役立たずと追放された辺境令嬢、前世の民俗学知識で忘れられた神々を祀り上げたら、いつの間にか『神託の巫女』と呼ばれ救国の英雄になっていました

☆ほしい

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宴の熱気が、穏やかな夜の空気に変わる頃だった。
私はアルフレッドが入れてくれた、温かいハーブティーを飲んでいた。
広場のあちこちには、まだ小さな人の輪が残っている。
その中心では、蜜蝋のロウソクが穏やかな光を放っていた。
村人たちの顔には、一日の労働の疲れと満足感が見える。
そして、蜂蜜の甘い余韻で満ち足りていた。
子供たちは、生まれて初めて味わったお菓子の欠片を握っている。
それは、『森の恵みの蜂蜜がらめ』という名前だ。
彼らは小さな手にそれを握りしめ、幸せそうな寝息を立てていた。
この平和な光景こそ、私がずっと望んでいたものだった。

そこへ、木の杯を片手にしたカイがやってきた。
彼の足元は少しだけふらついていたが、その顔は真剣そのものだ。
彼の顔もまた、達成感に満ちた最高の笑顔だった。

「巫女様なんて呼ばれちまって、大変だな。でもまあ、あんたがこの村に来てから毎日が祭りのようだぜ」

カイは私の隣に、どかりと大きな音を立てて腰を下ろした。
そして、そのまま夜空を見上げた。
彼の言葉には、からかいの中に隠せない心からの感謝がにじんでいる。

「カイこそ、いつも先頭に立ってくれて助かるわ。あなたや、村のみんなが信じて頑張ってくれたからよ」

「へっ、俺たちはあんたの言う通りに体を動かしてるだけさ。それでね、リゼット様」

カイは少しだけ改まった口調で、私の方に向き直った。
アルフレッドも、彼の真剣な様子を感じ取ったのだろう。
彼は、私たちの会話にそっと耳を傾ける。

「さっき言ってた交易って話、本気なんだろ。この蜂蜜を、外の町に売りに行くってやつだ」

「ええ、もちろん本気よ。この村には、まだ足りないものがたくさんあるわ。塩や鉄の道具、もっと色々な作物の種も欲しいの」

私の言葉に、カイは深くうなずいた。
彼もまた、村のリーダーとして今の状況に満足していない。
この豊かさを一度だけのものにせず、未来へ繋げる必要性を感じていた。
それは、誰よりも強く理解していることだった。
カイはゆっくりと広場に置かれた、三つの巣箱に目をやった。
そして、指でその数を確かめるように数える。

「なるほどな、蜂蜜を売ってこの村にないものを手に入れるか。そいつはいい考えだ」
彼は一度はそう言ったものの、すぐに腕を組んで難しい顔つきになった。
「だけどリゼット様、この三つの巣箱から採れる蜜だけじゃ量が足りないぜ。村のみんなで食べる分くらいにしかならないんじゃないか。売り物にするには、少なすぎる」

カイの指摘は、私が考えていたことと全く同じだった。
彼の現実を見る目は、夢を見がちな私にとって最高の相棒と言える。
話を聞いていたアルフレッドも、心配そうに口を挟んだ。

「確かにそうでございますな。交易の船に積む荷物が、蜂蜜の壺の一つや二つでは話になりますまい」

「その通りよ、二人とも。だからね、未来のために今は投資が必要なの」
私は、自信を持って宣言した。
「もっともっと蜂さんたちの家族を増やして、この村を一大養蜂地にするのよ」

「家族を、増やす」
カイが、私の言葉を繰り返した。
「もう一度あの崖へ行って、もっとたくさんの蜂さんたちにこの村へ引っ越してもらうの。今度は三つじゃないわ、十倍、いえ、もっと多くの群れを村に迎えるのよ」

私の壮大な計画に、どよめきが広がった。
近くで話に聞き耳を立てていた、村人たちの間に驚きが走る。
一度は成功したとはいえ、あの巨大な蜂の巣からさらに多くの群れを連れてくるのだ。
しかし、彼らの顔に浮かんでいたのは恐怖ではなかった。
未知への挑戦に対する、燃え上がるような好奇心と期待の光だった。

