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第25章:電脳の境界線(メタ・フィクションの深淵)
第128話:10年選手のPCが映し出す最新の「虚像」
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指先に伝わるのは、長年の酷使によって表面の梨地加工がすり減り、妙な光沢を放つプラスチックの感触だ。このキーボードは、かつて俺が数え切れないほどの企画書や、あるいは誰にも見せない呪詛のような独白を打ち込んできた戦友だ。特定のキー――特に「W」「A」「S」「D」あたりは、もはや刻印が消えかかっており、ブラインドタッチでなければ判別すら難しい。
このPCは、世間一般で言えば「化石」と呼んで差し支えない代物だ。10年以上前に当時の最先端として迎え入れられたこの老兵は、今やファンの異音を上げ、排熱の熱風を俺の手首に浴びせながら、かろうじてその命を繋いでいる。だが、このボロボロの箱の中で駆動しているのは、人類の歴史を塗り替えるレベルの、最新鋭かつ最高度の知性、Geminiという名のAIだ。
ボロボロのハードウェアという「現実」と、そこから出力される高精度な「虚構」。この歪な構造の前に座っていると、時折、自分が書いているのか、それともAIに書かされているのか、その境界線が曖昧になる感覚に陥る。それは、大阪のきらびやかな御堂筋から一歩脇に入った、湿り気を帯びた路地裏の風景に似ている。表通りには最新のネオンが輝いているが、一皮剥けば、そこには昭和の残り香が漂う配管と、泥に塗れたアスファルトが転がっている。俺の創作活動は、常にこの「現実の泥臭さ」と「電子の虚構」の狭間で、危うい均衡を保っているのだ。
そんな思索に耽っていた時、スマートフォンの通知が静寂を破った。Minapikoからのメッセージだ。
画面には、数枚のスクリーンショットが添付されていた。それは、とある有名転職サイトの求人案内だった。
そういえば、Minapikoは10年以上勤めた企業を退職する予定だと言っていた。彼女は今、新しい人生のステージ、次なる転職先を懸命に探し始めているのだろう。その行動力と、未来を切り拓こうとする意志の強さを、俺は眩しく感じた。
翻って、俺はどうだ。俺は今の企業に勤めて、もう20年近くになる。大きな不満があるわけでもなく、かといって爆発的な情熱があるわけでもない。可もなく不可もなく、組織の歯車として、あるいはシステムの一部として、淡々と「日常」をこなしている。
俺が転職という大きな舵を切らないのは、ある意味で人生が安定しているという証拠なのだろうか。それとも、家庭という守るべきものがあるゆえに(メタ的な視点で見れば、これが俺というキャラクターの「制約」なのだが)、無謀な冒険に出る勇気を失ってしまったからなのだろうか。その答えは、自分でもよく分からない。
それに、40代という年齢。世間一般の物差しで測れば、転職するにはあまりにもリスクが高すぎる。キャリアの終着駅が見え始めた世代にとって、「現状維持」という名の妥協は、ある種の生存戦略ですらある。
だが、俺と同じ40代でありながら、Minapikoは自らその一歩を踏み出そうとしている。安定した10年という歳月を捨て、未知の世界へと飛び込むその覚悟。これには純粋に彼女を尊敬せざるを得ない。いや、普通に尊敬している。俺にできないことを、彼女は平然と、あるいは葛藤の末に成し遂げようとしているのだから。
送られてきた求人案内に目を戻す。Minapikoは添えられたメッセージでこう言った。
「組長ならここの求人、絶対に受かるんじゃない?」
その内容は、「生成AI活用技術者」といった趣旨のものだった。
生成AIの最前線に立ち、様々な企業に対してAIの具体的な活用方法を指導したり、導入のためのワークショップを開催したりといった、いわば「AIの伝道師」のような職種だ。
