不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい

文字の大きさ
51 / 56

51

しおりを挟む
島亀の親子が満面の笑みでエデンの空へと帰っていった後、俺たちの丘にはまた一つ、忘れられない楽しい思い出と不思議な新しいお土産が残された。

アカデミーの子供たちは、島亀くんからもらった『雲の実(クラウドフルーツ)』にすっかり夢中だった。
「見て見て、レオン先生!僕、十秒間も空を飛べるようになったよ!」
「あたしなんて、空中ででんぐり返しだってできるんだから!」

休み時間のアカデミーの広場は、まるで無重力空間のようだった。あちこちで子供たちがふわふわと楽しそうに宙に浮いて、鬼ごっこをしたりかくれんぼをしたりしている。その光景はいつまで見ていても飽きないほど微笑ましくて、そして平和そのものだった。
もちろん、万が一の事故が起こらないように、アロイスさんが発明クラブの生徒たちと共同で開発した最新式の『低反発、衝撃吸収結界』が広場全体を優しく包み込んでいるので、安全性は完璧だ。

そんな、どこまでも穏やかで笑顔に満ちた日々。
海の都での芸術祭、そして今回の天空大レース。世界中の仲間たちとの心温まる交流が深まる中で、俺の心の中に一つのアイデアが芽生えていた。

「なあ、みんな。今度の満月の夜に、この丘で世界中を繋ぐ大きなお祭りをしないか?」

その日の夕食後、アトリエの暖炉の前で仲間たちと寛いでいる時に俺はそう切り出してみた。
俺の唐突な提案に、リリアさんやアロイスさんはきょとんとした顔で俺を見る。
「世界中を繋ぐお祭り、ですか?」リリアさんが首を傾げる。
「ああ。俺たちがこうして毎日幸せに暮らせているのは、これまで出会ってきたたくさんの仲間たちのおかげだからな。その感謝の気持ちを伝えるために、そしてみんなの絆をもっともっと深めるために、最高のパーティーを開きたいんだ」

俺のそのアイデアを最初に理解し、そして目を輝かせたのは、やはりフェンだった。
『お祭り!すっごく楽しそう!美味しいもの、いーっぱい食べられるお祭りだね!』
俺の膝の上で丸くなっていたフェンがぴょんと飛び起きて、嬉しそうに尻尾を振る。その無邪気な言葉に、みんなの顔にも笑みが広がった。
「素晴らしい考えですわ、レオンさん!きっと世界中の皆さんがお喜びになりますわね!」
「ふん。まあ、悪くない企画だな。それに、各国の専門家が一堂に会せば、新たな技術革新が生まれるきっかけになるやもしれん」
アロイスさんも、まんざらではないといった様子だ。

こうして、俺の鶴の一声ならぬ学長の一声で、この星の歴史上初となる『世界合同大感謝祭』の開催が盛大に決定されたのである。
その知らせは瞬く間に世界中を駆け巡った。俺たちが開発した『星の門』とアロイスさんの最新式の立体映像通信システムを使えば、物理的に離れていても、まるで同じ場所にいるかのようなリアルタイムでの交流が可能だ。

奇跡の丘をメイン会場として、エデンの星の民たち、百獣の王国の獣人たち、ドワーフの国の職人たち、エルフの森の森の民、そして海の都の海の民たち。俺たちがこれまで出会ってきた全ての仲間たちがそれぞれの国で同時に祭りを開催し、そしてその様子を互いに中継し合う。まさに、世界が一つになる夢のようなイベントだ。
祭りの知らせを受けた各国の仲間たちは、皆二つ返事で参加を表明してくれた。それどころか、自分たちの国の威信をかけて最高の出し物を用意すると、皆大変な張り切りようだった。

そして、いよいよ祭りの当日。
奇跡の丘はかつてないほどの熱気と、そして温かい喜びに包まれていた。
メイン会場である丘の中央広場には巨大な立体スクリーンがいくつも設置され、そこには世界中の仲間たちの楽しそうな笑顔がリアルタイムで映し出されている。
『レオン殿ー!聞こえるかー!こっちの準備は万端だぞー!』
スクリーンの中では、ドワーフのガンツさんが巨大なジョッキを片手に豪快に笑っている。
『レオン様。エデンもご覧の通り、最高のお祭り日和ですわ』
別のスクリーンでは、星の民のステラが古代種の生物たちと共に優しく微笑んでいた。

