転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!

👼天のまにまに

文字の大きさ
49 / 70
第9章:叡山焼き討ちから始まる火消し生活

なによ? こいつ。強すぎ!

しおりを挟む

 黒古を矢倉の中へ放り込んで待機させる。アゲハに矢倉の警戒も指示。

 黒古は姫様抱っこで連れて行けと要求してきたが即座に却下。
 衛生兵がやられたら、もしもの時ヤヴァいじゃない。
 矢倉をピットにして、いつでもピットイン出来るようにしておく。
 まあ、そんなに針使うことはないと思うけど、もしも将軍をケガさせたらまずいよね。



 北門の内側に堂々と立っていようかな。いや、やっぱり相手は将軍だから片膝ついた方がいい?

 それにしても遅いな。

 すこし焦り出した俺の前に、4人の護衛らしき側近に守られるように狩衣姿の将軍が小走りに近づいてくる。
 どうせ何か忘れものでもして、取りに行っていたんだろうね。

「おお。そなたは明智とやらか? 今からでも遅うはない。余の家臣となれ。ここを離れて大軍にて信長を叩き潰す故、手を貸すのじゃ」

 この馬鹿殿みたいな将軍。
 現在の状況も認識できないのか?

「上様、お迎えに上がりました。三好や腐れ坊主どもにたぶらかされてはなりませぬ。信長様は今後も副将軍として義昭さまを支えていく所存。
 ここは御逃げなされて信長様の下で追討令を発していただきたく」

 笑いをこらえつつ、ヘイトを溜め始める。

「何を申すのじゃ! 信長は余の命令をことごとく無視しおって。しまいには余に命令し始める様。許しがたい!」

「それは上様の秘めたるご意思を信長様が汲み取り、汚れ役を買って出ている事ゆえで」

「黙れ! それでは信長が全て取り仕切っておるように日ノ本中の武家や公家に映ってしまうではないか!」

 周りの側使え?も、異議を唱え、中には「不忠者!」「この下郎が!」とかなじる者も出て来る。

 よく見ると三淵藤英とか細川藤孝とか、官位持っちゃっているお上品な方々もいる。だがこの方々は煽り耐性MAX?
 平然としている。どろどろ公家さん相手に寝技をしている魑魅魍魎連中だからね。

 どうやってこの連中を慌てさせようかと考えていると、その後ろから僧形の小柄な人影が現れた。

「そこをどきなされ。若侍殿。
 征夷大将軍の行動を止められるのは、恐れ多くも帝のみ。
 たとえ副将軍とされる信長殿でも、幕府の実権を握って自在になさることは出来ぬのが道理」

 しわがれた声が古臭い考え方を展開しだしたが。

「そのような話は後で聞こう。信長様の前でな。もっとも信長様が許されればだが」

 ちゃっちゃとこいつら倒して将軍を略奪するか。
 逃げ場はない。
 後ろは雪風が塞いでいるはず。

「おお、そなたの味方らしき忍者は、あの者が持っていた糸で柱にぐるぐる巻きにしておいたぞ。
 殺しはせなんだから安心せよ」

「なんだと? 雪風を倒しただと?」

 常人だったら、あの糸さばきからは逃げられない。それを反撃されずに生け捕り? 奴の僧衣は全く引き裂かれていない。

「なによ! あんた。光秀みたいに加速できるの? 卑怯よ、尋常に勝負なさい!」

 そういうそばから雪風は縛りを抜け出したのか、忍者らしくないセリフを吐きつつ、身体中から血を吹きだしてこちらへ走って来る。
 大丈夫なのか?

「おお、よくあの縛りから抜け出せたものよ。亀甲縛りとM字縛り、ついでに吊り攻め……」
「よく知っているな、そんな縛り方を」
「いや、趣味で……」

 光秀はヲタクの習性でなんでもよく知っているのだ!
 だがこいつ。M字縛りと言っていなかったか? この時代にM字とは?