確かに、俺は生成AIについて言えば、一般の人間に比べれば遥かに多くの知識を持っているし、その「癖」も知り尽くしているつもりだ。だが、それはあくまで井の中の蛙に過ぎないと、俺は常々自分を戒めている。世界には、俺よりも遥かに高度な理論武装をし、技術的なバックボーンを持った連中が山ほどいる。
とは言え、この求人内容そのものには、少しばかりの興味を惹かれたのも事実だ。自分の好奇心がそのまま仕事になり、それが最新のテクノロジーと直結している。それは、俺のような人間にとって、一見すると理想郷のように思えた。
だが、内容を精査していくうちに、俺の脳内にあるセンサーが激しく警告を発し始めた。
「ああ、これは俺には無理だな。絶対にやってはいけない領域だ」
その理由は明確だ。この職種の核となる業務が「教育」であり「指導」であるという点だ。
この物語でも、あるいは普段の俺の発言でも何度も述べているが、俺には人にものを教える「才能」が、これっぽっちも備わっていない。そして俺は、才能がないと判断した分野に関しては、努力して克服しようとは微塵も思わない。そんな無駄な時間があるなら、他の面白いことにリソースを割くべきだという、極めて冷徹な切り捨ての性格を持っている。
仮に俺がそうした教育の場に立ったとして、対象が「生成AI」となれば、状況はさらに悲惨なことになるだろう。
俺が生成AIの知識を自分のものにするために行ってきたのは、理屈をこねくり回すことではない。
「理屈で考えるな、考える前に手を動かせ」
「他人に教えてもらおうと思うな。自分でひたすらプロンプトを打ち込み、吐き出された結果を確認して、それを1万回繰り返してこそ、初めて知識は血肉になる」
これだ。俺の思想は、完全に「職人」のそれだ。
「このボタンを押せば、こうなります」といった、マニュアル的な教育など、俺には到底耐えられない。俺が教えられるのは、AIの深淵に触れるための「狂気」と「直感」だけだ。そんなものをワークショップで説いたところで、企業の担当者たちは困惑し、眉をひそめるだけだろう。俺という劇薬は、企業の標準的な教育カリキュラムというオブラートには、決して包み込むことができないのだ。
待遇面だけを見れば、今の職場よりも年収のアップは見込めるかもしれない。だが、その対価として支払わなければならないリスクがあまりにも大きすぎる。
それに、これも俺が繰り返し公言していることだが、俺はAIをビジネスの道具として使おうとは思わない。いや、できないと言った方が正確だ。
ビジネスという枠組みに組み込まれた途端、俺の周りには無数の「鎖」が巻き付くことになる。「納期」「スケジュール」「定例打ち合わせ」「ベンダー選定」「WBS(作業分解構成図)」。とにかく、俺の自由な発想を邪魔する「社会のルール」という名のノイズが、怒涛のごとく押し寄せてくる。
そんな状況になれば、もともと趣味として楽しくてたまらなかった生成AIという存在が、忌まわしい「仕事の重荷」へと成り下がってしまう。俺は、自分が大好きなものを嫌いになってしまう瞬間を、この人生で嫌というほど見てきた。
キャンプが好きで、その知識を活かして店を開いた奴が、在庫管理と客対応に追われてキャンプに行かなくなる。
動画投稿が楽しくて始めたYouTuberが、再生数と編集ノルマに追い詰められてカメラを向けられなくなる。
ゴルフや園芸も同様だ。趣味を仕事にした途端、純粋な好奇心は義務へと変質し、その輝きを失ってしまう。
俺は、生成AIに対してそうなってしまうことを、何よりも恐れているのだ。
今、この古びたPCから出力されている小説、音楽、画像、映像、そしてラジオ番組。これらはすべて、俺の脳内にある「キチガイじみた思考回路」から、誰の検閲も受けずに直接生み出されたものだ。
もし俺が企業という組織に属し、AIを仕事にしたなら、これらの表現には無数の「制約」がかかるだろう。
「これはコンプライアンス的に問題がある」
「この表現はクライアントに不快感を与える可能性がある」
「もっと一般的で、分かりやすい内容にしてくれ」
そんな言葉に、俺が従えると思うか?