「そのためには、まず何よりもたくさんの巣箱が必要になるわ。みんな、もう一度力を貸してくれるかしら」

私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、一人の男が力強く胸を叩いた。
それは、家づくりで腕を上げた大工の棟梁だった。

「おう、お任せください、巫女様。一度作って構造は分かっております。次は、もっと頑丈で美しいものを作ってご覧にいれましょう」

その声に続くように、村中から威勢のいい声が次々と上がった。
「俺も手伝う」「次は負けねえぞ」と、みんなが叫んでいる。
村の心は、完全に一つになっていた。

次の日の夜明けと共に、村は再び活気に包まれた。
槌の音が、あちこちから響いてくる。
広場の中央には、前回の巣箱の設計図が木の枝で再び描かれた。
しかし、今回はそこにいくつかの改良点が加えられていた。

「前回の巣箱でも十分だったけれど、もっと工夫しましょう。蜂さんたちが暮らしやすくて、私たちが蜜を頂きやすいようにするの」

私は、巣枠の肩の部分に小さな取っ手をつけることを提案した。
これなら、蜜がいっぱいになった重い巣枠を取り出す時に作業がとても楽になる。
さらに、巣箱の底に小さな隙間を設ける工夫も加えた。
これは、掃除がしやすくなるためのものだ。
衛生管理をしっかりすることで、蜂の病気を防ぐための知恵だった。
私の説明に、村人たちは感心したようにうなずく。
そして、その全てを熱心に吸収していく。

木材の切り出し作業も、前回とは比べ物にならないほど効率が良かった。
カイが指揮を執り、若者たちが森から最適な太さの木を選んでくる。
彼らは、手際よく木を切り出していく。
製材作業では、水車を利用した鋸が大きな音を立てていた。
それは、家づくりの際に生み出されたものだ。
村の大工たちは、私がミリ単位で指定した寸法を正確に切り出していく。
その腕は、まさに職人技だった。
彼らの目つきは、もはや単なる村人ではない。
自らの技術に誇りを持つ、熟練の職人のものだった。

作業には、女性たちや子供たちも積極的に参加した。
女性たちは、切り出された板の表面を滑らかにする役目だ。
地道なやすりがけを、黙々と担当している。
子供たちは、その手伝いをしたり蜜蝋を温めたりした。
蜜蝋は、防水効果を高めるために使う。
彼らは自分たちにできることを探し、一生懸命に働いた。
広場は、まるで一つの大きな工場のようだった。
誰もが自分の役割を理解し、声を掛け合う。
そして、助け合いながら作業を進めていく。
その光景は、見ていて胸が熱くなるほどだった。

数日後、見事な出来栄えの巣箱が広場に並んだ。
その数は、全部で十個もあった。
それは前回作ったものよりも明らかに精密で、機能的な美しさにあふれていた。
村人たちは、自分たちの手で作り上げた巣箱を誇らしげに見つめている。

準備は、これで全て整った。
私たちは再び体を守るための防護服に身を包んだ。
そして、完成したばかりの巣箱を担いで南の崖へと向かった。
総勢二十人を超える、大掛かりな遠征隊だ。
重い巣箱を担いでの道のりは決して楽ではなかったが、誰も弱音を吐かない。
彼らの足取りは、希望に満ちて軽やかだった。

崖に到着すると、巨大な蜂の巣が見えた。
それは、以前と変わらぬものすごい迫力を放っていた。
しかし、今回は作戦が違う。
私は、崖のふもとで村人たちを集めて最後の説明を行った。

「今回は、巣を壊して女王蜂を無理やり捕まえたりはしないわ。蜂の群れはね、家族が増えすぎると自然に群れを分ける習性があるの。これを、分蜂(ぶんぽう)って言うのよ」

村人たちは、初めて聞く言葉に興味津々で聞き入っている。

「巣の中に新しい女王蜂が生まれると、古い女王蜂は旅に出るの。それまで貯めた蜜と、働き蜂の半分くらいを引き連れて新しい住処を探すのよ。私たちは、その一行に素敵な空き家を教えてあげるだけ」

