サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

☆ほしい

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第62話

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爪が核に叩き込まれた瞬間、胎動の巨体がビクンと跳ねた。
無数の触手が痙攣し、黒い液体を撒き散らす。

「ぐああああああっ!!」

核に走った亀裂が一気に広がり、深い音と共に砕け散る。

フィンが吼えた。

(王、撃破確認!)

(全隊、撤収準備だ! 遺跡が崩れる!)

兵たちが即座に応じる。

「後退だ!」

「王を囲め、護衛を固めろ!」

「負傷者を運べ!」

崩壊する遺跡の中、俺たちは迷わず引き返した。

背後で胎動の巨体が崩れ落ち、黒い水が広がっていく。
瘴気は消え、海の水が澄んでいくのが分かった。

(これで……この海は、完全に俺のものだ)

俺は遺跡を抜け、渓谷の上層へ向かった。
全軍、無傷ではないが壊滅的な損害もない。

フィンが横に並ぶ。

(王、これで深海渓谷は制圧完了です)

(当然だ)

(これからどうします?)

(決まってる。この渓谷を拠点化する)

兵たちに向かって手を振った。

(全軍、拠点構築に入れ!)

「了解ッ!」

突撃隊が周囲の岩盤を削り、防衛隊が壁を築き始める。
遊撃隊は周囲の探索と安全確認に散っていった。

俺は中央に立ち、深海渓谷全体を見渡した。

まだ荒れているが、すでに敵の気配はない。
あの異形の王も、胎動も、すべて滅ぼした。

フィンが小声で訊いてきた。

(王、この海、どう呼びますか?)

(──深淵域《しんえんいき》だ)

フィンがうなずく。

(了解。以後、この海は深淵域。そして、我らが王の支配領域)

「王に栄光あれ!」

「王に忠誠を!」

兵たちが一斉に吼えた。

俺はそれを受け止め、短く頷く。

(これより、深淵域を我が海域に併合する)

システムウィンドウが出現した。

――【拠点制圧完了】
――【新たな海域『深淵域』を支配下に置きました】
――【勢力圏拡大:特典ボーナス付与】

同時に、力が流れ込んでくる。

筋肉が膨れ、鱗がさらに硬質化する。
スキルの感知範囲が拡張され、支配力が強化された。

(この海は、もう俺の一部だ)

深淵域を掌握したことで、周辺海域への影響力も跳ね上がるだろう。

フィンが再び報告する。

(王、新たな異常反応なし!)

(全軍、索敵範囲を広げろ。余波を利用して周辺資源も確保する)

(了解ッ!)

突撃隊が深淵域の周囲に索敵網を張り、遊撃隊が資源探索に向かう。

防衛隊は外周を強化し、拠点の防御を整え始めた。

俺は指示を続ける。

(深淵域には特別部隊を常駐させる。防衛を万全にしろ)

(特別部隊、選抜します!)

フィンが手早く精鋭たちを選び出し、配備を開始する。

数分後、深淵域は完全な要塞拠点へと姿を変えた。

外敵の侵入は不可能。
内乱の芽も摘み取った。

(次だ)

俺はさらに指示を飛ばした。

(外洋探索部隊を再編成しろ。新たな海域を探す)

(了解、すぐに再編します)

(補給部隊は深淵域拠点に集積しろ。補給路を二重にして防衛を強化)

(了解!)

指示を次々に飛ばしながら、俺は感じていた。
勢力拡大の速度が、飛躍的に上がったことを。

フィンが一歩前に出て言った。

(王、これで外洋制圧の足掛かりが整いました)

(ああ。次は外洋を制圧する)

フィンが笑った。

(我らが王に栄光を)

兵たちも口々に叫ぶ。

「外洋も我らがものに!」

「王に続けぇぇぇ!」

深海に響く咆哮を受け、俺は牙を剥き出しにして笑った。
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