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陽だまりカフェがオープンしてからというもの、工房は以前にも増して活気に満ちていた。
パンを焼く香ばしい匂い、カフェから聞こえてくる人々の楽しそうな笑い声。
そして、私の隣で健気に働いてくれる小さな助手の存在。
窯の番人であるホカちゃんは、私のパン作りを毎日、その丸い瞳でじっと見つめていた。
彼はかまどの温度管理という大切な仕事を完璧にこなしてくれる、頼もしい相棒だ。
薪をくべ、空気窓を調整し、焼き上がりのタイミングを私に知らせてくれる。
その仕事ぶりは、もはやベテランの職人のようだった。
けれど最近のホカちゃんは、仕事の合間に私の手元を食い入るように見つめることが多くなった。
私が生地を丸めれば、自分の小さな手を真似するように動かす。
私が生地を伸ばせば、短い腕を一生懸命に伸ばしてみせる。
こね台の隅に落ちた生地の切れ端を、大事そうに拾い上げては指でつんつんと突いてみたりもした。
その瞳は、好奇心と、そして憧れのようなきらめきで満ちている。
この子も、自分で何かを作ってみたいのかもしれない。
その小さな体の中に、私と同じ「創造の喜び」が芽生えているのだとしたら、とても素敵なことだ。
ある日の午後、カフェの喧騒が少し落ち着いた時間を見計らって、私はホカちゃんに声をかけた。
「ホカちゃん。もしかして、パン、作ってみたい?」
私の言葉に、ホカちゃんの粘土でできた体が、ぴくんと大きく震えた。
そして、ゆっくりとこちらを振り返ると、こく、こくと、ちぎれんばかりに首を縦に振る。
その瞳は「どうしてわかったの?」とでも言いたげに、驚きと喜びで大きく見開かれていた。
「ふふ、見ていればわかるわ。いつも、とっても楽しそうに私の手元を見ているもの」
私がそう言って微笑むと、ホカちゃんは少し照れたように、もじもじと自分の短い指を組み合わせた。
「よし、じゃあホカちゃんにも、パン作りのお手伝いをしてもらいましょうか。でも、その前に、ホカちゃん専用の道具が必要ね」
私はホカちゃんの小さな頭を優しく撫でると、早速ボルギンさんの鍛冶屋へと向かった。
事情を話すと、ボルギンさんは「なんだ、そいつは面白そうだ!」と豪快に笑って、すぐに仕事に取り掛かってくれた。
ドワーフの職人である彼の手にかかれば、どんなものでもお手の物だ。
翌日、ボルギンさんが届けてくれたのは、私の想像をはるかに超える、可愛らしくて本格的な道具一式だった。
ホカちゃんの小さな手にぴったりのサイズに作られた、木製の麺棒とスケッパー。
そして、彼が作業するための、小さな木の板まで用意されていた。
どれも表面は滑らかに磨き上げられている。
子供が使っても安全なように、というボルギンさんの優しい心遣いが伝わってきた。
「さあ、ホカちゃん。これが、あなたのための道具よ」
工房に戻り、その道具をホカちゃんの前に並べてあげると、彼はしばらくの間、信じられないというように目をぱちくりさせていた。
そして、おそるおそる、その小さな麺棒に手を伸ばす。
自分の手にしっくりと馴染む感触を確かめるように、ぎゅっと握りしめた。
その姿は、まるで伝説の剣を手にした勇者のように誇らしげだった。
その日から、ホカちゃんの新しい日課が始まった。
私は、パン生地をこねるたびに、その余りをほんの少しだけ彼の作業台に置いてあげる。
ホカちゃんは、それを宝物のように受け取ると、早速パン作りの真似事を始めた。
私の動きを思い出すように、小さな麺棒で生地を伸ばそうとする。
けれど、力が強すぎて生地がぺしゃんこになったり、逆に弱すぎて全然伸びなかったり。
スケッパーで生地を切ろうとしても、なかなか思うように切れずに、粘土のようにぐにゃりと歪んでしまう。