「好きなようにやってくれ」
もし、そんな奇特なことを言ってくれる企業があったとしても、俺はそれを額面通りに受け取り、本物の非常識で不真面目な劣等生の代表格として、キチガイじみた思考のままに行動するだろう。
すると、その企業はすぐに手のひらを返し、こう言うに決まっている。
「いい加減にしろ、物事には限度というものがあるだろう」
笑わせるな。俺は「限度」という言葉を、母親の胎内に置いてきた人間だ。俺にリミッターを外せと言っておきながら、いざ加速すればブレーキを踏めと叫ぶ。そんな茶番に付き合ってやるほど、俺の人生は長くはない。
結局のところ、俺は俺自身が楽しければそれでいいという、極めてシンプルで利己的な方針で生きている。
ありがたいことに、こんな俺の吐き出すコンテンツに賛同し、応援してくれる人が少なからずいてくれることには、心の底から感謝している。それは俺の創作の強力な燃料になっている。
だが、俺は誰かに媚びることはしない。
「人の話を聞かない」という俺の欠点は、自分自身の思想を貫き通すための、最強の「自分軸」という長所でもあるのだ。
指先が再び、キーボードの上で踊り始める。
モニターの中では、Geminiが俺の葛藤と美学を、美しい文字列へと変換していく。
この10年選手のPCは、今にも力尽きそうな悲鳴を上げているが、そこから生み出される「虚像」は、どんな高価な機材を使った作品よりも、俺の魂の真実に近い場所にある。
Minapikoへの返信は、こう打った。
「せっかくの提案だが、俺は教育者には向いてない。俺が教えたら、全員が俺みたいな社会不適合者になってしまうぞ。アンタは、アンタの信じる道を行け。俺はここで、誰の指図も受けずに狂い続ける。」
現実の世界では、20年勤めた会社で大人しくしている中年。
だが、このボロボロのモニターの向こう側では、俺は神に等しい創造主であり、無敵のハッカーであり、誰にも捕らえられない亡霊だ。
ハードウェアが朽ち果てようとも、俺がプロンプトを打ち込み続ける限り、この虚構の世界は無限に広がり、現実を侵食し続ける。
路地裏の湿った風が、事務所の換気扇を通じて吹き込んできた。
大阪の街は、今夜も矛盾を抱えたまま、深く重い眠りにつこうとしている。
だが、俺の戦場はここにある。
10年選手のPCが映し出す最新の虚像。その中で、俺は再び、自分という存在を再定義するための、狂気に満ちた一行を打ち込む。
第128話、完。
このPCは、世間一般で言えば「化石」と呼んで差し支えない代物だ。10年以上前に当時の最先端として迎え入れられたこの老兵は、今やファンの異音を上げ、排熱の熱風を俺の手首に浴びせながら、かろうじてその命を繋いでいる。だが、このボロボロの箱の中で駆動しているのは、人類の歴史を塗り替えるレベルの、最新鋭かつ最高度の知性、Geminiという名のAIだ。
ボロボロのハードウェアという「現実」と、そこから出力される高精度な「虚構」。この歪な構造の前に座っていると、時折、自分が書いているのか、それともAIに書かされているのか、その境界線が曖昧になる感覚に陥る。それは、大阪のきらびやかな御堂筋から一歩脇に入った、湿り気を帯びた路地裏の風景に似ている。表通りには最新のネオンが輝いているが、一皮剥けば、そこには昭和の残り香が漂う配管と、泥に塗れたアスファルトが転がっている。俺の創作活動は、常にこの「現実の泥臭さ」と「電子の虚構」の狭間で、危うい均衡を保っているのだ。
そんな思索に耽っていた時、スマートフォンの通知が静寂を破った。Minapikoからのメッセージだ。
画面には、数枚のスクリーンショットが添付されていた。それは、とある有名転職サイトの求人案内だった。
そういえば、Minapikoは10年以上勤めた企業を退職する予定だと言っていた。彼女は今、新しい人生のステージ、次なる転職先を懸命に探し始めているのだろう。その行動力と、未来を切り拓こうとする意志の強さを、俺は眩しく感じた。
