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いずくかける

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るみのげーむじっきょうー!

コンビニ実況 part.02

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 ゲーム実況は今までグレーゾーンの配信とされていた。

 買ってみて面白くなかったら嫌だな……
 自分でやるのはめんどくさい……
 子供の頃やってたゲームが見れる!
 名前は聞くけどどんなゲームなの?
 上手い人のプレイが見てみたい!

 これらの人のみならず、普段ゲームをしない人々にも実況動画は人気のコンテンツである。

 なぜなら、有名ライターが手掛けたゲームのストーリーの秀逸さのみならず、最近では大金を投じてハリウッド映画顔負けのCGを取り入れるゲームが多いからだ。
 ゲーム機を持っていなくても、普段ゲームをしなくても、その内容に心を惹かれる人が多いんだろう。

 だが、その映像にも当然のように著作権がかかっていることを知っている人は、どれくらいいるだろうか。
 ゲーム内の映像は、映画と同じ著作権に分類される。
 後々話すが、全編にわたり公開していればフェアユースは適用されない。
 つまり、本来であれば配信など持っての他であり、これがゲーム実況がグレーゾーンと言われている所以である。

 ステマで話した宣伝効果の面から見ても、それが皆で遊べるアクションゲームなどであれば期待できるかもしれない。
 だが、RPGなどのシナリオに重きを置くゲームからすれば致命的である。
 例えるならば映画館の前で、公開中の映画をラストまで事細かに大声で叫びまわっているようなものだ。あるいは、新刊の漫画の帯で、ラストのシーンを説明してしまっているようなものだ。
 この声に耳を傾ける者は、はなからその映画を見る気の無いものだけだろう。その帯を見た者は、漫画を買うのをやめてしまうだろう。製作者からすればたまったものではない。

 新作が出れば注目されるため、実況者がこぞって新作のゲームを実況するのは言うまでもないが、おまえらは近年アトラスから発売されたモンスタータイトル、『ペルソナ5』がネタバレの問題を危険視して配信を全面的に禁止したのをご存じだろうか?
 ゲーム内のキャラが、『配信したらリアル逮捕する』と公言するほどの徹底ぶりであり、やはり、ゲームメーカーによっては配信をよく思っていない所があると容易に想像させる。

 だがしかし、業界内に2つ、実況を推進する動きが起こった。

 その一つは据え置きゲーム機、SONYから発売された『PS4』の配信機能である。
 本来であれば、実況動画を作る為に、ゲームの映像を一度パソコンに取り込まなくてはならなかったが、ネットに接続されているPS4は、ボタン一つでWEB上にそのゲームの映像を配信できるシェア機能が用意されていたのだ。
 これにより、誰でも気軽に実況動画をアップロードできるようになった為、さらに実況者は増えた。
 この配信機能の素晴らしい所は、ゲームソフト側が配信禁止シーンを設定している点である。
 例えば先に上げたペルソナ5であれば、オープニングとタイトル以外は撮影できない様に施されている。重要なネタバレ、個人情報などが写るシーンは画面が真っ黒になるという仕組みだ。
 今までグレーゾーンとされており、どこまでならば許されるのか頭を悩ませていた実況者の実況動画に革新的な線引きが行われたのだ。

 それともう一つ。

「うちさー、プロゲーマー目指してんだよねー」

 ルミの言い放ったこの職業、プロゲーマーの存在である。
 どういった職業なのかはその単語を見れば明らかだろう。
 Eスポーツと呼ばれる対戦ゲームのプロである。

 Eスポーツと言うと聞きなれない単語かもしれない。
 エレクトロニック・スポーツと呼ばれる、対人戦のコンピューターゲームの事であり、俺も知ったのはついさっきだ。
 だが、ぜひ覚えておいてほしい。
 なぜなら、世界のスポーツの競技人口で、このEスポーツの一つである人気タイトルが5位に入っているくらいだからだ。
 どれくらいすごいかわからない人の為に補足すると、6位に位置する世界中でゴルフを楽しむ人の数より、一つのゲームのプレイ人口の方が多いのである。
 日本でもプロゲーマーを育成する専門学校が作られたり、世界大会にもなるとその賞金額も跳ね上がり億単位であったり、オリンピック競技になる可能性も囁かれているという都市伝説もある始末だ。

 プロゲーマーの主な仕事はそれらの大会で上位に入賞し、賞金を得る事であるが、それは別にプロでなくてもできる事だ。
 プロとアマの一番の違い。
 それはスポンサーがついているかどうかである。
 言ってしまえばこれも宣伝だ。
 大会で入賞し、世界から注目されることで資金を援助するスポンサーの知名度が伸びる。
 他の競技のプロと変わらない。

 だが、他の競技との一番の違いは、プロゲーマーは配信ができるのである。

 家の中で、一人でも、気軽にいつでも世界中に試合を配信できるゲームの実況動画。
 人々に注目され、莫大な広告料を得られるのであるならば、世界中のプロゲーマーが配信しないわけがない。
 その配信を後押しする企業や、ゲームメーカー。
 グレーゾーンと言われていたゲーム実況は、すでに新たな市場として浮上してきているのである。





 というのを、俺は客のいないコンビニで一時間に渡りルミから教わっていた。
 本来コンビニの業務を教わる時間であったが、そこはザキヤマさんに内緒だ!!

