サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

第46話

巨大な個体がゆっくりと俺に向かって進み出す。
その身体は、岩のように堅そうな鱗に覆われ、四本の腕が太い尾を打ち鳴らして水を震わせていた。

「俺はこの海域の守護者……ディープシーガーディアンだ」

「貴様がどれだけ力を振るおうと……この命にかけて、ここは渡さぬ！」

「たとえ敗れようと、意志は消えない！」

（そんなもん、俺が喰えば終わる）

口に出さず、牙をむき出しにした俺に、ディープシーガーディアンは吠えた。

「来い、怪物……！」

「この命、すべてを賭けて受け止めてやる！」

（望み通りにしてやる）

一瞬で距離を詰めた俺に、ディープシーガーディアンが渾身の一撃を放つ。
水を切り裂く巨大な拳が、ものすごい速度と重さで迫ってくる。

「喰らえええええ！」

（遅い）

感知スキルで動きを読み、水流支配で軌道をずらす。
そのまま、すれ違いざまに相手の脇腹へ牙を突き立てた。

「ぐおっ……！」

だが、想像以上に硬い。

（悪くない）

それでも、ヒビは入った。

俺はすぐに体勢を立て直し、追撃を仕掛けた。

「まだだあああああ！！」

ディープシーガーディアンが四本の腕で同時に攻撃してくる。
正面、左右、上から。

だが、全部見えている。

俺は最小限の動きで攻撃をかわし、逆にその隙間を縫って接近した。

「なっ……！」

一瞬の驚きを突き、喉元へ牙を突き立てる。

ズバリ。

「ぐおおおおおお！！」

血が噴き出す。

だが、ディープシーガーディアンは怯まない。

逆に、俺を抱きかかえるようにして締め上げにきた。

「逃がさんぞ……！」

「このまま、共に沈めええええ！！」

（面白い）

俺は牙を突き立てたまま、さらに力を込めた。

相手の鱗を、肉を、骨を、力ずくで噛み砕く。

「ぐっ……があああああ！！」

「痛みなど……恐れぬ！！」

「俺の全てを賭けて……貴様をここで沈める！！」

（無理だ）

捕食本能が暴走し、血潮の加護が最大限に発動する。

俺の肉体は限界を超え、牙がさらに鋭さを増した。

「うおおおおおおお！！」

ディープシーガーディアンが絶叫とともに力を振り絞る。

だが、その力は確実に衰えていた。

「まだだ……まだ……！」

「くそっ……負けられん……！」

「負けるわけにはいかないんだあああああ！！」

（負けるんだよ）

俺は最後の一撃を放つべく、全身の筋肉を爆発させた。

牙を突き立てたまま、全力で捻り、貫いた。

グシャリ。

手応えと共に、ディープシーガーディアンの巨体が大きく痙攣する。

「が……あ……」

目から力が消え、腕の締め付けが緩んだ。

俺は素早く離脱し、最後に喉元を食いちぎった。

大量の血が海中を染める。

感知スキルが告げる。

──敵意、消失。

（終わりだ）

ディープシーガーディアンの巨体が、重々しく沈んでいく。

その死体に喰らいつきながら、俺は成長の実感を噛みしめた。

【経験値を超膨大に獲得しました】
【レベルが43に上昇しました】
【新スキル：超再生（初級）を習得しました】

さらに力が湧いてくる。

俺はディープシーガーディアンの肉を貪りながら、次なる戦場を探し始めた。