赤い満淫電車

ニッチ

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二両目

お体の不自由な方にご配慮ください

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「――っはぁ!」

 ドクン、ドックン、ドクン!
 あ、汗で全身がずぶ濡れみたいで本当に気持ち悪い。おぼれ死ぬ寸前で呼吸いきが出来たみたいに、何度も胸を大きくふくらませた。
 ようやくちょっとずつ、意識を回復できてくると、薄暗い灯りの下にいるのがわかった。視界を埋めているのが男達だってわかるのに、どれくらい時間がかかったかすらわからなかったくらいだもん。
 ガタンカタン。カタンタタン。

「(この、景色と、臭いは)ま、さか――」

 ……似ている。電車に乗って発車した直後の、つまりは三度見さんどみとなる車内の景色だった。だから、私は、この後、ナニをされるのかもわかってしまって――。
 モニュ、サワワ。

「(もう、イヤ)ぁ、ぐ」

 じ、人生で一番に心がんでいる状態で、見ず知らずの得体の知れない男に、デリケートな場所を触られるとか、ほんと地獄みたい。気色悪くて吐き気のする感覚が、お尻や太ももにいくつも咲く中、頭の中は腐るみたいにデロデロだった。
 ――てか私って、もう狂ってない? ぶっちゃけ、それならそれでもうあきらめもつく。悪夢ゆめって言うには生々しすぎる感覚で、いつオカシクなってもほんと仕方ないくらい。
 ……けど、狂って無いのなら、。だってさっき、車両で立ちっぱのお爺ちゃんに気をつかおうとして、座っていた土方系の男性と会話をして、助けを求めたらマネキン化した。そして、最後はあの得体の知れない六本指の男に刺されて――。
 グニニ、プニュ。

「ッ」

 スカートの中をまさぐられる感覚なんてれられるはずなく、それでも歯を食いしばって考える。
 六本指の男の気まぐれで、私はもてあそばれ続ける運命なの? もしそうだとしたら、もう本当ににどうしようもないじゃない。けど、その考えにもほんの少しだけ違和感を感じた。

「(だって)――ひぅ」

 スカートをめくり上げられて、パンツをTバックみたいに食い込まされるけど、必死に頭を動かす。
 ……確か一両目ここの時は、後ろの男からの痴漢行為さえ我慢できたら、次の車両に(とりあえずは)行けた。でも二両目でまごついていると、六本指の男に『マンインではない』、とか意味不明なことを言われて襲われた。

「(マンインって、満員? 万人?)――う、ひっ」

 自分でも妄想もうそうとしか言えない内容を考えている間も、私のお尻はひたすらなぶられていた。二両目はこんな目にわない分、少しだけマシだけど、一体どうやって進めたら?
 ……けど、あれ? 待って。そう言えば、二両目でめた関西弁の土方どかたっぽい男も、私の全身――特に胸や脚を何度も見てきたっけ?

「ま、さか」

 ひょ、ひょっとしてマンインって……、って意味⁉ あ、あ、頭が腐ってるんじゃ――んんっ!

「(お尻に間に挟まってるのって、やっぱりアレ?)っ、うく」

 押し寄せる三度目の恥辱ちじょくに、|すり減って汚れた心がきしむ。何度も涙をこらえながら立ち続ける。
 ――男の乗客しかいない怪電車かいでんしゃ。のっけからの卑怯ひきょうで最低な痴漢行為と、異常な存在によるあのセリフ。信じられないけど、
 ……か、考えただけでも頭の中がだりそうな妄想もうそうネタだった。そもそも私はグラビアアイドルでもミスコンで選ばれたわけでもない、ただの一般人の女なのに。それにオカルト好きでもなければ、お墓を壊したバチ当たりなこともしていないのに、なんでこんなこと怪現象に巻き込まれないと――。
 ドピュ、ピュルル、ビュー、トポッ、ピュ。

「ひっ、あぅ」

 ……股間と内太ももに、生温かさと臭いが付着して、。痴漢の体液が、脚をつたっていく二度目の感覚は、自尊心をグチョグチョにするみたいな最っ低な触感しょっかんだった。
 ポンポン。

