外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい

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夜が明け、太陽が昇り始めた頃、俺たちの拠点へと続く道に、土煙が上がっているのが見えた 。

それは、リリアーナ王女とゼフィルス様、そして彼らを守る精鋭騎士団の一行だった 。

一行は、俺の拠点が、以前とは比べ物にならないほど巨大な、そして要塞のような姿に変貌しているのを目の当たりにして、驚きを隠せない様子だった 。

「な、なんと……! わしが王都へ戻ってから、まだ一週間と経っておらぬというのに……! この建設速度は、もはや人間の所業ではありませぬぞ……!」

ゼフィルス様は、馬上で口をあんぐりと開けている 。

「ふふ、ゼフィルス様。アルス様のお力は、あなた様が思っている以上に、とてつもないものですわ」

リリアーナ王女は、俺の方を見て、誇らしげに微笑んだ 。

俺は、そんな二人を、クロと一緒に拠点の入り口で出迎えた 。

「ゼフィルス様、リリアーナ王女殿下。ようこそ、お戻りくださいました」

俺の言葉に、ゼフィルス様は、馬から飛び降りるなり、俺の手を両手で固く握りしめた 。

「アルス殿! なんとお礼を申し上げてよいか……! あなた様のおかげで、王都での臨床試験は完璧な成功を収め、すでに治療薬の量産体制も整いつつあります! 王都の民は、皆、あなた様を称え、感謝しておりますぞ!」

ゼフィルス様は、感極まったように俺の手をぶんぶんと振っている 。

その顔には、研究者としての疲労と、そしてこれ以上ないほどの達成感が浮かんでいた 。

「それは何よりです 。

ですが、ゼフィルス様、王都でのご活躍は、俺の想像を遥かに超えるものでした 。

究極のポーションの調合に成功したと聞きましたよ」

俺がそう言うと、ゼフィルス様は、はっとしたように、俺の顔をまじまじと見つめた 。

「な、なぜそれを……!? まさか、伝書鳩が……? しかし、このわしが成功させたのは、あくまで『究極のポーション』のコンセプトじゃ 。

その原料となる特別な薬草がなければ、絵に描いた餅でしかないはずだが……」

「ええ。その絵を、形にすることができました」

俺はそう言って、ゼフィルス様を臨時研究室へと案内した 。

そこに咲く、虹色の輝きを放つ花を見た瞬間、ゼフィルス様は、その場で言葉を失った 。

そして、ゆっくりと、震える手でその花に触れた 。

花びらから放たれる清らかな魔力と、生命エネルギーの波動に、彼の顔は、驚愕と、そして深い感動の色で染まっていく 。

「こ、これは……なんという……! この世のものとは思えぬ、神々しいまでの生命力……!

そして、この花が持つ、あらゆる病気や怪我を瞬時に治癒する能力……!

まさに、究極のポーションの原料となる、奇跡の薬草じゃ!」

ゼフィルス様は、まるで宝物を見つけた少年のように、目をキラキラと輝かせ、その花を熱心に観察し始めた 。

リリアーナ王女も、その光景を温かい眼差しで見守っている 。

「ふふ、ゼフィルス様も、負けてはいませんわね」

「ええ。さすが俺たちの最高の相棒だ」

俺とリリアーナ王女は、顔を見合わせ、満足げに笑った 。

こうして、俺たちの拠点に、再び希望の光が灯った 。

紫斑熱の治療薬に続き、今度は『究極のポーション』 。

俺のスキル【畑耕し】は、もはや農業だけの力ではない 。

世界の未来を創造する力だ――俺はそう確信していた 。

鍬を握る手に迷いはなかった 。

「きゅいーん!」

クロが足元で声を上げる 。

俺は、ゼフィルス様やリリアーナ王女、そして各国の学者たちと共に、この七色の花をどうやって増産し、多くの人々に届けるかについて、熱心な議論を始めた 。

そこには、もう、迷いや不安など、微塵も存在しなかった 。

ただひたすらに、希望に満ちた、新しい未来だけが広がっている 。

それは、俺が追放された時には、想像もできなかった、あまりにも眩しく、そして素晴らしい未来だった 。

その日の夜 。

俺たちの拠点では、リリアーナ王女とゼフィルス様の帰還を祝う、ささやかな宴が催されていた 。

中央には、俺が心を込めて作った料理の数々が並び、人々は皆、笑顔でグラスを傾けている 。

そこには、国境も、身分も、過去のしがらみもなかった 。

ただ、一つの目標に向かって、共に進む仲間たちの、温かい絆だけが存在していた 。

俺は、そんな光景を眺めながら、心の中で、そっと感謝の言葉を呟いた 。

(ありがとう、ライオス……。お前が俺を追放してくれたおかげで、俺はこんなにも素晴らしい人生を送ることができている。本当に、ありがとうな……)

俺は、グラスを傾け、星空に乾杯した 。

隣では、リリアーナ王女が、少しだけ頬を赤らめながら、俺に微笑みかけている 。

その瞳は、まるで七色の花のように、キラキラと輝いていた 。
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