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ロックリザードの丸焼きを堪能し、心もお腹も満たされた私は、幸せな気分で〈モンス飯亭〉を後にした。
女将さんの料理は、いつだって私に元気と癒やしを与えてくれる。
次は何を食べさせてくれるのだろうかと、今からもう楽しみで仕方がない。
数日後、ギルドの仕事が少し早く終わった日があった。
いつもなら真っ直ぐ〈モンス飯亭〉へ向かうところだけれど、今日は少しだけ気分を変えて、街を散策してみることにした。
たまには新しいお店を開拓するのも、楽しいかもしれない。
大通りから一本入った、少し細い路地を歩いていると、ふと木の温もりを感じる小さな看板が目に入った。
『隠れ家バル 月のしずく』
なんだか、素敵な名前のお店だ。
外観もおしゃれで、落ち着いた雰囲気が漂っている。
(ちょっと、入ってみようかな……)
扉を開けると、カラン、と優しいベルの音が鳴った。
店内はカウンター席が数席と、奥に小さなテーブル席が二つほど。
薄暗い照明が、隠れ家という名前にぴったりの落ち着いた空間を演出している。
カウンターの中には、物腰の柔らかそうな若い男性の店主さんが一人。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい。カウンター、いいですか?」
「どうぞ、こちらへ」
店主さんに案内され、カウンターの隅の席に腰を下ろす。
目の前には、様々な種類のお酒のボトルが綺麗に並べられていた。
ウイスキーやブランデー、珍しいリキュールなど、見ているだけでも楽しくなる。
「ご注文は、お決まりになりましたらお声がけください」
「はい、ありがとうございます」
メニューを開くと、お酒の種類はもちろん、それに合いそうなおつまみも充実しているようだった。
自家製のスモークチーズや、ハーブを効かせたオイルサーディン、季節の野菜を使ったアヒージョなど、どれも魅力的だ。
(うーん、何にしようかな……。まずは、軽めのお酒からかしら)
少し悩んだ末に、私はフルーツを使ったカクテルと、自家製のスモークチーズを注文することにした。
「すみません、『森のベリーフィズ』と、『自家製スモークチーズの盛り合わせ』をお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店主さんはにこやかに頷くと、手際よくカクテルを作り始めた。
シェイカーを振る音が心地よく店内に響き、期待感が高まる。
やがて、目の前に鮮やかな赤紫色のカクテルと、数種類のスモークチーズが乗った小皿が運ばれてきた。
ベリーフィズは、グラスの中でシュワシュワと細やかな泡が弾け、甘酸っぱいベリーの香りが鼻をくすぐる。
スモークチーズは、それぞれ色合いも香りも異なり、どれから食べようか迷ってしまう。
「どうぞ、ごゆっくり」
「ありがとうございます。いただきます」
まずは、ベリーフィズを一口。
ベリーの甘酸っぱさと、炭酸の爽快感が口の中に広がり、すっきりとした後味が心地よい。
アルコール度数も控えめで、食前酒にはぴったりだ。
次に、スモークチーズを一切れ、クラッカーに乗せて口に運ぶ。
選んだのは、くるみの木でスモークしたというチェダーチーズだ。
口に入れた瞬間、芳醇な燻製の香りが鼻に抜け、チーズの濃厚なコクと塩味が広がる。
これは、美味しい。
ベリーフィズの甘酸っぱさとも、意外なほどよく合う。
(このお店、当たりかもしれない……)
他の種類のスモークチーズも試してみる。
リンゴの木でスモークしたカマンベールチーズは、よりマイルドでクリーミーな味わい。
桜のチップでスモークしたというモッツァレラチーズは、淡白ながらも燻製の香りがしっかりとついていて、後を引く美味しさだ。
どれも店主さんのこだわりが感じられる、丁寧な仕事ぶりがうかがえる。
ベリーフィズを飲み干し、次のお酒を考える。
スモークチーズには、やはりもう少ししっかりとしたお酒が合いそうだ。
