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ヴァルミナ様の『星降りの夜の晩餐』は、まさに夢のようなひとときだった。
あの味が忘れられなくて、数日間は食事をするたびに思い出しては、ため息をついていたほどだ。
もちろん、〈モンス飯亭〉の女将さんの作る日替わり料理も絶品だし、新しく開拓した『隠れ家バル 月のしずく』のウイスキーとスモークチーズも最高だったけれど、ヴァルミナ様の料理は別格だ。
あれはもう、料理という名の芸術作品だ。
そんな感動も少し落ち着いてきた週明け、ギルドは「森の賢者」の話題でまだ少し盛り上がっていた。
調査に向かった冒険者たちからは、やはり賢者と思われる巨大なフクロウ型の魔獣を目撃したという報告がいくつか上がってきている。
幸い、今のところ敵対的な行動は見られず、むしろ人間を観察しているような素振りさえあるという。
「本当に人語を理解するのかしらねぇ」
休憩中、ナナミちゃんがお茶を飲みながら呟いた。
「もし本当に話せたら、友達になれるかもしれないのにね。フクロウ型の魔獣なんて、絶対モフモフで可愛いと思うんだけどなー」
「ナナミちゃんはすぐに友達とかマスコットとか言うけど、相手は魔獣なのよ?慎重に対応しないと」
私がそう言うと、ナナミちゃんは「はーい」と少し不満そうに頬を膨らませた。
でも、彼女の言うように、もし本当に友好的な魔獣なら、それは素晴らしいことだ。
この街の歴史にも、新たな1ページが加わることになるかもしれない。
そんなある日の午後、ギルドのカウンターに一人の老婆が訪れた。
年の頃は七十歳くらいだろうか。
質素だが清潔な身なりをしていて、背筋はしゃんと伸びている。
ただ、その表情はどこか曇っていて、不安そうな様子がうかがえた。
「あの……少し、ご相談したいことがあるのですが……」
か細い声でそう切り出した老婆に、私はいつものように笑顔で対応する。
「はい、どのようなご用件でしょうか?」
「実は……孫娘のことなのです。数日前から、森へ薬草を採りに行ったきり、帰ってこなくて……」
老婆の言葉に、私はハッとした。
このところ、「森の賢者」の出現で、森への立ち入りには注意が促されていたはずだ。
「お孫さんは、冒険者の方ですか?」
「いえ、あの子はまだ十五で……薬師見習いなのです。昔から、森で薬草を摘んでは、村の人たちに分け与えていて……今回も、いつものように行ったはずなのですが……」
話を聞くうちに、私の胸騒ぎは大きくなっていく。
薬師見習いの少女が、一人で森へ。
そして、数日間も帰ってこない。
これは、ただ事ではないかもしれない。
「最後に森へ向かわれたのは、いつ頃のことでしょうか?そして、どのあたりの森へ行かれたか、お分かりになりますか?」
「ええと……三日前の朝早くです。いつも行くのは、街の東側にある『囁きの森』と呼ばれる場所で……」
囁きの森。
そこは、比較的安全な森として知られていたけれど、最近「森の賢者」が目撃されたのも、その近くだったはずだ。
「お名前は?」
「ミリア、と申します。どうか……どうか、孫娘を探していただけないでしょうか……!」
老婆――ミリアさんは、今にも泣き出しそうな表情で、私に懇願してきた。
その必死な様子に、私の心も痛む。
「わかりました。すぐにギルドとして捜索隊を編成する手配をします。ミリアさん、お孫さんの特徴や、いつも持ち歩いている物など、些細なことでも構いませんので、詳しく教えていただけますか?」
私はミリアさんを落ち着かせ、できるだけ多くの情報を聞き出すことに努めた。
孫娘の名前はリリアちゃん。
明るい栗色の髪を三つ編みにしていて、いつも薬草を入れるための籠と、小さなナイフを持っているという。
人懐っこい性格で、森の動物たちともすぐに仲良くなるような子らしい。
(森の動物と仲良くなる……もしかしたら、「森の賢者」とも……?)
