サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

第42話

アビサルエンペラーの死骸に食らいつきながら、俺は体内に満ちていく力を確かめた。
血が熱い。
肉が力に変わっていく。

【経験値を超膨大に獲得しました】
【レベルが40に上昇しました】
【新スキル：精神耐性（初級）を習得しました】
【進化可能】

新たな進化が可能になったことを告げるウィンドウが開く。
だが、まずはこの肉体を完全に取り込む。

「まさか……エンペラー様が……！」

「ありえない……！」

「何なんだ、あの化け物は……！」

深海のモンスターたちが、信じられないといった様子で呟いている。

「奴は……海の終焉そのものだ……」

「逃げろ……もう誰にも止められない……！」

「ここは……もう俺たちの住む場所じゃない……！」

（当然だ）

俺は心の中で呟いた。
支配される者に未来はない。
ただ、喰らわれるだけだ。

アビサルエンペラーの心臓を食い破る。
その血と肉は、今までにない濃密なエネルギーに満ちていた。

【筋力が劇的に上昇しました】
【敏捷が劇的に上昇しました】
【耐久が劇的に上昇しました】
【知力が上昇しました】

ステータスが跳ね上がるたびに、身体がさらに進化していくのがわかる。

骨はさらに硬く、筋肉は密度を増し、感覚は研ぎ澄まされる。

周囲を見渡せば、まだこちらを見ているモンスターたちがいた。
だが、誰一人として俺に立ち向かおうとはしない。

「怪物だ……」

「悪魔だ……！」

「もう、この海は終わった……！」

（違うな）

俺は答えることなく、アビサルエンペラーの死体を喰い尽くした。
そして、新たな進化先を選択するため、ウィンドウを開く。

【進化先選択】
・ディープシータイラント
・アビサルオーバーロード
・マリンスレイヤー

（選ぶまでもない）

俺は迷うことなく、アビサルオーバーロードを選択した。

世界を支配するために、最もふさわしい存在。

進化を開始する。

全身に激痛が走った。
骨が軋み、筋肉が裂ける。
だが、俺は一切声を上げない。

この痛みすら、さらなる力を得るための代償だ。

皮膚が硬質化し、鱗がさらに強固な鎧へと変わる。
背中からは巨大な水流制御器官が生え、尾はより鋭利な刃となる。

感覚が、さらに鋭くなる。
水の流れ、圧力、気配、全てが手に取るようにわかる。

進化が完了すると、ウィンドウが開いた。

【種族：アビサルオーバーロード】
【レベル：40】
【HP：210／210】
【MP：30／30】
【筋力：120】
【敏捷：135】
【知力：28】
【耐久：85】
【スキル：水流支配（上級）、捕食本能（超級）、血潮の加護（超級）、硬鱗化（上級）、渦潮掌握（上級）、高速遊泳（超級）、地踏掌握（上級）、感知（超級）、火耐性（中級）、深海適応（上級）、重力耐性（中級）、精神耐性（初級）、深海圧耐性（中級）、海神の加護（上級）】

これが、今の俺だ。

世界を変える存在。

「……もう駄目だ……」

「支配される……！」

「逃げろ！　逃げろおおおお！」

小型モンスターたちが四散して逃げていく。

だが、無駄だ。

俺は水流支配を使い、逃げ道を封鎖した。

「ひいいいっ！」

「許してくれえええ！」

「助けてくれ……！」

（助けない）

俺は容赦なく牙を突き立てた。

渦に巻き込まれたモンスターたちを次々と喰らい、力に変えていく。

「やめろ、やめてくれえええ！！」

「ぐああああああ！！」

「うわあああああああ！！」

どれだけ叫ぼうが、逃げ場などない。

喰らい、喰らい、喰らい尽くす。