「すみません、次のお酒をお願いしたいのですが……。このスモークチーズに合うような、おすすめのウイスキーはありますか?」
私の問いかけに、店主さんは少し考えるそぶりを見せた後、にっこりと微笑んだ。
「それでしたら、こちらのシングルモルトはいかがでしょう。アイラ島のものですので、スモーキーな香りが特徴ですが、後味は意外とフルーティーで、チーズの風味を引き立ててくれると思いますよ」
そう言って、店主さんが一本のボトルを差し出した。
ラベルには、荒々しい波と、どこか神秘的な風景が描かれている。
アイラ島のウイスキーか。
個性が強いと聞くけれど、このスモークチーズには確かによく合いそうだ。
「では、それをロックでお願いします」
「かしこまりました」
店主さんが手際よく氷を削り、グラスに注がれたウイスキーは、美しい琥珀色をしていた。
グラスを傾けると、確かに強烈なピート香、いわゆる燻製のような香りが立ち上る。
けれど、その奥には、潮風や柑橘系の爽やかな香りも感じられる。
一口、口に含む。
舌の上で、まずスモーキーな風味が力強く広がり、その後にピリッとしたスパイシーさと、ほんのりとした甘みが追いかけてくる。
アルコール度数は高いはずなのに、不思議と飲みやすく、複雑で奥深い味わいだ。
そして、このウイスキーを飲んだ後にスモークチーズを食べると、チーズの旨みと燻製の香りが、ウイスキーのスモーキーさと見事に調和し、さらに味わいを高め合っている。
(これは……すごい。最高の組み合わせかもしれない……)
ウイスキーとスモークチーズを交互に味わいながら、私は至福の時を過ごした。
カウンターだけの小さな店だけど、だからこそ店主さんとの距離も近く、お酒や料理について色々と話を聞けるのも楽しい。
店主さんはまだ若そうに見えるけれど、お酒に関する知識は相当なもののようだ。
一つ一つのボトルに込められたストーリーや、美味しい飲み方などを丁寧に教えてくれる。
「このお店、すごく素敵ですね。お酒も美味しいし、雰囲気も落ち着いていて……」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。お客様に、ゆっくりと自分の時間を楽しんでいただけるような空間を目指しているんです」
店主さんの言葉には、この店への愛情が溢れている。
私も、こういうお店が大好きだ。
美味しいお酒と料理、そして心地よい空間。
それだけで、日常の疲れなんてどこかへ飛んでいってしまう。
気づけば、ウイスキーのグラスも空になっていた。
名残惜しいけれど、そろそろお暇する時間だろう。
「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです。また近いうちに来ますね」
「ありがとうございます。ぜひ、またお越しください。お待ちしております」
店主さんの温かい笑顔に見送られ、私は『隠れ家バル 月のしずく』を後にした。
外に出ると、夜風が頬に心地よい。
ほろ酔い気分で歩く帰り道は、なんだかいつもより世界がキラキラして見える。
(新しいお店を開拓するのも、たまにはいいものだな……)
〈モンス飯亭〉はもちろん私にとって特別な場所だけど、こうして新しいお気に入りのお店を見つけるのも、人生の楽しみの一つだ。
この街には、まだまだ私の知らない美味しいものや、素敵な場所がたくさん隠れているのかもしれない。
次の休みの日には、ナナミちゃんと一緒に行く約束をしていた新しいパンケーキのお店にも行ってみよう。
アランさんの遺跡調査も、どうなっているか少し気になる。
穏やかで、でも退屈しない。
そんな毎日が、これからも続いていくといいな。
家に帰り着き、ベッドに横になると、心地よい疲労感とともに、今日味わった美味しいお酒の余韻が蘇ってきた。
ベリーフィズの甘酸っぱさ、アイラウイスキーの奥深いスモーキーな香り、そして店主さんの優しい笑顔。
どれもが、私にとって素敵な思い出になった。
(明日は、どんな美味しいものに出会えるかな……)
そんなことを考えながら、私はゆっくりと眠りについた。
きっと明日も、私にとって良い一日になるだろう。