そんな考えが、ふと頭をよぎった。
いや、今は憶測で物を言うべきではない。
まずは、リリアちゃんの捜索が最優先だ。
私はすぐにギルド長に報告し、ベテランの冒険者を中心に捜索隊を編成してもらうよう依頼した。
ギルド長も事態を重く見て、迅速に対応してくれることになった。
「佐倉君、君も元Sランクだ。何か気づいたことや、捜索に役立ちそうな情報があれば、遠慮なく言ってくれ」
ギルド長にそう言われ、私は頷いた。
もう戦わないと決めているけれど、知識や経験で役に立てることがあるなら、協力は惜しまない。
あの味が忘れられなくて、数日間は食事をするたびに思い出しては、ため息をついていたほどだ。
もちろん、〈モンス飯亭〉の女将さんの作る日替わり料理も絶品だし、新しく開拓した『隠れ家バル 月のしずく』のウイスキーとスモークチーズも最高だったけれど、ヴァルミナ様の料理は別格だ。
あれはもう、料理という名の芸術作品だ。
そんな感動も少し落ち着いてきた週明け、ギルドは「森の賢者」の話題でまだ少し盛り上がっていた。
調査に向かった冒険者たちからは、やはり賢者と思われる巨大なフクロウ型の魔獣を目撃したという報告がいくつか上がってきている。
幸い、今のところ敵対的な行動は見られず、むしろ人間を観察しているような素振りさえあるという。
「本当に人語を理解するのかしらねぇ」
休憩中、ナナミちゃんがお茶を飲みながら呟いた。
「もし本当に話せたら、友達になれるかもしれないのにね。フクロウ型の魔獣なんて、絶対モフモフで可愛いと思うんだけどなー」
「ナナミちゃんはすぐに友達とかマスコットとか言うけど、相手は魔獣なのよ?慎重に対応しないと」
私がそう言うと、ナナミちゃんは「はーい」と少し不満そうに頬を膨らませた。
でも、彼女の言うように、もし本当に友好的な魔獣なら、それは素晴らしいことだ。
この街の歴史にも、新たな1ページが加わることになるかもしれない。
そんなある日の午後、ギルドのカウンターに一人の老婆が訪れた。
年の頃は七十歳くらいだろうか。
質素だが清潔な身なりをしていて、背筋はしゃんと伸びている。
ただ、その表情はどこか曇っていて、不安そうな様子がうかがえた。
「あの……少し、ご相談したいことがあるのですが……」
か細い声でそう切り出した老婆に、私はいつものように笑顔で対応する。
「はい、どのようなご用件でしょうか?」
「実は……孫娘のことなのです。数日前から、森へ薬草を採りに行ったきり、帰ってこなくて……」
老婆の言葉に、私はハッとした。
このところ、「森の賢者」の出現で、森への立ち入りには注意が促されていたはずだ。
「お孫さんは、冒険者の方ですか?」
「いえ、あの子はまだ十五で……薬師見習いなのです。昔から、森で薬草を摘んでは、村の人たちに分け与えていて……今回も、いつものように行ったはずなのですが……」
話を聞くうちに、私の胸騒ぎは大きくなっていく。
薬師見習いの少女が、一人で森へ。
そして、数日間も帰ってこない。
これは、ただ事ではないかもしれない。
「最後に森へ向かわれたのは、いつ頃のことでしょうか?そして、どのあたりの森へ行かれたか、お分かりになりますか?」
「ええと……三日前の朝早くです。いつも行くのは、街の東側にある『囁きの森』と呼ばれる場所で……」
囁きの森。
そこは、比較的安全な森として知られていたけれど、最近「森の賢者」が目撃されたのも、その近くだったはずだ。
「お名前は?」
「ミリア、と申します。どうか……どうか、孫娘を探していただけないでしょうか……!」
老婆――ミリアさんは、今にも泣き出しそうな表情で、私に懇願してきた。
その必死な様子に、私の心も痛む。
「わかりました。すぐにギルドとして捜索隊を編成する手配をします。ミリアさん、お孫さんの特徴や、いつも持ち歩いている物など、些細なことでも構いませんので、詳しく教えていただけますか?」
私はミリアさんを落ち着かせ、できるだけ多くの情報を聞き出すことに努めた。
孫娘の名前はリリアちゃん。
明るい栗色の髪を三つ編みにしていて、いつも薬草を入れるための籠と、小さなナイフを持っているという。
人懐っこい性格で、森の動物たちともすぐに仲良くなるような子らしい。
(森の動物と仲良くなる……もしかしたら、「森の賢者」とも……?)
そんな考えが、ふと頭をよぎった。
いや、今は憶測で物を言うべきではない。
まずは、リリアちゃんの捜索が最優先だ。
私はすぐにギルド長に報告し、ベテランの冒険者を中心に捜索隊を編成してもらうよう依頼した。
ギルド長も事態を重く見て、迅速に対応してくれることになった。
「佐倉君、君も元Sランクだ。何か気づいたことや、捜索に役立ちそうな情報があれば、遠慮なく言ってくれ」
ギルド長にそう言われ、私は頷いた。
もう戦わないと決めているけれど、知識や経験で役に立てることがあるなら、協力は惜しまない。
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