それでもホカちゃんは、決して諦めなかった。
上手くいかずに首をかしげ、時には悔しそうに短い足で床をぽんぽんと叩いたりしながらも、その瞳はいつも真剣そのものだった。
「最初は誰でもそんなものよ。大切なのは、楽しむ気持ちだからね」
私がそう声をかけると、ホカちゃんはこくりと頷いて、また生地に向き直る。
その健気な姿は、工房の誰もを笑顔にした。
カフェの仕事が一段落したエララさんが工房を覗きに来ては、「まあ、ホカちゃん、頑張っているのね!」と応援してくれる。
休憩中のボルギンさんが「おう、ちびすけ! もっと腰を入れろ!」と自分なりのアドバイスを送ったりもした。
毎日、飽きることなくパン生地と向き合い続けたホカちゃんは、少しずつ、だけれど確実に上達していった。
最初はただの歪な塊だったものが、だんだんと綺麗な丸い形を作れるようになる。
麺棒の使い方も様になってきて、生地を均一な厚さに伸ばせるようにもなった。
創造することの楽しさに目覚めた彼の瞳は、日に日に輝きを増していく。
自分の手で何かを生み出す喜び。それは、私がいちばん大切にしている気持ちと同じだった。
そんなある日のことだった。
その日は、改装作業が終わってからも、ルゥフさんが工房に残って、薪割りの手伝いをしてくれていた。
彼は、私が頼んだわけでもないのに、いつもこうして黙々と私の仕事を手伝ってくれる。
大きな斧を軽々と振り下ろすたびに、乾いた薪が心地よい音を立てて割れていく。
その頼もしい背中を眺めていると、私の心はいつも温かいもので満たされた。
ホカちゃんは、自分の作業台から、そんなルゥフさんの姿をじっと見つめていた。
その瞳には、憧れと尊敬の色が浮かんでいるように見えた。
やがて、ホカちゃんは何かを決心したように、こね台の上の生地に向き直った。
そして、いつもとは違う、特別なものを作り始めたのだ。
彼は、生地を粘土細工のように、ちぎったり、くっつけたりしながら、慎重に形を整えていく。
まずは、丸い頭。
そして、がっしりとした胴体と、長い手足。
一番苦心していたのは、頭の上につける二つの耳だった。
何度も角度を調整して、ぴんと立った、狼の獣人らしい耳を再現しようとしている。
最後に、生地の小さなかけらを丸めて、ふさふさの尻尾のようにお尻の部分へちょこんとくっつけた。
「……! ホカちゃん、それってもしかして……」
私が驚いて声をかけると、ホカちゃんは少し照れたように、こくりと頷いた。
彼が作っていたのは、紛れもなく、ルゥフさんの形をした小さなパンだったのだ。
不格好で、お世辞にもそっくりとは言えないかもしれない。
けれど、そのパンには、ホカちゃんのルゥフさんへの「大好き」という気持ちが、いっぱいに詰まっているのがわかった。
「すごいわ、ホカちゃん! とっても素敵よ!」
私が心から褒めると、ホカちゃんは嬉しそうに、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。
薪割りを終えて工房に戻ってきたルゥフさんは、ホカちゃんが作った自分の人形パンを見て、驚いたように目を丸くした。
「これは……俺、か?」
彼の低い声に、ホカちゃんは少し恥ずかしそうに、けれど誇らしげに、こくんと頷いてみせる。
ルゥフさんは、その小さなパンをしばらくの間、じっと見つめていた。
「さあ、ホカちゃん。あなたの初めての作品だもの。特別に、この大きなかまどで焼いてあげましょうね」
私は、ホカちゃんが作ったパンを、壊さないようにそっと手のひらに乗せた。
ずっしりとした、温かい重み。
そこには、私の生命魔法とは違う、ホカちゃん自身の純粋な思いが、確かに宿っているのを感じた。
