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第5話 理想郷の礎
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助け出したのは、隣国から亡命してきた王女セレーナと、彼女を護衛していた騎士団の生き残りだった。
彼女たちの国は、帝国による突然の侵攻を受け、一夜にして滅びたという。
唯一の逃げ道だったこの氷原で、彼女たちは力尽きようとしていたのだ。
「……感謝の言葉も見つかりません。アクス様。あなたがいなければ、私たちは今頃……」
スープで人心地ついたセレーナが、深々と頭を下げる。
彼女の瞳には、国を失った絶望と、それでも生き延びたことへの複雑な感情が入り混じっていた。
「礼には及ばない。俺もこの先にある土地へ行くつもりだったからな。ついでだ」
「この先、ですか? ですが、その場所は古の時代より、神に見放された未開の荒野と呼ばれております。人が住めるような場所では……」
彼女の言う通り、俺たちが目指しているのは、地図上では空白地帯となっている広大な盆地だ。
周囲を険しい山脈に囲まれ、強力な魔力が渦巻いているため、現代の文明では開拓不可能とされている。
だが、俺の四次元倉庫にある地図には、別の名前が記されていた。
――旧文明第十七管区・自律型農耕都市。
かつて超古代文明が、気候を完全に制御し、あらゆる作物を自動で生産するために構築した、人工的な楽園の跡地だ。
「案ずるな。俺の荷物の中には、家を建てる道具も、畑を耕す機械も、全て揃っている」
数日後、俺たちはついにその場所に到着した。
山脈を抜けた先に広がっていたのは、外部の寒さが嘘のような、緑豊かな大地だった。
中央には巨大なタワーの残骸が聳え立ち、周囲には規則正しく区画された平野が広がっている。
「ここが、私たちの新しい家か……」
セレーナが感嘆の声を漏らす。
俺はランドクローラーから降りると、管理インターフェースを大きく展開した。
「さて、まずは基礎から始めるか。管理者権限行使。都市再生プロトコル、フェーズ1を開始」
俺が空間上のアイコンをスワイプした瞬間、大地が微かに震えた。
四次元倉庫から、無数の小型建築ドローンが溢れ出す。
それらは光の帯となって荒野を駆け巡り、地面の下に埋もれていた古代の配管や魔力ラインを再接続していく。
ガガガッ、と重厚な音を立てて、地面から透明な防壁が競り上がってきた。
外部からの魔物や悪天候を完全に遮断する、広域環境維持システムだ。
続いて、俺が選んだ住宅ユニットが次々と具現化されていく。
それは、かつての王都の城よりも頑丈で、現代のいかなる宮殿よりも快適な、最新鋭の住居群だ。
「あ、アクス様! 建物が……勝手に生えてきます!」
「驚くのはまだ早いぞ。次は食料の確保だ。自動農園ユニット、展開」
俺が指を弾くと、広大な平野に透明なドーム型の農園が立ち並んだ。
内部では、遺伝子レベルで最適化された種が蒔かれ、古代の成長促進光によって、わずか数日で収穫可能なまでに育つ。
「……信じられない。これは、奇跡です」
セレーナだけでなく、騎士たちも避難民たちも、目の前で繰り広げられる光景に言葉を失っていた。
彼らにとって、家を建てるのは数ヶ月の重労働であり、食料を得るには季節を待たねばならないものだった。
だが、俺にとっては、倉庫にあるデータを呼び出すだけの、数秒の作業に過ぎない。
「セレーナ、お前に提案がある。俺はこの場所を、誰にも縛られない自由な国にしたいと思っている。お前たちさえ良ければ、ここを新しい故郷として使っていい。その代わり、少しばかり国造りの手伝いをしてほしい」
俺が差し出した手を見て、セレーナは迷うことなくその手を握り返した。
彼女の瞳に、再び強い意志の光が宿る。
「はい。アクス様。いえ、我が王よ。このセレーナ、命に代えてもお仕えいたします」
こうして、北の最果ての荒野に、突如として最強の王国が誕生した。
現代の魔法体系を遥かに凌駕する、失われた超古代文明の力を基盤とした、不落の都市。
俺はもう、誰かの荷物を背負うだけの存在ではない。
自分自身の意志で、この世界のルールを塗り替えるための旗を掲げたのだ。
一方その頃、勇者ゼクスたちは、アクスがいなくなってから三度目の依頼に失敗していた。
ボロボロになった聖剣を手に、泥にまみれて退却する彼らの耳に、信じられない噂が届き始める。
「おい、知ってるか? 北の最果ての地に、一晩で黄金の都が現れたらしいぞ」
「なんでも、そこにはどんな怪我も治し、どんな飢えも凌げる、神の道具を操る王がいるとか……」
「……アクスか? まさか、そんなはずがあるか!」