「っ!」

 挨拶みたいにお尻を二回叩く痴漢へ、歯ぎしりしつつ、口と手が出ないようになんとか耐える。あと今更だけど、、に気付かない振りをして、次の車両へ顔を向ける。
 ――サッ、ザッ。
 人の海が割れるみたいに、道が出来る。私は内股の変な姿勢のまま、次の扉をにらみながら、必死の思いで車両をまたいだ。

 * * *

「なんやねん! さっきからウッサイやっちゃなぁ!」

 目の前に座っている三十歳後半くらいの、土方どかたっぽい男が、低く重い関西弁で、鬱陶うっとうに返してくる。色黒でガタイが良くて、目つきが鋭く、汚れた作業着と足袋たびという格好だった。
 威圧的なその態度に気圧けおされたのは私だけじゃなく、隣に立つ足の悪いお爺ちゃんも、オロオロとした表情で私を見上げてくる。

「(お、落ち着いて私)えと。あの、こ、ここは優先座席でして――」

 なんとか前回と同じところまではぎ着けたけど問題はここから。皆がマネキン人形にならないように進めないといけない。――けど、それが、さっきのエッチな仮説かせつが頼りだなんて、いざとなると不安しかなかった。

「はぁ? 優先座席はジジイだけもんなんか? 俺らが座ったら警察サツにパクられんのか? なんか言い返してみろやぁ!」

 ……こ、怖い。関西弁って言葉がすごく強いというか、責められている感が半端なかった。
 でも二回目ということもあってよくよく観察していると、怒鳴る男は私の胸や生脚なまあしをチラチラと眺めていた。……やっぱり一両目の男と同じで、性的対象として私のことを見ている? 試すしかないっぽいけど、恥ずかしさと生理的嫌悪感でためらわれる。けど、先に進まないと、ひどい目にい続けるだけ。

「あ、あのぉ~」

 自分でもゾワ、っとするみたいな猫撫ねこなで声で、髪を耳後ろへ揃えながら、少し屈み込む。

「こちらのぉ、足の悪いお爺さんにぃ、座席をゆずってあげてもらえま――」

「だ~か~ら~。何で俺がそんなことせなあかんねん。何の得があんねん!」

 ひっ――け、けどここで諦めたら、さっきと同じことになるだけ。それに、一応は会話が続いているし、正解の可能性も少なからず、ある?

「(どっちにしても死ぬほど嫌だけど)……じゃ、じゃあよかったらぁ、そこの扉前でぇ、

 あまりの情なさに目眩めまいがしそうな中、ブラウスのボタンを二つほどゆったりと外す。さらに胸の下で腕を組んで持ち上げて谷間を作り、赤のブラの上端をのぞかせる。

「ねぇ? お爺ちゃん孝行こうこうしてあげましょうよ~」

 ガタン、カタタン。
 眉をひそませる男の動きが、止まる。ま、まさか、またマネキンみたいに? お願い、それだけはやめてぇ――。

「……ほぉん」

 ! 不信感だらけだった表情に、初めて違う感情が文字通り顔を出した。言うまでもなく、男のいやらしい笑い顔そのものだった。男はゆらりと立ち上がってから、遠慮なく私の胸に目線を突き刺してくる。

「つかなんや姉ちゃん。若い癖に痴女ちじょなんか? ――まぁ、ええわ。俺もまっとるし」

 お、思ったよりも背が高くて威圧感もあり、さながら獲物を見るみたいな目に、急に怖さを覚える。一両目の痴漢と違って、力だと絶対にかなわなさそう。
 けど、とりあえずは、当初の目的を達成しないと。

「お、お爺さん。ど、どうぞ」

 引きつった笑みを浮かべる私へ、申し訳なさそうに何度も頭を下げて、席に座るのを見届ける。

「おらっ。そんな糞ジジイどうでもええから、はよしろや」

 ガッ――痛みを覚えるくらいに手首を掴み引っ張られて、扉前で二人して向かい合う。お爺さん以外の座席に座っている男達はさっきまで寝た振りをしてたのに、いやらしそうな目つきでこっちを見てくる。最低。

「でぇ、ナァニをしてくれんのやぁ? 姉ちゃぁん」
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