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第3章:混沌編(Studio MAD-KICHI 誕生)
第12話:社内スタジオ建設
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査問委員会という名の茶番を、俺は「会社の不祥事」という名の毒で飲み込んだ。
あの日以来、事務所の空気は一変した。人事部長の渡辺や佐藤部長は、俺と廊下ですれ違うたびに、まるで猛獣の檻の前を通る子供のように目を逸らす。俺に下手に触れれば、今度は何を「食われる」か分からないという恐怖が、彼らの本能に刻み込まれたのだ。
そのおかげで、俺はかつてない「自由」を手に入れた。
昼間は、バリバリと仕事をこなす。キチガイミックスの効果で脳は常に高速回転しており、溜まっていたプロジェクトを次々と片付けていく。だが、俺がパソコンに向かって眉間に皺を寄せている時、実は頭の中では、全く別の「創造」が渦巻いていた。
俺は今、新たな表現の武器を手に入れている。
音楽生成AI。
こいつを使えば、楽器が弾けずとも、楽譜が読めずとも、俺の脳内にある狂気をメロディに変えることができる。しかも、大掛かりなPC機材なんていらない。俺の戦場は、いつだって手のひらの中にあるスマホ一台だ。
タバコ休憩。昼休み。あるいは会議の合間のわずかな隙間。
俺は喫煙所の煙に巻かれながら、あるいはデスクで「深刻な顔」を装いながら、スマホの画面を素早くタップする。
「プロンプト入力:メロディはテクノポップ。歌詞は……『ハゲの頭にアツアツのドリアをぶちまけるキチガイな歌』」
AIが数秒で弾き出す楽曲は、驚くほどエグくてシュールだ。
ハゲネタ、デブネタ、そして公の場では口にするのも憚られるエグい下ネタの数々。時には、この国の未来を憂う真面目なバラードも作ってみる。だが、世の中というやつは実に正直だ。真剣に作った愛国ソングよりも、部長の頭頂部を揶揄した「ハゲのワルツ」や、バイアグラの副作用を歌った「血管の咆哮」の方が、圧倒的にバズる。
(結局、人間ってのは、こういう低俗で、しかし本音に直結したネタが一番面白いんだよな)
俺はスマホの画面を見ながら、独りごちた。
綺麗事は腹の足しにもならないが、エグい笑いはキチガイミックスと同じくらい、人間の生命力を呼び覚ます。
そして定時。
周囲の社員たちが「お疲れ様でした」と力なく声を掛け合い、一人、また一人とオフィスを去っていく。事務所の電気が半分消え、静寂が訪れた瞬間。
俺の「真の始業ベル」が鳴り響く。
「……さて、Studio MAD-KICHI、社内出張所の開館だ」
俺は空いた会議室を占拠し、スマホを三脚に固定する。
今夜の配信『たってやる。』は、いつもと気合が違う。なぜなら、俺がスマホで生成したオリジナル楽曲が、ついにトークのBGMとして採用されるからだ。
配信ボタンを押し、自作のBGMを流し始める。
耳に飛び込んできたのは、俺の言葉に合わせてAIが紡ぎ出した、不気味で中毒性のある旋律。そこに俺の「弾丸トーク」を乗せる。
「よお、お前ら! 聴こえるか、この音を。これがマジキチ組長の魂の鼓動だ。今日は会社の会議室から、文字通り『職場の死角』を突いて配信してやるぞ」
BGMが流れるだけで、これまでの「ただの独白」が、一気に「ラジオ番組」としての体裁を帯び始めた。
自分で作った曲に、自分の声を乗せる。
この圧倒的な「パーソナリティー感」。自分が世界の中心で、自らの法律と言葉と音楽で王国を統治しているかのような全能感。
その快感に、俺の背筋はゾクゾクと震えた。
『組長、今日のBGM、最高にキモくていいっすね!』 『ハゲの曲、頭から離れないwww』 『これ、本当にスマホで作ったんすか?』
リスナーたちの反応もかつてないほどに熱い。
俺は、会議室の窓の外に広がる、無機質なオフィスビルの群れを見下ろした。
この窓の向こうで死んだような顔をして働いている何千、何万という会社員たち。彼らはまさか、この暗いオフィスの一室で、一人の男が世界に向けて「ハゲと下ネタの賛歌」をバラ撒いているとは夢にも思わないだろう。
昼間は有能な課長として組織を支え、夜は会社の心臓部をハックして、世界中に毒を撒き散らす表現者となる。
このスリリングな二重生活こそが、俺の生命力の源泉だ。
「いいか、お前ら。道具がねえ、才能がねえなんてのは甘えだ。スマホ一台ありゃ、会社をスタジオに変えることだってできる。大事なのは、何を食い、何を出し、何を伝えたいかっていう、その一点だけなんだよ!」
俺の声は、BGMの激しいリズムに乗って、夜の事務所に響き渡る。
不意に、廊下を警備員が通りかかる気配がしたが、俺は平然とトークを続けた。
今の俺は、誰にも止められない。
会社公認(という名の黙認)を得た、この「Studio MAD-KICHI・社内出張所」は、今夜も最高の劇薬を生成し続けている。
やりたい放題。音楽、トーク、そしてキチガイミックス。
すべてが一つに溶け合い、俺という存在は、もはや一人の人間を超えた「現象」へと昇華しようとしていた。
