ニュォアァ!」
全身の疼痛が、性欲という本能に打ち負けた瞬間だった。
――ドポッ、ピュルル。ビュ、ビュー。
目の前の愛しき銀獣を、白色に染め上げる。注がれる彼女も、最後の一滴を搾り出そうと、グリグリとお尻を押し付けてくる。
膣内射精してなお、搾りきってなお、ハメ込んだ姿勢のまま、熱を交換し合い、舌を絡め合った。それが性欲以外の欲を互いが抱いていることを、夜の闇の中で、そっとほのめかしていた。
「「ハァハァ」」
やがてギンは僕に寄り添い、二人して横になって暖を取りつつ目蓋を閉じる。極上の毛にくるまれた僕は愛と安心に包まれるみたいだった。
意識が途切れるその瞬間までギンを感じ、夢の中の銀色の宮殿へ二人で訪れるため、手を離さなかった――。
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