追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

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第35話

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 わたくしは展望フロアから指示を飛ばしつつ、クロード副査察官の行動を監視しましたの。

 「リゼ、第七研究棟の防護システム、起動待機状態にしなさい」

 「了解です!」

 彼が足を踏み入れたのは、未来医療区画のさらに奥、極秘実験セクションでしたの。そこには、まだ公にしていない最先端魔導医療技術が眠っておりますわ。

 「副査察官、立入禁止区域に侵入。警告発令しますか?」

 「いいえ。様子を見なさい。興味を引かせるのも、一興ですわ」

 リゼが不安げにこちらを伺いましたの。

 「……ですが、あの技術は……!」

 「大丈夫ですわ。何を見ても、彼らには理解できませんもの」

 わたくしは悠然と笑みを浮かべ、未来記念塔から彼の進行ルートを追跡しましたの。

 クロードは、未来型自動治療ポッドのプロトタイプに辿り着きましたの。

 「これが……噂の“自己再生医療魔導機構”か……」

 彼が手を伸ばしかけた瞬間、設置されていた監視魔具が起動し、音声警告が響き渡りましたの。

 「立入禁止区域です。直ちに退去してください」

 クロードは舌打ちし、なおもポッドの観察を続けておりましたわ。

 「お嬢様、警告後も動きを止めません!」

 「リゼ、迎撃班を待機させなさい。ですが、まだ動かないでよろしいわ」

 「了解です!」

 わたくしは肘を突き、頬杖をつきながら彼の出方を眺めておりましたの。

 クロードは、ポッドに組み込まれた魔導回路を必死に解析しようとしておりましたの。

 「無駄ですわ」

 わたくしは小さく笑いましたの。

 「設計思想が違いすぎますもの。既存技術の延長線では理解できない代物ですわ」

 リゼが思わず噴き出しましたの。

 「お嬢様、本当に悪い人ですね……!」

 「おほほほほ、何を今さら」

 わたくしが愉快に笑っている間に、クロードはついに諦め、研究棟から退散し始めましたの。

 「お嬢様、副査察官、研究棟より離脱しました!」

 「よろしいですわ。以降、通常通り案内を再開なさい」

 「了解しました!」

 未来記念塔周辺では、式典がいよいよクライマックスを迎えておりましたの。

 「リゼ、空中花火群、第二波発射準備は?」

 「準備完了です!」

 「よろしいですわ。未来讃歌と合わせて、タイミングを合わせなさい」

 「了解!」

 広場に集まった群衆が、期待に満ちた視線で夜空を見上げる中、わたくしは再び魔導指令を発しましたの。

 「第二波、発射ですわ!」

 指示と同時に、夜空へと無数の魔導花火が打ち上がり、まるで星々が舞い踊るかのように煌めきましたの。

 その中心に、巨大な文字が浮かび上がりましたわ。

 【未来は、ここにある】

 群衆の歓声が爆発的に広がり、未来記念塔が新たな魔導波を放ちましたの。

 「お嬢様! 接続国数、五十カ国を突破しました!」

 「ふふ、いい流れですわ」

 リゼが小躍りしながら報告してきましたの。

 査察団も、その壮大な演出に完全に圧倒されておりましたわ。

 リュミエールがわたくしに通信を繋いできましたの。

 「エリス・フォン・グリムヴァルト……認めたくはないが、これは……」

 「どうぞ、無理に認めなくてもよろしいのですわ」

 わたくしは勝者の余裕で微笑みましたの。

 「現実は、見た者すべての中に刻まれるもの。理解など、後から付いてきますわ」

 リュミエールが押し黙り、通信が切れましたの。

 わたくしはバルコニーから群衆を見下ろし、さらに演出の指示を続けましたの。

 「リゼ、次は未来型市街戦魔導兵器のデモンストレーションを用意なさい」

 「えっ!? あの試作兵器ですか!?」

 「ええ、未来都市には防衛力も必須ですもの」

 リゼが慌てて準備班へ走っていきましたの。

 わたくしは再び未来記念塔制御卓に戻り、次なるプログラムを立ち上げましたの。
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