サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

第16話

ウィンドウが選択肢を提示してくる。

【進化先選択】
・サハギンファイター
・アクアシザー
・タイドリーパー

（選べるのか……）

それぞれに簡単な説明が添えられていた。

【サハギンファイター】
──バランス型。近接戦闘に秀で、スキル成長速度が上昇。

【アクアシザー】
──敏捷特化型。二枚貝のような硬質アームを持ち、素早い連続攻撃が可能。

【タイドリーパー】
──力と敏捷に優れた戦闘特化型。捕食本能が強化されるが、理性が試される。

どれも強そうだった。
でも、俺は迷わなかった。

（タイドリーパー……これだ）

力も、速さも、欲しい。
そして、捕食本能の強化。
俺にはこれが必要だ。

俺は迷わず選択した。

【進化開始】

次の瞬間、身体に異変が起きた。

全身が焼けるように熱かった。
骨が軋み、筋肉が引き裂かれる感覚がある。
だが、不思議と恐怖はなかった。
これは痛みじゃない。
生まれ変わるための試練だと、本能で理解していた。

俺の身体は急速に変化していった。
手足の膜がさらに強く厚くなり、指先は鋭利な爪へと変わる。
背中からは、流線型のヒレが伸び、推進力を高めるために進化する。

胸の内側、心臓に近い場所が熱く脈打った。
新たな力がそこに宿り、俺という存在を根底から塗り替えていく。

（これが、進化──）

感覚は鮮明だった。
意識が濁ることはない。
逆に、今までよりも世界がはっきりと見える気がした。

目が覚めたとき、俺は海中を漂っていた。
ふと手を見た。
鱗は以前よりも濃い青を帯び、光を反射して硬質な輝きを放っていた。

爪は鋭く、指の可動域も広がっている。
足には力がみなぎり、一蹴りで凄まじい推進力が生まれることがわかる。

ステータスウィンドウが自動で開いた。

【種族：タイドリーパー】
【レベル：10】
【HP：40／40】
【MP：6／6】
【筋力：18】
【敏捷：22】
【知力：5】
【耐久：14】
【スキル：水中遊泳（中級）、噛みつき（中級）、水圧噴射（初級）、感知（中級）、硬鱗化（初級）、甲羅強化（初級）、高速遊泳（中級）、捕食本能（初級）】

レベルやスキルの表記にも変化があった。
特に「中級」表記が目を引く。

（中級スキル……進化したことで、格が上がったんだな）

確認する。

【水中遊泳（中級）：水中移動速度を大幅に上昇させ、流れに逆らった泳ぎも可能】
【噛みつき（中級）：牙の鋭さが増し、防御貫通効果を付与】
【感知（中級）：半径五〇メートル以内の敵意を完全捕捉】

どれも強化されている。
ただのサハギンとは、もはや別次元だ。

そして新たなスキル。

【捕食本能（初級）：戦闘時、相手に与えたダメージに応じて自身を微回復する】

（これも……すげえ）

持久戦に持ち込めば、理論上は無限に戦える。
しかも、戦うほどに回復できる。

俺は、タイドリーパーに進化した。
最弱のサハギン（幼生）だった存在が、ここまで来た。

誇らしかった。
だけど、同時に、心の底から思った。

（まだだ──こんなもんじゃねえ）

タイドリーパーなんて、進化の通過点にすぎない。
俺が目指すのは、海を支配する存在。
この異世界の海を統べる者になるためには、さらに上を目指さなきゃいけない。

進化は、始まりにすぎない。
ここからが本番だ。

俺は海底に立ち、ゆっくりと顔を上げた。

深く、深く、どこまでも広がる海。
そのすべてが、俺を待っている。

（行くぞ──）

高鳴る胸を抑えきれず、俺は水を蹴った。

新たな力を、そのすべてを解き放つために。