私は、その気持ちを壊さないように、火加減を慎重に調整しながら、パンを丁寧に焼き上げた。
かまどの中で、小さなルゥフさんパンは、ゆっくりと膨らみ、こんがりとした美味しそうな焼き色に染まっていく。
そして、焼き上がったパンは、奇跡のように輝いていた。
私のパンが放つ金色の光とは違う、もっと素朴で、けれどどこまでも優しい、陽だまりのような温かい光。
それは、ホカちゃんの心の光そのものだった。
パンからは、小麦の香ばしい匂いと共に、ホカちゃんの純粋な「ありがとう」という気持ちが、香りとなって立ち上っているようだった。
「さあ、ホカちゃん。あなたのパンが焼けたわよ。あなたが、ルゥフさんに渡してあげて」
私は、焼き上がったパンを小さな皿に乗せ、ホカちゃんに手渡した。
ホカちゃんは、そのお皿を短い両手でしっかりと抱えると、よちよちと、でも少しだけ胸を張って、ルゥフさんの元へと歩いていく。
そして、そのお皿を、ルゥフさんに向かって、そっと差し出した。
ルゥフさんは、その場にしゃがみ込むと、ホカちゃんの目線に合わせてくれた。
そして、その小さなパンを、まるで宝物を扱うかのように、大きな手で優しく受け取った。
「……ありがとう、ホカ。とても、嬉しい」
彼の口からこぼれたのは、いつものぶっきらぼうな響きではなく、心の底からの、温かくて優しい声だった。
そして、いつもは険しいその表情が、ふっと和らぎ、今まで見たこともないくらい、穏やかで優しい笑みが浮かんだ。
その笑顔は、まるで春の陽だまりそのものだった。
ホカちゃんは、その笑顔を見て、本当に嬉しそうに、ルゥフさんの足元にすり寄っていく。
ルゥフさんは、その小さな頭を、大きな手でわしゃわしゃと優しく撫でてあげていた。
その光景を、私と、いつの間にか工房を覗きに来ていたエララさんやボルギンさん、そしてカフェのお客さんたちまで、みんなが微笑ましく見守っていた。
ホカちゃんの作った一つの小さなパンが、工房にいるみんなの心を温かく繋いでくれた。
パンを焼く香ばしい匂い、カフェから聞こえてくる人々の楽しそうな笑い声。
そして、私の隣で健気に働いてくれる小さな助手の存在。
窯の番人であるホカちゃんは、私のパン作りを毎日、その丸い瞳でじっと見つめていた。
彼はかまどの温度管理という大切な仕事を完璧にこなしてくれる、頼もしい相棒だ。
薪をくべ、空気窓を調整し、焼き上がりのタイミングを私に知らせてくれる。
その仕事ぶりは、もはやベテランの職人のようだった。
けれど最近のホカちゃんは、仕事の合間に私の手元を食い入るように見つめることが多くなった。
私が生地を丸めれば、自分の小さな手を真似するように動かす。
私が生地を伸ばせば、短い腕を一生懸命に伸ばしてみせる。
こね台の隅に落ちた生地の切れ端を、大事そうに拾い上げては指でつんつんと突いてみたりもした。
その瞳は、好奇心と、そして憧れのようなきらめきで満ちている。
この子も、自分で何かを作ってみたいのかもしれない。
その小さな体の中に、私と同じ「創造の喜び」が芽生えているのだとしたら、とても素敵なことだ。
ある日の午後、カフェの喧騒が少し落ち着いた時間を見計らって、私はホカちゃんに声をかけた。
「ホカちゃん。もしかして、パン、作ってみたい?」
私の言葉に、ホカちゃんの粘土でできた体が、ぴくんと大きく震えた。
そして、ゆっくりとこちらを振り返ると、こく、こくと、ちぎれんばかりに首を縦に振る。
その瞳は「どうしてわかったの?」とでも言いたげに、驚きと喜びで大きく見開かれていた。
「ふふ、見ていればわかるわ。いつも、とっても楽しそうに私の手元を見ているもの」
私がそう言って微笑むと、ホカちゃんは少し照れたように、もじもじと自分の短い指を組み合わせた。