翻って、俺はどうだ。俺は今の企業に勤めて、もう20年近くになる。大きな不満があるわけでもなく、かといって爆発的な情熱があるわけでもない。可もなく不可もなく、組織の歯車として、あるいはシステムの一部として、淡々と「日常」をこなしている。
俺が転職という大きな舵を切らないのは、ある意味で人生が安定しているという証拠なのだろうか。それとも、家庭という守るべきものがあるゆえに(メタ的な視点で見れば、これが俺というキャラクターの「制約」なのだが)、無謀な冒険に出る勇気を失ってしまったからなのだろうか。その答えは、自分でもよく分からない。
それに、40代という年齢。世間一般の物差しで測れば、転職するにはあまりにもリスクが高すぎる。キャリアの終着駅が見え始めた世代にとって、「現状維持」という名の妥協は、ある種の生存戦略ですらある。
だが、俺と同じ40代でありながら、Minapikoは自らその一歩を踏み出そうとしている。安定した10年という歳月を捨て、未知の世界へと飛び込むその覚悟。これには純粋に彼女を尊敬せざるを得ない。いや、普通に尊敬している。俺にできないことを、彼女は平然と、あるいは葛藤の末に成し遂げようとしているのだから。
送られてきた求人案内に目を戻す。Minapikoは添えられたメッセージでこう言った。
「組長ならここの求人、絶対に受かるんじゃない?」
その内容は、「生成AI活用技術者」といった趣旨のものだった。
生成AIの最前線に立ち、様々な企業に対してAIの具体的な活用方法を指導したり、導入のためのワークショップを開催したりといった、いわば「AIの伝道師」のような職種だ。
確かに、俺は生成AIについて言えば、一般の人間に比べれば遥かに多くの知識を持っているし、その「癖」も知り尽くしているつもりだ。だが、それはあくまで井の中の蛙に過ぎないと、俺は常々自分を戒めている。世界には、俺よりも遥かに高度な理論武装をし、技術的なバックボーンを持った連中が山ほどいる。
とは言え、この求人内容そのものには、少しばかりの興味を惹かれたのも事実だ。自分の好奇心がそのまま仕事になり、それが最新のテクノロジーと直結している。それは、俺のような人間にとって、一見すると理想郷のように思えた。
だが、内容を精査していくうちに、俺の脳内にあるセンサーが激しく警告を発し始めた。
「ああ、これは俺には無理だな。絶対にやってはいけない領域だ」
その理由は明確だ。この職種の核となる業務が「教育」であり「指導」であるという点だ。
この物語でも、あるいは普段の俺の発言でも何度も述べているが、俺には人にものを教える「才能」が、これっぽっちも備わっていない。そして俺は、才能がないと判断した分野に関しては、努力して克服しようとは微塵も思わない。そんな無駄な時間があるなら、他の面白いことにリソースを割くべきだという、極めて冷徹な切り捨ての性格を持っている。
仮に俺がそうした教育の場に立ったとして、対象が「生成AI」となれば、状況はさらに悲惨なことになるだろう。
俺が生成AIの知識を自分のものにするために行ってきたのは、理屈をこねくり回すことではない。
「理屈で考えるな、考える前に手を動かせ」
「他人に教えてもらおうと思うな。自分でひたすらプロンプトを打ち込み、吐き出された結果を確認して、それを1万回繰り返してこそ、初めて知識は血肉になる」
これだ。俺の思想は、完全に「職人」のそれだ。
「このボタンを押せば、こうなります」といった、マニュアル的な教育など、俺には到底耐えられない。俺が教えられるのは、AIの深淵に触れるための「狂気」と「直感」だけだ。そんなものをワークショップで説いたところで、企業の担当者たちは困惑し、眉をひそめるだけだろう。俺という劇薬は、企業の標準的な教育カリキュラムというオブラートには、決して包み込むことができないのだ。
待遇面だけを見れば、今の職場よりも年収のアップは見込めるかもしれない。だが、その対価として支払わなければならないリスクがあまりにも大きすぎる。
それに、これも俺が繰り返し公言していることだが、俺はAIをビジネスの道具として使おうとは思わない。いや、できないと言った方が正確だ。
