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エステル様の爆弾発言により、返す言葉を無くされたアイリナ様やマーリン様は。

顔を見合わせて二人して盛大な溜息を吐いていた。

対するエステル様はというと、すっごく満足気に頷いていらっしゃる。

────…うん。あのね?

エステル様よ…。

可愛いものが大好きなのはよぉ~~~っく分かった。分かったけども。

『可愛いもの仔犬は誰だってでたいに決まってるじゃないですか!』

・・・って‥貴女…。

( “もの”の裏に、明らかに“仔犬”って含んでましたよね?)

というかエステル様…何ですかその顔は…。

そんな嬉しそ~に頬を染めて、きらきらした目で私を見られても‥困るからね?

貴女の両隣に居るアイリナ様とマーリン様を見てみて欲しい。

私を見て、それからエステル様を見て、額を手で押さえて、深~い溜息を吐いているのを。

‥もうね。

私がエステル様を見る目が、チベットスナギツネみたいに(死んだような半目で)見ても、もうこれは仕方がないと思うんだ。

「ふふふっ‥リアさんたら、とても面白いお顔になってますわよ…ふふっ。」

エステル様あなたが爆弾発言するからこんな顔になってるんですけどね。。

「ハァ~~‥ステルが昔から可愛いものには目が無いのは知っているけど、わたし達と違ってフォートレックさんは一般市民よ。そこの所は分かってるの? (‥さっきは突飛な理由過ぎて驚いたけど、彼女を側に置こうとしてるんなら、ステルの頭の中では何かしらの手立てがあるってことよね。)」

───‥はい?

ちょっとちょっとマーリン様よ。
今、聞き捨てならない“心の声”が聴こえたんですけど?

(‥エステル様ってば、私を側に置こうとしてるの?!)

「そうよステル!この子を影で支えるならまだしも、堂々と一庶民を側に置いたりすれば、ステルは品位を疑われるし、彼女だって学院内で穏やかに過ごせなくなるわよ!(そうよ、いくらこの子が…まぁ彼女が小動物みたいな風貌なのは私も認めるけれど‥ステルは何を考えてるのよ!)」

アイリナ様‥せっかく良いこと言ってるのに、心の裏でエステル様の仔犬発言に乗っからないでくれますかね…。

「確かにアイリやマノンの言う通り、リアさんは一般市民ですわ。──でも、わたくし達が今居る学院ココは、実力が地位を左右する場所でもあります。‥先程のことを思い出して? アイリとマノンも見たでしょう、使。(あの場には勘違いしそうな[宮廷魔導士]様も居ましたものね‥。)」

…んん?
私が起こした『魔法による事象』‥って何?

「「!!!」」

ハッとしたような顔でアイリナ様とマーリン様から見つめられたけど、え…、私だけ分かってない的な?
 
「───‥まさか、あの不思議な事象ってドートン様の魔法じゃなくて…。(それが本当なら、なるほどですわ…。)」

「貴女の魔法だったのね…。(こんな小鼠こねずみのような風貌で‥これが“窮鼠きゅうそ猫を噛む”ってことなのね。この子ってば、やる事えげつないわね…。)」

あの…‥だから『私の魔法』って?

てゆーかアイリナ様はいい加減、ネズミの例えから離れてくださいよ。

それにやる事えげつないって言われても…えーと、私、何かやらかしたっけ‥。

確かにあの時、冷黒王子に左手を掴まれて“心の声”だけで喋られた恐怖から、感情のたがが外れて、魔力暴走を引き起こしちゃったけどさ‥。

あれは魔法なんかじゃなくて、単なる魔力暴走による不確定要素な結果だっただけで、私、使んですけど?