美味しいものが待っていると信じられるだけで、人生はこんなにも楽しくなるのだから。
女将さんの料理は、いつだって私に元気と癒やしを与えてくれる。
次は何を食べさせてくれるのだろうかと、今からもう楽しみで仕方がない。
数日後、ギルドの仕事が少し早く終わった日があった。
いつもなら真っ直ぐ〈モンス飯亭〉へ向かうところだけれど、今日は少しだけ気分を変えて、街を散策してみることにした。
たまには新しいお店を開拓するのも、楽しいかもしれない。
大通りから一本入った、少し細い路地を歩いていると、ふと木の温もりを感じる小さな看板が目に入った。
『隠れ家バル 月のしずく』
なんだか、素敵な名前のお店だ。
外観もおしゃれで、落ち着いた雰囲気が漂っている。
(ちょっと、入ってみようかな……)
扉を開けると、カラン、と優しいベルの音が鳴った。
店内はカウンター席が数席と、奥に小さなテーブル席が二つほど。
薄暗い照明が、隠れ家という名前にぴったりの落ち着いた空間を演出している。
カウンターの中には、物腰の柔らかそうな若い男性の店主さんが一人。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい。カウンター、いいですか?」
「どうぞ、こちらへ」
店主さんに案内され、カウンターの隅の席に腰を下ろす。
目の前には、様々な種類のお酒のボトルが綺麗に並べられていた。
ウイスキーやブランデー、珍しいリキュールなど、見ているだけでも楽しくなる。
「ご注文は、お決まりになりましたらお声がけください」
「はい、ありがとうございます」
メニューを開くと、お酒の種類はもちろん、それに合いそうなおつまみも充実しているようだった。
自家製のスモークチーズや、ハーブを効かせたオイルサーディン、季節の野菜を使ったアヒージョなど、どれも魅力的だ。
(うーん、何にしようかな……。まずは、軽めのお酒からかしら)
少し悩んだ末に、私はフルーツを使ったカクテルと、自家製のスモークチーズを注文することにした。
「すみません、『森のベリーフィズ』と、『自家製スモークチーズの盛り合わせ』をお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店主さんはにこやかに頷くと、手際よくカクテルを作り始めた。
シェイカーを振る音が心地よく店内に響き、期待感が高まる。
やがて、目の前に鮮やかな赤紫色のカクテルと、数種類のスモークチーズが乗った小皿が運ばれてきた。
ベリーフィズは、グラスの中でシュワシュワと細やかな泡が弾け、甘酸っぱいベリーの香りが鼻をくすぐる。
スモークチーズは、それぞれ色合いも香りも異なり、どれから食べようか迷ってしまう。
「どうぞ、ごゆっくり」
「ありがとうございます。いただきます」
まずは、ベリーフィズを一口。
ベリーの甘酸っぱさと、炭酸の爽快感が口の中に広がり、すっきりとした後味が心地よい。
アルコール度数も控えめで、食前酒にはぴったりだ。
次に、スモークチーズを一切れ、クラッカーに乗せて口に運ぶ。
選んだのは、くるみの木でスモークしたというチェダーチーズだ。
口に入れた瞬間、芳醇な燻製の香りが鼻に抜け、チーズの濃厚なコクと塩味が広がる。
これは、美味しい。
ベリーフィズの甘酸っぱさとも、意外なほどよく合う。
(このお店、当たりかもしれない……)
他の種類のスモークチーズも試してみる。
リンゴの木でスモークしたカマンベールチーズは、よりマイルドでクリーミーな味わい。
桜のチップでスモークしたというモッツァレラチーズは、淡白ながらも燻製の香りがしっかりとついていて、後を引く美味しさだ。
どれも店主さんのこだわりが感じられる、丁寧な仕事ぶりがうかがえる。
ベリーフィズを飲み干し、次のお酒を考える。
スモークチーズには、やはりもう少ししっかりとしたお酒が合いそうだ。
「すみません、次のお酒をお願いしたいのですが……。このスモークチーズに合うような、おすすめのウイスキーはありますか?」
私の問いかけに、店主さんは少し考えるそぶりを見せた後、にっこりと微笑んだ。
