サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

第52話

異変は突然だった。

感知スキルが、俺の海域に異質な群れの侵入を知らせた。
波動が違う。大洋を越えた、別の海から来た存在だと、直感でわかる。

海面を蹴り上げるようにして浮上すると、そこには無数の影。
見たこともないモンスターたちが、列を組んで押し寄せていた。

殻のような硬い鱗をまとった巨大魚、異様な触手を持つ軟体種、そして指揮官らしき大柄なサメ型のモンスター。

（数だけは揃えてきたな）

俺は水中に身を潜めながら、冷たく観察した。

彼らは俺に気づかず、まずは周囲に散っていった。
この海を蹂躙するためか、端から順に狩り始める。

だが、すぐに指揮官らしきサメ型が叫んだ。

「急げ！　この小国を制圧するぞ！」

小国。
この海が、そんな扱いなのかと初めて知った。

（ならば教えてやる）

牙を鳴らし、水流支配を全開にして突撃した。

巻き上がる潮流が、敵軍の先端を飲み込んだ。
鋭い爪を持つ魚型種が抵抗しようとしたが、無駄だった。
俺の突撃を受け、一撃で肉片になった。

サメ型指揮官が吠える。

「止めろ！　散開して囲め！」

命令と同時に、敵たちは三方向から挟み撃ちを狙ってきた。
だが、そんな動きなど読めている。

（遅い）

俺は高速遊泳で一気に間合いを詰め、右から迫ってきた敵を叩き潰した。
一匹、二匹、三匹──まとめて骨を砕く音が水中に響く。

「何だ、こいつ……！」

「強すぎる！」

「隊形を崩すな、押し返せ！」

耳障りな声が飛び交うが、俺は無言で狩り続けた。
爪を振り、牙を突き立て、渦を操り、敵を翻弄する。

敵が出す泡の一つひとつまで、俺には手に取るように見えた。
感知スキルの範囲内、すべてが俺の狩場だ。

サメ型指揮官が突撃してきた。
巨大な口を開け、俺を丸呑みしようとする。

俺はわずかに身体をひねり、サメ型の横腹に回り込む。
そのまま硬鱗化を使い、硬質化した爪で一撃。

ズガンッ、と鈍い音と共に、サメ型の鱗が砕け飛んだ。

指揮官が呻きながらも振り向こうとする。
しかし、それすら許さず、俺は渦潮掌握で動きを封じ、追撃を叩き込んだ。

サメ型の巨体が悲鳴を上げながら沈んでいく。

（指揮官を落とした。後は蹴散らすだけだ）

残った兵たちは明らかに動揺していた。
秩序を失った群れは脆い。
俺は次々と駆け抜け、蹂躙していった。

敵の群れが雪崩のように崩れていく。
逃げようとするもの、必死に反撃しようとするもの、どれも俺には届かない。

手応えすらないほどに、簡単に蹴散らしていく。

水が血で染まっていくのを感じながら、俺はただ無心に狩り続けた。
次の一撃、さらにその先の獲物へと、意識を向けて。