(エステル様もアイリナ様もマーリン様も貴族だから知らないのかな‥。)

私みたいな庶民は、王族貴族のように魔術や魔法を教えてくれる専属教師を雇えないから、それを学ぶ為にこの学院に来てるのに…。

しかも今日は入学初日だし、そんな庶民の私がいきなり高度な魔法なんて使えるはずないのにね。

「ふふふっ。そうなの。裏庭で会う前からリアさんが優れた才能をお持ちなのは、マノンと同じクラスなので分かっていましたけど、の事象を起こせるんですもの。(きっと普段は力を制御されているのね‥。)
───そうね、多分‥いえ、確実に今年の学院の中でリアさんの魔力量はトップクラス‥技術の不慣れから差し引いても5本の指に入るはずですわ。(貴族ではないリアさんが先ほど行使した魔力量を考えれば、彼女は〔先祖返り〕なのは確定ですし、ここまで言えば二人とも解ってくれるわよね?)」

へ?‥私がこの学院の中で、5本の指に入る?

ってゆーか、やっぱりさっきの魔力暴走で私が〔先祖返り〕だってバレましたか…ゔぅ…。

「──外ではまかり通らないことも、学院内であれば可能ってことになるわね。(むしろこの子の特異性が私達以外の貴族にバレた時のことを考えると‥、この子はステルの側に置いておく方が安全と言えるわね…。)」

あれ? アイリナ様も賛同しちゃうの?

「それなら同じクラスのわたしから担任には伝えておくわね。(彼女とは席も隣ですし、授業以外はわたしと行動を共にすれば大丈夫でしょう。)」

え?え?‥授業以外はって…これから私は、マーリン様と常に一緒に行動するの?

「ふふふっ。解ってくれたようね、二人ともありがとう。アイリ、マノン。‥リアさんのこと宜しくね? (二人が味方になるならリアさんも心強いでしょう。)」

「「任せて!」」

いやあの‥何かあれよあれよと宜しくされちゃったけど。

これって私は『エステル様の側に置かれること決定』ってことでしょぉ~か。。

恐る恐るエステル様を見れば、優雅でとびきりの笑顔を返され、マーリン様を見れば優しく微笑みを返され、アイリナ様を見れば任せなさいと言わんばかりにしっかりとうなずきを返されたよ…。

( …う、う‥、ゔあ″ぁ~~~っ 私の平穏な日々が~~~~~っ!!!)

あーーーーーもーーーーーーっっ!

(ハァ~~~‥。。もぉ~…マジですかーーー…。)

忘れちゃいけない。
エステル様達は『お貴族様な身分の方々』なんだよ。

当然、庶民の私は王族貴族には逆らえませんよ。。

ハイこれこの国の法律ですよね分かってるわよコンチクショーッ!(涙)

いくら実力主義の学院内であっても、王族貴族に“こうあるべき”と決められちゃったら、庶民の私は逆らえないってゆーね…。

エステル様達に悪気がないのは分かってる。

私の為に良かれと思って言ってくれてるのも分かってる。

(分かってるんだけどさ…トホホ。。)

「‥──さて、お茶も入りましたし、まずはティータイムを楽しみましょう? わたくしはリアさんのこと、もっと色々と知りたいですわ。(そしてもっとリアさんと仲良くなりたいですわ。)」

‥うん。エステル様の好意は大変嬉しく思いますけども。

先々のことを考えると、エステル様と仲良くなるとかもう悪い予感しかしないわ…。。

「えぇと…はい、そうですね・・・。」

私がエステル様を見る目が、チベットスナギツネみたいになってても、今だけは許してほしいと思うんだ。

「あらあら、またリアさんてば面白いお顔に‥ふふふっ。(そんなお顔のリアさんも愛らしくて和みますわ。)」

…そうですか‥それは良かったです・・・。(死んだ目)

何にせよ、私が青Fの登場人物と関わることは逃れられないってことですね。。

せっかく前世青Fの記憶を取り戻したのに、どんどん悪い方へと向かってるしさ。。

ほんと運命ってままならないや…。

しばらく現実逃避してもいいですかね? ‥ぐすん。。
 
 
 
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