「よし、じゃあホカちゃんにも、パン作りのお手伝いをしてもらいましょうか。でも、その前に、ホカちゃん専用の道具が必要ね」
私はホカちゃんの小さな頭を優しく撫でると、早速ボルギンさんの鍛冶屋へと向かった。
事情を話すと、ボルギンさんは「なんだ、そいつは面白そうだ!」と豪快に笑って、すぐに仕事に取り掛かってくれた。
ドワーフの職人である彼の手にかかれば、どんなものでもお手の物だ。
翌日、ボルギンさんが届けてくれたのは、私の想像をはるかに超える、可愛らしくて本格的な道具一式だった。
ホカちゃんの小さな手にぴったりのサイズに作られた、木製の麺棒とスケッパー。
そして、彼が作業するための、小さな木の板まで用意されていた。
どれも表面は滑らかに磨き上げられている。
子供が使っても安全なように、というボルギンさんの優しい心遣いが伝わってきた。
「さあ、ホカちゃん。これが、あなたのための道具よ」
工房に戻り、その道具をホカちゃんの前に並べてあげると、彼はしばらくの間、信じられないというように目をぱちくりさせていた。
そして、おそるおそる、その小さな麺棒に手を伸ばす。
自分の手にしっくりと馴染む感触を確かめるように、ぎゅっと握りしめた。
その姿は、まるで伝説の剣を手にした勇者のように誇らしげだった。
その日から、ホカちゃんの新しい日課が始まった。
私は、パン生地をこねるたびに、その余りをほんの少しだけ彼の作業台に置いてあげる。
ホカちゃんは、それを宝物のように受け取ると、早速パン作りの真似事を始めた。
私の動きを思い出すように、小さな麺棒で生地を伸ばそうとする。
けれど、力が強すぎて生地がぺしゃんこになったり、逆に弱すぎて全然伸びなかったり。
スケッパーで生地を切ろうとしても、なかなか思うように切れずに、粘土のようにぐにゃりと歪んでしまう。
それでもホカちゃんは、決して諦めなかった。
上手くいかずに首をかしげ、時には悔しそうに短い足で床をぽんぽんと叩いたりしながらも、その瞳はいつも真剣そのものだった。
「最初は誰でもそんなものよ。大切なのは、楽しむ気持ちだからね」
私がそう声をかけると、ホカちゃんはこくりと頷いて、また生地に向き直る。
その健気な姿は、工房の誰もを笑顔にした。
カフェの仕事が一段落したエララさんが工房を覗きに来ては、「まあ、ホカちゃん、頑張っているのね!」と応援してくれる。
休憩中のボルギンさんが「おう、ちびすけ! もっと腰を入れろ!」と自分なりのアドバイスを送ったりもした。
毎日、飽きることなくパン生地と向き合い続けたホカちゃんは、少しずつ、だけれど確実に上達していった。
最初はただの歪な塊だったものが、だんだんと綺麗な丸い形を作れるようになる。
麺棒の使い方も様になってきて、生地を均一な厚さに伸ばせるようにもなった。
創造することの楽しさに目覚めた彼の瞳は、日に日に輝きを増していく。
自分の手で何かを生み出す喜び。それは、私がいちばん大切にしている気持ちと同じだった。
そんなある日のことだった。
その日は、改装作業が終わってからも、ルゥフさんが工房に残って、薪割りの手伝いをしてくれていた。
彼は、私が頼んだわけでもないのに、いつもこうして黙々と私の仕事を手伝ってくれる。
大きな斧を軽々と振り下ろすたびに、乾いた薪が心地よい音を立てて割れていく。
その頼もしい背中を眺めていると、私の心はいつも温かいもので満たされた。
ホカちゃんは、自分の作業台から、そんなルゥフさんの姿をじっと見つめていた。
その瞳には、憧れと尊敬の色が浮かんでいるように見えた。
やがて、ホカちゃんは何かを決心したように、こね台の上の生地に向き直った。
そして、いつもとは違う、特別なものを作り始めたのだ。
彼は、生地を粘土細工のように、ちぎったり、くっつけたりしながら、慎重に形を整えていく。