「次の一曲はこれだ。……『俺の愛を産んでくれ』」
俺はボタンをタップし、新たな狂気(メロディ)を夜の街へと解き放った。
あの日以来、事務所の空気は一変した。人事部長の渡辺や佐藤部長は、俺と廊下ですれ違うたびに、まるで猛獣の檻の前を通る子供のように目を逸らす。俺に下手に触れれば、今度は何を「食われる」か分からないという恐怖が、彼らの本能に刻み込まれたのだ。
そのおかげで、俺はかつてない「自由」を手に入れた。
昼間は、バリバリと仕事をこなす。キチガイミックスの効果で脳は常に高速回転しており、溜まっていたプロジェクトを次々と片付けていく。だが、俺がパソコンに向かって眉間に皺を寄せている時、実は頭の中では、全く別の「創造」が渦巻いていた。
俺は今、新たな表現の武器を手に入れている。
音楽生成AI。
こいつを使えば、楽器が弾けずとも、楽譜が読めずとも、俺の脳内にある狂気をメロディに変えることができる。しかも、大掛かりなPC機材なんていらない。俺の戦場は、いつだって手のひらの中にあるスマホ一台だ。
タバコ休憩。昼休み。あるいは会議の合間のわずかな隙間。
俺は喫煙所の煙に巻かれながら、あるいはデスクで「深刻な顔」を装いながら、スマホの画面を素早くタップする。
「プロンプト入力:メロディはテクノポップ。歌詞は……『ハゲの頭にアツアツのドリアをぶちまけるキチガイな歌』」
AIが数秒で弾き出す楽曲は、驚くほどエグくてシュールだ。
ハゲネタ、デブネタ、そして公の場では口にするのも憚られるエグい下ネタの数々。時には、この国の未来を憂う真面目なバラードも作ってみる。だが、世の中というやつは実に正直だ。真剣に作った愛国ソングよりも、部長の頭頂部を揶揄した「ハゲのワルツ」や、バイアグラの副作用を歌った「血管の咆哮」の方が、圧倒的にバズる。
(結局、人間ってのは、こういう低俗で、しかし本音に直結したネタが一番面白いんだよな)
俺はスマホの画面を見ながら、独りごちた。
綺麗事は腹の足しにもならないが、エグい笑いはキチガイミックスと同じくらい、人間の生命力を呼び覚ます。
そして定時。
周囲の社員たちが「お疲れ様でした」と力なく声を掛け合い、一人、また一人とオフィスを去っていく。事務所の電気が半分消え、静寂が訪れた瞬間。
俺の「真の始業ベル」が鳴り響く。
「……さて、Studio MAD-KICHI、社内出張所の開館だ」
俺は空いた会議室を占拠し、スマホを三脚に固定する。
今夜の配信『たってやる。』は、いつもと気合が違う。なぜなら、俺がスマホで生成したオリジナル楽曲が、ついにトークのBGMとして採用されるからだ。
配信ボタンを押し、自作のBGMを流し始める。
耳に飛び込んできたのは、俺の言葉に合わせてAIが紡ぎ出した、不気味で中毒性のある旋律。そこに俺の「弾丸トーク」を乗せる。
「よお、お前ら! 聴こえるか、この音を。これがマジキチ組長の魂の鼓動だ。今日は会社の会議室から、文字通り『職場の死角』を突いて配信してやるぞ」
BGMが流れるだけで、これまでの「ただの独白」が、一気に「ラジオ番組」としての体裁を帯び始めた。
自分で作った曲に、自分の声を乗せる。
この圧倒的な「パーソナリティー感」。自分が世界の中心で、自らの法律と言葉と音楽で王国を統治しているかのような全能感。
その快感に、俺の背筋はゾクゾクと震えた。
『組長、今日のBGM、最高にキモくていいっすね!』 『ハゲの曲、頭から離れないwww』 『これ、本当にスマホで作ったんすか?』
リスナーたちの反応もかつてないほどに熱い。
俺は、会議室の窓の外に広がる、無機質なオフィスビルの群れを見下ろした。
この窓の向こうで死んだような顔をして働いている何千、何万という会社員たち。彼らはまさか、この暗いオフィスの一室で、一人の男が世界に向けて「ハゲと下ネタの賛歌」をバラ撒いているとは夢にも思わないだろう。
昼間は有能な課長として組織を支え、夜は会社の心臓部をハックして、世界中に毒を撒き散らす表現者となる。
このスリリングな二重生活こそが、俺の生命力の源泉だ。
「いいか、お前ら。道具がねえ、才能がねえなんてのは甘えだ。スマホ一台ありゃ、会社をスタジオに変えることだってできる。大事なのは、何を食い、何を出し、何を伝えたいかっていう、その一点だけなんだよ!」
俺の声は、BGMの激しいリズムに乗って、夜の事務所に響き渡る。
不意に、廊下を警備員が通りかかる気配がしたが、俺は平然とトークを続けた。
今の俺は、誰にも止められない。
会社公認(という名の黙認)を得た、この「Studio MAD-KICHI・社内出張所」は、今夜も最高の劇薬を生成し続けている。
やりたい放題。音楽、トーク、そしてキチガイミックス。
すべてが一つに溶け合い、俺という存在は、もはや一人の人間を超えた「現象」へと昇華しようとしていた。
「次の一曲はこれだ。……『俺の愛を産んでくれ』」
俺はボタンをタップし、新たな狂気(メロディ)を夜の街へと解き放った。
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