「御託はこの辺でよかろう。ささ、藤英殿、藤孝殿。公方様をお逃がし下され。これら雑魚は拙僧が相手します故」
「では頼んだ。天海殿。あとから落ち合いましょう」

「まてぃ! 公方様、信長様の所にお連れいたす」

 俺は念のため、頭痛を覚悟して加速を開始。北門の通用口を塞ぐように立ちはだかる。そして将軍を担いで逃げようとした……が!
 間に割って入る僧形。

「その程度の素早さ、拙僧にもあるぞ」

 加速のために脱ぎ捨てられた菅笠に隠れていた顔が、目の前にあった。

「うっ!」
「どうした。驚いたか」
「くっ」
「?」
「口がクサイ!!」

 天海とかいう糞坊主が、ついつい口の臭いを嗅ごうとしたすきを狙い、将軍を略奪!
 雪風のもとへ向かう。

「待たんか! この口先男。実力で勝負せよ!」
「総合的な能力が実力というものだ。お前のような正面から戦うしか能のない奴には俺には勝てん」

 ただ単にセコいとも言われるけど、楽して勝てればそれでいいんです。

「では拙僧が実力、見てもらおうか」

 糞坊主はその言葉と共に、手にした六尺棒を引っ張り、二つにする。
 中には2本の直刀。長さは両方とも150cmはある。

 双方、さきほどまで止めていた加速空間に入った。
 少し遅れた俺の首筋のすぐ前を、糞坊主の切っ先がすり抜けていった。

 こいつ。
 俺と同じ加速をしてくる。
 他にもなにか隠し持っているものがあれば危険だ。
 だがこの加速。どうしてこいつが出来るんだ?

 ひゅん。

 そんなことを考えている余裕はない。
 四方八方から斬り込んでくる2本の長巻のような武器をどういなすか。それをかいくぐり奴の身体にこちらの切っ先を届かせる。

 腰の後ろから2本の小刀を抜き放つ。
 一合、二合。
 刀を交わしながら間合いを計る。

 圧倒的にリーチが違う。
 片方の長巻を左腕でからめとり、そのまま近づくか。

 ダブルダッチのような空間に入り込んで、宙返りしながら奴の手首を狙う。
 よけられた。
 長巻を短く持ち換え、反撃してくる。

 しかしな。
 それは囮。
 バク転しながら、もう一方の長巻のを斬り落とす。

 よしっ。奴の得物は1つだけになった。
 これならば長巻を片方の小刀で鍔ぜり合いをしながら斬り込める。

「ふははは。よくやるな、ガキが。だがもう頭痛がひどいだろう。これで終わりじゃ。公方様も逃げる事が出来た。
 さらばじゃ」

 糞坊主は思いっきりしゃがんでジャンプ!

 え“
 まるでロケットじゃん、その勢い。
 放物線弾道を描きながら飛び去る坊主姿。


「あいつ。なんであんたみたいな加速するのよ? それにあの力」

 やっとのことで近づいて来た雪風が奴のジャンプした際にできた穴をのぞきながらぼやく。その横にはアゲハに守られながら黒古もいる。

「あの人。多分、わたくしが針を打った人ですわ。あの加速と怪力。間違いなく黒古チルドレン」

 チルドレンにしては歳取りすぎているが、黒子の犠牲者なのか。

「黒子。おまえ、奴を知っているのか?」
「いいえですわ。見た事のない顔ね」

 気になる謎が出来てしまった。
 だがそれよりも将軍を逃がしたのは痛い。
 これで織田家包囲網が確定した?



「あ。あのお坊さん。わらじを忘れていったです。穴の中に張り付いてるです。今度お返ししなくちゃなのです」

 やはり生身以外は強化できないのがお約束らしい。
 あのしわくちゃボディ(想像)を見るとMPが一気に削れるというスキルに警戒せねば。
 見たら確実にMPが1になる!
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...