 俺はルミからチャンネル名を聞くと、スマホからYouTubeを開き、『るみのげーむじっきょうー』を開いた。
 小っちゃいキャラがなにやら戦っている。
 ゲームをしたことのない俺からすれば何をしているのか全くと言っていいほどわからない。
 だがこのコメントを読む限り、プロゲーマーを目指していると言ったルミの腕前は相当なものなんだろう。

「だからって、仕事中にゲームしてるのは感心しないな」

「よしおっちって真面目だねー。大丈夫だよー。住宅街に囲まれたコンビニなんて、夜間にお客さん、ほとんど来ないんだから」

 俺はレジの真上につけられている監視カメラを指さした。
 それを見てルミの顔が青ざめていく。

「まさか……ルミ、気づいてなかったのか……!?」

「よしおっち……、い……いつからあったのあれ!?」

 おそらくこのコンビニが出来た時からであろう。

「オーナー、本当はルミがさぼってるの知ってるんじゃないか?」

「そんな馬鹿な!! 今までなんも言われなかったのに!!」

「優しそうだったからなー。でもああいう人に限って心の中で腸煮えくり返ってるもんなんだよ。夜間のアルバイト募集してたのってそういう事なんじゃないか? 今日の状況を見ると、明らかに一人でも回せそうだし」

 俺が右手で首を斬るジェスチャーをしたら、ルミは頭を抱えて涙目になった。

「ザキヤマッ!! ヨシオっちがうちの代わりになると!?」

「まあ、後の事は俺に任せとけよ」

「イヤアアアアアアアア!!」

 何ともからかいがいのあるやつだ。





「まあ、今からでも真面目にしてたら、オーナーの見る目も変わるんじゃないのか?」

「うぐぐ、ゲームしてるだけの簡単な職場だったのに……首にされたら来月からどうやって暮らせばいいんだ……」

 なんでこいつが面接に受かったんだ……

「ていうか、あれだけ登録者がいれば金に困らず食っていけるんじゃないのか? かなり貯金も溜まってるだろう」

「うちに貯金などないのだ……」

「どうして?」

 るみのげーむじっきょうーには5万人のチャンネル登録者がいた。
 仮に毎日動画をあげて、その登録者全員が見たとしたら月に150万再生は行くだろう。
 十万以上の収入が入る事になる。
 コンビニのバイトと合わせたらなかなかの手取りになるだろう。
 その疑問の答えはルミの一言によって明らかになる。

「うちは収益受け取りを承認していないんだー」

「なんでだよ!? もったいない!!」

 収益受け取りを消した動画には広告が表示されない。
 当然、どれだけ再生されても利益が出ることはないのだ。

「うちの夢はプロゲーマーなんだよ。ゲーム実況はその手段だし、広告を嫌がる人もいるんだよ」

「確かにそうかもしれないけど、やっぱりもったいなくないか!?」

 広告が表示されたとたんに嫌悪感を抱き、ページを閉じる人もいるという。
 それでも俺には理解できない。

「うちは両親にプロゲーマーを目指すって言ったらすごく反対されて、無理言って家を出たんだ。だから絶対プロゲーマーになりたい! 親を見返したい! 一人でも多くの人にうちのプレイを見てもらいたいんだー」

 そのセリフに俺は少し感動してしまった。
 広告を嫌う少数の為に利益を無くしてまで動画を見てもらいたい。
 本気でそう考えているんならそれはもうプロと言ってもいいんじゃないか?
 ルミのチャンネルに登録している人も、きっとその姿勢に胸を動かされたんだろう。
 俺は不信感しか抱いていなかったルミを少しだけ尊敬した。

「ていうかうちのチャンネル教えたんだから、よしおっちのチャンネルも教えてよー」

 確かに、一方的に聞いておいて自分のチャンネルを教えないのも不公平だ。
 先ほどの話の後だとなおさらだ。

「幸……、幸チャンネルだ」

「ほうほう、幸チャンネルねー」

 ルミはスマホを取り出し検索し始めた。

「まぁ、ルミと違って全然登録者いないんだけどな。ハハ……」

 どうやらルミは俺のチャンネルを見つけたようだ。

「今まで金の為って思ってたけどさ、やっぱ人に見てもらうってのがやりがいだよな。俺も最近コメントとか見るのが楽しくってさ」

 あれ?
 ルミが俺から遠ざかってくぞ。

「ど、どうしたの? ルミ?」

「気安く話しかけないでもらえますか? あとこっち見ないでください」

 ルミの態度が激変した理由を俺はすぐに知る事になる。
 その手に握られていたスマホには、セーラー服の俺が映っていたからだ。

「違う!! 誤解なんだルミ!!」

パンッ!!

 焦って詰め寄った俺の頬をルミは思いっきりビンタした。
 客のいない店内に軽快な音が響き渡る。
 これは俺が悪いのか? 俺にもよくわからん。舐めるな?
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