ゼクスの怒号がギルドに響き渡るが、その声は以前のような力強さを失っていた。
失ったものの大きさに、彼らが本当に気づくのは、まだ少し先のことだった。
彼女たちの国は、帝国による突然の侵攻を受け、一夜にして滅びたという。
唯一の逃げ道だったこの氷原で、彼女たちは力尽きようとしていたのだ。
「……感謝の言葉も見つかりません。アクス様。あなたがいなければ、私たちは今頃……」
スープで人心地ついたセレーナが、深々と頭を下げる。
彼女の瞳には、国を失った絶望と、それでも生き延びたことへの複雑な感情が入り混じっていた。
「礼には及ばない。俺もこの先にある土地へ行くつもりだったからな。ついでだ」
「この先、ですか? ですが、その場所は古の時代より、神に見放された未開の荒野と呼ばれております。人が住めるような場所では……」
彼女の言う通り、俺たちが目指しているのは、地図上では空白地帯となっている広大な盆地だ。
周囲を険しい山脈に囲まれ、強力な魔力が渦巻いているため、現代の文明では開拓不可能とされている。
だが、俺の四次元倉庫にある地図には、別の名前が記されていた。
――旧文明第十七管区・自律型農耕都市。
かつて超古代文明が、気候を完全に制御し、あらゆる作物を自動で生産するために構築した、人工的な楽園の跡地だ。
「案ずるな。俺の荷物の中には、家を建てる道具も、畑を耕す機械も、全て揃っている」
数日後、俺たちはついにその場所に到着した。
山脈を抜けた先に広がっていたのは、外部の寒さが嘘のような、緑豊かな大地だった。
中央には巨大なタワーの残骸が聳え立ち、周囲には規則正しく区画された平野が広がっている。
「ここが、私たちの新しい家か……」
セレーナが感嘆の声を漏らす。
俺はランドクローラーから降りると、管理インターフェースを大きく展開した。
「さて、まずは基礎から始めるか。管理者権限行使。都市再生プロトコル、フェーズ1を開始」
俺が空間上のアイコンをスワイプした瞬間、大地が微かに震えた。
四次元倉庫から、無数の小型建築ドローンが溢れ出す。
それらは光の帯となって荒野を駆け巡り、地面の下に埋もれていた古代の配管や魔力ラインを再接続していく。
ガガガッ、と重厚な音を立てて、地面から透明な防壁が競り上がってきた。
外部からの魔物や悪天候を完全に遮断する、広域環境維持システムだ。
続いて、俺が選んだ住宅ユニットが次々と具現化されていく。
それは、かつての王都の城よりも頑丈で、現代のいかなる宮殿よりも快適な、最新鋭の住居群だ。
「あ、アクス様! 建物が……勝手に生えてきます!」
「驚くのはまだ早いぞ。次は食料の確保だ。自動農園ユニット、展開」
俺が指を弾くと、広大な平野に透明なドーム型の農園が立ち並んだ。
内部では、遺伝子レベルで最適化された種が蒔かれ、古代の成長促進光によって、わずか数日で収穫可能なまでに育つ。
「……信じられない。これは、奇跡です」
セレーナだけでなく、騎士たちも避難民たちも、目の前で繰り広げられる光景に言葉を失っていた。
彼らにとって、家を建てるのは数ヶ月の重労働であり、食料を得るには季節を待たねばならないものだった。
だが、俺にとっては、倉庫にあるデータを呼び出すだけの、数秒の作業に過ぎない。
「セレーナ、お前に提案がある。俺はこの場所を、誰にも縛られない自由な国にしたいと思っている。お前たちさえ良ければ、ここを新しい故郷として使っていい。その代わり、少しばかり国造りの手伝いをしてほしい」
俺が差し出した手を見て、セレーナは迷うことなくその手を握り返した。
彼女の瞳に、再び強い意志の光が宿る。
「はい。アクス様。いえ、我が王よ。このセレーナ、命に代えてもお仕えいたします」
こうして、北の最果ての荒野に、突如として最強の王国が誕生した。
現代の魔法体系を遥かに凌駕する、失われた超古代文明の力を基盤とした、不落の都市。
俺はもう、誰かの荷物を背負うだけの存在ではない。
自分自身の意志で、この世界のルールを塗り替えるための旗を掲げたのだ。
一方その頃、勇者ゼクスたちは、アクスがいなくなってから三度目の依頼に失敗していた。
ボロボロになった聖剣を手に、泥にまみれて退却する彼らの耳に、信じられない噂が届き始める。
「おい、知ってるか? 北の最果ての地に、一晩で黄金の都が現れたらしいぞ」
「なんでも、そこにはどんな怪我も治し、どんな飢えも凌げる、神の道具を操る王がいるとか……」
「……アクスか? まさか、そんなはずがあるか!」
ゼクスの怒号がギルドに響き渡るが、その声は以前のような力強さを失っていた。
失ったものの大きさに、彼らが本当に気づくのは、まだ少し先のことだった。
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