まずは、丸い頭。
そして、がっしりとした胴体と、長い手足。
一番苦心していたのは、頭の上につける二つの耳だった。
何度も角度を調整して、ぴんと立った、狼の獣人らしい耳を再現しようとしている。
最後に、生地の小さなかけらを丸めて、ふさふさの尻尾のようにお尻の部分へちょこんとくっつけた。
「……! ホカちゃん、それってもしかして……」
私が驚いて声をかけると、ホカちゃんは少し照れたように、こくりと頷いた。
彼が作っていたのは、紛れもなく、ルゥフさんの形をした小さなパンだったのだ。
不格好で、お世辞にもそっくりとは言えないかもしれない。
けれど、そのパンには、ホカちゃんのルゥフさんへの「大好き」という気持ちが、いっぱいに詰まっているのがわかった。
「すごいわ、ホカちゃん! とっても素敵よ!」
私が心から褒めると、ホカちゃんは嬉しそうに、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。
薪割りを終えて工房に戻ってきたルゥフさんは、ホカちゃんが作った自分の人形パンを見て、驚いたように目を丸くした。
「これは……俺、か?」
彼の低い声に、ホカちゃんは少し恥ずかしそうに、けれど誇らしげに、こくんと頷いてみせる。
ルゥフさんは、その小さなパンをしばらくの間、じっと見つめていた。
「さあ、ホカちゃん。あなたの初めての作品だもの。特別に、この大きなかまどで焼いてあげましょうね」
私は、ホカちゃんが作ったパンを、壊さないようにそっと手のひらに乗せた。
ずっしりとした、温かい重み。
そこには、私の生命魔法とは違う、ホカちゃん自身の純粋な思いが、確かに宿っているのを感じた。
私は、その気持ちを壊さないように、火加減を慎重に調整しながら、パンを丁寧に焼き上げた。
かまどの中で、小さなルゥフさんパンは、ゆっくりと膨らみ、こんがりとした美味しそうな焼き色に染まっていく。
そして、焼き上がったパンは、奇跡のように輝いていた。
私のパンが放つ金色の光とは違う、もっと素朴で、けれどどこまでも優しい、陽だまりのような温かい光。
それは、ホカちゃんの心の光そのものだった。
パンからは、小麦の香ばしい匂いと共に、ホカちゃんの純粋な「ありがとう」という気持ちが、香りとなって立ち上っているようだった。
「さあ、ホカちゃん。あなたのパンが焼けたわよ。あなたが、ルゥフさんに渡してあげて」
私は、焼き上がったパンを小さな皿に乗せ、ホカちゃんに手渡した。
ホカちゃんは、そのお皿を短い両手でしっかりと抱えると、よちよちと、でも少しだけ胸を張って、ルゥフさんの元へと歩いていく。
そして、そのお皿を、ルゥフさんに向かって、そっと差し出した。
ルゥフさんは、その場にしゃがみ込むと、ホカちゃんの目線に合わせてくれた。
そして、その小さなパンを、まるで宝物を扱うかのように、大きな手で優しく受け取った。
「……ありがとう、ホカ。とても、嬉しい」
彼の口からこぼれたのは、いつものぶっきらぼうな響きではなく、心の底からの、温かくて優しい声だった。
そして、いつもは険しいその表情が、ふっと和らぎ、今まで見たこともないくらい、穏やかで優しい笑みが浮かんだ。
その笑顔は、まるで春の陽だまりそのものだった。
ホカちゃんは、その笑顔を見て、本当に嬉しそうに、ルゥフさんの足元にすり寄っていく。
ルゥフさんは、その小さな頭を、大きな手でわしゃわしゃと優しく撫でてあげていた。
その光景を、私と、いつの間にか工房を覗きに来ていたエララさんやボルギンさん、そしてカフェのお客さんたちまで、みんなが微笑ましく見守っていた。
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