その方が、蜂たちにとっても負担が少ない。
そして、崖の巣もそのまま残すことができる持続可能な方法だった。
私の説明に、カイが「なるほどな」と深いうなずきを見せた。

私たちは、巨大な巣から少し離れた場所に巣箱を設置した。
日当たりの良い場所に、持ってきた十個の巣箱をずらりと並べる。
しかし、ただ置くだけではない。
蜂の偵察隊に、ここが魅力的だと感じさせるための工夫を凝らす。

「巣箱の中に、この間採れた蜜蝋のかけらを少し入れておきましょう。蜂は、自分たちの匂いがする場所を好むから」

さらに、入り口付近に花の蜜を少しだけ垂らしておく。
甘い香りで、新しい住人を強力に誘い出すための作戦だ。
全ての準備を終えると、私たちはその場を離れた。
あとは、自然の流れと蜂たちの判断に任せるしかない。

それから数日間、村は静かな期待に包まれた。
カイが選んだ若者たちが、毎日交代で崖の様子を見張りに行く。
彼らは、遠くからそっと様子をうかがう。
「今日は変化なしでした」という報告が届く。
「偵察蜂が二、三匹、巣箱の周りを飛んでいました」という報告もあった。
村人たちは、その報告に一喜一憂した。
そして、作戦開始から五日が過ぎた日の午後だった。

見張りに行っていた若者の一人が、村へと駆け込んできた。
彼は、ぜえぜえと息を切らしている。
その顔は、今までにないほどの興奮で赤くなっていた。

「リゼット様、カイさん、大変です。蜂が、蜂の群れが巣箱の中に雪崩れ込んでいきます」

その知らせは、村に爆発的な歓声をもたらした。
村人たちは、手にしていた仕事を放り出して広場に飛び出してくる。
私もカイも、すぐさま崖へと駆け出した。
私たちが崖の見える丘の上に到着すると、信じられない光景が広がっていた。

崖の巣から、黒い雲のような巨大な蜂の塊が飛び立っている。
それは、渦を巻きながら空を舞っていた。
そして、その黒い雲は一直線に私たちが設置した巣箱へと向かう。
次々と、その中へと吸い込まれていく。
まるで、偉大な王を迎える民のように整然とした大移動だった。
その光景は、とても立派なものに見えた。
ブンブンという羽音は、もはや騒音ではない。
生命の力強さを祝福する、壮大な音楽のように聞こえた。

「やった、やったぞ、リゼット様」

カイが、子供のようにはしゃぎながら私の肩を揺さぶる。
村人たちも、丘の上からその光景を目の当たりにしていた。
彼らは、抱き合ったり涙を流したりして喜んでいた。
設置した十個の巣箱のうち、七つの巣箱に新しい蜂の家族が入ったようだった。
一度に七つの群れを迎えるという、想像をはるかに超える大成功だった。

その日の夕方、私たちは巣箱を村へと運び出した。
蜂たちを刺激しないように、細心の注意を払いながら作業する。
それは、まるで王の勝利の行列のようだった。
村の広場には、合計十個もの巣箱がずらりと並べられた。
既存の三つの巣箱と、合わせて十個だ。
その光景は、この村が生まれ変わったことを示す素晴らしいしるしだった。
貧しい村から、豊かな蜜を生み出す一大養蜂地へ。
村人たちは、誇らしげに並んだ巣箱をいつまでも眺めていた。
そして、この蜂蜜が切り開くであろう未来に胸を膨らませる。
まだ見ぬ外の世界との、交易という甘い夢を見ていた。
その夜、再び祝宴が開かれた。
カイは、そこで高らかに宣言した。
「これだけの蜜があれば、どんな町の奴らも驚くに違いねえ。俺たちの村の宝を、世界に売りに行こうぜ」
その言葉に、村中が割れんばかりの歓声で応えた。
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