ビジネスという枠組みに組み込まれた途端、俺の周りには無数の「鎖」が巻き付くことになる。「納期」「スケジュール」「定例打ち合わせ」「ベンダー選定」「WBS(作業分解構成図)」。とにかく、俺の自由な発想を邪魔する「社会のルール」という名のノイズが、怒涛のごとく押し寄せてくる。
そんな状況になれば、もともと趣味として楽しくてたまらなかった生成AIという存在が、忌まわしい「仕事の重荷」へと成り下がってしまう。俺は、自分が大好きなものを嫌いになってしまう瞬間を、この人生で嫌というほど見てきた。
キャンプが好きで、その知識を活かして店を開いた奴が、在庫管理と客対応に追われてキャンプに行かなくなる。
動画投稿が楽しくて始めたYouTuberが、再生数と編集ノルマに追い詰められてカメラを向けられなくなる。
ゴルフや園芸も同様だ。趣味を仕事にした途端、純粋な好奇心は義務へと変質し、その輝きを失ってしまう。
俺は、生成AIに対してそうなってしまうことを、何よりも恐れているのだ。
今、この古びたPCから出力されている小説、音楽、画像、映像、そしてラジオ番組。これらはすべて、俺の脳内にある「キチガイじみた思考回路」から、誰の検閲も受けずに直接生み出されたものだ。
もし俺が企業という組織に属し、AIを仕事にしたなら、これらの表現には無数の「制約」がかかるだろう。
「これはコンプライアンス的に問題がある」
「この表現はクライアントに不快感を与える可能性がある」
「もっと一般的で、分かりやすい内容にしてくれ」
そんな言葉に、俺が従えると思うか?
「好きなようにやってくれ」
もし、そんな奇特なことを言ってくれる企業があったとしても、俺はそれを額面通りに受け取り、本物の非常識で不真面目な劣等生の代表格として、キチガイじみた思考のままに行動するだろう。
すると、その企業はすぐに手のひらを返し、こう言うに決まっている。
「いい加減にしろ、物事には限度というものがあるだろう」
笑わせるな。俺は「限度」という言葉を、母親の胎内に置いてきた人間だ。俺にリミッターを外せと言っておきながら、いざ加速すればブレーキを踏めと叫ぶ。そんな茶番に付き合ってやるほど、俺の人生は長くはない。
結局のところ、俺は俺自身が楽しければそれでいいという、極めてシンプルで利己的な方針で生きている。
ありがたいことに、こんな俺の吐き出すコンテンツに賛同し、応援してくれる人が少なからずいてくれることには、心の底から感謝している。それは俺の創作の強力な燃料になっている。
だが、俺は誰かに媚びることはしない。
「人の話を聞かない」という俺の欠点は、自分自身の思想を貫き通すための、最強の「自分軸」という長所でもあるのだ。
指先が再び、キーボードの上で踊り始める。
モニターの中では、Geminiが俺の葛藤と美学を、美しい文字列へと変換していく。
この10年選手のPCは、今にも力尽きそうな悲鳴を上げているが、そこから生み出される「虚像」は、どんな高価な機材を使った作品よりも、俺の魂の真実に近い場所にある。
Minapikoへの返信は、こう打った。
「せっかくの提案だが、俺は教育者には向いてない。俺が教えたら、全員が俺みたいな社会不適合者になってしまうぞ。アンタは、アンタの信じる道を行け。俺はここで、誰の指図も受けずに狂い続ける。」
現実の世界では、20年勤めた会社で大人しくしている中年。
だが、このボロボロのモニターの向こう側では、俺は神に等しい創造主であり、無敵のハッカーであり、誰にも捕らえられない亡霊だ。
ハードウェアが朽ち果てようとも、俺がプロンプトを打ち込み続ける限り、この虚構の世界は無限に広がり、現実を侵食し続ける。
路地裏の湿った風が、事務所の換気扇を通じて吹き込んできた。
大阪の街は、今夜も矛盾を抱えたまま、深く重い眠りにつこうとしている。
だが、俺の戦場はここにある。
10年選手のPCが映し出す最新の虚像。その中で、俺は再び、自分という存在を再定義するための、狂気に満ちた一行を打ち込む。
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