広場の特設キッチンでは、王宮料理長のグランさんが世界中から届けられた最高の食材を前に、目を回すほどの忙しさで腕を振るっている。
「よし!まずは百獣の王国の獅子の肉とドワーフの国の岩塩、そしてエルフの森の世界樹のハーブを使った、究極のローストビーフからだ!」
その夢のコラボレーション料理の香ばしい匂いが会場中に広がり、それだけでみんなのお腹がぐぅーっと鳴った。

特設ステージでは、吟遊詩人のエリアスさんが率いるエルフの音楽団が世界中の民族音楽を巧みにリミックスした新しい音楽を披露している。その軽快で心躍るメロディーに、アカデミーの子供たちもスクリーンの中の獣人たちも、種族や国の垣根を越えて一緒になって楽しそうに踊っていた。

祭りはまさに最高潮。
日が暮れ、丘の上に大きな焚き火が焚かれると、俺は全ての仲間たちへの感謝を伝えるためにステージの中央へと進み出た。
「みんな!今日は集まってくれて本当にありがとう!」
俺がそう言うと、あれほど賑やかだった会場がすっと静まり返り、全ての視線が俺に注がれる。
「俺がこの世界に来て、フェンと出会って、そしてたくさんの仲間たちと巡り会えたこと。そして今日こうして世界中のみんなと笑い合えていること。その一つ一つが、俺にとってかけがえのない宝物です」
「この幸せな世界をみんなで作れたこと、そしてその一員でいられることを、俺は心の底から誇りに思います。本当に、本当にありがとう……!」
俺が深々と頭を下げると、会場中から、そしてスクリーンの中の世界中から、割れんばかりの温かい拍手が沸き起こった。

その時だった。
俺の感謝の気持ちと、そして世界中の人々の幸せな想いに応えるかのように。俺の足元にいたフェンとルクス、そしてジュエルの三匹が、同時にそれぞれの力の光を放ったのだ!
白い聖なる光。黄金の癒しの光。そして虹色の創造の光。三つの純粋な光はゆっくりと空へと舞い上がり、そして焚き火の炎の上で一つになった。
そして、それは巨大な、そしてどこまでも優しくて温かい愛の光となって、メイン会場である俺たちの丘、いや、この星全体をそっと包み込んだ。
その光はあまりにも心地よく、そして幸福感に満ちていた。

誰もがその奇跡的な光景にうっとりと見惚れていた、その時。
その愛の光がひときわ強く、俺の隣に立っていたリリアさんの、そのお腹のあたりにふわりと集まっていったのだ。
そして、リリアさんのお腹が一瞬、ぽうっと優しく、そして温かい光を放った。

会場にいた誰もが驚いてリリアさんを見た。俺も何が起こったのか分からず、ただ呆然と彼女の顔を見つめる。
当のリリアさんは最初きょとんとしていたが、やがて何かを悟ったように、そっと自分のお腹に手を当てた。
そして少し頬を赤らめ、はにかみながら、でもこの世界中のどんな宝物よりも輝かしい、そして幸せに満ち溢れた笑顔で、俺に告げたのだ。

「……レオンさん」
「……私、どうやら……。あなたとの赤ちゃんを、授かったようですわ……」

その言葉。
一瞬の静寂の後。
丘は、そして世界は、この日一番の割れんばかりの祝福と、そして歓喜の声に包まれた。

俺はまだ状況が飲み込めず、ただリリアさんの顔を見つめていたが、やがてその言葉の意味を理解し、そしてこれまで感じたことのないほどの温かい何かが胸の奥から込み上げてくるのを感じていた。
俺が、父親に……?
俺と、リリアさんの、子供……?
それは、このどこまでも平和で、そして幸せな世界に舞い降りた、最高の、最高の奇跡だった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...