「それでしたら、こちらのシングルモルトはいかがでしょう。アイラ島のものですので、スモーキーな香りが特徴ですが、後味は意外とフルーティーで、チーズの風味を引き立ててくれると思いますよ」
そう言って、店主さんが一本のボトルを差し出した。
ラベルには、荒々しい波と、どこか神秘的な風景が描かれている。
アイラ島のウイスキーか。
個性が強いと聞くけれど、このスモークチーズには確かによく合いそうだ。
「では、それをロックでお願いします」
「かしこまりました」
店主さんが手際よく氷を削り、グラスに注がれたウイスキーは、美しい琥珀色をしていた。
グラスを傾けると、確かに強烈なピート香、いわゆる燻製のような香りが立ち上る。
けれど、その奥には、潮風や柑橘系の爽やかな香りも感じられる。
一口、口に含む。
舌の上で、まずスモーキーな風味が力強く広がり、その後にピリッとしたスパイシーさと、ほんのりとした甘みが追いかけてくる。
アルコール度数は高いはずなのに、不思議と飲みやすく、複雑で奥深い味わいだ。
そして、このウイスキーを飲んだ後にスモークチーズを食べると、チーズの旨みと燻製の香りが、ウイスキーのスモーキーさと見事に調和し、さらに味わいを高め合っている。
(これは……すごい。最高の組み合わせかもしれない……)
ウイスキーとスモークチーズを交互に味わいながら、私は至福の時を過ごした。
カウンターだけの小さな店だけど、だからこそ店主さんとの距離も近く、お酒や料理について色々と話を聞けるのも楽しい。
店主さんはまだ若そうに見えるけれど、お酒に関する知識は相当なもののようだ。
一つ一つのボトルに込められたストーリーや、美味しい飲み方などを丁寧に教えてくれる。
「このお店、すごく素敵ですね。お酒も美味しいし、雰囲気も落ち着いていて……」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。お客様に、ゆっくりと自分の時間を楽しんでいただけるような空間を目指しているんです」
店主さんの言葉には、この店への愛情が溢れている。
私も、こういうお店が大好きだ。
美味しいお酒と料理、そして心地よい空間。
それだけで、日常の疲れなんてどこかへ飛んでいってしまう。
気づけば、ウイスキーのグラスも空になっていた。
名残惜しいけれど、そろそろお暇する時間だろう。
「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです。また近いうちに来ますね」
「ありがとうございます。ぜひ、またお越しください。お待ちしております」
店主さんの温かい笑顔に見送られ、私は『隠れ家バル 月のしずく』を後にした。
外に出ると、夜風が頬に心地よい。
ほろ酔い気分で歩く帰り道は、なんだかいつもより世界がキラキラして見える。
(新しいお店を開拓するのも、たまにはいいものだな……)
〈モンス飯亭〉はもちろん私にとって特別な場所だけど、こうして新しいお気に入りのお店を見つけるのも、人生の楽しみの一つだ。
この街には、まだまだ私の知らない美味しいものや、素敵な場所がたくさん隠れているのかもしれない。
次の休みの日には、ナナミちゃんと一緒に行く約束をしていた新しいパンケーキのお店にも行ってみよう。
アランさんの遺跡調査も、どうなっているか少し気になる。
穏やかで、でも退屈しない。
そんな毎日が、これからも続いていくといいな。
家に帰り着き、ベッドに横になると、心地よい疲労感とともに、今日味わった美味しいお酒の余韻が蘇ってきた。
ベリーフィズの甘酸っぱさ、アイラウイスキーの奥深いスモーキーな香り、そして店主さんの優しい笑顔。
どれもが、私にとって素敵な思い出になった。
(明日は、どんな美味しいものに出会えるかな……)
そんなことを考えながら、私はゆっくりと眠りについた。
きっと明日も、私にとって良い一日になるだろう。
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